2020年3月24日配信「コロナショックで未曾有の経済危機に求められる緊縮財政からの大転換」<政治>

 
安倍首相(wikipedia)

 

 コロナショックが世界経済を直撃、カネとモノの流れが止まり、今後、不況が長期化するのは避けられない。
 
 パンデミックは中国から欧州へ移ったとされるが、日本には世界と比較しても厳しい状況があり、経済でいえば最大級の不況が襲う可能性がある。
 
 それは、デフレ経済が好転しないなかでの消費増税によって、19年10〜12月の実質GDP成長率が、マイナス7・1%と壊滅的な打撃を受けている最中にコロナショックが襲ったことだ。
 
 しかも、じゃぶじゃぶの金融緩和を続けても好転しないデフレ(需要不足)のなか、野球、大相撲、サッカー、演劇、コンサート、学校、会食、飲み会、国内外の旅行など全てに自粛ムードが広がって、さらに需要は低下、経済は壊滅的だ。
 
 民間に需要がなければ政府が需要を創出するとともに、あらゆる政策的な救済手段を家計と企業に行わなければならない。
 
 約1・6兆円の緊急対応策第2弾では、とても対応できず、与野党ともに超大型の財政出動を第3弾の緊急対応策が必要なことでは一致している。
 
 自民党の「日本の未来を考える勉強会」は、積極財政論者の藤井聡京都大学教授(元内閣官房参与)を呼んで勉強会を実施、メンバーの安藤裕代議士は、「30兆円規模の補正予算案の編成や消費税の一時0%」といった、大胆な経済政策を求めた。
 
 国民民主党の玉木雄一郎代表は、国民への10万円給付、消費税5%への減税、事業者への事業損失補填などで30兆円規模の緊急経済対策を提案した。
 
 デフレ脱却、消費税5%を提言していたれいわ新選組や共産党も財政出動に異論はなく、安倍晋三首相も14日の会見で「必要かつ十分な経済財政政策を」と、明言した。
 
 放置すればGDPの10%は吹っ飛ぶといわれており、深刻さは日を追うごとに鮮明となり、飲食街の個人経営は既に、資金繰りに詰まる店が続出、給付が数ヵ月先の信用保証協会融資を求めるレベルではない。
 
 それだけに財政出動は当然で、リーマンショックや東日本大震災を上回る規模になるのも当然だが、必要なのは一過性に終わらせず、これを機に、財政健全化の発想を転換、財政収支のバランスを取る「プライマリーバランス(PB)規律」を見直すべきだろう。
 
 必要なときには必要なだけの財政出動を行って、国が経済を支えるべきなのに、不況の20年の間、政府支出は一向に増えず、制度はきしみ国民は2極化のなかに沈んでいる。
 
 政府がムダな歳出を削ろうという発想は当然だが、「事業仕分け」に代表されるように、政治家のパフォーマンスに利用されることが多い。
 
 実のところ日本の公務員数は少なく、雇用者全体に占める政府雇用者比率は5・9%とOECD加盟国(平均は18・1%)のなかで最低だ。
 
 今回のコロナショックで、ダイヤモンド・プリンセス号での感染者急増など厚労省の不手際を指摘する向きは多いが、この30年、公務部門の非正規化や民間委託が進められた結果、厚労省の53%の公務員が非正規であるという現状を押さえておく必要がある。
 
 感染症対策部門の貧困さも同様で、米国の専門家を集めた疾病対策センター(CDC)の年間予算が8000億円で職員数が1万4000人。それに対して日本は、国立感染症研究所の人員が300名で予算が65億円だ。
 
 評判の悪い「全国一斉休校」は、専門家の意見を聞かずに、安倍首相と今井尚哉首相補佐官の2人で決めたと言われており、2人の傲慢さはあるにせよ、その程度の危機管理対応しか出来ない陣容なのである。
 
 その根幹にあるのが、緊縮財政がもたらした政府の予算と陣容の縮小で、それが日本経済を浮揚させず、明るい展望を与えず、デフレに沈めさせた。
 
 今、消費増税に加えてコロナショックが発生、日本経済の奈落の底が見えている以上、PB規律の呪縛を解き、緊縮財政からの大転換を図る時期に来ているのではなかろうか。【🐕】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 


2020年3月20日配信「官邸による、官邸のための黒川人事に反抗した検察が河井克行・安里夫妻に続いて菅原一秀元経産相捜査に着手?」<政治>

 
東京地検(☚wikipedia)

 

 

 検察が、官邸に逆らうように遠慮会釈のない捜査を展開している。
 
 広島地検は、3月3日、公職選挙法違反の疑いで河井案里参院議員と河井克行元法相の秘書や陣営幹部を逮捕、両議員の参考人聴取も行った。
 
 驚かされるのは、そのスピード感である。
 
 昨年7月の参院選で初当選を果たした案里議員の陣営に、選挙カーに乗るウグイス嬢に対し、法定上限の2倍の日当を払った疑いがある、と『週刊文春』電子版の「文春オンライン」が昨年10月に報じ、10月31日には克行氏が法相を辞任した。
 
 その直後、市民団体メンバーが公職選挙法違反(買収)容疑で広島地検に刑事告発。これを受理した同地検は、12月に入ると、車上運動員らへの任意の事情聴取を開始した。
 
 そのうえで、国会開会前の1月15日、広島市の案里、克行両氏の自宅や事務所に家宅捜索に入った。
 
 これに危機感を持ったのが官邸である。
 
「確かに、違反行為は明白だったかも知れない。しかし、運動員の日当上乗せは誰でもやっていること。微罪というしかなく、そんな罪で国会開会の直前、しかも秋元司代議士がカジノ事件で逮捕され、桜疑惑で安倍首相が抗議されている最中に、わざわざ家宅捜索までやる必要があるのか、と官邸は怒った」(ベテラン司法記者)
 
 政治家への捜査着手は検事総長の承認事項であり、総長を始め検察幹部から官邸への通達が慣例である。
 
 それを拒否できるのは、法相だけで検事総長に対する指揮権発動が認められているが、権力の乱用を批判されるのは必至で、過去に使われたのは、70年近く前の造船疑獄の一度しかない。
 
 だから認めるしかなかったのだが、官邸には「稲田伸夫検事総長ではダメだ」という声が広がった。
 
 それが、悪評高い1月31日の黒川弘務東京高検検事長の定年を半年、延長するという閣議決定である。
 
 検察が目論んでいたのは、官邸と近いナンバー2の黒川検事長が2月8日で定年を迎えるので勇退してもらい、その後任に「検察のエース」の林真琴名古屋高検検事長を当て、稲田総長が8月までに勇退、林体制をスタートさせることだった。
 
 だが、河井夫妻への強制捜査は、安倍首相と菅義偉官房長官の双方にケンカを売ることになった。
 
 自民党が参院選で案里氏に1億5000万円という途方もないカネを投じたのは、対立候補の溝手顕正元防災相が、かつて安倍首相を“裏切った”からである。
 
 そして克行氏は、菅氏を囲む「向日葵の会」の代表で、菅グループの中心だった。
 
 それが、人事権を持つ官邸が「定年延長」という“禁じ手”に出た理由だが、それに対して検察は意地を見せた。
 
 立件へ向けて怯むことなく河井陣営の中心メンバーを逮捕、夫妻の参考人聴取も行った。
 
 秘書ら逮捕の3日夜、広島地検は夫妻が滞在していたホテルを訪れ、携帯電話を押収、その際、抵抗する夫妻と揉み合いになったが、検察は「身体検査令状」を出して、つまりボディチェックして押収したのだという。
 
「河井案里議員が素っ裸にされていた!?」と、「日刊ゲンダイ」は扇情的な見出しでこれを報じたが、それだけ強い意欲の表れだ。
 
 さらに事件は、河井夫妻に留まらない。
 
 東京地検特捜部は、既にカニやメロンなどを選挙区内の有権者に贈っていたとして問題になっていた菅原一秀前経産相が、公設秘書に命じて香典を贈っていた容疑で、公職選挙法違反捜査に入っている。
 
 また、秘書へのパワハラや秘書給与の上納疑惑など、菅原氏も疑惑は満載。森本宏特捜部長は、黒川検事長と「意外に仲がいい」(検察関係者)ことで知られ、それだけに菅原氏の立件に意欲を燃やしているという。
 
「森本氏は、官邸人事が検察の独立性を歪めたという危機感を持っているし、事件を着実に仕上げることが、『黒川検事長は官邸の言いなりではない』ことを証明することになると、執念を燃やしている」(同)
 
「過ぎたるは及ばざるが如し」――検察を従わせようとした官邸の「黒川人事」が、逆に検察に火をつけ、「反目」に回らせてしまった?ようである。【🐇】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2020年3月14日配信「2極化拡大、デフレ進行下の消費税アップと悪材料が重なるなかでのコロナショックで日本経済は奈落の底へ?」<事件>

                                                                           猛威を奮うコロナ君

 

 

 株は暴落、為替は円高――「コロナショック」の先行きが見えない。
 
 新型コロナウイルスに感染した患者数の増加に気を揉む段階は終え、教育、スポーツ、イベントなどは停止若しくは無観客、テレワークや時差出勤、店舗の休業などが日常化、社会・経済活動全体を収縮させ、中国発の暗雲は厚みを増しつつ世界を覆っている。
 
 日本への影響は深刻だ。
 
 昨年10月、消費税をアップして10%としたが、その結果、購買意欲は冷え込んで、昨年10〜12月の実質GDP成長率は前年同期比マイナス6・3%だった。
 
 黒田東彦日銀総裁が、いくら異次元の金融緩和を進めてもインフレ目標の2%には到達せず、デフレ状態を脱却できない日本で、消費税をアップするのは間違いなく悪手。そこに、コロナショックが重なるのだから打撃は計り知れない。
 
 加えて、デフレ下の日本で2極化が進行している。
 
 まず、労働分配率の低下が止まらない。
 
 企業の利益のうち労働者の取り分を示す労働分配率は、40年前に65%前後だったものが、今は55%近く。ロボットやITを始めとするテクノロジーの進歩が、労働の価値を減少させ、加えて労働組合などの権利擁護組織が弱体化、資本家は利益を投資と内部留保に回すようになった。
 
 さらに情報化社会の利益を総取りする、GAFAグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が、巨大プラットフォーマーとして小売りからメディアに至る利用者を競わせて低価格(デフレ)を進行させ、ウーバーなどのアプリ利用の新興企業は、「自由な労働」を謳いつつ、非正規雇用者から利益を収奪するマシーンと化している。
 
 そんな日本をコロナショックが襲った。
 
 歌舞伎、宝塚、演劇、コンサートは中止され、プロ野球、大相撲、プロバスケットボール、ラグビートップリーグは、無観客試合、もしくは延期に追い込まれた。
 
 自粛要請は安倍晋三首相だが、北海道を始めとする緊急事態宣言は首長が出しており、観光客の減少と合わせ、外に出ない、ものを買わない、カネを使わない生活が浸透、サービス業は壊滅状態である。
 
 加えて、世界経済の牽引車にして消費のリード役だった中国が打撃を受け、今年1〜3月は、マイナス成長に落ち込むという観測も出ている。
 
 日本の製造業の多くは中国とサプライチェーン(供給網)によって結ばれており、急激な落ち込みは避けられない。
 
 「影響は東日本大震災以上で、GDP3兆円の減少」と、予測されているが、この先の見えない落ち込みが、5月まで続けば東京五輪の1年延期、もしくは中止は確実で、影響はさらに甚大だ。
 
 東京、京都などで五輪景気を当て込んで、APAホテル、ダイワロイネット、ドーミインなどのホテルチェーンが、供給過多といっていいほど増加。それによって90年代初めのバブル期を上回る五輪バブルとなったが、五輪が無ければインバウンドブームは完璧に去り、その結果、借金過多で倒産が相次ぐのは、バブルの教訓だ。
 
 逆スパイラルが始まれば、不動産価格も暴落する。
 
 五輪バブルのなか首都圏のマンション価格は一戸あたり8360万円となり、90年11月のバブルピークの7497万円を上回り過去最高。平均的サラリーマンでは手の出なくなった価格は、投機化の現われであり、暴落は必至であろう。
 
 製造、非製造を問わずすべての産業が打撃を受け、2極化のなか非正規雇用やシングルマザーなど生活弱者がしわ寄せを食う状態をどう乗り切るのだろうか。
 
 かくなるうえは大胆な財政出動しか打開策はなく、安倍政権の胆力が求められるのだが……。【🐏】

 

 

 

 

 

 

 

 


2020年3月10日配信「逮捕の容疑者全員が不起訴!――整骨院オーナー恐喝事件のややこしい裏事情」<事件>

 
(☚wikipedia)

 

 恐喝事件で6000万円はかなり巨額である。
 
 しかも被害者は、全国に約120もの整骨院チェーンを経営する売り出し中の経営者なので、大きく報じられてもおかしくなかった。
 
 だが、大阪府警捜査4課の事件ということもあって、報じたのは関西メディアの一部だけで、しかも逮捕された容疑者が勾留期限切れで外に出された時の処分は、全員不起訴だった。
 
 処分保留とはいえ大阪府警の失態は明らかで、背景に相当、複雑な要因を感じさせる事件となった。
 
 主犯の文政英容疑者(52)を逮捕の瞬間を捉えて報じたのは「関西テレビ」である。
 
<警察によると、文容疑者らは去年5月から6月にかけて、会社を経営する40代の男性に右翼系新聞社からの質問状をみせたうえ、『これは一番怖い右翼の新聞ですわ。交渉して記事を止めましょう』などと脅しました>(1月28日配信)
 
 文容疑者のほかに逮捕されたのは、脅された側の会社幹部と、右翼系新聞の代表。3容疑者ともに不起訴だったのは、被害者だった整骨院「ギオングループ」の中島修一代表が態度を変化させたからだという。
 
「文氏は、自分は表に立たなかったけど、再生エネルギー、医療コンサルタントなどを手掛けていた事業家で、同年代の中島氏とは仲が良くて事業パートナーでした。脅し脅され、という関係ではなかった。逮捕以降、中島氏は警察に捜査協力しなくなったそうですが、それも無理はない」(文氏の知人)
 
 苦境に立っていたのは中島氏である。
 
 昨年末から今年にかけて、「ギオングループ」は療養費の不正請求を疑われ、大阪市や全国保険協会大阪支部などが、一斉に調査に入っており、既に報道され、周知のものとなっていた。
 
『週刊新潮』(2020年1月30日付)は、「ギオングループ」に上沼恵美子の長男がいたことに引っ掛けて、「上沼長男もいた不正整骨院」と報道。保険適用外のマッサージ客も捻挫などの保険適用の怪我にしていたと報じ、「不正請求は月に1億円」と、公金横領の疑いを明らかにした。
 
 整骨院を経営する柔道整復師は、患者の代わりに療養費を請求する「受領委任」が認められている。
 
 それを利用した不正請求が後を絶たず、5年前には住吉会系暴力団組長が、自ら整骨院を経営するなどして組織的に不正請求、その構図にテレビなどで活躍する美人女医が含まれていたこともあり、マスメディアを賑わしたことがある。
 
 中島氏のケースも同じ。騒ぎになったのは昨年末以降だが、大阪市や健保協会などが中島氏を疑い始めて調査を入れたのは18年からで、その頃から事業主体をフィットネスクラブに移すつもりで、「ギオングループ」を売りに出していて、その「売り先」を探していたのが文氏だった。
 
「グループ全体の売上高が30億円超で利益率が約30%。それを20億円内外で買わないか、という話でした。でも、既に、不正請求が表面化していたのだから法外な数字。なかなか売れず、その間にも資金繰りが逼迫、数千万円単位のカネを調達していたのも文氏でした」(前出の知人)
 
 およそ恐喝になるという間柄とは思えず、そうした関係の果ての金銭トラブルで、むしろ中島氏は、不正請求で府警の捜査2課が狙っていた。
 
 その捜査に水を差す形で捜査4課が乗り出したのは、文氏の属性と他に抱えた金銭トラブルの多さだった。
 
 文氏は、6年前、八尾氏の清掃会社をめぐる詐欺事件で逮捕されたことがあり、その際は「文政英こと早見政英」と報じられた。
 
 それを契機に姓を「江城」に代え、名前も「慶薫」とした。その「幾つもの顔」を使い分け、再生エネルギーを本業としつつ、コンサルタントとして「ギオングループ」のような医療関連のほか、さまざまな企業に関わり、その強引な手法によってトラブルが絶えず、また山口組系暴力団組織との関係の深さから4課の“お客さん”となった。
 
 その余罪を主眼とする捜査の入口として選んだのが、右翼系新聞の知名度を“利用”した恐喝事件。中島氏としては、自分も狙われていることから「恩を売っておけば」と、思ったのかも知れないが、事件を貸し借りのない捜査2課が引き受けたのでは、文氏を敵にするのはまずい。
 
 それが、被害者の立場から逃げたわけだが、「仲間割れ」が本当の理由なら、本来、事件化されるはずもない今回の事件。逮捕された右翼系新聞の代表にしてみれば、とんだ濡れ衣。――不起訴処分の裏には、なんともややこし人間模様があったのである。【🐵】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2020年3月5日配信<0510archives>「面妖極まる”検事総長人事”の背景」<事件>

 

首相官邸(左)と検察庁(Wikipedia)


 「法務・検察」も所詮は官僚機構で、人事権を握る政権の意向に従わざるを得ないことを痛感させられたのが、「官邸の代理人」といわれる黒川弘務東京高検検事長の定年延長だった。
 
 黒川検事長の定年は63歳の誕生日を迎える2月8日。稲田伸夫検事総長は、NO2である東京高検検事長の後任を林真琴名古屋高検検事長とし、自身が仕切る今年4月の国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)を終えた後、林氏の定年である7月30日までに退任、林氏に検事総長を譲る、というスケジュールを想定していた。
 
 だが、定年延長で黒川検事総長となるのは確実で、検察は、官邸に人事権を譲った。
 
 それにつけても思い出されるのが、10年前の小沢一郎事件である。
 
 09年3月の大久保隆規秘書から10年1月の石川知裕秘書(逮捕時は代議士)の逮捕まで、東京地検特捜部は徹底的に政治資金規正法違反を追及、狙いは当時の民主党政権における最大実力者の小沢一郎幹事長の逮捕だった。
 
 その理由は、小沢幹事長が唱えた「検察改革」である。
 
 「小沢は、田中角栄、金丸信という“2人の親父”を特捜部によって失っている。検察庁と検察捜査に根深い不信を持っている小沢は、検察改革に踏み込もうとし、その私案をまとめていた」(ベテラン司法記者)
 
 それは検事総長の内閣同意制、検事正の公選制、録音録画を義務付ける捜査の可視化などである。
 
 なかでも検察が危機感を募らせたのは、内閣同意制や公選制で、そうなると民間から検事総長や検事正が選ばれる可能性もあるわけで、決して容認できなかった。
 
 通常であれば、04年10月に購入した不動産を、05年1月に不動産登記したというのは「期ズレ」であり、政治資金収支報告書の修正で済むものを、「ゼネコンの裏ガネを隠す意図があった」として強引に捜査。最後は、それを「小沢の指示」として逮捕を目論んだが、石川秘書らが認めず、結局、「秘書の犯罪」で終結した。
 
 その小沢事件と比べれば、今回は「官邸の言いなり」である。
 
 人事を決めるのは検事総長だが、検事総長、最高検次長、全国八カ所の高検検事長は、「天皇の認証官」であるため、任免には閣議決定が必要で、黒川氏の定年を見据えて昨年末、遅くとも今年初めまでには内示を出さねばならなかった。
 
 だが、稲田総長の人事案を持っていった辻裕教法務事務次官に対し、菅義偉官房長官ら官邸は、なかなか首を縦に振らず、2月8日までの稲田総長の退任を促す始末だった。
 
 「永田町の監視役」でもある検察が、政権に人事を委ねてはならないという思いと、5年に一度の国連イベントの日本開催は50年ぶりである京都コングレスを成功させたいと思いから、稲田氏は退任に同意せず、辻次官は間に入って苦労した。
 
 ただ、政権には検事総長に退任を命じる権限はなく、検事の身分は検察庁法によって固く守られている。
 
 「稲田氏が辞めない以上、林検事総長を認めるしかない」という観測が政界にも流れていた頃、広島地検が想定外の捜査に着手した。
 
 1月15日の河井克行前法相と妻の河井案里参院議員への強制捜査である。
 
 19年夏の参院選で、河井案里陣営が運動員に報酬を過払いしたとして、市民団体などから公職選挙法違反の告発状が広島地検に出されていた。
 
 それを受けての強制捜査だが、「時効が迫っているわけではなく、任意の取調べでも十分なのに、カジノ事件で秋元司前内閣府副大臣が逮捕され、ただでさえ政権が批判されている今、なぜ強制調査なのか」という批判が、政権サイドから一斉に挙がった。
 
 政界捜査には、検事総長の承認が欠かせない。
 
 稲田総長のゴーサインを「自分に退職を迫った政権への意趣返し」と捉え、「やはり稲田ではダメだ」という声が官邸の総意となって、検察庁法違反の声もあるなか、黒川氏の半年間の定年延長という前代未聞の“奇策”が生まれた。
 
 小沢氏への反発から捜査に突入、願いが果たせず強引な捜査を批判された10年前と、政権を揺るがす捜査を行って返り討ちのように人事権を奪われた今回の歪な人事。――安倍政権にも検察にも欠けているのは、「国民にとって必要な検察体制はどうあるべきか」という視点である。
 
 どっちもどっち。昔も今も両者にあるのは、自分たちの勢力を保持、拡大させたいという独善的な姿勢には、国民の支持は得られないと思うのだが……。<🐏>

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2020年2月22日配信<0510archives>「法務・検察利権の公証人天下り制度に読売新聞が切り込んだ”裏事情”」<事件>

 
(☚wikipedia)


 久々ぶりの快挙であった!――「法務・検察」の呆れた実態が、「読売新聞」が連続追及した『公証人シリーズ』で明らかになった。
 
 遺言や金銭貸借など法的証明力が認められる公正証書は、公証役場に行き、法務大臣が任命する公証人に作成してもらう。
 
 同紙は、その公証人を元検察官と元裁判官が独占、人事システムに組み込んだ法務・検査利権であることを暴いた。
 
 民間への開放を促す目的で2002年度から始めた公募は形式だけ。東京と大阪など高収入が見込まれる公証人ポストは検査官と裁判官のOBで独占している。
 
 典型は東京で、106ポストのうち104ポストは固定化し、元検察官から元検察官、元裁判官から元裁判官に引き継がれていた。
 
 どの幹部をどこの公証役場に配置するかの原案は、法務省人事課で作成。収入は年収2000万円前後の検事正収入を下回らないように配慮、高収入が見込まれる都内の公証人になれば3000万円前後だという。
 
 任期も5年から10年と定められていて、検察官OBの場合、天皇の認証官で定年年齢の高い検事長以上は公証人になれないので、公証人の対象者は検事正を経験した60歳前後。50歳代後半なら10年後、60歳以上なら70歳までに退任するのがルールになっていて、退職を誓約する「念書」を入れるのだという。
 
 公証人の数は全国で約500人。堂々と検察と裁判所で分け合い利権化、他省庁の国家公務員の各種天下り規制をあざ笑うかのようだ。
 
 ただ、この実態を知らされたのは「読売新聞」の読者だけ。他のマスメディアは、一切、報じず、後追いもしない。
 
「昔から知っていたことで今更」(他紙の社会部記者)であり、「倫理違反であるのは明らかだけど、法的に違反しているわけじゃない。検察がこの利権を手放したくないのは明らかで、尻馬に乗って追いかけると、検察幹部に嫌われて情報が取れなくなる。記事にするつもりはない」(同)という。
 
 2人のキャリア官僚逮捕につながった文科省事件は、天下り規制違反の発覚から端を発している。
 
 前川喜平事務次官は退任し、その後、逮捕された2人が前川氏の官房長時代の課長で、前川氏を支える「助さん格さん」であったことから、「文科省に鉄槌を加えたかった官邸の意を受けた捜査」(検察事情通)という指摘もあった。
 
 そういう意味で、法務・検察の自らの脱法的天下りには蓋をして、他省庁には襲いかかる姿勢と、それを無視して検察の“歓心”を買おうとする司法マスコミの姿は、度しがたくみっともない。
 
 では、どこよりも「当局との密着」を得意?とし、検察報道でもスクープを飛ばす読売が、どうして“さざ波”を承知で、報じたのか。
 
 以下の記事が参考になるかも知れない。
 
<「日本はいつの間にかレッテル社会になってしまった。最近は、大蔵と名が付けば全部ダメ。検察ならいいという空気になっている。検察OBがそれぞれにふさわしいポストに起用されるのは歓迎だが、レッテルだけに目が向く上滑りな風潮が見え始めている」――ある検察OBは、そう警世の言葉を語るのである。
 検察OBには三つのグループがある。(1)中途退官してヤメ検弁護士になる、(2)定年近くにやめ、公証人になる、(3)検事長や検事総長などまで上り詰め、企業顧問などに就くケースである。>

 
 今から21年前の98年4月に書かれた「検察OBの研究」で、執筆したのは社会部の山口寿一記者。同記者は、続けて元検事と元裁判官で独占する公証人の実態を明かしている。
 
 公証人の裏は、20年以上前から知られていたわけで、執筆者の山口記者は、その後、渡辺恒雄主筆の覚えもめでたく異例の出世を続け、今や、読売新聞グループ本社の社長で読売巨人軍オーナーとなった実力者。それだけに、読売としては「社として取り組めるテーマ」だろう。
 
 そこにも取材現場の“忖度”が働いたのかも知れないが、「法務・検察の闇」を照らす作業は、何がきっかけとなってもノー・プロブレム。――この構図を温存している法務・検察と、それを熟知しているのに放置している司法マスコミこそ批判されて然るべきだろう。【寅】

 

 

 

 

 

 

 

 


2020年1月21日配信「カジノ贈収賄事件の顛末――“ワル”で“小物”で“中国”だから狙われた秋元司被告の無念!」<事件>

 

 

 政界に人脈を築きたい“ワケあり”の業者にとって、敷居が低くて頼りになる政治家だった秋元司被告は、今、「なんで俺だけなんだ」と歯ぎしりしながら思いながら、東京拘置所で否認を貫いている。
 
 東京地検特捜部は、昨年12月25日という、検事、検察事務官、拘置所刑務官、司法記者など関係者全員が、正月休みを犠牲にすることで抱く不満を無視して、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)の担当副大臣だった秋元司代議士を収賄容疑で、IR参入を目指していた中国企業「500ドットコム」鄭希・副社長、紺野昌彦・顧問、仲里勝憲・顧問の3容疑者を贈賄容疑で逮捕、さらに今月14日には別口の贈収賄容疑で再逮捕した。
 
 1月20日に令和2年の通常国会が始まるという政界スケジュールを睨みながら捜査は進み、1月14日に同じ容疑で再逮捕。収賄金額を最初の陣中見舞いの300万円プラス北海道家族旅行費用70万円から積み増し、IR関連の講演料200万円、中国旅行代金200万円などを加えた。
 
 IRを食い物にした「悪徳政治家」という構図である。
 
 特捜部は他に、17年12月、中国・深圳の「500ドットコム」本社を訪れた際に同行した白須賀貴樹代議士、勝沼栄明前代議士が、秋元被告同様に便宜を図ってもらっていたとして両氏の地元事務所などを家宅捜索。また、「500ドットコム」が、自民党の岩屋毅、宮崎正久、中村裕之、船橋利実の4代議士と日本維新の会の下地幹郎代議士に各100万円を献金していたとして調べていた。
 
 しかし、そうした政治家に職務権限がなく、政治献金問題に広げるにせよ、「中国企業からの献金」を意識した政治家はおらず、なにより下地氏以外は受領を否定、事件にそれ以上の拡がりは見込めない
 
 また、「他のIRでも別の工作があり秋元以上の大物政治家が絡んでいる」(自民党関係者)という声もあったが、特捜部にはその余裕がなかった。
 
 検察OB弁護士は、「政治家を職務に絡む収賄で逮捕したのは、02年の鈴木宗男代議士以来17年ぶり。エースの呼び名が高い森本宏特捜部長は、十分に役割を果たした」と、評価する。
 
 だが、「俺ひとりの罪」にされてしまった秋元被告は不満だらけだろう
 
 逮捕前、マスメディアの取材に積極的に応じた秋元被告は、「2000万円もらった政治家がいる」「(自民党の)IR三羽ガラスは、もっと凄い」と、放言していた。
 
 三羽ガラスとは、首相側近で知られるH、防衛相経験者のI、官邸閣僚経験者のNなどで、確かに秋元被告より“格上”で、政権中枢にいて狙われやすい。
 
 「500ドットコム」はオンラインカジノの経験はあっても現実のカジノ運営はしたことがない。
 
 ラスベガス・サンズ、MGMリゾーツ・インターナショナル、ウィン・リゾーツといった米の大手カジノ運営会社は、外国公務員への金銭や高価な物品の提供を禁じた海外不正行為防止法などで鍛えられており、現金を足がつくような形で渡さない。現地の手慣れたコンサルタントを雇い、洗練された形で便宜供与を図る。
 
 そのうえで合法となれば、ケタ違いの献金をする。
 
 サンズのシェルドン・アデルソン会長は、トランプ大統領の最大級の支援者で、大統領選と就任式で2500万ドル(約27億円)の献金を行なっている。
 
 それだけのスポンサーのためにトランプ大統領は、安倍晋三首相に「カジノへの米企業参入」を迫り、安倍政権はそれに応じようとしている。
 
 敵対国である中国のカジノ未経験業者が、参入できる余地などなかった。
 
 しかも秋元被告は、特捜部が19年7月に摘発した企業主導型保育事業を巡る助成金詐欺事件の際、主謀者の川崎大資(旧名・塩田大介)被告の政界パイプであることが判明、不可解な政治献金もあったことから特捜部が目を付けていた。
 
 「秋元銘柄」といわれるパチンコ、土建、除染、太陽光、不動産といった業者は軒並み調べられ、その捜査の過程で浮かび上がったのが、カジノであり「500ドットコム」だった。
 
 これまで官邸に遠慮して中央政界に手を付けなかった特捜部だが、今回は秋元被告が問題のある企業との交流を厭わないワルであったこと、中堅とはいえ副大臣を経験した程度の小物だったこと、そしてカジノに参入をさせたくない中国であったことで忖度すべき障壁がなかった。
 
 しかも、政界工作をSNSに大量に投稿して自慢する紺野被告のような脇の甘いコンサルに主導され、沖縄の講演会でスピーチ、北海道の留寿都で家族旅行を楽しみ、裏ガネをもらって便宜を図ってきたのだから、「俺だけじゃない」は通らない。――まさに自業自得というしかない。【丑】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月27日配信「中国企業とカジノで組むという秋元司代議士の“悪手”を嫌った地検特捜部が外為法違反で摘発した事件の行方」<事件>  


留寿都村(☚wikipedia)

 

 さながら2000年代前半のITバブル時代の名残り?――国営ITコングロマリットが大株主「500ドットコム」という社名の中国企業の日本法人が、東京地検特捜部の摘発対象となってマスメディアを賑わせている。
 
 同社関係者が、違法に海外から資金を持ち込み、17年当時、北海道のリゾート地・留寿都で進めていたカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致活動に使ったのではないかというもの。これには秋元司代議士の元政策秘書らが関与。外為法違反事件として特捜部の捜査を受けている。
 
 それにしても秋元氏の信じられない脇の甘さである。
 
 カジノといえば、犯罪組織が万が一にも関与してはならないと、米ではゲーミング管理委員会などによって、厳しく監視され参入障壁も高い。
 
 日本もそれに準拠する体制整備が、IRの事業化を前に行なわれている。
 
 そうしたIRを担当する衆議院内閣府の委員長として、それを十分に知っているハズなのに、「500ドットコム」に取り込まれてしまった。
 
 しかも同社は、オンラインカジノ業者ではあってもディーラーが差配する“生”のカジノ運営の経験はない。
 
 さらに、サポート要員として雇った執行役員は、沖縄県日中友好協会事務局長の肩書を持つが、国内外を舞台に投資家をつのるブローカーのような人物で、トラブルも多い。
 
 特捜部が秋元氏に目を付けたのは、後援者の川崎大資被告を、19年7月、企業主導型保育事業の詐欺容疑で逮捕。その政界ルートとして秋元氏が浮上、調べを進めるうちに別件ながら外為法違反事件に行き着いた。
 
「検察のエース」として内外から期待される森本宏特捜部長は、小躍りして喜んだに違いない。
 
 特捜部は、日産元会長のカルロス・ゴーン被告を逮捕し、久々に「最強の捜査機関」に相応しい存在感を見せつけた。
 
 しかし、まだ課題が残っており、それは中央政界への捜査である。
 
 09年の政治資金団体・陸山会事件は、当時の小沢一郎民主党元代表を狙ったものの果たせず、秘書の逮捕に留まった。
 
 この時、石川知裕代議士を逮捕、起訴したが、小沢氏の秘書時代の罪についてであり、真の意味の政治家逮捕ではない。
 
 というわけで、政治家逮捕は02年の鈴木宗男代議士、03年の坂井隆憲代議士まで遡る。
 
「バッヂを狙え!」は、特捜部の使命感を伝える合い言葉だが、都合16年以上、その役割を果たしていないことになる。
 
 秋元事務所が絡む外為法違反事件は、そんな状況を払拭することになった。
 
 展開は早い。――特捜部は、12月7日、秋元氏に仕えていた2名の元秘書宅を家宅捜索した。
 
 2人は、11年7月に設立されたコンサルタント会社の代表を務めており、元政策秘書が17年6月に退任すると、元私設秘書が代わって就任した。
 
 秋元氏は記者会見を開き、落選中の設立時から14年まで顧問を務め、顧問料を受け取っていたことは認めたものの、「以降、会社との関わりは一切ない」としている。
 
 だが、否定されても立件できる材料はあるということで、さらに証拠を積み重ねるために、12月19日、江東区の地元事務所議員会館を家宅捜索した。
 
 容疑の外為法違反は入り口に過ぎない。
 
 あの「ロッキード事件」がそうだったように、外為法違反は政界事件などの入り口に使われることが多い。
 
 その分、奥は深く、今回、検察は官邸に捜査着手の報告はしたが、何のどんな容疑が本線かは伝えていない。
 
 それだけ本気だということだが、IR担当として職務権限はあるだけに、贈収賄事件としての立件が、“本線”になる」(検察OBの弁護士)
 
「500ドットコム」の中国人代表は、留寿都の前は沖縄IRに関心を示し、17年8月、那覇市でシンポジウムを主催したことがある。
 
 その基調講演を中国人代表とともに行なったのが秋元氏だった。
 
 中国企業がIRという国家プロジェクトに参入するというだけで、日本の司法当局は警戒する。
 
 なのに秋元氏は、国内の通常の陳情を捌くのと同じ気軽さで“相談”に乗ってしまったわけだが、その前からターゲットだったという意味で、特捜部に狙われる要件は、十分に満たしていたのである。【酉】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月24日配信「風雲急!――秋元司代議士元秘書を家宅捜索した東京地検特捜部の狙い?」<事件>

 
秋元司代議士(wikipedia)

 カルロス・ゴーン逮捕で久々に「最強の捜査機関」に相応しい存在感を見せつけた東京地検特捜部だが、中央政界の捜査は成果を上げられずにいる。
 
 09年の政治資金団体・陸山会事件は、当時の小沢一郎民主党元代表を狙ったものの果たせず、秘書逮捕に留まった。
 
 この時、石川知裕代議士を逮捕、起訴したが、小沢氏の秘書時代の罪についてであり、正確にはダッシュマークがつく逮捕であり
「政治家逮捕」は02年の鈴木宗男代議士、03年の坂井隆憲代議士まで遡る。
 
 「バッヂを狙え!」は、特捜部の使命感を伝える合い言葉だが、17年近くその役割たしていないことになる。
 
 そんな状況を払拭することになるのだろうか――。
 
 東京地検特捜部は、12月7日、秋元司代議士に仕えていた2名の元秘書宅を家宅捜索した。
 
 2人は、11年7月に設立された芸能関係会社の代表を務めており、元政策秘書が17年6月に退任すると、元私設秘書が代わって就任した。
 
 秋元氏は記者会見を開き、落選中の設立時から14年まで顧問を務め、顧問料を受け取っていたことは認めたものの、「以降、会社との関わりは一切ない」としている。
 
 容疑は海外から多額の現金を不正に持ち込んだとされる外為法違反だが、具体的な内容は伏せられており、秋元氏も「心当たりはない」と、断言した。
 
 だが、外為法違反は「入り口」だろう。
 
「ロッキード事件がそうだったように、外為法違反は政界事件などの入り口に使われることが多く、その分、奥は深い。
 
 今回、検察は官邸に捜査着手の報告はしたが、どんな容疑が本線なのかは伝えていない。それだけ本気で政治家を狙っているということ」(検察OBの弁護士)
 
 家宅捜索の1週間後には、北海道庁のIR(カジノを含む統合型リゾート)関係部署にも特捜部が赴き、中国系企業・F社のルスツリゾート進出に絡む不可解なカネの流れに着目、任意で資料提供を求めている。
 
 同社のH代表は、沖縄IRにも関心を示し、17年8月、那覇市でシンポジウムを主催したことがある。
 
 その基調講演を中国人代表とともに行ったのが、当時、IRを担当する衆院内閣委員会の委員長を務め、超党派のIR議連の副幹事長でもある秋元氏だった。
 
 ただ、北海道に限っているわけではなく、「幅広く、秋元関連を調べている」(司法担当記者)という。
 
「特捜部が秋元代議士に興味を持つきっかけは、内閣府の企業主導型保育事業を巡る助成金詐欺事件の過程で、主犯格の川崎大資被告と秋元氏との親密な関係が浮上、事業関係者から献金を受け取っていたことが判明してからです。特捜部の参考人聴取が活発に行なわれ、それが保育事業と関係のない分野にまで広がった」(同)
 
 それは、秋元氏の「来る者拒まず、清濁併せ呑む」という政治スタイルと無縁ではない。
 
 師匠といえるのが、秘書として仕えた小林興起元代議士。同じようにウイングが広く、人脈もまたグレーゾーンの人種を厭わない小林氏を真似ているし、一部はその人脈を引き継いでいる。
 
 今回、家宅捜索という本格捜査の前に、特捜部は太陽光など再生エネルギー、パチンコ・パチスロ、公共工事に強い地方の建設、街金と呼ばれる高利金融、増資を繰り返す業績不振企業など多方面に任意の形で調査・捜査を入れていたが、挙句のルスツIRであり、今後はそれを軸に捜査は展開されよう。
 
 秋元氏は、内閣府、環境省、国土交通省などの副大臣を務め、それなりに職務権限を持つ。
 
 指揮を執るのは、「検察のエース」の森本宏特捜部長。――国会が始まれば不逮捕特権があるだけに、年明け1月20日の通常国会招集までに動きを見せると目されている。【子】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月21日配信<0510archives>「『Black Box』(伊藤詩織著・文藝春秋)が告発する司法の歪み」<事件>



 


 

 

 

 

 レイプ被害者として「顔出し告発」していた伊藤詩織さんが、10月18日、『ブラックボックス』(文藝春秋)を上梓した。
 
 今年5月、詩織さんは検察審査会に不起訴処分を受けて異議を申し立て、記者会見で経緯を説明した。
 
 その時も衝撃だったが、検察審査会での「不起訴相当」を受けて著した本書では、そうした会見などでは伝わらぬ思いが、時系列で詳細に語られ、一級のノンフィクションであると同時に、日本の司法システムに対する鋭い告発書にもなっている。
 
 圧巻は、「安倍晋三首相に最も近い記者」という評判の元TBS記者・山口敬之氏と、詩織さんにとって同氏に対する「顔を思い出したくもない加害者」であるという辛さを封印して、責任を追及するために行った交換メールの公開と、高輪署、警視庁捜査一課、そして検察との「山口氏の圧力」を感じながらの切迫した交渉だろう。
 
 率直に感じられるのは、詩織さんの強さである。
 
 それは5月時点の「顔出し会見」で証明されてはいたが、今回、明かされたジャーナリストを目指して欧米で学んだという経歴が、告発への動機を裏付けるとともに、そうした意志も強さも持っている人が、それでも「司法のカベ」に跳ね返されてしまった。
 
 強さは、レイプ犯を許さないという一貫した姿勢にあるが、その一方で、詩織さんの心は常に山口氏の“幻影”に怯えており、「魂の殺人」だというレイプが被害者に与える傷の深さに慄然とさせられる。
 
 それだけのプレッシャーを受けながら、これまでのレイプ被害者の大半が、「正体を晒しても何の得にもならない」と、勝訴しても自分の胸の内にしまい込むか、示談に応じて事件を封印するなか、詩織さんが実名告発し書籍まで発売したのは、個人的な恨みを晴らすのではなく、「私に起こったことが、あなたに、あるいはあなたの大切な人に降りかかってくるか、誰にも予測はできないのだ」(まえがきより)と、訴えたいからである。
 
 その告発するという行為の結果として、司法の“歪み”が露呈した。

 

bbc_01_20180701.png

                                                                      BBC公式HP
 

 

「よくある話だし、事件として捜査するのは難しいですよ」
 
 担当する高輪署のA氏が、最初に投げかけたのはこの言葉であり、詩織さんは「それはあまりに残酷な言葉だった」と、嘆く。
 
 以降、「今まで努力してきた君の人生が水の泡になる」と、被害届の提出を考え直すように説得するA氏を、むしろ詩織さんが引っ張る形で捜査は進み、山口氏の帰国を待って逮捕するところまで進展した。
 ところが、15年6月8日、成田空港に山口氏逮捕に出向いたA氏から「逮捕できません」という連絡が入る。
 
 理由を問うと「ストップをかけたのは警視庁のトップです」という返事。後に、それが中村格警視庁刑事部長(当時)であることが明らかになる。
 
 以降、所轄の高輪署から警視庁捜査一課に事件は移送され、A氏も担当検事も配置替えとなり、事件は封印の方向に向かう。
 
 捜査一課の捜査が、不起訴へ持っていくためのものであるのは、「なぜ逮捕状が出たのに逮捕しなかったのか」という詩織さんの問いかけに、「逮捕状は簡単に出ます」と断言。「社会的地位のある人は、居所がはっきりしているし、家族や関係者もいて逃走の恐れがない。だから、逮捕の必要がないのです」と、いってのけた捜査一課幹部の言葉で明らかだ。
 
 官邸から中村部長へと伝えられたことで発生した“忖度”は、捜査現場を動かして起訴には不十分な捜査内容となり、不起訴処分は出た。
 
 その証拠に沿って国民からくじで選抜される検察審査会の審査員が、検察官に誘導される形で事件性を審査すれば、「不起訴相当」となるのも無理はない。
 
 司法は、そのシステムを熟知し、方向性を変えうる力のある人間が操作すれば、簡単に歪むものである。
 
 レイプが行われたとされる15年4月4日以降、2年半の歳月をかけて詩織さんが著した『ブラックボックス』で、我々が読み取るべきは、レイプ被害の傷跡の大きさとともに、それを見逃してしまった司法システムの検証であろう。【午】

 

 

 

 

 

 

 

 



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