2019年1月16日配信「仏司法が暴く東京五輪疑惑の焦点は電通と竹田恒和JOC会長の癒着!」<事件>

 
揺れる電通城⁉
(☚Wikipedia)

 

 

 日本の検察が、仏国有企業のルノーCEOのカルロス・ゴーン被告を取り調べしている絶妙なタイミングで、仏司法当局が、東京五輪招致における贈賄容疑で竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)会長の捜査を本格化したことが明らかになった。

 実際は3年前から続いている捜査の一環で、仏検察当局の調べが予審判事の手に移り、起訴するかどうかの捜査を行うことになったものだが、ゴーン事件が、日産をルノー傘下にしたくない官邸(経産省)と日産と検察がスクラムを組んだ国策捜査なら、東京五輪の疑惑工作への捜査着手はその報復のカウンター捜査と連想されてもおかしくはない。

 「ゴーン事件と偶々、タイミングが重なっただけ」(仏紙記者)というのだが、階級社会の仏で「エリート仲間」のゴーン容疑者を突如、逮捕し、長期勾留する日本司法への対抗意識がないといえばウソになる。

 事件は16年5月、英ガーディアン紙の報道で明らかとなり、仏司法当局が事実を認め、国会でも取り上げられたが、その概略は、東京五輪招致委員会が、国際オリンピック委員会(IOC)委員でスポーツ界に影響力のあるラミン・ディアク国際陸上競技連盟(IAAF)に、「東京支持」を取りまとめてもらおうと、2回に分けて180万ユーロ(約2億2000万円)を振り込んだというものである。

 時期は最初が13年7月で、次が13年10月。招致決定は13年9月なので、最初が手付金、次が成功報酬と読める。振り込みの口座はシンガポールのブラック・タイディングス(BT)代表のイアン・タン氏だった。

 疑惑発覚時、竹田氏は「『電通』からの推薦でBT社に決まったが、私は選定などに関与していない。しかし、正当なコンサルタント費用だった」と説明、外部の調査委員会の報告書もそうまとめられていた。

 仏では、そうした弁明は通らず、調査委員会の報告書も“お手盛り”だとして捜査が継続していたわけだが、この事件の解明に欠かせないのが電通の役割である。

 「BT社を推薦したのが電通」という竹田氏の説明だが、そんなアドバイザー的なものではない。五輪招致の主体は招致委員会で、その理事長が竹田氏なので「竹田疑惑」となっているが、実態は「電通」が仕掛け、電通人脈のなかで行われた工作であり、「電通疑惑」というのが相応しい。

 その黒幕は、電通元専務で世界のスポーツ界に幅広い人脈を持ち、慶応大学の先輩として竹田氏をプライベートでは「カズ」と呼び捨てにする高橋治之氏である。

 同氏は、バブル紳士として名を馳せた高橋治則氏(故人)の実兄で、かつては「治則氏の兄」という存在だったが、30代の頃から数々の国際大会の招致を手掛け、スポーツ界では知らぬ者のない実力者だ。

 「電通」が、国際的なスポーツイベントで力を発揮するのは、アディダス創業家の故ホルスト・ダスラー氏とともに設立した「インターナショナル・スポーツ&レジャー」(ISL)で、そのノウハウを学んだからである。

 だが「ISL」は放漫経営とダスラー氏の急逝もあって01年に倒産。それまでに経営方針の違いからISL株を売却していた「電通」だが、業務の引き継ぎのためもあってIOCのあるスイスに、子会社からの出資で「アスレチック・マネジメント&サービシズ(AMS)」を設立する。

 実は、東京五輪招致疑惑の発覚は、国際陸連のドーピング疑惑(ロシア選手にドーピングを見逃す見返りに金銭を要求)を捜査していた仏捜査当局が、ディアク会長父子が利用した口座を見つけたことだった。

 それがBT社のシンガポール口座で、そこを洗っているうちに日本の招致委員会からの180万ユーロの振り込みが発見され、「これは賄賂ではないか?」と、なった。

 代表のイアン・タン氏は「AMS」が雇用するコンサルタントで、「電通」と「IAAF」は、独占マーケティング契約を結んでいる。

 つまり、国際スポーツイベントの表も裏も知る「電通」が、ペーパーカンパニーの「BT」を使ってディアク父子に工作したと疑われるのも無理からぬことである。

 そして、その招致委員会の理事長で、最終決定責任者が竹田氏。その竹田氏と公私ともに親しく意見を言える立場が高橋氏。――どこから見ても「電通疑惑」なのである。

 「スポーツの祭典」、「平和の祭典」と美しい言葉で形容される五輪が、招致を巡ってカネまみれであることを知らない人はいない。

 今回は「約2億2000万円」――ほんの一部が露呈したに過ぎないが、BTとはヒンドゥー語で「黒いカネの洗浄」を意味するという。――むしろ暴かれるのが遅すぎたと言えるのでは…。【亥】

 

 

 

 

 

 

 


2019年1月8日配信「日産事件、ゴーン再逮捕は吉か凶か?――地検特捜部70年の盛衰史」<事件>


 裁判所の思いがけない“造反"にあって、カルロス・ゴーン被告が保釈されそうになった12月21日、東京地検特捜部は特別背任容疑での再逮捕、という“荒技”を繰り出した。

 最初の有価証券報告書への役員報酬の不記載と同じように、いかにゴーン容疑者が「日産自動車」を“食い物”にしたかという検察のリークをもとにしたマスコミ報道が連日のように続いている。

 私的な投資で発生した評価損18億5000万円を自身の資産管理会社から日産に付け替えたうえ、その際に“世話”になったサウジアラビアの知人に、「委託費」などの名目で1479万ドル(現在のレートで約16億円)を振り込ませた――。

 確かに、露骨な特別背任行為である。

 報道によれば「海外の連結子会社の中東日産から、業務委託費など偽装しやすい名目にして、3〜4億円ずつ分散して送金した」という。

 だが、ゴーン容疑者は、相変わらず強気に容疑を否認。「損失の付け替えでは日産に実害は出ておらず、知人への送金はトラブル解決などのために業務委託をしていた」と、主張している。

 特捜検察には捜査権と公訴権がある。

 自らが逮捕した容疑者は、自らの手で起訴するのは当然のこと。公判では、金融商品取引法違反(有価証券報告書の不記載)と、会社法違反(特別背任)の二つで裁かれるが、合法にこだわり、部下などにそう指示したハズの「ゴーンのカベ」を突破できるのか。

 「不記載」についてゴーン被告は、弁護士のグレッグ・ケリー被告や、やはり弁護士で今回は司法取引で敵に回ったハリ・ナダ専務執行役に、しつこく「合法的にやれ」と命じていた。

 おそらく今回も同じだろうが、08年のリーマンショック後の付け替えと09〜12年にかけての振り込みが、直接、つながる証拠はない。

 ブラジル、フランス、レバノンと3ヵ国の国籍を持ち、紛争地帯レバノンで大学までを過ごしたゴーン容疑者は、違法が身を滅ぼすことは百も承知。合法の仕掛けは怠りなくやっているに違いない。

 今回、スキーム作りに関わったのが、司法取引に応じた二人のウチのひとりで、秘書室元幹部であることが特捜部の“強み”だが、この容疑には、「自己または第三者の利益を図る目的」を立証しなければならないという高いハードルがある。

 加えて、サウジアラビア人を共犯にしなければならないが、「資産家の王族」という人物の捜査などできるのか。

 実質的に初めての「司法取引案件」となったことで、検察に失敗は許されない。

 万一、戦いに敗れれば、ゴーンの逆襲とそれに乗るルノーの攻勢にあい、日産経営陣は追い詰められ、それは日本の国益に沿わないばかりか、今後の司法取引を利用した捜査に重大な影響を及ぼす。

 それが、一度は諦めた「特別背任での逮捕」を復活させた理由である。

 特捜部は、マスコミを引き連れて、世論をリードしながら自分たちの思い通りの決着を目指すかつての唯我独尊組織に“先祖返り”した。

 そうした姿勢が吉と出るか凶と出るか――。

 2018年は、特捜部誕生から70年目の年だった。

 旧日本軍の不正を取り締まる陰退蔵事件捜査部として47年11月に発足。昭電疑獄、炭管疑獄などの摘発を経て存在価値を認められ、49年5月、東京地検特捜部となる。

 そこからは、政官財の不正摘発を任務とするだけに、浮沈の連続で勢いよく捜査着手し、国民の喝采を浴びるかと思えば、調子に乗って突き進み、政界からの逆襲、無理な捜査への国民的批判を浴びて失速する。

 戦後の混乱期、政治家の連続摘発などで恐れられる存在となり、54年、造船会社からの賄賂を多数の政治家が受け取っていた造船疑獄では、佐藤栄作・自民党幹事長の逮捕許諾請求を出した段階で、法務大臣が指揮権を発動、事件は潰された。

 そこから復活を遂げ、76年、「今太閤」といわれた実力者の田中角栄元首相を逮捕したロッキード事件では、「闇将軍」となった角栄元首相が、法相を自派閥で独占、以降10年、「検察冬の時代」に突入した。

 85年、「闇将軍」が脳梗塞に倒れてから、政界捜査が復活、砂利船汚職、撚糸工連事件などを経て、「政・官・財・マスコミ」を未公開株で汚染していたリクルート事件に着手、喝采を浴びた。

 以降、特捜部は「黄金期」を迎えたものの、98年、総会屋事件を機に、旧大蔵省と日本銀行の官僚たちを接待容疑で逮捕(大蔵・日銀接待汚職事件)、「接待は潤滑油で慣行。特捜部はやり過ぎだ」という批判を浴び、しばらく小休止に入った。

 捜査手法の見直し、特捜検事のローテーション人事などもあり、全体に捜査力の衰えを指摘されるようになった09年頃から、大阪地検と東京地検のそれぞれ特捜部が、特捜弱体化の声に反発するように“無理筋”の案件を手掛けるようになり、いずれも失敗した。

 「西」が厚労省局長を狙った村木厚子事件であり、「東」が小沢一郎・旧民主党幹事長を狙った陸山会事件である。

 なかでも大阪地検特捜部は、証拠資料まで改ざんしていたことが発覚、特捜部長以下が逮捕された。

 以降、「厳冬期」といわれる状況となったが、その陰で検察幹部が腐心していたのが、新しい捜査手法の司法取引を獲得するための刑事訴訟法の改正だった。

 ゴーン事件の実体は、「ルノー」に「日産」を併合させないという国策捜査であり、グローバル化のなか海外要人でも逮捕するという意気込みを見せた捜査であり、司法取引を使った絶対に負けられない捜査事例の第1号である。

 掛かっているのは71年目に入った特捜部の意地と名誉であり、存在価値である。

 

 はてさて賽の目はどちらに出るか?――吉と出て当然、凶と出れば地獄である。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年12月20日配信「“反社スーパー玉手”を買収⁉――“エッグ・キング”伊勢彦信イセ食品社長の迂闊!」<事件>

 

 黄色い外観の派手な電飾で知られた「スーパー玉出」の創業者逮捕が、鶏卵生産トップの「イセ食品」や、同社に出資する「豊田通商」のコンプライアンス問題にまで発展、今後の動静が注目されている。

 大阪府警は12月3日、「スーパー玉出」創業者の前田託次容疑者(74)が、飛田新地の「売春宿」として使われている店舗の賃料を、指定暴力団山口組系極心連合会幹部などから受け取っていたという組織犯罪処罰法違反容疑で逮捕した。(☛罰金30万円)

 前田容疑者と反社の関係は、関西ではよく知られたところで、過去に外国人不法就労で問題になったこともあるし、不動産を巡る怪しい取引に、前田容疑者の名が指摘されることも少なくなかった。

 だが、「スーパー玉出」自体が、今回の事件で、直接、影響を受けることはなかった。

 今年7月、営業権を「イセ食品」の関連会社に譲渡していたからだ。

 45店舗の営業権総額は約50億円。不動産は、そのまま前田容疑者の関係会社が保有するものの、「反社スーパー」という“汚名”は免れた。

 逆にいえば、最良のタイミングで売り抜けた⁉わけだが、焦ったのは「イセ食品」である。

 同社は、創業100年を超える老舗で、売上高は471億円。「森のたまご」というブランド名で知られ、北米など海外でも事業展開、伊勢彦信代表「エッグ・キング」と呼ばれている。

 「前田逮捕」を受けて、「イセ食品」には問い合わせが殺到、急遽、ホームページで関係を否定した。

 <株式会社アイセ・リアリティーが設立した株式会社フライフィッシュがスーパー玉出のスーパー事業を譲り受けた件に関して、当社は株式会社アイセ・リアリティーと何らの情報共有を行なっておらず、方針決定にも全く関与しておりません>

 確かに「アイセ社」は、伊勢氏が全額出資する不動産会社。スーパー事業と鶏卵事業を分けるために、「アイセ社」が35%を出資、他の卸売業者や運送業者などからの出資を得て、「フライフィッシュ」を設立した。

 会社法上は完全な別会社だが、伊勢氏が経営に関与しており、広い意味ではイセ食品グループだろう。

 また、「イセ食品」とかねてより業務提携するなど親しかった「豊田通商」が、今年4月の時点で「イセ食品」に資本参加、社外取締役を送り込んでいる。

 飽和状態の国内市場から、東南アジア、インド、中国などに販路を広げたい「イセ食品」は、トヨタグループの商社部門である「豊田通商」の総合力に期待した。

 安売りスーパーの買収とトヨタグループとの連携――伊勢氏が、前向きな事業意欲を見せて、半年も経たずに反社との関係が表面化。前田容疑者の所有物件で営業を続けているという意味では“反社つながり”であり、トヨタグループまでその“輪”のなかに入れ込んでおり、早急の対策に迫られている。

 それにしても驚かされるのは、伊勢氏の89歳を迎えてなお衰えぬ事業意欲である。

 富山県出身で、農業高校を卒業後、父親が創業した「伊勢養鶏園」に入り、育種改良の技術者だった父のもとで養鶏を学ぶ。

 伊勢氏は、その小規模事業をアメリカの養鶏業を取り入れて大規模展開、グループ40数社の今の規模にした。

 一方で、伊勢氏は日本有数の美術品収集家として知られ、これまでに1000億円以上を投じたという。

 印象派絵画の一大コレクターで、尾形光琳によって大成した琳派の絵画、中国陶磁器、アール・ヌーボーなどのガラス器などでも日本屈指のレベル。所有するのはイセ文化基金だが、コレクションの収集意欲にも衰えはない。

 卒寿を迎えても意欲満々のワンマン経営者に意見する人などいないが、「スーパー玉出」の買収には、前田容疑者の評判もあり、社内に反対意見は少なくなかった。

 それを押しての買収だけに、「個人出資」の形を取ったが、「イセ食品」とトヨタグループにコンプラ問題を発生させてしまったのは痛恨の極みであろう。

 お節介ながら、いくら元気溌溂とはいえ、今回の“事件”は後継へのバトンタッチを考えるべき時期に来ていることを暗示する予兆なのでは…。【辰】

 

 

 

 

 

 

 


2018年12月15日配信「悪夢再び!?――五輪選手村『HARUMI FLAG』大量売却で始まる不動産大暴落の恐れ!」<事件>

五輪選手村用地


 東京五輪選手村の跡地再開発の名称が、「HARUMI FLAG」に決まり、来年5月から売り出される。

 選手ら1万8000人が宿泊する施設は、そのまま高層50階2棟を始めとするマンション群に生まれ変わる。

 5632戸の新しい街が晴海に誕生するわけだが、そのうち分譲4145戸分の安値売却が、高騰を続けてきたマンション市況を冷やすきっかけになるといわれている。

 「都内では新築マンションの坪単価が350万円を超え、一般のサラリーマンには手が出せない水準になってきています。そうした市況の情勢と、新築ではあっても二次使用という現実などもあって、HARUMI FLAGの坪単価は250万円程度に設定されるようです。この3割引が、マンション相場の下落を誘因、不動産相場全体の暴落を引き起こすことになりそうです」(大手不動産幹部)

 アベノミクスが、景気を下支えし、雇用を改善、株価を右肩上がりにした効果は否定できない。

 ただ、そのカネ余りが様々な歪みを生じさせたのも事実で、そのうちのひとつが、少子化のなか将来の住宅過多を折り込まないマンション建設ブームだった。

 首都圏のマンション価格は、02年の約4000万円を底値に上げ始め、15年には5500万円を超え、18年に入ると、少し条件の良いマンションなら7000万円を超えた。

 五輪需要などで土地代も建設資材も高騰したのが原因で、その悪材料をアベノミクスが薄め、購入意欲を継続させた。

 だが、今後、人口が減少、空き家が増えて中古賃貸マンションの価格相場が崩れるのが明白なのに、一般勤労世帯がローンが組めないようなマンションブームがいつまでも続くわけはない。

 「東京五輪終了後の20年がバブル崩壊の年になる」というのが、マンション業界の常識。「消費税が10%になる前に」と、19年10月の消費税アップを折り込んだ駆け込み需要を煽った反動も予想できる。

 それより前に、HALUMI FLAGの4000戸大量安値供給が、バブル崩壊の引き金を引くと見られている。

 湾岸一等地のファミリータイプ20坪が、約5000万円で売却されれば、相場を下方に大きく牽引することになるのは間違いない。

 しかも、下落はマンションだけでなく、不動産市場全体に及ぶ。

 他の分野でもアベノミクスの反作用が出始めており、それを覆す投資要因がない。

 「スルガ銀行」のシェアハウス騒動に代表されるアパート融資や、ソーシャルレンディング業界最大手の「maneoマーケット」の急成長などは、同じ「カネ余り」がもたらしたものである。

 しかし、明らかな逆回転が始まっている。

 シェアハウス騒動は、スルガ銀行固有のものではなく、地銀や信金が、サブリース業者と手を組んで投資家の需要を開拓、資金を捌きたいという思惑から始まっており、金融業界全体が抱える問題である。

 金融庁が態度を一転させ、投資家が目を覚ました以上、金融機関は融資を絞らざるを得ず、「レオパレス21」、「大東建託」などのサブリース業界は確実に冬の時代を迎える。

 業績不振の不動産業者の“駆け込み寺”となっているソーシャルレンディングも同様。「Maneoマーケット」への業務改善命令に見られるように、債務者保護を名目に劣悪な物件であることを隠し、高利をエサに資金を集めていたのがソーシャルレンディング業界であるのがバレた以上、新たな資金を得るのは難しい。

 結局、マンション、シェアハウス、アパートなどの建設ラッシュは、アベノミクスの生んだ“徒花”であり、バブルのなかに咲いた以上、いつかは終焉を迎える。

 新築マンションでその引き金になるのが五輪選手村だが、目端の利く投資家や業者は、既に不動産の売却に入っており、中国人が買い漁った利殖や民泊目当てのタワーマンションでは投げ売りが始まっている。

 実需に基づかないマネーゲームは終了。――待ち受けるのは、マンション、サブリース業者などの連続倒産という見たくない再びの悪夢である。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年12月11日配信<0510archives>「冗談千万?――官民ファンド『産業革新投資機構』の経営陣がノーリスクにもかかわらず1億円超の成功報酬を手にする理不尽」<政治>

 
剛腕⁉田中正明JIC社長


 役人に既得権を与えれば、決して手放さなさずに恒久化、権益をさらに膨らませて、所属省庁の貯金箱にする――。

 この“伝統”を、明確に伝えるのが、今年9月、官製ファンドの「産業革新機構」を継承した「産業革新投資機構」(JIC)だった。「JIC」は、役人が自己都合で存続させてきた「貯金箱」にして「実験場」である。

 しかも、所管する経済産業省は、スタートしたばかりの「JIC」の経営陣に成功報酬制度を導入する方針を明言、1億円超の報酬もあり得るという。

 「民間に引けを取らない報酬で、良い人材を確保したい」と、経産省幹部は説明しているが、原資は公的資金であり、身分は公務員に準ずる。

 つまり、「ノーリスク経営」で、それでいて「民間並み報酬」というのが理解できない。

 「JIC」の歴史を辿ってみよう。

 源流は、03年4月に発足の「産業再生機構」だった。

 本来、経営に失敗すれば、法に則って、整理されるのが事業会社の“定め”である。

 だが、有用な経営資源を持ちながら過大な債務を背負って倒産すれば、債権を抱えた金融機関も痛む。そこで、再生支援のために公的資金を注入する産業再生機構を立ち上げることで、金融機関を健全化するのが狙い、とされた。

 しかし、公的資金を破たん処理のために使うのは、あくまで例外措置として、5年の時限立法でスタート。07年、1年、前倒しで解散したものの、今度は、別名目で二つの組織を立ち上げた。

 ひとつが、地方経済の再生支援を目的とした「企業再生支援機構」であり、もうひとつがグローバルな環境に対応、世界に通用するベンチャー企業を育成するための「産業革新機構」で、ともに09年の設立である。

 本来、ベンチャー投資は数億、多くても数十億円単位で行なうものである。

 ところが、「産業革新機構」は2860億円の政府出資をもとに2兆円の融資枠でスタート。しかも設置期間は15年。規模も期間も破格。経産官僚が、自分たちの権益を広げるための組織にするのは明らかだった。

 実際、使い道はベンチャー投資にはほど遠く、融資枠の大半は、大企業の救済。「日の丸液晶」の「ジャパンディスプレイ」に2750億円、半導体の「ルネサスエレクトロニクス」に1383億円、「東芝メモリ」を2兆円で買収したファンドにも出資した。

 ちなみに、「企業再生支援機構」は、地方再生とは名ばかりで「日本航空」や携帯電話の「ウィルコム」といった大企業を支援、13年に「地域経済活性化支援機構」と名称変更のうえで存続している。

 「産業革新機構」の方は、ベンチャー投資という単一目的の看板を、幅広い出資対応に書き換えたが、新組織は、政府出資のファンドであり、実態はSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)である。

 ただ、一般の「SWF」が石油や天然ガスなどの資源収入を原資に運用して、将来世代の蓄えにするのに対し、「JIC」は経産官僚が机上の政策を、公的資金で実験、企業に国策を担わせるのが目的。それがド「国家官僚の役割」ということのようだが、それこそ余計なお世話である。

 本来、官僚がやるべきは、民間企業が新しい分野にチャレンジする時、その障壁となる規制を取り除き、スタートアップを手助けすることであり、金銭的には減税、補助金などの措置で、金融支援に意味はない

 なのに、政府出資は「産業革新機構」の倍で、投資枠が4兆円。しかも報酬は民間並みで1億円超。――こんなお手盛りが堂々と罷り通る国に、「産業革新」など生まれないことだけは確かである。【辰】

 

 

 

 

 

 


2018年12月7日配信「年末までに乗り越えられるか?――威信回復に燃える特捜部が挑むカルロス・ゴーン容疑者の“コスモポリタン障壁”⁉」<事件>

 

                                                          (wikipedia)

 

 

 日産をV字回復させたカルロス・ゴーン前会長は、小菅の東京拘置所でもタフなネゴシェーターぶりを見せつけているようだ。


 取り調べの検事を相手に、「金融商品取引法違反を伝えられる報酬の過少申告は、全て合法をグレッグ・ケリー前代表取締役に指示、そう処理されているので罪は犯していない」と、持論を展開しているという。

 特別背任や横領を指摘されている住居の私的利用、親族や家族への会社資金の流用なども、「合法」の説明がつくという。

 ゴーン容疑者は、ブラジルに生まれ、レバノンに育ち、フランスで教育を受け、日本で経営者としての才能を開花させた。

 いわばブラジル、レバノン、フランスに国籍を持つ多国籍ビジネスマンである。

 我が身を守る術が、カネと知識(法)であることを知り尽くしている。

 05年、ルノーCEOに就任、「ルノー・日産アライアンス(連合)」の頂点に上り詰めてからは、自分の力をグループに浸透させることに腐心した。

 経営的には「ルノー」からの政治圧力の排除であり、個人的には後継を育成せず、ナンバー2も置かずに「ルノー・日産アライアンス」の「帝王」として君臨した。

 国が15%を持つ国有企業で、雇用・景気のため、「ルノー」にさまざま注文をつけるフランス政府を交わしつつ、“天領”の「日産」では報酬を取りたいだけ取り、CEOオフィスを利用することで私物化を加速させた。

 CEOオフィスを管掌したのがケリー容疑者であり、その後任が、今回、司法取引に応じて、特捜部に全てを暴露したハリ・ナダ専務執行役である。

 二人はともに弁護士。確信犯として会社を私的に利用、得たいものを得る覚悟のゴーン容疑者だけに、「合法」には細心の注意を払う。

 だからCEOオフィスの長として、自分の税金問題や報酬、世界の住居、プライベートジェットを含む様々な経費などを扱う世話係のトップは、法律に明るい“忠臣”でなくてはならなかった。

 誤算は、ハリ・ナダ専務執行役が、ルノーの日産統合に舵を切ったゴーン容疑者に怒りを感じた日産プロパー幹部の、「ゴーンを放置すれば、やがてあなたも犯罪者」という“説得”に応じて検察と司法取引を結んだことだ。

 さらに、ハリ・ナダ専務執行役の部下として各種工作に直接、関わった大沼敏明元秘書室長が司法取引に加わって、告発の体制は万全となった。

 各種資料と数々の指示メールが提供され、オール日産が特捜部に協力するのだから障害は見当たらない、と思えた。

 だが、それは「誤算」だった。

 特捜部には司法取引は施行から2件目という経験の浅さがあり、ゴーン容疑者には強靱な神経と法的措置を施しているという自信があった。

 オランダのアムズテルダムに設立した子会社「ジーアキャピタルBV」が、タックスヘイブンに孫会社を設立、ブラジルとレバノンに20数億円でゴーンが私的に利用する家を購入した問題は、「海外で捜査が難しいうえに、『仕事でも使う』と主張され、物件的価値が毀損既存していなければ、特別背任に問うのは難しい」(捜査関係者)という。

 姉への年間10万ドルのコンサルタント料契約、プライベートジェットの私的利用、飲食・交通費などの家計へのつけ回しについても、「家族を犠牲にする24時間勤務のCEOには許容の範囲」と主張されれば、業務上横領という扱いは難しくなる。

 そのうえに、「年間10億円は、将来の受け取りにしていた」という「未記載の理由」については、「受取金額は確定していなかった」という理屈で、「確定しており記載すべきだった」という特捜部の見解に反対している。

 何が違法で、何が合法で、何がグレーなのか――ゴーン容疑者は、それに呆れるほどこだわり、手を打っている。

 「ジーア社」のように怪しいと思えば連結決算にせず、監査法人を別にしてグレーを堅持する。

 「未記載」が、金商法逃れであるのは明白だが、だから書式をひとつにせず、様々なパターンを想定、自筆サインを入れず、まるで後の捜査を想定していたかのように隙を見せない。。

 この「胆力と自信としたたかさ」は、国籍や民族にこだわらず、混乱と災いと支配を避け、税率に応じて住居を選ぶ。――すなわち「国境なきビジネスマン」であり、「どう生きれば得なのか」という”個人本位の哲学”から生まれたものである。

 だから、殊更「法」にはこだわるのである。

 大阪地検事件以来の「死んだふり」の8年を経て、その対価として得た司法取引を武器に、特捜部は「ゴーン逮捕」という大勝負で復活しようとしている。

 ただ、日本の検察の体質と個々の検事が抱える、「額に汗して働く人間たちの素朴な正義感を大切にする社会秩序を自分たちが守る」という「使命感」は変わらない。

 それは、堀江貴文、村上世彰両氏のような“小粒”な破壊者には通用したが、世界を股にかけるエスタブリッシュメントで、国籍を有する3ヶ国が“共闘”するゴーン容疑者には、なかなか通用しない。

 ゴーン容疑者が、「日産」という会社で展開していたのは、合法的にしつらえられた収奪の数々だった。

 しかし、木を見て森を見ないのでは、「悪を見過ごす」という意味で国を揺るがし、将来に禍根を残す。――どこかに立件への突破口はある。それが司法取引の強みのハズだ。

 ここで負けては、検察は再び“地獄”に落ちるのは必至である。

 

 12月10日に再逮捕して、起訴が大晦日直前。――それまでが、まさに正念場である。【亥】

 

 

 

 

 

 

 


2018年12月4日配信「『日産』から『仏産』になるのを阻止した日本が、これから仏から受ける逆襲」<事件>

 
カルロス・ゴーン元会長
(☚wikipedia)


 <日産からゴーン会長を追い出すための陰謀だったのではないか>

 

 仏大手紙『ル・モンド』は、カルロス・ゴーン日産前会長の逮捕を受けて、こう疑念を表明した。

 

 他の仏メディアの反応も同じようなもので、「ゴーン逮捕」の裏に、日産の陰謀があり、それを日本が国家として支えているという疑いを持っている。

 ゴーン逮捕に向けて動いたのは東京地検特捜部だが、特捜案件は、ほとんどが「国策」といっていい。

 数ある犯罪案件のなかから、わずか30数名の検事で構成される東京地検特捜部が事件を選択、捜査に乗り出すのだから、一罰百戒の効果があり、国益に沿い、国家秩序の維持に資するものでなくてはならない。

 今回、「日産」という大企業で「帝王」といっていい存在のゴーン容疑者が、自らの地位と権力を利用、会社を私物化、それが内部告発によって表面化した。

 「日産」の知名度と、日本を代表する企業で行なわれていた経営者犯罪を立件する意味を考えれば、特捜部が乗り出すのも無理はないが、今回はそれにとどまらない。

 ルノーCEOの地位に固執するゴーン容疑者は、深刻化する失業率向上のために、マクロン大統領が目論む「日産とルノーの経営統合」という将来計画を呑んだ。

 それが今年6月のルノー株主総会でCEOに再任する条件だったからだ。

 それを境に、「日産」の独立と「ルノー・日産・三菱自動車」の「緩やかな連合」がベストであるというゴーン容疑者の態度が変わった。

 再任がアナウンスされた今年2月15日以降は、「あらゆる選択肢を考えなければならない」と、口にするようになった。

 それを機に、「日産」もゴーン容疑者に対する態度を改めた。

 社内で内部告発の動きが始まり、会社に告発がなされ、それを受けて内部調査が始まり、背任・横領に当たるような証拠が発覚した。

 それをもとに経営陣が、経産省や検察に相談するようになったのは、今年5月頃からだという。

 その時点で、政官民の暗黙の了解事項ができた。――それが「ゴーン排除」である。

 政界関係者が内幕を明かす。

「『日産』は、売り上げ、利益、技術力や生産力など、あらゆる面で劣る『ルノー』の傘下に入ることなど認めたくなかった。経産省も同様で、技術移転を阻止する観点からも認められなかった。そうした官民の合致を受けて、検察は捜査に乗り出す方針を固め、経産官僚が仕切る官邸は、それを了承した」

 「日産」から「仏産」になるのを阻止する方針が固まった。

 もちろん、会議を開いての同意事項ではなく、「阿吽の呼吸」である。

 官邸を仕切るのは、安倍晋三首相が最も信頼を寄せる経産省出身の今井直哉秘書官。そして菅義偉官房長官が信頼して「法務・検察」を委ねているのが、黒川弘務法務事務次官である。

 ただ、体制固めは容易でも、ゴーン容疑者、グレッグ・ケリー容疑者らに指示を受けて罪を犯した社内の2人の「共謀者」らの口を割らせるのが難しい。

 だが、これも「司法取引」という道具を使うことで乗り越えることができた。

 6月から施行された司法取引で、免責を与えることによって、ケリー容疑者からの指示を受けて報酬を操作、契約書類などの作成に当たった担当者が全てを“自白”した。

 国内の犯罪なら、今後、立件に向けてどんな捜査になるのかは、ある程度、読める。

 だが、「仏産」に向けて動いたマクロン大統領を始めとする仏政府は、5割近くの株式を握っている「日産」が、このまま“逃走”するのを、到底、容認できない。

 その分、不確定要素だらけである。

 フランスから国を挙げてのありとあらゆる反撃が予想される。

 最初に、メディアを使ってゴーン捜査の非をなじり、次に、接見禁止で保釈を認めず、長期勾留の間に自白を迫る日本の「人質司法」の在り方を批判、早期保釈を求めよう。

 そうして事件が、日本の邪な思惑から発生したこと、ゴーン容疑者の人権を無視した捜査が続いているなど、刑事司法の“歪み”を指摘したうえで、経営的には大株主の立場を利用、役員を送り込んでの支配を画策、帳簿の閲覧などを通じて、“裏切り者”となった西川広人社長などのアラ探しをしたうえで、責任追及に走ることも考えられる。

 これから始まるのは日仏戦争である。

 

 前途は多難⁉――初戦に勝っただけで喜んでいられる話ではない。【卯】

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年11月27日配信「最後の“稼ぎ場”を迎えた『maneoグループ』の怪しい取引」<事件>

 
看板に偽りあり(☚同社HP)


 ソーシャルレンディング(SL)業界が、“奇妙”な活況を見せている。

 「スルガ銀行問題」などを機に、不動産業界全体が勢いを失うなか、不動産融資のプラットフォームを持つSLに物件情報が集まり、ファンドが次々に組成されている。

 「高値が続いていた不動産市場も、インバウンド、東京五輪と材料が出尽くして一服、銀行融資も出にくくなった。なかでもシェアハウス問題でサブリース業界は壊滅状態といっていい。そんな融資環境のなか、SLに期待が集まっている」(中堅不動産幹部)

 だが、SL業界が、実は危ない世界であることは、既にバレている。

 金融庁は、7月13日、業界最大手の「maneoマーケット」(東京都千代田区)に業務改善命令を出した。

 「maneo」のプラットフォームを使っていたSLの「グリーンインフラレンディング」は、親会社・「JCサービス」のいうままに資金を集め、それを「JCサービス」は自社の資金繰りなど好き勝手に使っていた。

 子会社「JC証券」を通じた細野豪志元環境相への5000万円融資はその一例で、それを「maneo」は見逃し、状況チェックより収益拡大を優先させていた。

 だが、投資家はそれでも集まる。

 SL業者がネットなどに打つ6〜10%の配当収入は、金利環境が厳しく、株や債権はもちろん仮想通貨市場まで冷え込むなか、魅力の投資商品である。

 不動産環境が厳しくなった昨今、信頼性を失ったSL業界が迎えた“奇妙”な活況とは、そういう意味である。

 しかし、高配当には高リスクが伴う。

 それを思い知らせる発表が、11月1日、「maneo」からあった。

 「約定利息の未回収」を発表するもので5件のファンドで総額約20億円の融資の利息が延滞。――経過報告によれば、事業者C社は、CU社に対して不動産担保融資を行なったものの、5月以降、CU社は利息の支払いをストップ。事業者C社は、以降、9月まで「maneo」に利息の支払いを継続してきたが、担保物件を売却しても回収の見込みはなく、利息の支払いを取りやめた。よって、延滞が発生したというものである。

 これが、物件を精査したうえでの「見込み違い」であれば「maneo」とC社である「maneo」の関連会社「リクレ」のファンド組成能力の低さと見通しの甘さは批判されるものの、責任は「リスクを取った投資家」にも着せられる。

 ところが、物件を調べると、それ以上の怪しさが浮上するのである。

 

 例えば、5件のファンドのなかの最大案件は、12億円を投じた小田急多摩川線五月台駅近くの病院跡地である。

 「CU社」は、「如月マネジメント」というファンドだが、問題の病院跡地は、山の上に建ち、土地面積は1万3400平方メートルだが、斜面の面積も含んでおり、単純に資産価値を弾けない。

 「老朽化のうえ地形は悪く、しかも山の上で不便。有効活用できる面積は、総面積の2割ぐらいなもの。時価数億円がいいところで、『maneo』が弾いた12億円は、いかにも高過ぎる」(地元不動産業者)

 その他の4物件も同じようなもので「如月マネジメント」の物件を、「maneo」と「リクレ」が異常に高く評価してSL案件として投資家を募り、資金を集めたとしか思えない。

 それ故、早々に利払いをストップ、延滞案件になったのではないか。

 もっといえば、まるで延滞となるのを想定していたような怪しさと言っても過言ではない。

 不動産融資環境の悪化でSL業者に持ち込まれる物件は多い。

 それを「maneo」が、最後の“稼ぎ場”と考え、いい加減なファンドを組成して資金を集めていたら、犯罪につながりかねない「危険なビジネス」に乗り出していることになるのだが…。【酉】

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年11月17日配信「レイプ疑惑の山口敬之氏の次はLGBT差別の小川榮太郎氏――安倍首相の周辺文化人が、次々に騒動を巻き起こす理由」<事件>

 


 今年のノーベル平和賞は、性的暴力の被害を訴える人権活動家のナディア・ムラドさん(25・イラク)と、性暴力被害者の治療を行なってきたデニ・ムクウェゲ医師(63・コンゴ民主共和国)に決った。

 世界的な「Me Too(私も)運動」の高まりを見るまでもなく、性に対する差別や暴力は、忌むべき事として企業、学校、家庭などあらゆるコミュニティから排除されている。

 その流れを象徴する受賞だったが、奇しくも日本では、それに逆行する言動の主たちが安倍晋三首相の周辺にいる。レイプ疑惑の山口敬之氏とレズビアン、ゲイなど性的少数者であるLGBT差別に対する擁護発言を行なった小川栄太郎氏である。

 『総理』(幻冬舎)などを著し、「安倍首相と最も親しいジャーナリスト」である元TBS記者の山口氏は、準強姦を行なったとして被害者の伊藤詩織さんから告訴された。

 刑事事件は不起訴となったものの、伊藤さんは『Black Box』(文藝春秋社)を著し、性的被害の傷跡の深さを訴えた。

 小川氏は、波紋を呼んだ杉田水脈代議士の「LBGTは生産性がない」という『新潮45』に掲載した論文を支持する形で、同誌10月号の「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」という特集に持論を寄稿したが、「痴漢擁護論を並列させた“とんでも論文”」として批判され、同誌休刊の一原因となった。

 『約束の日 安倍晋三私論』(幻冬舎)を著した小川氏もまた、安倍首相との近さで知られるが、山口、小川の両氏が、性差別に絡んで登場するのは、決して偶然ではない。

 もちろん、安倍首相に性差別意識があるという意味ではなく、揉み手をして最高権力者に近寄ってくる“手合い”は、自分も権力者になったように錯覚、強圧的な言動が目立つようになるということだ。

 それは、自分に同調する人間を重用する安倍政権の姿に重なってくる。

 政治も経済も、権力が長期化すると、側近、イエスマンで周辺を固めるが、安倍首相も3選が目に入った昨年あたりから、その傾向が強くなった。

 進展するグローバリズムと高度化するIT社会は、二極化を生み、その流れについていけない多数派を排外主義の保守派に追い込んでいった。

 その動きに「美しい国」「愛国」「自立防衛」「教育改革」「憲法改正」を掲げる安倍保守政治がマッチ、支持率は衰えない。

 その高支持率に支えられ、政治家も官僚も安倍首相を向き、安倍一強に加担。そこには小選挙区制や内閣人事局といった権力基盤を強固にする制度改革もあり、その結果、明治以降の憲政史上、最長政権となることが視野に入ってきた。

 安倍首相と最も親しいジャーナリスト、評論家である2人には、安倍氏が第一次安倍政権を放り出した後、不遇となった時代から安倍氏を支えてきたという自負がある。

 また、ジャーナリスト、評論家だけでは食えないという現実が、山口氏を「スパコン事件」を引き起こした斎藤元章・ぺジーコンピューティング代表の顧問職にし、小川氏を「反安倍」のメディアを追い込む「放送法遵守を求める視聴者の会」など安倍周辺ビジネスの“主”にした。

 安倍氏との距離感を縮めるためには、無理な論を展開する必要もある。

 小川氏が上梓した『徹底検証 森友・加計事件』(飛鳥新社)は、その典型だろう。

 <安倍晋三は『報道犯罪』の被害者である>という言葉から始まる同書は、客観性を顧慮せず、『朝日新聞』をはじめとするメディアや野党の批判が目的である。

 それは小川氏の“立ち位置”なので当然といえば当然なのだが、問題は「安倍夫妻が森友学園や加計学園から何らかの便宜供与を受けたか否か」ではなく、「安倍周辺に配慮する政治家や官僚の意思決定そのものに問題がある」という事件の本質に思い至っていないことだ。

 同様に、「安倍周辺者」の小川氏は、安倍保守政治に連なる改憲派の杉田氏を応援せざるを得ず、その言動は自分の存在を際立たせるために、より過激にならざるを得なかった。

 また、既に過去の人になった感のある山口氏だが、その後遺症は今なお続いている。

 不起訴になったものの捜査段階では逮捕寸前であり、ストップをかけたのは菅義偉官房長官の“忠臣”といわれる中村格・警視庁刑事部長(当時)だった。

 中村氏の「事件潰し(逮捕見送り)」が週刊誌に報じられ、「出世の道は絶たれた」と、言われたものだが、大方の予想を裏切って、今年9月の警察庁人事で官房長となり、警察庁長官コースに乗っていることを示した。

 山口氏と小川氏が起こした事件は、安倍一強の保守政治のなか、「安倍周辺者」が関与したという意味で、政権長期化が生んだ“驕り”と読むこともできる。

 それが世界的に忌むべき事象の「性差別」であることは、安倍首相も真摯に受け止めるべきだろう。【辰】

 

 

 

 

 

 

 


2018年11月15日配信「第1号案件は『愛媛県松山市・ご当地アイドル自殺訴訟』――新ビジネス・『リーガルファンディング』の功罪」<事件>

リーガルファンディングとは、

なんらかの問題を抱えていて、 訴訟などの解決に向けて動いているが活動資金が足りない!
と困っている人を、募金で支援するサービスです。

(☚リーガルファンデイングHP)


 愛媛県松山市を拠点とするアイドルグループ「愛の葉Girls(えのはガールズ)」のメンバーだった大本萌景(ほのか)さんの自殺は、10月12日、遺族が所属事務所などを相手に約9200万円の損害賠償請求訴訟を起こしたことにより、法廷でその原因が探られることになった。

 脚光を浴びるご当地アイドルに憧れ、中学生の時に夢を叶えてメンバー入り、今年1月からリーダーを務めていた16歳の女の子に何があったのか。なぜ自殺を選んでしまったのか――。

 このニュースが全国レベルで伝わったのは、訴訟を起こした遺族の母・幸栄さん(42)と、姉・可穂さん(19)が、前日の11日、東京で記者会見、事務所で繰り返されたというパワハラ、「辞めるなら1億円を払え」という社長のプレッシャー、約束だった高校への転学費用12万円を事務所が支払わなかったことなど、所属事務所「hプロジェクト」(愛媛県松山市)の非を訴えたことによる。

 ご当地アイドルの自殺は、ワイドショーなどで数多く取り上げられ、それが事務所を糾弾する方向に向かうのも無理はなかった。

 ただ、提訴から少し時間を置くことで、事務所にだけ責任を着せるには、些かの無理があることも見えてきた。

 例えば、「直接の自殺の引き金が12万円を貸さなかった事にある」という点についても、事務所によれば、「わずか12万円を貸さなかったのは、その前提となる“約束事”が萌景さんとの間にあり、それが守られなかったためで、貸す準備はしていた」という。

 それにワイドショーなどでは、「本来、高校の費用は、事務所ではなく、親が出すべきじゃないの?」といった声も上がるようになり、女性週刊誌のなかには、義父と萌景さんとの確執を伝えるものもあった。

 また、「1億円発言」については、事務所社長は否定。さらに「脱退したい」という萌景さんに、マネージャーが「次、また寝ぼけたことを言い出したらマジでブン殴る」と、LINEで伝えたパワハラ行為については、その返信はアッカンベーをした萌景さんの写真で、じゃれ合いの雰囲気が伝わってくるものだった。

 もちろん、萌景さんの気持ちにまで立ち入ることはできないが、9200万円という請求額はいかにも重く、その背後には遺族の側についた弁護団の思惑もありそうだ。

 海外と比べて、圧倒的に芸能事務所の力が強く、芸能人の権利等が守られていないことから、芸能人の側に立つ団体として「日本エンターティナーライツ協会」が設立された。

 「レイ法律事務所」(東京都文京区)内に事務所が置かれ、広報担当を務めるのは、テレビ出演などが多い著名弁護士で、和歌山の「紀州のドンファン死亡事件」で若妻の弁護を引き受けた佐藤大和氏である。

 そして、同協会が立ち上げたのが、日本初のクラウドファンディングで依頼者の救済を行なう一般社団法人「リーガルファンディング」で、この「ご当地アイドルのパワハラ自殺訴訟事案」が、その適用開始第1号。原告代理人には、佐藤氏ら5人の「日本エンターティナーライツ協会」共同代表が就いている。

 「リーガルファンディング」のホームページでは、訴訟費用を支援する人たちの総数と金額を掲載、立ち上げから2週間でその数は340人を超え、200万円近くが集まったが、当面の弁護費用は賄える金額である。

 弱い立場を守ろうとする弁護士たちの意欲は理解できるし、芸能事務所の力が圧倒的に強く、権利が認められない芸能人の劣悪な環境は事実である。

 ただ、その第一号案件を大きくスタートさせるために、「ご当地アイドルの自殺を大きく取り上げ、事務所の非をあげつらい、話題を呼ぶ1億円訴訟にフレームアップしているのではないか」という声も少なくない。

 「クラウドファンディングを利用した裁判費用の調達」といった形態は、フィンテックブームのなか、今後、ますます増えることが予想されるだけに、その“功罪”を考察しておく必要がありそうだ。【丑】

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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