2020年3月10日配信「逮捕の容疑者全員が不起訴!――整骨院オーナー恐喝事件のややこしい裏事情」<事件>

 
(☚wikipedia)

 

 恐喝事件で6000万円はかなり巨額である。
 
 しかも被害者は、全国に約120もの整骨院チェーンを経営する売り出し中の経営者なので、大きく報じられてもおかしくなかった。
 
 だが、大阪府警捜査4課の事件ということもあって、報じたのは関西メディアの一部だけで、しかも逮捕された容疑者が勾留期限切れで外に出された時の処分は、全員不起訴だった。
 
 処分保留とはいえ大阪府警の失態は明らかで、背景に相当、複雑な要因を感じさせる事件となった。
 
 主犯の文政英容疑者(52)を逮捕の瞬間を捉えて報じたのは「関西テレビ」である。
 
<警察によると、文容疑者らは去年5月から6月にかけて、会社を経営する40代の男性に右翼系新聞社からの質問状をみせたうえ、『これは一番怖い右翼の新聞ですわ。交渉して記事を止めましょう』などと脅しました>(1月28日配信)
 
 文容疑者のほかに逮捕されたのは、脅された側の会社幹部と、右翼系新聞の代表。3容疑者ともに不起訴だったのは、被害者だった整骨院「ギオングループ」の中島修一代表が態度を変化させたからだという。
 
「文氏は、自分は表に立たなかったけど、再生エネルギー、医療コンサルタントなどを手掛けていた事業家で、同年代の中島氏とは仲が良くて事業パートナーでした。脅し脅され、という関係ではなかった。逮捕以降、中島氏は警察に捜査協力しなくなったそうですが、それも無理はない」(文氏の知人)
 
 苦境に立っていたのは中島氏である。
 
 昨年末から今年にかけて、「ギオングループ」は療養費の不正請求を疑われ、大阪市や全国保険協会大阪支部などが、一斉に調査に入っており、既に報道され、周知のものとなっていた。
 
『週刊新潮』(2020年1月30日付)は、「ギオングループ」に上沼恵美子の長男がいたことに引っ掛けて、「上沼長男もいた不正整骨院」と報道。保険適用外のマッサージ客も捻挫などの保険適用の怪我にしていたと報じ、「不正請求は月に1億円」と、公金横領の疑いを明らかにした。
 
 整骨院を経営する柔道整復師は、患者の代わりに療養費を請求する「受領委任」が認められている。
 
 それを利用した不正請求が後を絶たず、5年前には住吉会系暴力団組長が、自ら整骨院を経営するなどして組織的に不正請求、その構図にテレビなどで活躍する美人女医が含まれていたこともあり、マスメディアを賑わしたことがある。
 
 中島氏のケースも同じ。騒ぎになったのは昨年末以降だが、大阪市や健保協会などが中島氏を疑い始めて調査を入れたのは18年からで、その頃から事業主体をフィットネスクラブに移すつもりで、「ギオングループ」を売りに出していて、その「売り先」を探していたのが文氏だった。
 
「グループ全体の売上高が30億円超で利益率が約30%。それを20億円内外で買わないか、という話でした。でも、既に、不正請求が表面化していたのだから法外な数字。なかなか売れず、その間にも資金繰りが逼迫、数千万円単位のカネを調達していたのも文氏でした」(前出の知人)
 
 およそ恐喝になるという間柄とは思えず、そうした関係の果ての金銭トラブルで、むしろ中島氏は、不正請求で府警の捜査2課が狙っていた。
 
 その捜査に水を差す形で捜査4課が乗り出したのは、文氏の属性と他に抱えた金銭トラブルの多さだった。
 
 文氏は、6年前、八尾氏の清掃会社をめぐる詐欺事件で逮捕されたことがあり、その際は「文政英こと早見政英」と報じられた。
 
 それを契機に姓を「江城」に代え、名前も「慶薫」とした。その「幾つもの顔」を使い分け、再生エネルギーを本業としつつ、コンサルタントとして「ギオングループ」のような医療関連のほか、さまざまな企業に関わり、その強引な手法によってトラブルが絶えず、また山口組系暴力団組織との関係の深さから4課の“お客さん”となった。
 
 その余罪を主眼とする捜査の入口として選んだのが、右翼系新聞の知名度を“利用”した恐喝事件。中島氏としては、自分も狙われていることから「恩を売っておけば」と、思ったのかも知れないが、事件を貸し借りのない捜査2課が引き受けたのでは、文氏を敵にするのはまずい。
 
 それが、被害者の立場から逃げたわけだが、「仲間割れ」が本当の理由なら、本来、事件化されるはずもない今回の事件。逮捕された右翼系新聞の代表にしてみれば、とんだ濡れ衣。――不起訴処分の裏には、なんともややこし人間模様があったのである。【🐵】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2020年2月22日配信<0510archives>「法務・検察利権の公証人天下り制度に読売新聞が切り込んだ”裏事情”」<事件>

 
(☚wikipedia)


 久々ぶりの快挙であった!――「法務・検察」の呆れた実態が、「読売新聞」が連続追及した『公証人シリーズ』で明らかになった。
 
 遺言や金銭貸借など法的証明力が認められる公正証書は、公証役場に行き、法務大臣が任命する公証人に作成してもらう。
 
 同紙は、その公証人を元検察官と元裁判官が独占、人事システムに組み込んだ法務・検査利権であることを暴いた。
 
 民間への開放を促す目的で2002年度から始めた公募は形式だけ。東京と大阪など高収入が見込まれる公証人ポストは検査官と裁判官のOBで独占している。
 
 典型は東京で、106ポストのうち104ポストは固定化し、元検察官から元検察官、元裁判官から元裁判官に引き継がれていた。
 
 どの幹部をどこの公証役場に配置するかの原案は、法務省人事課で作成。収入は年収2000万円前後の検事正収入を下回らないように配慮、高収入が見込まれる都内の公証人になれば3000万円前後だという。
 
 任期も5年から10年と定められていて、検察官OBの場合、天皇の認証官で定年年齢の高い検事長以上は公証人になれないので、公証人の対象者は検事正を経験した60歳前後。50歳代後半なら10年後、60歳以上なら70歳までに退任するのがルールになっていて、退職を誓約する「念書」を入れるのだという。
 
 公証人の数は全国で約500人。堂々と検察と裁判所で分け合い利権化、他省庁の国家公務員の各種天下り規制をあざ笑うかのようだ。
 
 ただ、この実態を知らされたのは「読売新聞」の読者だけ。他のマスメディアは、一切、報じず、後追いもしない。
 
「昔から知っていたことで今更」(他紙の社会部記者)であり、「倫理違反であるのは明らかだけど、法的に違反しているわけじゃない。検察がこの利権を手放したくないのは明らかで、尻馬に乗って追いかけると、検察幹部に嫌われて情報が取れなくなる。記事にするつもりはない」(同)という。
 
 2人のキャリア官僚逮捕につながった文科省事件は、天下り規制違反の発覚から端を発している。
 
 前川喜平事務次官は退任し、その後、逮捕された2人が前川氏の官房長時代の課長で、前川氏を支える「助さん格さん」であったことから、「文科省に鉄槌を加えたかった官邸の意を受けた捜査」(検察事情通)という指摘もあった。
 
 そういう意味で、法務・検察の自らの脱法的天下りには蓋をして、他省庁には襲いかかる姿勢と、それを無視して検察の“歓心”を買おうとする司法マスコミの姿は、度しがたくみっともない。
 
 では、どこよりも「当局との密着」を得意?とし、検察報道でもスクープを飛ばす読売が、どうして“さざ波”を承知で、報じたのか。
 
 以下の記事が参考になるかも知れない。
 
<「日本はいつの間にかレッテル社会になってしまった。最近は、大蔵と名が付けば全部ダメ。検察ならいいという空気になっている。検察OBがそれぞれにふさわしいポストに起用されるのは歓迎だが、レッテルだけに目が向く上滑りな風潮が見え始めている」――ある検察OBは、そう警世の言葉を語るのである。
 検察OBには三つのグループがある。(1)中途退官してヤメ検弁護士になる、(2)定年近くにやめ、公証人になる、(3)検事長や検事総長などまで上り詰め、企業顧問などに就くケースである。>

 
 今から21年前の98年4月に書かれた「検察OBの研究」で、執筆したのは社会部の山口寿一記者。同記者は、続けて元検事と元裁判官で独占する公証人の実態を明かしている。
 
 公証人の裏は、20年以上前から知られていたわけで、執筆者の山口記者は、その後、渡辺恒雄主筆の覚えもめでたく異例の出世を続け、今や、読売新聞グループ本社の社長で読売巨人軍オーナーとなった実力者。それだけに、読売としては「社として取り組めるテーマ」だろう。
 
 そこにも取材現場の“忖度”が働いたのかも知れないが、「法務・検察の闇」を照らす作業は、何がきっかけとなってもノー・プロブレム。――この構図を温存している法務・検察と、それを熟知しているのに放置している司法マスコミこそ批判されて然るべきだろう。【寅】

 

 

 

 

 

 

 

 


2020年1月21日配信「カジノ贈収賄事件の顛末――“ワル”で“小物”で“中国”だから狙われた秋元司被告の無念!」<事件>

 

 

 政界に人脈を築きたい“ワケあり”の業者にとって、敷居が低くて頼りになる政治家だった秋元司被告は、今、「なんで俺だけなんだ」と歯ぎしりしながら思いながら、東京拘置所で否認を貫いている。
 
 東京地検特捜部は、昨年12月25日という、検事、検察事務官、拘置所刑務官、司法記者など関係者全員が、正月休みを犠牲にすることで抱く不満を無視して、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)の担当副大臣だった秋元司代議士を収賄容疑で、IR参入を目指していた中国企業「500ドットコム」鄭希・副社長、紺野昌彦・顧問、仲里勝憲・顧問の3容疑者を贈賄容疑で逮捕、さらに今月14日には別口の贈収賄容疑で再逮捕した。
 
 1月20日に令和2年の通常国会が始まるという政界スケジュールを睨みながら捜査は進み、1月14日に同じ容疑で再逮捕。収賄金額を最初の陣中見舞いの300万円プラス北海道家族旅行費用70万円から積み増し、IR関連の講演料200万円、中国旅行代金200万円などを加えた。
 
 IRを食い物にした「悪徳政治家」という構図である。
 
 特捜部は他に、17年12月、中国・深圳の「500ドットコム」本社を訪れた際に同行した白須賀貴樹代議士、勝沼栄明前代議士が、秋元被告同様に便宜を図ってもらっていたとして両氏の地元事務所などを家宅捜索。また、「500ドットコム」が、自民党の岩屋毅、宮崎正久、中村裕之、船橋利実の4代議士と日本維新の会の下地幹郎代議士に各100万円を献金していたとして調べていた。
 
 しかし、そうした政治家に職務権限がなく、政治献金問題に広げるにせよ、「中国企業からの献金」を意識した政治家はおらず、なにより下地氏以外は受領を否定、事件にそれ以上の拡がりは見込めない
 
 また、「他のIRでも別の工作があり秋元以上の大物政治家が絡んでいる」(自民党関係者)という声もあったが、特捜部にはその余裕がなかった。
 
 検察OB弁護士は、「政治家を職務に絡む収賄で逮捕したのは、02年の鈴木宗男代議士以来17年ぶり。エースの呼び名が高い森本宏特捜部長は、十分に役割を果たした」と、評価する。
 
 だが、「俺ひとりの罪」にされてしまった秋元被告は不満だらけだろう
 
 逮捕前、マスメディアの取材に積極的に応じた秋元被告は、「2000万円もらった政治家がいる」「(自民党の)IR三羽ガラスは、もっと凄い」と、放言していた。
 
 三羽ガラスとは、首相側近で知られるH、防衛相経験者のI、官邸閣僚経験者のNなどで、確かに秋元被告より“格上”で、政権中枢にいて狙われやすい。
 
 「500ドットコム」はオンラインカジノの経験はあっても現実のカジノ運営はしたことがない。
 
 ラスベガス・サンズ、MGMリゾーツ・インターナショナル、ウィン・リゾーツといった米の大手カジノ運営会社は、外国公務員への金銭や高価な物品の提供を禁じた海外不正行為防止法などで鍛えられており、現金を足がつくような形で渡さない。現地の手慣れたコンサルタントを雇い、洗練された形で便宜供与を図る。
 
 そのうえで合法となれば、ケタ違いの献金をする。
 
 サンズのシェルドン・アデルソン会長は、トランプ大統領の最大級の支援者で、大統領選と就任式で2500万ドル(約27億円)の献金を行なっている。
 
 それだけのスポンサーのためにトランプ大統領は、安倍晋三首相に「カジノへの米企業参入」を迫り、安倍政権はそれに応じようとしている。
 
 敵対国である中国のカジノ未経験業者が、参入できる余地などなかった。
 
 しかも秋元被告は、特捜部が19年7月に摘発した企業主導型保育事業を巡る助成金詐欺事件の際、主謀者の川崎大資(旧名・塩田大介)被告の政界パイプであることが判明、不可解な政治献金もあったことから特捜部が目を付けていた。
 
 「秋元銘柄」といわれるパチンコ、土建、除染、太陽光、不動産といった業者は軒並み調べられ、その捜査の過程で浮かび上がったのが、カジノであり「500ドットコム」だった。
 
 これまで官邸に遠慮して中央政界に手を付けなかった特捜部だが、今回は秋元被告が問題のある企業との交流を厭わないワルであったこと、中堅とはいえ副大臣を経験した程度の小物だったこと、そしてカジノに参入をさせたくない中国であったことで忖度すべき障壁がなかった。
 
 しかも、政界工作をSNSに大量に投稿して自慢する紺野被告のような脇の甘いコンサルに主導され、沖縄の講演会でスピーチ、北海道の留寿都で家族旅行を楽しみ、裏ガネをもらって便宜を図ってきたのだから、「俺だけじゃない」は通らない。――まさに自業自得というしかない。【丑】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月27日配信「中国企業とカジノで組むという秋元司代議士の“悪手”を嫌った地検特捜部が外為法違反で摘発した事件の行方」<事件>  


留寿都村(☚wikipedia)

 

 さながら2000年代前半のITバブル時代の名残り?――国営ITコングロマリットが大株主「500ドットコム」という社名の中国企業の日本法人が、東京地検特捜部の摘発対象となってマスメディアを賑わせている。
 
 同社関係者が、違法に海外から資金を持ち込み、17年当時、北海道のリゾート地・留寿都で進めていたカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致活動に使ったのではないかというもの。これには秋元司代議士の元政策秘書らが関与。外為法違反事件として特捜部の捜査を受けている。
 
 それにしても秋元氏の信じられない脇の甘さである。
 
 カジノといえば、犯罪組織が万が一にも関与してはならないと、米ではゲーミング管理委員会などによって、厳しく監視され参入障壁も高い。
 
 日本もそれに準拠する体制整備が、IRの事業化を前に行なわれている。
 
 そうしたIRを担当する衆議院内閣府の委員長として、それを十分に知っているハズなのに、「500ドットコム」に取り込まれてしまった。
 
 しかも同社は、オンラインカジノ業者ではあってもディーラーが差配する“生”のカジノ運営の経験はない。
 
 さらに、サポート要員として雇った執行役員は、沖縄県日中友好協会事務局長の肩書を持つが、国内外を舞台に投資家をつのるブローカーのような人物で、トラブルも多い。
 
 特捜部が秋元氏に目を付けたのは、後援者の川崎大資被告を、19年7月、企業主導型保育事業の詐欺容疑で逮捕。その政界ルートとして秋元氏が浮上、調べを進めるうちに別件ながら外為法違反事件に行き着いた。
 
「検察のエース」として内外から期待される森本宏特捜部長は、小躍りして喜んだに違いない。
 
 特捜部は、日産元会長のカルロス・ゴーン被告を逮捕し、久々に「最強の捜査機関」に相応しい存在感を見せつけた。
 
 しかし、まだ課題が残っており、それは中央政界への捜査である。
 
 09年の政治資金団体・陸山会事件は、当時の小沢一郎民主党元代表を狙ったものの果たせず、秘書の逮捕に留まった。
 
 この時、石川知裕代議士を逮捕、起訴したが、小沢氏の秘書時代の罪についてであり、真の意味の政治家逮捕ではない。
 
 というわけで、政治家逮捕は02年の鈴木宗男代議士、03年の坂井隆憲代議士まで遡る。
 
「バッヂを狙え!」は、特捜部の使命感を伝える合い言葉だが、都合16年以上、その役割を果たしていないことになる。
 
 秋元事務所が絡む外為法違反事件は、そんな状況を払拭することになった。
 
 展開は早い。――特捜部は、12月7日、秋元氏に仕えていた2名の元秘書宅を家宅捜索した。
 
 2人は、11年7月に設立されたコンサルタント会社の代表を務めており、元政策秘書が17年6月に退任すると、元私設秘書が代わって就任した。
 
 秋元氏は記者会見を開き、落選中の設立時から14年まで顧問を務め、顧問料を受け取っていたことは認めたものの、「以降、会社との関わりは一切ない」としている。
 
 だが、否定されても立件できる材料はあるということで、さらに証拠を積み重ねるために、12月19日、江東区の地元事務所議員会館を家宅捜索した。
 
 容疑の外為法違反は入り口に過ぎない。
 
 あの「ロッキード事件」がそうだったように、外為法違反は政界事件などの入り口に使われることが多い。
 
 その分、奥は深く、今回、検察は官邸に捜査着手の報告はしたが、何のどんな容疑が本線かは伝えていない。
 
 それだけ本気だということだが、IR担当として職務権限はあるだけに、贈収賄事件としての立件が、“本線”になる」(検察OBの弁護士)
 
「500ドットコム」の中国人代表は、留寿都の前は沖縄IRに関心を示し、17年8月、那覇市でシンポジウムを主催したことがある。
 
 その基調講演を中国人代表とともに行なったのが秋元氏だった。
 
 中国企業がIRという国家プロジェクトに参入するというだけで、日本の司法当局は警戒する。
 
 なのに秋元氏は、国内の通常の陳情を捌くのと同じ気軽さで“相談”に乗ってしまったわけだが、その前からターゲットだったという意味で、特捜部に狙われる要件は、十分に満たしていたのである。【酉】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月24日配信「風雲急!――秋元司代議士元秘書を家宅捜索した東京地検特捜部の狙い?」<事件>

 
秋元司代議士(wikipedia)

 カルロス・ゴーン逮捕で久々に「最強の捜査機関」に相応しい存在感を見せつけた東京地検特捜部だが、中央政界の捜査は成果を上げられずにいる。
 
 09年の政治資金団体・陸山会事件は、当時の小沢一郎民主党元代表を狙ったものの果たせず、秘書逮捕に留まった。
 
 この時、石川知裕代議士を逮捕、起訴したが、小沢氏の秘書時代の罪についてであり、正確にはダッシュマークがつく逮捕であり
「政治家逮捕」は02年の鈴木宗男代議士、03年の坂井隆憲代議士まで遡る。
 
 「バッヂを狙え!」は、特捜部の使命感を伝える合い言葉だが、17年近くその役割たしていないことになる。
 
 そんな状況を払拭することになるのだろうか――。
 
 東京地検特捜部は、12月7日、秋元司代議士に仕えていた2名の元秘書宅を家宅捜索した。
 
 2人は、11年7月に設立された芸能関係会社の代表を務めており、元政策秘書が17年6月に退任すると、元私設秘書が代わって就任した。
 
 秋元氏は記者会見を開き、落選中の設立時から14年まで顧問を務め、顧問料を受け取っていたことは認めたものの、「以降、会社との関わりは一切ない」としている。
 
 容疑は海外から多額の現金を不正に持ち込んだとされる外為法違反だが、具体的な内容は伏せられており、秋元氏も「心当たりはない」と、断言した。
 
 だが、外為法違反は「入り口」だろう。
 
「ロッキード事件がそうだったように、外為法違反は政界事件などの入り口に使われることが多く、その分、奥は深い。
 
 今回、検察は官邸に捜査着手の報告はしたが、どんな容疑が本線なのかは伝えていない。それだけ本気で政治家を狙っているということ」(検察OBの弁護士)
 
 家宅捜索の1週間後には、北海道庁のIR(カジノを含む統合型リゾート)関係部署にも特捜部が赴き、中国系企業・F社のルスツリゾート進出に絡む不可解なカネの流れに着目、任意で資料提供を求めている。
 
 同社のH代表は、沖縄IRにも関心を示し、17年8月、那覇市でシンポジウムを主催したことがある。
 
 その基調講演を中国人代表とともに行ったのが、当時、IRを担当する衆院内閣委員会の委員長を務め、超党派のIR議連の副幹事長でもある秋元氏だった。
 
 ただ、北海道に限っているわけではなく、「幅広く、秋元関連を調べている」(司法担当記者)という。
 
「特捜部が秋元代議士に興味を持つきっかけは、内閣府の企業主導型保育事業を巡る助成金詐欺事件の過程で、主犯格の川崎大資被告と秋元氏との親密な関係が浮上、事業関係者から献金を受け取っていたことが判明してからです。特捜部の参考人聴取が活発に行なわれ、それが保育事業と関係のない分野にまで広がった」(同)
 
 それは、秋元氏の「来る者拒まず、清濁併せ呑む」という政治スタイルと無縁ではない。
 
 師匠といえるのが、秘書として仕えた小林興起元代議士。同じようにウイングが広く、人脈もまたグレーゾーンの人種を厭わない小林氏を真似ているし、一部はその人脈を引き継いでいる。
 
 今回、家宅捜索という本格捜査の前に、特捜部は太陽光など再生エネルギー、パチンコ・パチスロ、公共工事に強い地方の建設、街金と呼ばれる高利金融、増資を繰り返す業績不振企業など多方面に任意の形で調査・捜査を入れていたが、挙句のルスツIRであり、今後はそれを軸に捜査は展開されよう。
 
 秋元氏は、内閣府、環境省、国土交通省などの副大臣を務め、それなりに職務権限を持つ。
 
 指揮を執るのは、「検察のエース」の森本宏特捜部長。――国会が始まれば不逮捕特権があるだけに、年明け1月20日の通常国会招集までに動きを見せると目されている。【子】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月21日配信<0510archives>「『Black Box』(伊藤詩織著・文藝春秋)が告発する司法の歪み」<事件>



 


 

 

 

 

 レイプ被害者として「顔出し告発」していた伊藤詩織さんが、10月18日、『ブラックボックス』(文藝春秋)を上梓した。
 
 今年5月、詩織さんは検察審査会に不起訴処分を受けて異議を申し立て、記者会見で経緯を説明した。
 
 その時も衝撃だったが、検察審査会での「不起訴相当」を受けて著した本書では、そうした会見などでは伝わらぬ思いが、時系列で詳細に語られ、一級のノンフィクションであると同時に、日本の司法システムに対する鋭い告発書にもなっている。
 
 圧巻は、「安倍晋三首相に最も近い記者」という評判の元TBS記者・山口敬之氏と、詩織さんにとって同氏に対する「顔を思い出したくもない加害者」であるという辛さを封印して、責任を追及するために行った交換メールの公開と、高輪署、警視庁捜査一課、そして検察との「山口氏の圧力」を感じながらの切迫した交渉だろう。
 
 率直に感じられるのは、詩織さんの強さである。
 
 それは5月時点の「顔出し会見」で証明されてはいたが、今回、明かされたジャーナリストを目指して欧米で学んだという経歴が、告発への動機を裏付けるとともに、そうした意志も強さも持っている人が、それでも「司法のカベ」に跳ね返されてしまった。
 
 強さは、レイプ犯を許さないという一貫した姿勢にあるが、その一方で、詩織さんの心は常に山口氏の“幻影”に怯えており、「魂の殺人」だというレイプが被害者に与える傷の深さに慄然とさせられる。
 
 それだけのプレッシャーを受けながら、これまでのレイプ被害者の大半が、「正体を晒しても何の得にもならない」と、勝訴しても自分の胸の内にしまい込むか、示談に応じて事件を封印するなか、詩織さんが実名告発し書籍まで発売したのは、個人的な恨みを晴らすのではなく、「私に起こったことが、あなたに、あるいはあなたの大切な人に降りかかってくるか、誰にも予測はできないのだ」(まえがきより)と、訴えたいからである。
 
 その告発するという行為の結果として、司法の“歪み”が露呈した。

 

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                                                                      BBC公式HP
 

 

「よくある話だし、事件として捜査するのは難しいですよ」
 
 担当する高輪署のA氏が、最初に投げかけたのはこの言葉であり、詩織さんは「それはあまりに残酷な言葉だった」と、嘆く。
 
 以降、「今まで努力してきた君の人生が水の泡になる」と、被害届の提出を考え直すように説得するA氏を、むしろ詩織さんが引っ張る形で捜査は進み、山口氏の帰国を待って逮捕するところまで進展した。
 ところが、15年6月8日、成田空港に山口氏逮捕に出向いたA氏から「逮捕できません」という連絡が入る。
 
 理由を問うと「ストップをかけたのは警視庁のトップです」という返事。後に、それが中村格警視庁刑事部長(当時)であることが明らかになる。
 
 以降、所轄の高輪署から警視庁捜査一課に事件は移送され、A氏も担当検事も配置替えとなり、事件は封印の方向に向かう。
 
 捜査一課の捜査が、不起訴へ持っていくためのものであるのは、「なぜ逮捕状が出たのに逮捕しなかったのか」という詩織さんの問いかけに、「逮捕状は簡単に出ます」と断言。「社会的地位のある人は、居所がはっきりしているし、家族や関係者もいて逃走の恐れがない。だから、逮捕の必要がないのです」と、いってのけた捜査一課幹部の言葉で明らかだ。
 
 官邸から中村部長へと伝えられたことで発生した“忖度”は、捜査現場を動かして起訴には不十分な捜査内容となり、不起訴処分は出た。
 
 その証拠に沿って国民からくじで選抜される検察審査会の審査員が、検察官に誘導される形で事件性を審査すれば、「不起訴相当」となるのも無理はない。
 
 司法は、そのシステムを熟知し、方向性を変えうる力のある人間が操作すれば、簡単に歪むものである。
 
 レイプが行われたとされる15年4月4日以降、2年半の歳月をかけて詩織さんが著した『ブラックボックス』で、我々が読み取るべきは、レイプ被害の傷跡の大きさとともに、それを見逃してしまった司法システムの検証であろう。【午】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月18日配信<0510archives>「保育所事業補助金詐欺の川崎大資(塩田大介)容疑者をスポンサーにしていた秋元司国交副大臣に捜査は及ぶのか?」<事件>


 渦中の秋元司国交副大臣
(☚wikipedia)

 

 「川崎大資」というより、改姓改名前の「塩田大介」の方がしっくりするし、また「塩田らしい」といって差し支えないのが、企業主導型保育事業に絡み、横浜幸銀信用組合から約1億1000万円を騙し取った疑いで逮捕された川崎大資容疑者である。
 
 摘発したのは、塩田姓時代の昔、脱税容疑で摘発したことがある東京地検特捜部だ。
 
 申請書類を偽造、金融機関を騙したという、よくある詐欺事件。しかも金額は1億円強と少なく、足場も福岡という良くない場所の事件を、なぜ特捜部が手掛けたのか――。
 
 そう司法記者に聞かれた検察幹部は「彼(川崎)は、お客さんだから」と、答えた。
 
 脱税だけでなく、当時、経営していた「ABCホーム」の上場を狙った工作などで、塩田は検察の要注意人物だった。
 
 脱税の次の摘発は、居城といっていい「西麻布迎賓館」を競売されそうになり、“登記の魔術師”の小野塚清氏と組んだ競売妨害事件だった。
 
 これは警視庁組織犯罪対策4課の扱いとなったが、政治家、暴力団、反社会的勢力から芸能界まで、カネにあかせて人脈を広げる川崎容疑者は、「何かしでかす人物」であり、実際、今回は制度の隙間を巧みについて助成金を詐取した。
 
 つまり、書類偽造の詐欺事件は入り口で、今後、安倍政権の目玉政策のひとつで、3年間に3800億円以上も投じた企業主導型保育事業の助成金詐取に延びる。
 
 さらに、「ABCホーム」が隆盛の頃、西麻布迎賓館には政治家も含む華麗なる人脈が遊びに来ていて、川崎容疑者は至れり尽くせりの接待をした。
 
 脱税摘発の2年前、都内のホテルで開いた結婚式には、上場企業経営者はもちろん、野村克也監督夫妻、酒井法子夫妻、中村玉緒、竹内力ら多くの著名人が出席。媒酌人は中川秀直元官房長官で、他にも政界から官僚を含む5人の国会議員が出席した。
 
 要は、川崎容疑者は「撒く人」であり、その性癖は、簡単には変わらない。
 
 それが分かっているから特捜部は、制度利用の際、政治家の口利きはなかったか、あるいは窓口の「児童育成協会」への工作を行なわなかったか、といった観点からの捜査を続ける。
 
 最初に浮かび上がった政治家が、秋元司内閣府副大臣である。
 
 今年5月23日の衆議院厚生労働委員会で、立憲民主党の石橋通宏参院議員が、秋元副大臣にこう質した。
 
 「川崎容疑者は、拠点を福岡市に移し、そこで『WINカンパニー』という会社でキッズランドという保育所を運営するほかコンサルタント業務を展開している。


 同社のコンサルを受けた業者は、『秋元副大臣を川崎容疑者に紹介してもらい、各種の陳情を行なう一方、(川崎容疑者の)要請に従ってパーティー券を購入した』と、地元のネットメディアに証言している。
 川崎大資という人物とどういう関係なのか――」
 
 こう質問した石橋議員に対して、秋元副大臣は「口利き依頼」については否定、問い合わせについては「パンフレットなどで説明した」と、述べ、川崎容疑者とは「20年前に知り合い、パーティーなどの席で5〜6年前に会った」と、記憶を辿った。
 
 献金については、「WINカンパニー」と献金を要請された企業とのメールのやり取りが公開されており、政治資金収支報告書にも記載されてことで、川崎容疑者を仲介者とする「陳情と献金」の関係は明らかだ。
 
 だが、逆にそこがネックとなる。
 
 危うい関係が多かった小林興起元代議士のもとで秘書として働き、秋元副大臣は「危険なカネの処理」には長けているという。
 
 陳情をパーティー券購入という表で処理した時、それを贈収賄の構図で問うのは難しい。
 
 「特捜部が政界ルートを狙うには、明確な口利きの事実を立証しなければならず、犯歴があり、名前まで変えている塩田のために、機を見るに敏な秋元が、そこまでやってやるとは考えにくい」
 
 双方を知る政界関係者は、捜査の先行きについて悲観的な見方をするが、それとも巷間噂されるように久しぶりにバッヂに手が届くのか?――今後の捜査の進展から目が離せない。【午】

 

 ※12月東京地検特捜部が秋元司代議士の元秘書宅を家宅捜索。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月19日配信「苫小牧にIRを誘致せず――鈴木北海道知事の決断に橋本五輪相、森章・森トラスト会長などが予定を狂わされて大落胆」<事件>

 
鈴木直道北海道知事(Wikipedia)


 「苫小牧へのIRの誘致を見送ります」――アベノミクスの経済浮揚策で首相官邸が期待、地元政財界も景気対策や雇用確保のために誘致一色かと思われたカジノを含む統合型リゾート(IR)に、初めて「ノー」が突き付けられた。
 
 鈴木直道・北海道知事は、11月29日、道議会で誘致を見送る表明をした。
 
 理由は「自然環境への影響」で、候補地の苫小牧市植苗地区が、希少動植物が生息する自然豊かな地で、「21年7月という誘致申請期限までに、環境への適切な配慮を行うことは不可能」と、見送りの理由を説明した。
 
 既に、苫小牧市は誘致を推進する決議案を可決、道内4経済団体も誘致表明を求める緊急共同宣言を道に提出していた。
 
 集客は年間840万人を見込み、雇用は1万人と試算され、最大で年約1600億円の売り上げが期待できるとあって、みんなが前のめりとなっている印象だった。
 
 だが、住民の意向を尊重したものではない。
 
 道が行ったアンケート調査では三分の二がIRへの誘致に「不安」と回答。「治安の悪化」と「ギャンブル依存症問題」が主たる理由で、自然保護団体からは「環境保護の方が大切」という声が上がっていた。
 
 IRに関し、政財界や行政と住民との間に落差が大きいのは「誘致表明」をしたばかりの横浜も同じだが、説得して推進するのが行政の前提と思われたIRに、鈴木知事が下した「誘致せず」の決断は、IRに多様性をもたらした。
 
 とはいえ、関東(東京か横浜)にひとつ、関西(大阪市)にひとつ、地方にひとつの計三つのIRが既定方針となっているなか、北海道・苫小牧は最有力候補と目されていただけに、推進派の落胆は大きい。
 
 政界では橋本聖子五輪相である。
 
 東京五輪開幕の年に生まれて「聖子」。冬のスケート、夏の自転車と計7回の五輪に出場、銅メダルを獲得。引退後、政界に打って出て、現在、参院5期目。今年9月の内閣改造で、五輪相という念願の閣僚ポストを手に入れた。
 
 出身は、苫小牧に隣接する安平町で、最大級のスポンサーは競走馬の世界で知られた社台グループである。
 
 吉田照哉、勝己、晴哉の「吉田三兄弟」が運営する社台グループはIR誘致にも熱心で、勝己氏が苫小牧統合型リゾート推進協議会の副会長。しかも勝己氏が社長を務める「ノーザンレーシング」は、約100ヘクタールの所有地を、IR用として市に無償提供することになっていた。
 
 橋本五輪相と勝己氏の思惑は一致。『週刊新潮』は、10月31日号から3週連続で、次のような疑惑を報じた。
 
 「マラソン・競歩を札幌で行う代わりに鈴木道知事にカジノ誘致を了承させる」――結果的に“誤報”だったが、政治家も経済界も行政も、それだけ期待を込めていたのは事実。そして、日本最大級の都市とリゾートの開発事業者である「森トラスト」も、大きく計画を狂わされた。
 
 今年83歳となった森トラスト会長の森章氏は、3年前、娘の伊達美和子氏に社長を譲ってからは、人生最後の夢を苫小牧に託すとして、一大リゾート計画を推進してきた。
 
 会社にリスクを取らせるわけにはいかないと、「MAプラットフォーム」という個人会社で約1000ヘクタールもの土地を取得した。
 
 その後、「森トラスト」は、ここにIRの進捗と合わせ、高層ホテル、広々としたコンドミニアム、温泉を含むスポーツ・レクリエーション施設などを建設、2500億円を投じることになっていた。
 
「誘致見送り」の報を受けても、森章氏は「予定通りに開発を行う」と、強気の姿勢を崩さなかったが、単独での2500億円プロジェクトは難しく、修正を余儀なくされよう。
 
「MAプラットフォーム」が、予定地を開発権利付きで購入した時の価格は約55億円。だが、原価は12億6000万円に過ぎず、「2割の利益を乗せたとしても40億円も高い買い物をさせられた」ということで、森氏は当時の社長を相手に損害賠償請求訴訟を行っている。
 
 この売買には、仲介業者として森氏と親しい謎の中国人女性が絡んでおり、複雑な様相を呈している。
 
 国税当局も取引を怪しみ、未だに調査を続けており、IRが予定通り進展すれば、そうした“躓き”は解消されただろうが、構想に終わったことで痛みは引きずる。
 
 IRの見送りは、こうした数々の「痛みと落胆」を、準備を進めていた政・官・財界の人間に与えることになりそうだ。【巳】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月17日配信「執念と強欲に塗れた馬毛島を防衛省が“破格”の160億円+αで購入!」<政治>

 

 「ついに」というべきだろう。――政府は、11月29日、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転先となっていた馬毛島の購入について、地権者と合意した。
 
 「基地絡み」の話だけに、交渉がもつれるのは予想できたが、取得以来、延々20余年。防衛省と執念の交渉を繰り返し、国ばかりか債権者の鼻面を引き回しながら、交渉してきた地権者の粘りは、驚嘆に値する。
 
 種子島の西方12キロの南シナ海に浮かぶ無人島の馬毛島を所有するのは「タストン・エアポート」。――政府=防衛省との尋常でない交渉を続けてきたのは、同社が所属する立石建設グループを率いる立石勲氏である。
 
 鹿児島県出身で水産高校を卒業後、船乗りを経て建設設計分野に進み、砂利採取、再生砕石、産業廃棄物処理と幅広く事業展開する立石建設グループを一代で築き上げた。
 
 事業は多方面に及ぶが、現在、86歳の立石氏が、人生を賭けた事業といっていいのが、95年に購入した馬毛島に、民間初の国際貨物空港を建設することだった。
 
 馬毛島は、数奇な運命を辿った島である。
 
 石油備蓄基地、一大レジャーランド、防衛庁(当時)レーダー基地など幾つもの構想が生まれ、いずれも実らず、その島を船乗り時代に横目で眺めていた立石氏が、4億円で取得した。
 
 以降、憑かれたように飛行場建設を進め、南北4200メートル、東西2400メートルの“粗滑走路”を敷設した。
 
 それに目をつけたのが防衛省である。
 
 11年、訓練基地に関して日米が合意に達し、大きな騒音を伴うFCLPを無人島で米軍基地に近い馬毛島で行なう計画が浮上する。
 
 ネックは価格だった。
 
 防衛省は、17年3月、「日本はもっと防衛負担を!」と、主張するトランプ大統領の誕生を機に、立石氏との交渉を急ぎ、45億円という鑑定価格を出して交渉に入った。
 
 だが、「これまでに150億円は投じた」と、主張する立石氏は、国の足元を見透かしたように、自ら依頼した鑑定士事務所の結果をもとに、約400億円を主張して譲らなかった。
 
「国の予算」なので、倍の開きでも難しいのに10倍近い価格差で暗礁に乗り上げたが、立石氏は一歩も退かない。
 
 だが、一方で立石氏にも差し迫った事情があった。
 
 将来の見通しもない空港建設に、資金を突っ込んだおかげでグループの経営は“火の車”となった。
 
 そのため、都内や川崎市などに持つグループの資産には限度枠いっぱいの抵当権が設定され、残る馬毛島を切り売りするように、金融業者に担保提供せざるを得なくなった。
 
 丁寧で腰は低いが、図太いのが立石氏の真骨頂。のらりくらり、あの手この手で借金を重ね、総額は約250億円に達したという。
 
 「売却に成功したら10億円」といったアテのない“空証文”を連発、厳しく取り立てた金融業者が恐喝で逮捕されたこともある(不起訴処分)。
 
 その苦境を利用して、防衛省が債権者をけしかけて、昨年夏には第三者破産に持ち込んだこともあったが、辛くも新たな金融業者S社の支援を受けて乗り切った。
 
 が、売却しなければ、借金が返せない状況に変わりなく、S社主導の防衛省との交渉が、今年に入って再開され、2月に一旦は160億円で合意。だが、「それでは借金は返せても立石建設は立ち行かない」と、5月の段階で白紙に戻った。
 
 その後、方々に声をかけて急場を凌ぐ綱渡りのような金策が続いたものの、10月に入ると不渡りを出して万事、窮した。
 
 再び、S社の支援を受けざるを得なくなり、「ごね得」を封じ、売却価格は160億円でプラスαを求める交渉に入った。
 
 結局、「プラスαの中身は公開されていないが、工事に関することだ」(周辺関係者)という付帯条件がついたことで、ようやく11月末の防衛省との合意となった。
 
「工事に入れば、それなりの仕事が出てくる。それを『立石建設』が受注するということ。それなら160億円では足りない分をカバーできるし、債権者も納得する」(防衛省関係者)
 
 これでも立石氏は不満だというが、その「執念と強欲」が、鑑定価格の「3倍プラスα」という条件を国から引き出したのだから、老いの一徹が奏功したと言うしかない。【午】

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月14日配信「立石勲・立石建設代表が驚異の“粘り腰”で馬毛島を高値売却に成功した背景」<事件>

 
(☚wikipedia)


「ついに」というべきだろう。――政府は、11月29日、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転先となっていた馬毛島の購入について、地権者と合意した。
 
「基地絡み」の話だけに、交渉がもつれるのは予想できたが、取得以来、延々20余年。防衛省と執念の交渉を繰り返し、国ばかりか債権者の鼻面を引き回しながら、交渉してきた地権者の粘りは、驚嘆に値する。
 
 種子島の西方12キロの南シナ海に浮かぶ無人島の馬毛島を所有するのは「タストン・エアポート」。――政府=防衛省との尋常でない交渉を続けてきたのは、同社が所属する立石建設グループを率いる立石勲氏である。
 
 鹿児島県出身で水産高校を卒業後、船乗りを経て建設設計分野に進み、砂利採取、再生砕石、産業廃棄物処理と幅広く事業展開する立石建設グループを一代で築き上げた。
 
 事業は多方面に及ぶが、現在、86歳の立石氏が、人生を賭けた事業といっていいのが、95年に購入した馬毛島に、民間初の国際貨物空港を建設することだった。
 
 馬毛島は、数奇な運命を辿った島である。
 
 石油備蓄基地、一大レジャーランド、防衛庁(当時)レーダー基地など幾つもの構想が生まれ、いずれも実らず、その島を船乗り時代に横目で眺めていた立石氏が、4億円で取得した。
 
 以降、憑かれたように飛行場建設を進め、南北4200メートル、東西2400メートルの“粗滑走路”を敷設した。
 
 それに目をつけたのが防衛省である。
 
 11年、訓練基地に関して日米が合意に達し、大きな騒音を伴うFCLPを無人島で米軍基地に近い馬毛島で行なう計画が浮上する。
 
 ネックは価格だった。
 
 防衛省は、17年3月、「日本はもっと防衛負担を!」と、主張するトランプ大統領の誕生を機に、立石氏との交渉を急ぎ、45億円という鑑定価格を出して交渉に入った。
 
 だが、「これまでに150億円は投じた」と、主張する立石氏は、国の足元を見透かしたように、自ら依頼した鑑定士事務所の結果をもとに、約400億円を主張して譲らなかった。
 
「国の予算」なので、倍の開きでも難しいのに10倍近い価格差で暗礁に乗り上げたが、立石氏は一歩も退かない。
 
 だが、一方で立石氏にも差し迫った事情があった。
 
 将来の見通しもない空港建設に、資金を突っ込んだおかげでグループの経営は“火の車”となった。
 
 そのため、都内や川崎市などに持つグループの資産には限度枠いっぱいの抵当権が設定され、残る馬毛島を切り売りするように、金融業者に担保提供せざるを得なくなった。
 
 丁寧で腰は低いが、のらりくらりが立石氏の真骨頂。、あの手この手で借金を重ね、総額は約250億円に達したという。
 

 「売却に成功したら10億円」といった根拠のない“空証文”を出し、厳しく取り立てた都下の金融業者が恐喝で逮捕されたこともある(不起訴処分)。
 
 その苦境を利用して、防衛省が債権者をけしかけて、昨年夏には第三者破産に持ち込んだこともあったが、辛うじて金融業者N社の支援を受けて乗り切った。
 
 が、売却しなければ、借金が返せない状況に変わりなく、N社主導の防衛省との交渉が、今年に入って再開され、2月に一旦は160億円で合意。だが、「それでは借金は返せても立石建設は立ち行かない」と、骨肉の争いの末、5月の段階で白紙に戻った。
 
 その後、方々に声をかけて急場を凌ぐ綱渡りのような金策が続いたものの、10月に入ると1回目の不渡りを出して万事、窮した。
 
 再び、N社の支援を受けざるを得なくなり、「ごね得」を封じ、売却価格は160億円でプラスαを求める交渉に入った。
 
 結局、「プラスαの中身は公開されていないが、工事に関することだ」(周辺関係者)という付帯条件がついたことで、ようやく11月末の防衛省との合意となった。
 
「工事に入れば、それなりの仕事が出てくる。それを『立石建設』が受注するということ。それなら160億円では足りない分をカバーできるし、債権者も納得する」(防衛省関係者)
 
 これでも立石氏は不満だというが、その「執念と強欲」が、鑑定価格の「3倍プラスα」という条件を国から引き出したのだから、老いの一徹が奏功したと言うしかない。【午】



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