2019年10月12日配信<0510archives>「JCサービス、ベアハグ、大樹総研をターゲットにした特捜トライアングル捜査の行方」<事件>


中久保正己JCサービス社長


 東京地検特捜部が、再生可能エネルギー事業を展開する「JCサービス」に対する捜査を本格化させている。

 

 細野豪志代議士に5000万円を貸し付けるなど、「特捜案件」となるに相応しい企業であることは知られていたが、他に特捜部が“お客さん”にしたいコンサルタントの「大樹総研」、リラクゼーション業界と政界を結びつけた「ベアハグ」との親しい関係が浮上、「政界ルート」を視野に入れたものになっている。
 
 「JCサービス」を率いる中久保正己社長は、謎が多く、「暴力団関係者とも昵懇で、平気で嘘をつき、目的のためには手段を選ばない人物」(同社関係者)のようだ。
 
 兵庫県庁職員だった時、阪神淡路大震災に遭遇。「多様なエネルギーインフラの必要性を感じ、03年、JCサービスを設立した」と、インタビューなどで述べているのだが、95年の大震災後、JCサービスを設立するまでに、「クオリティライフ」、「ジャパンコストプランニング」といった会社を設立、いずれも倒産させている。
 
 その信用性のなさを補うように、人脈作りに励み、結果、行き着いたのが「人脈商売」で永田町と霞が関に隠然たる勢力を振るう「大樹総研」だった。
 
 同時に、中久保氏が金融面で頼ったのが、ソーシャルレンディング事業を展開する「maneoマーケット」で、ここのプラットフォームを利用する形で、傘下の「グリーンインフラレンディング」(GIL)が約200億円を集めている。
 
 金融庁は、昨年7月、maneo社に業務改善命令を出している。
 
 原因は、GILがネット上で公開した募集内容とは違う事業に資金を流用していたからだが、GIL立ち上げの時から自転車操業に陥るのは自明だったという。
 
「中久保氏が右のポケットから左のポケットに移し替えるだけだから、目的外使用は折り込み済み。年々、太陽光などの買取価格が下がっていくなか、自転車操業になるのも当然だった」(電力業界関係者)
 
 しかし、その過程で事業を縮小、投資家保護を図るといったタイプではなく、太陽光からバイオマス、日本だけでなくタイへと事業を拡張、そのために政治力を頼った。
 
「大樹総研」の矢島義也会長は、16年5月に開いた盛大な結婚式に、菅義偉官房長官をはじめ与野党多数の政治家、中央官庁主要官僚を招いたという「与野党に人脈を持つ政界プロモーター的人物」(捜査関係者)。「JCサービス」は、その「大樹総研」に業務委託料などの名目で約5億円を支払っている。
 
 また、バイオマス発電でタイに関与することになった中久保氏は、超党派議員団の一員だった細野代議士とともに、17年末、タイを訪れている。
 
 中久保氏の政界パイプとなった矢島氏を紹介したのが、「ベアハグ」の稲川貴久前代表だが、一体どんな人物なのか。
 
「PL学園、亜細亜大学の剣道部出身で、整体師からスタートして、リラクゼーションのベアハグを立ち上げた人物。やり手で、顧客に茂木敏充(現経産相)さんがいたことから政界にも人脈ができ、その縁で大樹の矢島氏と知り合った。リラクゼーション業界が総務省に産業認定される際には、稲川氏の政界パイプが役に立ったとされた」(社会部記者)
 
 稲川氏は、17年11月、法人税4300万円を脱税したとして在宅起訴。捜査した特捜部は、稲川氏の「政界ルート」にも注目していたとされる。
 
 また、稲川氏は16年4月、中久保氏とともに「環境プロパティ」という太陽光の会社を立ち上げており、長野県上田市で太陽光発電事業に乗り出している。
 
 こうして眺めると、「JCサービス」を起点とする捜査は、「大樹総研」や「ベアハグ」にも及んで、それは「政界ルート」を視野にいれたものになるが、その前にやるべきことは投資家保護。「JCサービス」の資金流出に一刻も早く歯止めをかける必要があろう。
 
 maneoの業務改善命令以降、1年以上、資金調達ルートを失った「JCサービス」は、売電権や取得した不動産を売るなどして資金を回収しているが、それは窓口のmaneo社に返却されることはない。

 従って、投資家に返却されることはなく、「目外流用」の得意な中久保氏が、引き続き自由に使っている。
 
 投資家にとっては「詐欺」されたに等しく、被害金額を少なくするためにも、早急に捜査着手すべきだろう。【巳】

 

 

 

 

 

 


2019年9月12日配信「稀代の仕事師・許永中氏の自叙伝出版に合わせたように晩節を汚す元住友銀行・國重惇史氏の“悲劇”!!」<事件>


 「日本一の仕事師」という異名を取ったこともある許永中の自叙伝『海峡に立つ 泥と血の我が半生』(小学館)が、8月28日に上梓され、好調な売れ行きを見せている。
 
 コーポレートガバナンス(企業統治)とコンプラインス(法令遵守)を重視する世相は、企業社会からグレーゾーンの反社会的勢力を排除したが、建前ばかりの清廉な経営からは人間臭いドラマは生まれず、許が体現した貧困と差別から己の才覚と腕力でのし上がっていく過程は、読者を魅了する。
 
 「イトマン」という老舗商社の内紛にかこつけて、伊藤寿永光というもう1人の事件屋を表に立て、暴力団社会との接点が色濃い自分は裏に回り、「イトマン」から「伊藤プロジェクト」に3000億円を流し込み、そのメインバンクの旧住友銀行にまで駆け上がろうとする姿には、戦慄すべき凄みがある。
 
 イトマン社長と担当専務、西武百貨店幹部と絵画担当課長、「住銀の帝王」と呼ばれた磯田一郎会長とその娘、画廊フィクサー・福本邦雄と竹下登の女婿…。
 
 いずれも許と伊藤が“手玉”に取った。
 
 ふたりとも、頭の回転の早さと弁舌の巧みさは抜群で、相手の望むものを与えて取り込む籠絡のテクニックを持ち、誰もが、気が付くと2人の術中に嵌まっていた。
 
「型に嵌まる」と抜け出すのは容易ではないし、当事者にとっては地獄である。
 
 だが、経済ドラマの読み手、観客としてはこれほど面白い世界はない。
 
 バブル期の物語が、暴力団を含むグレーゾーン領域を活写するものとして人気が高いのは、「白」と「黒」にハッキリ分けた平成の中期以降、人間ドラマが面白みのない法律と弁護士に奪われるようになったからだ。
 
 許の自叙伝は、仕事師にならざるを得なかった男の一代記だが、その発売直後の8月30日、イトマン事件で許に対峙した男のフェイスブック(FB)が、驚愕の内容で関係者の注目を集めた。
 
「僕は完治しない難病に罹患しています。今は車椅子ですが、寝たきりになる前に過去を懺悔して、いつか天国に昇りたいです」
 
 こんな書き出しで始まる文書を書いたのは、現在、都下の老人施設で療養生活を送る國重惇史である。
 
 昭和20年生まれで学年は許のひとつ上。だが、経歴は真逆で東大経済学部を卒業して住友銀行に入行、旧大蔵省を担当するMOF担として名を売り、取締役東京支配人を経て子会社副社長。その後、三木谷浩史に乞われて「樂天」に転じ、「樂天証券」、「樂天銀行」など金融部門を統括した。
 
 住銀エリートが、「イトマン」の異常事態に気付いたのは、約1兆3000億円の資産のうち約6000億円が固定化、金利負担が重くのしかかっていたからで、90年3月、「バブルを謳歌している日常の裏で、恐ろしい出来事が起きている」という直感のもと、「イトマン」に関し、詳細なメモを取り始める。
 
 そこから始まった戦いは、大蔵省銀行局長への内部告発となり、その文書がメディアに流出したことでイトマン事件が周知のものとなる。
 
 國重は、日経新聞記者などの協力を得て、住銀に防御体制を敷くとともに、事件化への道筋をつけた。
 
 その過程を綴った膨大なメモをもとに、16年10月に著わしたのが『住友銀行秘史』(講談社)である。
 
 同書は13万部を超えるベストセラーとなったが、「秘史」は住銀関係者にとっては、文字通り“秘す”べきものであり、國重は住銀のみならず金融界での立ち位置を失った。
 
 ただ、それは樂天を退職後、東証2部に上場する「リミックスポイント」の社長に就任した頃から始まっていた。
 
 樂天退任は数々の女性スキャンダルが発覚した結果だったし、「リミックスポイント」は金融界では評判の良くない松浦大助グループと目されていた。
 
 パーキンソン病に似た難病に罹患、リミックス社を退任してからは、松浦グループに面倒を見てもらう状況だったが、病気の進行は体の自由を完全に奪い、一方で過去の女性との金銭トラブルは解決せず、それがリミックス株で行なった不正行為の数々をFBで暴露するという開き直りにつながった。
 
 俺の口を塞ぎたければ、俺の面倒を見ろー−。國重の気持ちを代弁すれば、こんなところだろうか。
 
 許の健在を示す自叙伝の出版と國重の零落を物語るFBでの告発。――イトマン事件から27年が経過、同時代を生きた2人は、さながらドラマのような好対照を見せている。(文中敬称略)【寅】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年9月7日配信<0510archives>「保育所事業補助金詐欺の川崎大資(塩田大介)容疑者をスポンサーにしていた秋元司国交副大臣に捜査は及ぶのか?」<事件>


 渦中の秋元司国交副大臣
(☚wikipedia)

 

 「川崎大資」というより、改姓改名前の「塩田大介」の方がしっくりするし、また「塩田らしい」といって差し支えないのが、企業主導型保育事業に絡み、横浜幸銀信用組合から約1億1000万円を騙し取った疑いで逮捕された川崎大資容疑者である。
 
 摘発したのは、塩田姓時代の昔、脱税容疑で摘発したことがある東京地検特捜部だ。
 
 申請書類を偽造、金融機関を騙したという、よくある詐欺事件。しかも金額は1億円強と少なく、足場も福岡という良くない場所の事件を、なぜ特捜部が手掛けたのか――。
 
 そう司法記者に聞かれた検察幹部は「彼(川崎)は、お客さんだから」と、答えた。
 
 脱税だけでなく、当時、経営していた「ABCホーム」の上場を狙った工作などで、塩田は検察の要注意人物だった。
 
 脱税の次の摘発は、居城といっていい「西麻布迎賓館」を競売されそうになり、“登記の魔術師”の小野塚清氏と組んだ競売妨害事件だった。
 
 これは警視庁組織犯罪対策4課の扱いとなったが、政治家、暴力団、反社会的勢力から芸能界まで、カネにあかせて人脈を広げる川崎容疑者は、「何かしでかす人物」であり、実際、今回は制度の隙間を巧みについて助成金を詐取した。
 
 つまり、書類偽造の詐欺事件は入り口で、今後、安倍政権の目玉政策のひとつで、3年間に3800億円以上も投じた企業主導型保育事業の助成金詐取に延びる。
 
 さらに、「ABCホーム」が隆盛の頃、西麻布迎賓館には政治家も含む華麗なる人脈が遊びに来ていて、川崎容疑者は至れり尽くせりの接待をした。
 
 脱税摘発の2年前、都内のホテルで開いた結婚式には、上場企業経営者はもちろん、野村克也監督夫妻、酒井法子夫妻、中村玉緒、竹内力ら多くの著名人が出席。媒酌人は中川秀直元官房長官で、他にも政界から官僚を含む5人の国会議員が出席した。
 
 要は、川崎容疑者は「撒く人」であり、その性癖は、簡単には変わらない。
 
 それが分かっているから特捜部は、制度利用の際、政治家の口利きはなかったか、あるいは窓口の「児童育成協会」への工作を行なわなかったか、といった観点からの捜査を続ける。
 
 最初に浮かび上がった政治家が、秋元司内閣府副大臣である。
 
 今年5月23日の衆議院厚生労働委員会で、立憲民主党の石橋通宏参院議員が、秋元副大臣にこう質した。
 
 「川崎容疑者は、拠点を福岡市に移し、そこで『WINカンパニー』という会社でキッズランドという保育所を運営するほかコンサルタント業務を展開している。


 同社のコンサルを受けた業者は、『秋元副大臣を川崎容疑者に紹介してもらい、各種の陳情を行なう一方、(川崎容疑者の)要請に従ってパーティー券を購入した』と、地元のネットメディアに証言している。
 川崎大資という人物とどういう関係なのか――」
 
 こう質問した石橋議員に対して、秋元副大臣は「口利き依頼」については否定、問い合わせについては「パンフレットなどで説明した」と、述べ、川崎容疑者とは「20年前に知り合い、パーティーなどの席で5〜6年前に会った」と、記憶を辿った。
 
 献金については、「WINカンパニー」と献金を要請された企業とのメールのやり取りが公開されており、政治資金収支報告書にも記載されてことで、川崎容疑者を仲介者とする「陳情と献金」の関係は明らかだ。
 
 だが、逆にそこがネックとなる。
 
 危うい関係が多かった小林興起元代議士のもとで秘書として働き、秋元副大臣は「危険なカネの処理」には長けているという。
 
 陳情をパーティー券購入という表で処理した時、それを贈収賄の構図で問うのは難しい。
 
 「特捜部が政界ルートを狙うには、明確な口利きの事実を立証しなければならず、犯歴があり、名前まで変えている塩田のために、機を見るに敏な秋元が、そこまでやってやるとは考えにくい」
 
 双方を知る政界関係者は、捜査の先行きについて悲観的な見方をするが、それとも巷間噂されるように久しぶりにバッヂに手が届くのか?――今後の捜査の進展から目が離せない。【午】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年9月5日配信「所属芸人の闇営業より深刻な『吉本興業』と『クールジャパン機構』との怪しい関係」<事件>

 
大山鳴動して〜(☚wikipedia)

 

 反社会的勢力相手の闇営業で謹慎していた吉本芸人が、喪が明けた?とばかりに続々と復帰、テレビは相変わらず吉本芸人がいなければ番組が成り立たないことを受けて「吉本王国」が再起動。あの騒動は結局、何の教訓も残さず、改革されることもなかった。
 
「芸人と暴力団」という“くくり”で言えば、吉本興業は10年、株式の公開買い付け(TOB)による非上場化を実現、暴力団とのしがらみが多い創業家との関係を断ち、多少の癒着は封印できる体制を築いていた。
 
 従って、カラテカ入江の「闇営業」が表面化したぐらいでは揺るがなかった。
 
 むしろ本格追求されて困るのは、大崎洋会長と政治家との強い絆と、それをテコに国のカネが「吉本興業」に流れ込む仕組みだった。
 
 大崎会長は、反社との関係を切った代わりに政官との癒着を強めた。
 
 その代表が「クールジャパン機構」から122億円ものカネが流れ込んでいることである。
 
「お笑い」と「芸人」という強烈なコンテンツを武器に、大崎会長は、行政に食い込んでいく。
 
 維新の橋下徹、松井一郎といった政治家との個人的パイプをもとに、大阪、京都など関西の地方行政へのつながりを深め、東京においても官邸の知的財産戦略本部や内閣府主催の各種委員会の委員を務めた。
 
 それが、「クールジャパン機構」という官民ファンドからの投資につながった。
 
 経産省が主導する安倍政権は、「リスクある投資を国が補完、成長産業に結びつける」として多くの官民ファンドを設置したが、いずれもうまくいってない。
 
「当然です。民間なら投資は自己責任で、それを運用するファンドには厳しい目が注がれるが、しょせんはお役所仕事で誰にも責任は負わされない。民間より低いとはいえ保証された報酬はある。クールジャパンは海外への日本文化の発信を主目的に13年に設立されましたが、投資効果が見込まれず、失敗続きでした」(外資系ファンド幹部)
 
 18年3月期決算では、財務内容が悪化して、当期損失は39億円、累積赤字が97億円に膨らんで、抜本的な改革を余儀なくされ、同年6月、役員は一新され、「ソニー・ミュージックエンターテインメント」出身の北川直樹氏が社長に、外資系ファンド出身の加藤有治氏が専務に就任。新たな投資ルールを定め、収益性を重視したという。
 
 だが、「クールジャパン機構」に最も食い込んでいる企業が「吉本興業」で、新体制になってからも巨額資金を引っ張っている状況を考えれば、両者の関係に怪しさを感じないではいられない。
 
 なぜ、そこまで吉本は食い込み、機構はそれを許しているのか。
 
 機構設立直後の14年、アジア向けのコンテンツ制作事業に10億円、18年には、大阪城公園でのコンテンツ発信事業に12億円が投入された。
 
 それを含む「クールジャパン機構」の出資形態に問題が多いとして前述のように経営陣は一新されたが、吉本は“別枠”だったようで、今年4月、吉本が「NTT」と組んで、沖縄を拠点に教育コンテンツを国内外に発信する事業に、最大100億円が投じられることになった。
 
 事業の概要は以下の通りである。
 
 教育コンテンツ・アプリの制作発信、日本初の良質な教育等コンテンツを展開するプラットフォームの構築、バーチャルなコンテンツ・アプリをリアルに体感できるアトラクション施設を沖縄に設置――。
 
 この説明文を読んで理解できるのは、沖縄のアトラクションに100億円を投じるということだけだろう。
 
 それを官民ファンドが国のカネで行なう理由がよくわからない。
 
 機構の総投資額が861億円だけに、122億円の吉本興業がいかに厚遇かがわかる。
 
 経営陣を入れ替えてもそうなのだから、何か特別な力が働いていると見るのが自然。そこにこそ最大の「吉本興業の闇」が内在しており、それに比べると「闇営業」など、“食えない芸人のアルバイト”に過ぎないのである。【戌】


2019年8月6日配信<0510archives>「悪夢再び!?――五輪選手村『HARUMI FLAG』大量売却で始まる不動産大暴落の恐れ!」<事件>

五輪選手村用地


 東京五輪選手村の跡地再開発の名称が、「HARUMI FLAG」に決まり、来年5月から売り出される。

 選手ら1万8000人が宿泊する施設は、そのまま高層50階2棟を始めとするマンション群に生まれ変わる。

 5632戸の新しい街が晴海に誕生するわけだが、そのうち分譲4145戸分の安値売却が、高騰を続けてきたマンション市況を冷やすきっかけになるといわれている。

 「都内では新築マンションの坪単価が350万円を超え、一般のサラリーマンには手が出せない水準になってきています。そうした市況の情勢と、新築ではあっても二次使用という現実などもあって、HARUMI FLAGの坪単価は250万円程度に設定されるようです。この3割引が、マンション相場の下落を誘因、不動産相場全体の暴落を引き起こすことになりそうです」(大手不動産幹部)

 アベノミクスが、景気を下支えし、雇用を改善、株価を右肩上がりにした効果は否定できない。

 ただ、そのカネ余りが様々な歪みを生じさせたのも事実で、そのうちのひとつが、少子化のなか将来の住宅過多を折り込まないマンション建設ブームだった。

 首都圏のマンション価格は、02年の約4000万円を底値に上げ始め、15年には5500万円を超え、18年に入ると、少し条件の良いマンションなら7000万円を超えた。

 五輪需要などで土地代も建設資材も高騰したのが原因で、その悪材料をアベノミクスが薄め、購入意欲を継続させた。

 だが、今後、人口が減少、空き家が増えて中古賃貸マンションの価格相場が崩れるのが明白なのに、一般勤労世帯がローンが組めないようなマンションブームがいつまでも続くわけはない。

 「東京五輪終了後の20年がバブル崩壊の年になる」というのが、マンション業界の常識。「消費税が10%になる前に」と、19年10月の消費税アップを折り込んだ駆け込み需要を煽った反動も予想できる。

 それより前に、HALUMI FLAGの4000戸大量安値供給が、バブル崩壊の引き金を引くと見られている。

 湾岸一等地のファミリータイプ20坪が、約5000万円で売却されれば、相場を下方に大きく牽引することになるのは間違いない。

 しかも、下落はマンションだけでなく、不動産市場全体に及ぶ。

 他の分野でもアベノミクスの反作用が出始めており、それを覆す投資要因がない。

 「スルガ銀行」のシェアハウス騒動に代表されるアパート融資や、ソーシャルレンディング業界最大手の「maneoマーケット」の急成長などは、同じ「カネ余り」がもたらしたものである。

 しかし、明らかな逆回転が始まっている。

 シェアハウス騒動は、スルガ銀行固有のものではなく、地銀や信金が、サブリース業者と手を組んで投資家の需要を開拓、資金を捌きたいという思惑から始まっており、金融業界全体が抱える問題である。

 金融庁が態度を一転させ、投資家が目を覚ました以上、金融機関は融資を絞らざるを得ず、「レオパレス21」、「大東建託」などのサブリース業界は確実に冬の時代を迎える。

 業績不振の不動産業者の“駆け込み寺”となっているソーシャルレンディングも同様。「Maneoマーケット」への業務改善命令に見られるように、債務者保護を名目に劣悪な物件であることを隠し、高利をエサに資金を集めていたのがソーシャルレンディング業界であるのがバレた以上、新たな資金を得るのは難しい。

 結局、マンション、シェアハウス、アパートなどの建設ラッシュは、アベノミクスの生んだ“徒花”であり、バブルのなかに咲いた以上、いつかは終焉を迎える。

 新築マンションでその引き金になるのが五輪選手村だが、目端の利く投資家や業者は、既に不動産の売却に入っており、中国人が買い漁った利殖や民泊目当てのタワーマンションでは投げ売りが始まっている。

 実需に基づかないマネーゲームは終了。――待ち受けるのは、マンション、サブリース業者などの連続倒産という見たくない再びの悪夢である。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年8月3日配信「吉本興業騒動で留意すべきは『反社の定義』と彼らから『芸人を守る方法』」<事件>

<堂々の吉本興業グループ>

 

吉本興業株式会社
株式会社きょうのよしもと
株式会社よしもとデベロップメンツ
株式会社よしもとラフ&ピース
株式会社よしもとアドミニストレーション
株式会社よしもとエンタテインメント沖縄
株式会社よしもとセールスプロモーション
株式会社よしもとブロードエンタテインメント
株式会社よしもとチケット
株式会社よしもとインベストメント
株式会社よしもとエリアアクション
株式会社よしもとロボット研究所
株式会社よしもとプロダクツ
株式会社よしもとスタッフ・マネジメント
株式会社よしもとミュージック
株式会社よしもとファイナンス
株式会社よしもとミュージックパブリッシング
株式会社CANVAS
株式会社よしもとミュージックコリア
株式会社Showtitle
株式会社よしもとスポーツ
株式会社KATSU−do
株式会社よしもとゲームズ
株式会社カワイイアン・ティービー
株式会社よしもとアーツ
株式会社VERSUS
株式会社よしもとアクターズ
株式会社ラフアウト
株式会社たまか
 

 
 宮迫博之、田村亮ら「吉本興業」の芸人らの「闇営業」に端を発した騒動は、同社の契約書なしの雇用関係、異常な搾取構造、危ないとなれば芸人を切り捨てる冷酷な体質がクローズアップされ、岡本昭彦社長の情けない記者会見、加藤浩次、松本人志、明石家さんまなど“大物”の参戦もあって、「吉本興業騒動」という形で進展、「反社会的勢力との関係はどうあるべきか」という、本来、論義すべき問題が忘れられている。
 
 きっかけは、4年半前、振り込め詐欺グループの忘年会に、宮迫らが会社を通さない闇営業として出席、ギャラをもらいながら「受け取っていない」と証言、それがウソであることが発覚したことだった。
 
 ここで「闇営業」と「ウソ」は、吉本対芸人の話であり、一般社会の与り知らぬことである。
 
 論義すべきは、「反社会的勢力と知らずに彼らから金銭を受け取ったこと」が、芸人をクビにできるほどの罪かどうか、という点である。
 
 マスコミの多くは、いとも簡単に「反社」と呼ぶが、その定義は難しい。
 
 狭義の反社とは、11年に完全施行された暴力団排除条例で認定された暴力団構成員、準構成員、及びその密接交際者であり、この数は少ない。
 
 銀行口座も開けず、家も借りられないのだから当然で、この部分の反社は激減、警察当局が完全把握する暴力団構成員は、今や1万5000人(18年末)に過ぎない。
 
 その穴を埋めるように増えているのが半グレで、問題となった振り込め詐欺グループもそうだが、風俗・飲食店経営、暴力団金融、債権回収、芸能プロダクション経営、地上げ、金融詐欺など、かつて暴力団や企業舎弟と呼ばれる周辺者が牛耳っていた分野は、半グレなどグレーゾーンの領域に生息する連中が主体となった。
 
 もちろんこちらも、広義の意味では反社だが、こちらの反社は、誰も認定しておらず、どう対処していいかわからないのが実情だ。
 
 実は、吉本興業は暴力団対策法以降、「反社に狙われる企業」という立ち位置を自覚、09年9月、TOBを発表し、証券市場から撤退している。
 
 07年にお家騒動が勃発、会社側と創業家のそれぞれに反社がつき、山口組と近い怪芸人の中田カウスが暗躍の果て、金属バットで襲撃を受けるなど混乱の極みにあった。
 
 100年の歴史の中で70年近くを暴力団と背中合わせで歩んできただけに、いつ暴力団との関係が噴出するか分からず、上場していたのでは会社自体が危うくなる⁉――これが上場廃止の理由であり、その決意表明が11年8月の島田紳助引退だった。
 
 吉本は、少しでも暴力団構成員と付き合いがあれば、紳助のようなトップ芸人でも切ることを、社内、所属芸人はもちろん暴力団側にも知らしめた。
 
 ほかにも、「吉本興業」が暴力団との関係遮断を求め、コンプライアンス委員会の設置、内部通報制度、Q&Aの冊子配布、半年に一度の研修などで所属芸人に周知徹底させようとしてきたことは事実である。
 
 今回も、改めて反社との関係を持たないようにする誓約書を全芸人との間で交わすのだという。
 
 しかし、それが大して役に立たないのは、吉本の古手芸人や経営陣はわかっている。
 
 5代目との関係を吹聴していた前述の中田カウスが未だに居座っているのもそうだし、60代以上の古手が、今回、決して口を開かないのは、過去に深い関係を結んだ暴力団幹部がいるなど、ズブズブの関係にあるからだ。
 
 そして、吉本は反社の中核が半グレに移った今、かつてのヤクザがそうだったように、彼らが習性として芸人を呼んで誕生会、祝賀会、パーティーなどを盛り上げようとすることが分かっている
 
 芸能プロの運営が、今回のフライデー報道のように、杓子定規な倫理観、反社報道によって揺らぐ以上、厳しい内規を定め、内に飼っている古手も、闇営業をせざるをえない若手も、事が発覚すれば切るしかない。
 
 それが反社から組織を守る方法で、今回、吉本はそう対応したが、想像以上のバッシングを浴びた。
 
 反社とは? そして彼らとの関係はどこまで許されるのか?ーー吉本が、まず確立すべきはこれである。

 
 そして、これは吉本だけの問題にとどまらない。
 
 明文化された規定、統一された見解が、芸能界と取り締まる警察当局、報道するマスメディアになければならず、そうでなくてはこの種の問題は、いつ誰の身に起きてもおかしくない。【午】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年7月30日配信<0510archives>「巨大IT規制に踏み切る日米欧を尻目に中国が勢力圏を拡大中」<事件>

 

 

 巨大IT企業が、日米欧から集中砲火を浴びて揺らいでいる。
 
 6月に入ると、米司法当局が日本の独占禁止法にあたる反トラスト法に基づいて、グーグルを捜査する方針だというメディア報道を受けて、グーグルだけでなく、アップル、フェイスブック、アマゾンのGAFA4社の株が急落した。
 
 米を覆う巨大IT規制のうねりは、もはや止まらない。
 
 かつて米国は、グーグルなどを国家戦略企業と位置づけて保護育成した。
 
 彼らは、自らのプラットフォームを通じて、検索、メール、物品販売など数々のサービスを提供しているが、そこから発生する名誉毀損などのトラブルは、「包括免責条項」で除外、プラットフォーマーの責任にしなかった。
 
 GAFAが、世界の時価総額上位を独占しているのは、IT化、グルーバル化を先導しただけでなく、米国の国家戦略企業として位置づけられていたからだ。
 
 だが、18年5月に施行された欧州のGDPR(一般データ保護規制)によって、流れは完全に変わった。
 
 GDPRは、EUで行われる個人情報保護の枠組みだが、単に保護するだけではない。
 
 GAFAのような巨大IT企業が握るビッグデータに蓄積された情報は、一私企業のものではなく「公共財」だという発想の転換であり、GAFAは人と組織と民主主義に対峙する存在だから、独占禁止法や税金でその活動を制限しなければならない、という認識の共通化である。
 
 日本でも公正取引とプライバシー保護と課税の観点から規制強化することが決まっており、今夏までに具体策をまとめる。
 
 米国も同様の規制と法整備を始めており、日米欧の足並み揃った以上、巨大IT企業のこれ以上の肥大化は望めない。
 
 翻って中国はどうか。
 
 もともと、通信、金融、情報などのインフラが整備されておらず、その“未開”がIT化を推進、携帯電話の普及、スマホ決済サービス、ネット通販などがあっという間に普及、IT先進国となった。
 
 また、一党独裁による国家資本主義の強みで、規制はどのようにもかけられる。
 
 ネットは当局によって厳しく監視され、その国家管理を嫌って、グーグルを始めとして先進IT企業は撤退し、中国ではテンセント、バイドゥ、アリババなど独自のIT企業が急成長、GAFAと肩を並べている。
 
 今後、中国の巨大ITはGAFAを追いつき追い越し、現在は中国語圏の覇者でしかないが、一帯一路構想に組み込んだ国を中心に、顔認証とビッグデータと人工知能(AI)を組み合わせて、共通の国家管理体制を共有するのではないかといわれている。
 
 巨大IT企業が持つ膨大な情報は、ビッグデータのなかに“格納”されているが、その自由な持ち出しを日米欧が規制したのに対し、プライバシー無視の中国では、なんにでも使える。
 
 住所氏名年齢、思想信条に行動履歴、趣味嗜好に友人関係といった基礎情報をもとに、信用度は数値化され、結婚、就職、融資基準に利用され、顔認証でごまかしは効かず、罪を犯せばすぐに捕捉される。
 
 今や中国はそんな管理社会になっており、その管理システムの一部は、イラク、タイ、ミャンマー、ベトナムなどに輸出されている。
 
 後戻りができないと思われたグローバル化のなか、トランプ政権が中国の通信機器最大手のファーウェイとの取引を禁じたのは、ファーウェイが国家機密に接触するかどうかもさることながら、プライバシー無視の中国の国家戦略に、はっきりと「ノー」を突き付けたものだった。
 
 では、日本はどうするのか。――決済サービスにアリババのアリペイを使えば、やがて顔認証システムに組み込まれて中国のビッグデータに日本人のデータが納められる。
 
 それを可とせず、米の「ファーウェイ切り」に追従するのか、それとも独自に判断するのか。――日本政府の「令和の決断」が迫られている。【戌】

 

 

 

 

 

 


2019年7月19日配信「最後の総会屋・竹之内昌虎被告が関与した3つの恐喝事件の複雑すぎる背景」<事件>

 
警視庁(☚wikipedia)


 警視庁組織犯罪対策3課が、「3つの恐喝事件」を立て続けに手掛けている。
 
 最初は、「最後の総会屋」の異名を取る竹之内昌虎被告を、6月18日、暴力行為等違反行為で逮捕した。
 
 対立勢力の業者が、ネット情報誌『アクセス・ジャーナル』に情報提供、一方的な悪口を書かせているとして、「たいがいにせんとさらうぞ」「殺してしまうぞ」と、自分の親しい組幹部の名前を出して脅したというもので、7月9日に起訴された。
 
 次が、同じ『アクセス・ジャーナル』に掲載された水着キャンペーンガールの法廷証言を巡るもの。キャンペーンガールが、事務所社長に売春を斡旋され、ホテルのカラオケルームで30万円を積まれ、不動産会社社長に猥褻な行為をされそうになった一件(未遂)を詳しく証言、同誌はその尋問調書をもとに、昨年10月10日配信で報じた。
 
 報じられて困ったのは、投資用マンションを始め、手広く不動産事業を手掛けているA社の社長である。
 
 東京ドームに大きく広告を掲載、社名は知られているし、社会的地位も金融機関との取引もある。
 
 そこで「何とかなりませんか」と、頼ったのが、映画制作などを手掛ける「オールイン・エンターテインメント」(本社・港区六本木)の山田浩貴代表だった。
 
 山田代表は、各界に顔が広い同社幹部の松浦正親氏に対処を依頼。同氏が相談したのが竹之内被告だった。
 
 竹之内被告は、メディア関係者の紹介で『アクセス・ジャーナル』発行人の山岡俊介氏と会い、「未遂だし、下半身の話じゃないか」と、説得、実名をイニシャルにし、写真を外すことができた。
 
 この措置に反発したのが、そもそもこのスキャンダルを山岡氏に持ち込んだキャンペーンガール所属事務所の小林秀雄社長である。
 
「反社(反社会的勢力)を使ってネット記事をもみ消そうとしただろう。それを金融機関などにバラすぞ!」
 
 小林氏は、仲間の堀川嘉照氏とともに、昨年10月末、都内の飲食店に不動産会社社長を呼び出してこう恐喝、500万円を脅し取り、さらに2000万円を恐喝するつもりだったという。
 
 この順番でいくと、山田・松浦両氏は、依頼を受けてもみ消しに入り、成功した立場であり、それを逆手にとって、恐喝したのが小林、堀川の両氏である。
 
 ところが、組対3課は、7月12日までに山田・松浦、小林・・堀川の双方を同じ恐喝(未遂も含む)で逮捕した。
 
 小林・堀川の両容疑者が先(9日)で、山田、松浦容疑者が後(12日)になったのは、身柄確保に手間取っただけの差で、双方、不動産会社社長を脅したことに相違はない。
 
 被害社長が、組対3課に告訴状(あるいは被害届)を出しているからそうなったが、松浦容疑者は逮捕前、「頼まれてやった。1000万円は確かに受け取ったが、それは謝礼。証拠のメールもある」と、親しいメディア関係者に話し、ラインでの「謝礼メール」も公開していた。
 
 時系列で言えばこうなる。
 
『アクセス・ジャーナル』が実名報道(10月10日)→竹之内被告が山岡氏に接触してイニシャル化(10月25日まで)→不動産会社社長から松浦被告への感謝メール(10月26日)→不動産会社社長による松浦被告への慰労会(10月29日)→小林・堀川両容疑者による不動産会社社長への恐喝(10月30日、31日両日)
 
 目まぐるしく慌ただしいが、要は小林容疑者が美人局を仕掛け、それをネタにネット情報誌で揺さぶられ、「もみ消してやる」と持ちかけてきた方に1000万円、「反社を使ったな!」と、凄んだ方に500万円を脅し取られたという構図だ。
 
 1000万円が謝礼だったかどうか、など今後の捜査の進展、あるいは起訴された後の公判で明らかにされる部分は多い。
 
 単にネットの名前を消す、消さない、というだけでなく、芸能プロダクション特有のタレント引き抜き合戦や、さらには双方が絡む某株の仕手戦に対する思惑も絡んでいるという。
 
 確かに先鞭をつけたのは竹之内被告だが、「侠気を出して動いただけで、本人は深い背景も知らなかったし、1000万円の謝礼の中からカネが渡ったわけでもない」(竹之内被告の知人)という指摘もある。
 
 ある意味、組対3課は竹之内被告の「最後の総会屋」という“身分”をリード部分に使うことで事件化したともいえるわけで、関与の濃淡を無視して“主役”扱い⁉――総会屋はつくづく「損な仕事」になってしまったものである。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年7月17日配信<0510archives>「『Black Box』(伊藤詩織著・文藝春秋)が告発する司法の歪み」<事件>



 


 

 

 

 

 レイプ被害者として「顔出し告発」していた伊藤詩織さんが、10月18日、『ブラックボックス』(文藝春秋)を上梓した。
 
 今年5月、詩織さんは検察審査会に不起訴処分を受けて異議を申し立て、記者会見で経緯を説明した。
 
 その時も衝撃だったが、検察審査会での「不起訴相当」を受けて著した本書では、そうした会見などでは伝わらぬ思いが、時系列で詳細に語られ、一級のノンフィクションであると同時に、日本の司法システムに対する鋭い告発書にもなっている。
 
 圧巻は、「安倍晋三首相に最も近い記者」という評判の元TBS記者・山口敬之氏と、詩織さんにとって同氏に対する「顔を思い出したくもない加害者」であるという辛さを封印して、責任を追及するために行った交換メールの公開と、高輪署、警視庁捜査一課、そして検察との「山口氏の圧力」を感じながらの切迫した交渉だろう。
 
 率直に感じられるのは、詩織さんの強さである。
 
 それは5月時点の「顔出し会見」で証明されてはいたが、今回、明かされたジャーナリストを目指して欧米で学んだという経歴が、告発への動機を裏付けるとともに、そうした意志も強さも持っている人が、それでも「司法のカベ」に跳ね返されてしまった。
 
 強さは、レイプ犯を許さないという一貫した姿勢にあるが、その一方で、詩織さんの心は常に山口氏の“幻影”に怯えており、「魂の殺人」だというレイプが被害者に与える傷の深さに慄然とさせられる。
 
 それだけのプレッシャーを受けながら、これまでのレイプ被害者の大半が、「正体を晒しても何の得にもならない」と、勝訴しても自分の胸の内にしまい込むか、示談に応じて事件を封印するなか、詩織さんが実名告発し書籍まで発売したのは、個人的な恨みを晴らすのではなく、「私に起こったことが、あなたに、あるいはあなたの大切な人に降りかかってくるか、誰にも予測はできないのだ」(まえがきより)と、訴えたいからである。
 
 その告発するという行為の結果として、司法の“歪み”が露呈した。

 

bbc_01_20180701.png

                                                                      BBC公式HP
 

 

「よくある話だし、事件として捜査するのは難しいですよ」
 
 担当する高輪署のA氏が、最初に投げかけたのはこの言葉であり、詩織さんは「それはあまりに残酷な言葉だった」と、嘆く。
 
 以降、「今まで努力してきた君の人生が水の泡になる」と、被害届の提出を考え直すように説得するA氏を、むしろ詩織さんが引っ張る形で捜査は進み、山口氏の帰国を待って逮捕するところまで進展した。
 ところが、15年6月8日、成田空港に山口氏逮捕に出向いたA氏から「逮捕できません」という連絡が入る。
 
 理由を問うと「ストップをかけたのは警視庁のトップです」という返事。後に、それが中村格警視庁刑事部長(当時)であることが明らかになる。
 
 以降、所轄の高輪署から警視庁捜査一課に事件は移送され、A氏も担当検事も配置替えとなり、事件は封印の方向に向かう。
 
 捜査一課の捜査が、不起訴へ持っていくためのものであるのは、「なぜ逮捕状が出たのに逮捕しなかったのか」という詩織さんの問いかけに、「逮捕状は簡単に出ます」と断言。「社会的地位のある人は、居所がはっきりしているし、家族や関係者もいて逃走の恐れがない。だから、逮捕の必要がないのです」と、いってのけた捜査一課幹部の言葉で明らかだ。
 
 官邸から中村部長へと伝えられたことで発生した“忖度”は、捜査現場を動かして起訴には不十分な捜査内容となり、不起訴処分は出た。
 
 その証拠に沿って国民からくじで選抜される検察審査会の審査員が、検察官に誘導される形で事件性を審査すれば、「不起訴相当」となるのも無理はない。
 
 司法は、そのシステムを熟知し、方向性を変えうる力のある人間が操作すれば、簡単に歪むものである。
 
 レイプが行われたとされる15年4月4日以降、2年半の歳月をかけて詩織さんが著した『ブラックボックス』で、我々が読み取るべきは、レイプ被害の傷跡の大きさとともに、それを見逃してしまった司法システムの検証であろう。【午】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年7月11日配信「本誌既報のKAZMAXを文春オンラインが追撃で不正を暴露、金商法違反での摘発はこれからだ⁉」<事件>

 
危うしKAZMAX

 

 KAZMAXという投資顧問がいることを、株好きの50代以上の投資家は、ほとんど知らない。
 
 本名・吉澤和良で1989年生まれの30歳。月額3万円のオンライン投資サロンを経営、投資の世界では、「ビットコインの暴落を予言した天才トレーダー」であり仮装通貨の人だが、株式ではまだ無名だ。
 
 本誌は、オンライン投資サロンを経営、またたく間に4000人の会員を集め、月額1億2000万円の収入を手に入れ、資産50億円を豪語していた頃のKAZMAXの正体を、本紙は昨年10月4日付配信記事で触れた。
 
 もともとは、「情報商材屋」と呼ばれる、カネ儲けの手口をネット上で教えると称し、会費などを取って自分だけが儲ける怪しげな錬金術師で、「秒速で稼ぐ」と称した与沢翼が有名だが、およそモラルの欠片もない。
 
 仮想通貨だけでなく、株の世界でも1日20時間、チャートを見て値動きを研究、「人間心理の集合体」から学び到達したのが、「三尊天井というチャート分析の世界」というのだから、クラシックでいかにも底が浅い。
 
 そんな人間でも月に「1億2000万円」である。
 
 投資環境の急激な変化であり、それを映すのがKAZMAXだが、6月20配信の文春オンラインで改めて批判された。
 
「資産50億円トレーダー・KAZMAX氏の手口を元側近が告発 サロン生を食い物に」というタイトルで、通常、オンラインは『週刊文春』本誌と連動するが、この記事はオンライン配信のみ。このあたりに週刊誌読者層の高齢化と、カネ儲けを含む雑多な情報を欲しがるかつての読者が、ネットに移行したことを表している。
 
 側近が、LINEのチャットを公開しながら手口を明かすのだから、「騙しのテクニック」は、具体的、かつ明快だ。
 
 ただし、その手口も三尊天井同様、意外に古典的だ。
 
 事前に仕込んでおいて、「買い」と「売り」を誘い、一定方向に誘導する前に仕込み、高騰、暴落の前に、いち早く売り抜ける。――最も確実な儲け方であるのはいうまでもないが、これではサロン生への裏切りだ。
 
 もっと悪辣なのは、KAZMAX自身が含み損を抱えている局面である。
 
「ドテン(逆ポジションに切り替えること)」を利用した手法で「ドテンサロン砲」と名付けられており、一度、損切りしてから、逆のポジションを持った後に、「損切りしました」とオンラインサロンやツイッターでつぶやく。するとサロン生が追随、損切りするので、逆張りしているKAZMAXが持つポジションに動き、KAZMAXは、損を取り戻せる。
 
 顧客を利用して自分が儲ける――。悪徳投資顧問の典型で、株が仮想通貨に変わっても同じということだが、それをKAZMAXは、自分に近いものから優先順位をつけ、儲けさせていった。
 
 情報はLINEで流されるが、最初にサロン運営側にいる約10名に流され、その次に特別会員的な約40名がいて、その先にいるのが約4000人のサロン会員で、最後はフォロワー数約10万人に対するツィッターで、ツイッターに流れるのは、会員らが儲けた後の“カス情報”である。
 
 悪徳投資顧問であり、紛う事なき相場操縦である。
 
 仮想通貨が金融商品取引法に縛られていないので証券取引等監視委員会も放置しているが、いずれ取り締まりの対象になる。――そう文春オンラインも警告しているが、既に、KAZMAXは違法領域に突入している。
 
 文春オンラインは触れていないが、KAZMAXは「FIP投資顧問」という投資顧問業の会社を取得し、今年2月からは株式情報も発信している。
 
 同社は、既に、3月25日、金融庁から1カ月の業務停止処分と業務改善命令を受けているのだが、問題となったのは、―斗廚併実を巡る誤解を生じさせる表記、∩安緝修砲茲覯饉匯饂困了篥流用、の二点である。
 
 KAXMAXが購入する前からロクな会社でなかったのは、△陵由から明らかだが、投資助言者となったKAZMAXは、業務停止命令を受ける前の時点で、ファンクラブ運営などの「SKIYAKI」(マザーズ)、インテリアなどの「五洋インテックス」(ジャスダック)などの株式情報をサロン生に発信している。
 
 その行為に仮想通貨の時のような株価操縦はなかったのか――。証券監視委は即刻、調査に乗り出すべきであろう。【丑】

 

 

 

 

 

 

 



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