2020年8月14日配信<0510archives>「日・米・欧の中央銀行が超金融緩和と財政ファイナンスでコロナ禍を吹き飛ばす株高を演出中?」<経済>

 
日本最大の仕手筋(wikipedia)

 

 日・米・欧、先進国の株価上昇が続いている。
 
 日経平均株価も3月中旬を底に、上げ相場が続いており、新型コロナウイルスの感染拡大前の水準に戻りつつある。
 
 証券界の一部で伝えられる「悪材料を折り込んだうえでの経済再開への期待」といった見方は、肯定的に相場を捉えようとする兜町流の“こじつけ”で、実態は日・米・欧が共同で行っている官製の工作相場である。
 
 それも過去に例がないほど大がかりで、日銀も米連邦準備理事会(FRB)も欧州中央銀行(ECB)も、放置すれば奈落の底に落ちていく経済に驚愕、なりふり構わず量的緩和に走り、社債やコマーシャルペーパー(CP)を買い入れ、企業活動を下支えしている。
 
 また、各国政府に中央銀行が連動、新型コロナ対策の自粛で空いた国内総生産(GDP)の穴を財政出動で埋めようと、財政規律を度外視。国債の増発に踏み切っているが、それを中央銀行が事実上の財政ファイナンスで支えている。
 
 超金融緩和と巨額財政出動、それに社債、CP、上場投資信託を通じた株の買い支え――。日米欧の官製相場で株価を持ち上げているわけで、現在の株価は実体経済を反映したものではない。
 
 今後、自粛は解除されても、世界の感染者が増え続け、国境のカベで人的交流が途絶え、第2波、第3波の心配は絶えず、供給網がズタズタのままで、株価が上がるわけはない。
 
 株価が「経済を映す鏡」であるのは、3月上旬から中旬にかけてまでだろう。
 
 新型コロナの感染力の強さが判明、世界経済への影響が深刻化するなか、3月に入って株価は急落を続け、3月12日は米株式市場でダウ平均株価は一時2200円安となり、日経平均株価は1万9000円を下回り、欧州株式市場で英独仏の株価指数は、前日比10〜11%安となった。
 
 パニック売りであり、その後も日経平均株価は下げ続け、3月19日は1万6553円の年初来安値を記録した。
 
 だが、そこで中央銀行が、市場介入への明確な意思を示したことで、潮目は変わり、株価は上昇に転じた。
 
 FRBは、3月15日、定例の連邦公開市場委員会を緊急で開き、1%の利下げによる「ゼロ金利政策」の復活と大規模な量的緩和の再開を決めた。
 
 遅れることなく日銀も、金融政策決定会合を前倒しして16日に開き、ETFや不動産投信リートの追加買い入れや企業金融を支援するための資金供給を決定。なかでもインパクトがあったのがETFの年間買い入れを6兆円から12兆円に倍増させたことである。
 
「以降、現物でも先物でも売りが出てくれば日銀が拾うという相場展開となり買いに安心感が広がった」(ファンドマネージャー)
 
 ECBが決めたのは、総額7500億ユーロ(約91兆円)のパンデミック緊急購入プログラムであり、国債、社債、CPを買い入れて景気を支えた。
 
 日米欧の緩和マネーの伸びは著しく、20年末の資産は、前年比1・5倍の2400兆円に達する可能性がある。
 
 今後も資産を膨らませて株価を押し上げるわけで、FRBも日銀も、「国債は無制限で買い上げる」と宣言、ECBは7500億ユーロのパンデミック緊急輸入購入プログラムに6000億ユーロを積み上げ、1兆3500億ユーロ(約164兆円)とした。
 
 まさにカネをじゃぶじゃぶにし、国が全部面倒を見ると宣言をしたうえでの管理相場で、株価は上がらない方がおかしいが、問題はいつまで野放図な政策を続けることができるのか、である。
 
 バブルは必ず破裂することを我々は何度も学んできた。――が、その時、世界はどう対応すればいいのだろうか。【🐎】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2020年7月9日配信<0510archives>「「コロナ渦に売上高2000億円の新5カ年計画を発表したAPAグループの逆張り戦略」<経済>

 
APAグループ本社(Wikipedia)

 

 

 飲食、航空、観光、演劇、映画、ホテルなどサービス産業全般を不況のドン底に叩き落としている新型コロナウイルスだが、その最中の3月30日、イケイケの新5カ年計画を発表したのが「APAグループ」である。
 
 新規ホテル建設はもちろん、買収による直営ホテルの拡大、フランチャイズのパートナーホテルの加盟強化、ホテルチェーンとの新たな連携により、2025年11月期のグループ連結売上高は2000億円、経常利益500億円を見込む。部屋数は、「APAホテルネットワーク」全体で15万室。日本一の規模をさらに大きくする。
 
 19年11月期の連結売上高が1371億円で経常利益が335億円。20年3月に10万室を達成したばかりなので、いかに強気の戦略かがわかる。
 
 新型コロナ騒動なんぞは眼中にない。
 
 むしろ「勝機」だとして、3月17日、APAホテル千葉駅前を開業した元谷外志雄代表は、次のように述べた。
 
「現在は、新型コロナウイルスの影響により観光産業全体が厳しい状況にあるが、APAホテルの収益力は高い。むしろ経営の立ち行かなくなったホテルのフランチャイズ転換や買収、M&Aによる出店拡大のチャンスと捉え、積極的に拡大戦略を図り、寡占化一番乗りを目指す」
 
 堂々の逆張り戦略である。
 
 営業利益率の高さを生かして都市圏に集中出店、そのバイイング・パワーで、コロナ渦に揺れる同業他社にM&Aを仕掛け、あるいはパートナーに誘い込むなどして、さらなる成長を目指すという。
 
 首都圏2万室の「社会的機能」も忘れない。
 
 新型コロナ感染者の8割は軽症もしく無症状で、入院に至らずに済む。 
 
 むしろ今後、爆発的に増える感染者のことを考えれば、病院に来られては困る。
 
 そこで自宅や宿泊施設での療養が現実的な策となり、APAホテルは東京都の要請に応じて宿泊施設としての提供に応じる構えを見せており、今後、首都圏を中心とした他の自治体の要望にも応えていく。
 
 「APAグループ」は、帽子がトレードマークの芙美子社長、夫でタカ派国家主義者として知られる外志雄会長の元谷夫妻が一代で築き上げた。
 
 71年創業で、戸建ての注文住宅が出発点。戸建分譲住宅、賃貸マンション、分譲マンションへと進み、84年からホテル事業に進出した。
 
 「不動産屋のホテル事業がうまく行くはずはない」という周囲の反対をよそに、コンパクト使用、デイユースサービスの導入などで一気に攻勢をかけた。
 
 10平方メートルしかない息が詰まる狭さを、駅前の簡便さ、安さ、屋上露天風呂などでカバー、ラブホテル代わりといわれるデイユースサービスを昼夜二回転の利益率の高さに結びつけた。
 
 今回の新型コロナを逆手にとったM&A戦略や宿泊施設としての提供も、元谷夫妻らしい「逆張り」である。
 
 だが、弱味もある。
 
 強気の姿勢はいつのもことだが、久美子社長は、1年前、<アパホテルが五輪後の「供給過多」を恐れず拡大戦略に走る理由>(ダイヤモンドオンライン19年6月10日配信)と題する記事のなかで、<何が起きても絶対大丈夫と豪語するつもりはない>といい、起きてもらって困るのは、<戦争>と<パンデミックなどの感染症>と、語っている。
 
 また、好調な連結売上高と経常利益だけは公開する「APAグループ」だが、有利子負債の多さはかねてより指摘されており、バランスシートやキャッシュフローなどの計算書を公表しないのは、自信のなさの表われだろう。
 
 一度、民間調査機関が「アパホテル」、「アパホーム」、「アパマンション」などの15年度の有利子負債が約2000億円と指摘したことがあった。
 
 当時の連結売上高が1100億円だったので、売上高を大幅に上回る借入金残高である。
 
 単純計算では、新5カ年計画で売上高を倍近くに増やせば、借入金も倍となる。
 
 その時、金利環境が変わり、現在の低金利が維持されていなければ経営を直撃。さらに新型コロナ肺炎はいつ終息するか分からないし、その間、目当てのインバウンド客の回復は見込めないとすれば、逆張りが通用しないどころか、経営危機に陥る可能性もあろう。<🐵>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年10月3日配信「杉本公取委委員長が『デジタル時代の競争政策』で明かすGAFA対策と日本の針路」<経済>  


(日本経済新聞社)

 

 GAFAと呼ばれる米の「グーグル」、「アップル」、「フェイスブック」、「アマゾン」は、巨大IT企業の枠を超え、各々が国家をしのぐ帝国となりつつある。
 
 4社の株式時価総額は約250兆円で日本全体の約半分。米ニューヨーク大学経営大学院のアラン・スンドララジャン教授は、「国家より大きな存在で、市民を傷つけはしないが投票権も与えない、善意ある独裁国家のようなもの」と、語っている。
 
 国家を超える存在に抗するには、国家しかなく、今、日米欧が競ってGAFA規制を本格化させている。
 
「市民を傷つけない」というのは、市民=利用者が、GAFAと物々交換の世界にいて、不利益が目に見えないからだ。
 
 利用者は、検索エンジンやメール、地図情報などをタダで利用、対価として年齢、住所、趣味嗜好などの個人情報を与えて、彼らのネット広告などに貢献した。
 
「ウインウイン」な関係と思われたが、データ流出による米大統領選での印象操作、データ資本主義化する世界の覇者として個人を圧倒、情報独占による「勝ち組」として2極化する社会をさらに分断するなど、弊害が顕著となった。
 
 日本でまずGAFA対策を本格させているのは公正取引委員会である。
 
 国家の武器は無数だが、「グーグル」が検索エンジン、「アップル」がスマートフォン、「フェイスブック」がSNS、「アマゾン」がネット通販で圧倒的なシェアを持っている以上、公取委には独禁法という「使える武器」がある。
 
 その公取委を率いて6年目に入った杉本和行委員長が、『デジタル時代の競争政策』(日本経済新聞社)を上梓した。
 
 役人の書籍は、四方八方に目配りした両論併記になりがちだが、これは日本と世界の資本主義のために、「GAFA対策が欠かせない」という信念に基づいている。
 
 公取委が取り組むのは、独禁法が実現する価値が「公正と自由」だからである。
 
<競争政策の仕事は、自由に公正な市場環境を確保すること。市場における新たな創意工夫や勤勉性を応援し、生かしていくことで、イノベーションの推進、消費者の利益の拡大、所得格差の拡大といった今日の重要課題に対処していくための環境整備を図ること>
 
 巨大化したGAFAは、「公正と自由」を摘み取っている。
 
 利用者をプラットフォームに誘うと、情報、物品、相互交流のサービスを提供、個人情報を利用した囲い込みで選択の自由を奪う。
 
 しかも、同種のサービスを提供する企業があれば、豊かな資金力で買収をかけ、「対抗の芽」を摘み取ってきた。
 
「グーグル」は「ユーチューブ」や「ダブルクリック」、「フェイスブック」は「インスタグラム」や「ワッツアップ」を買収した。
 
 公取委が行ったアンケート調査(19年4月に中間発表)に、プラットフォームを利用するアプリやモールの運営事業者と消費者の不満が凝縮されている。
 
<契約ルールの一方的押し付け、取引条件の一方的な不利益変更、過剰コスト負担、不承認やアカウント停止等に関する不合理性、データへのアクセス制限等取引慣行に関する懸念が表明されている>
 
 それでも我々は、GAFA利用抜きの社会生活が成り立たないほどGAFAの提供するサービスに依存している。
 
 依存させ、利用もしているが、GAFAは「投票権」を与えない。
 
 与えられないから不満は解消せず、GAFAの代替物がない以上、公取委が独禁法で彼らの営業活動に縛りをかけるしかない。
 
 本来、民間企業の事業活動に、こうした包囲網を敷くのは“禁じ手”だろう。だが、GAFAはその域を超えてしまった。
 
 プラットフォーマーが、取得した個人情報をAIやビッグデータとつなぎ合わせ、そこに物流手段とシェアリングエコノミーを組み合わせれば、あらゆるビジネスが成り立ってしまう。
 
 既に具現化しているが、実際の書店、百貨店、ショッピングモール、量販店などがショーウインドー化、ネット通販に押されて閉店と倒産が相次いでいる。
 
 情報はタダが当たり前になり、新聞雑誌テレビなどのメディアは付加価値を認められずに縮小の一途。証券、保険、銀行、旅行、不動産などの代理業務は不要になり、タクシー・ハイヤー、旅館・ホテルなどは行き場を失っている。
 
 といって「勝ち組」のGAFAは雇用を生まず、2万人に満たない「フェイスブック」が、38万人の「トヨタ自動車」の倍以上の53兆円の時価総額を誇っている。
 
 この不均衡がもたらす2極化の進展は、国民を決して幸福にすることはなく、文字通り「公正な取引」の信念に基づく公取委の戦いが、これから本格化することになる。【卯】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年5月25日配信「モノ言う株主・村上世彰氏の新装ビジネスモデルはカネ儲けと慈善事業家の二本立」<経済>

 

 日本には世界の金融界を唖然とさせた判決文がある。


 「安ければ買うし高ければ売るという徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない」

 2007年7月、東京地裁の高麗邦彦裁判長が、ニッポン放送株を巡るインサイダー取引事件で、罪に問われた村上世彰被告に、有罪判決を言い渡した際の判決文である。

 安く買って高く売るのは、すべてのものに価格をつけて売買する資本主義社会の原則であり、利益至上主義は、株主・投資家のために利益をもたらす役割の経営陣の使命である。――それを日本の裁判官が、それを否定したのである。

 ただ、12年前のこの裁判の時点では、村上世彰氏の行動原理は、一般国民に受け入れられなかったのは事実である。

 「企業価値を最大限にしない経営陣が悪い」――上場企業の歪みをついて株を買い占め、揺さぶって売り抜けるか買い取りを迫る「モノ言う株主」として、正論を口にしつつ、自分だけがカネを儲けようとする拝金思想に嫌悪を感じる人は少なくなかったからである。

 だが、事件を受けて、「日本が嫌になった」とシンガポールに移住したものの、資本市場が歪んでいるからこそ商売のタネが転がっている日本に、村上氏は舞い戻ってきた。

 「マクセルHD」、「ヨロズ」、「新明和工業」、「廣済堂」と、ここ数年、村上氏が手掛ける銘柄は、1000億円といわれる村上ファンドの投資規模からすれば手軽なものばかりである。

 インサイダー事件では5000億円の投資規模だったが、それは投資家のカネを集めていたからで、今は自分の資金での勝負なのでムリをしないし、する必要もない。

 「フジ・サンケイグループ」や「阪神電鉄」といった目立つ銘柄で検察に狙われた教訓も生きている。

 それに、今の村上氏は名声も得たい。59歳と還暦を目前に評価してもらいたい。単なるカネ儲けが目的の投資家で終わりたくない。――そんな名誉欲にもかられている。

 昨年9月、村上氏は青少年向けに『いま君に伝えたいお金の話』(幻冬舎)を上梓した。

 子供たちに「カネとは何か」を伝え、できるだけ早く「稼いだおカネを貯めて増やす」ことを学ばせようする。

 その実現の一環として、昨年10月、高校生までの100人にひとり10万円を渡し、投資をさせる「実体験プロジェクト」を実行。同時に、稼いだカネを使う方法として寄付やチャリティという社会貢献活動をあげ、「チャリティ・プラットフォーム」という自らの非営利団体を紹介している。

 3月5日に放送されたTV東京の『ガイアの夜明け』は、そんな村上氏の「今」を伝えたが、そこに登場した友人の堀江貴文氏の村上評が、さすがに鋭く面白かった。

 「村上さんにはA面とB面がある。コーポレートガバナンス(企業統治)の重要性を熱く語るA面も、カネ、カネ、カネのB面も、どちらも村上さん――」

 村上氏が、直近に手掛けたのが「廣済堂」である。

 同社の株式公開買い付け(TOB)に反対、1月末までに猛然と買いに入って9・55%を集め、TOB失敗の原因を作った。

 買い占めは、「610円というTOB価格が安過ぎる」というのが第一の理由で、「株式の非上場化を狙った経営陣の狙いが明確でない」というのが第二の理由。――つまり村上氏にとって同社はコーポレートガバナンスの確立していない、株主のためにならない企業だった。

 そんな企業の株を買い占めて巨利を得ると同時に、そうした活動を通して証券市場を健全化にするというのが村上氏の新装ビジネスモデルである。

 かつてはそれを国家に否定されたが、今は、コンプライアンスとともにコーポレートガバナンスが企業経営者に求められるようになり、15年6月からは、コーポレートガバナンス・コードとして規則化された。

 ようやく時代が村上氏に主張に沿うようになり、その流れに乗って慈善事業家としての名声も得ようとしている。――その見極めにはもう少し時間が必要だが、弁が立って行動が伴う同氏が確立したビジネスモデルは、次代の大株主像のひとつとして長く記憶にとどめられそうである。【寅】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年5月9日配信<0510archives>「アマゾン、グーグルなど巨大プラットフォーマーに公正取引委員会が本気で切り込む理由」<事件>

 

 

 公正取引委員会が、世界の資本市場を席巻する「アマゾン・ドット・コム」など米の巨大プラットフォーマーに、「伝家の宝刀」というべき独占禁止法第40条による強制調査も視野に、切り込む方針を固めた。


 独禁法による立ち入り検査そのものは、これまでにも行なってきた。

 だが、調査がプラットフォーマーの取引先に及ぶと、守秘義務契約などの法の壁や、プラットフォーマーの圧倒的な存在感への怯えから供述を拒むことが少なくなかった。

 そこで公取委は、独占・寡占企業の取引先に対しても強制力のある独禁法40条の適用を行なう。

 「アマゾン」、「グーグル」、「フェイスブック」、「アップル」の4社を、その頭文字を取って「GAFA」(ガーファ)と呼ばれている。

 10年前の米の株式時価総額ランキングは、「エクソンモービル」、「ゼネラル・エレクトリック」、「マイクロソフト」、「シティグループ」など、石油、電気、IT、金融など産業界の雄が顔を揃えたが、今は、1兆ドル超えをした「アップル」をはじめ、「アルファベット」(グーグルの持ち株会社)、「アマゾン」、「フェイスブック」などプラットフォーマーが上位を独占する。

 こうした構造変化が、世界の国民生活を豊かにするのであれば、彼らの急成長も認められよう。

 だが、ニューヨーク大学スターン大学院のスコット・ギャロウェイ教授が近著『GAFA四騎士が創り変えた世界』で、「このままでは米国は、300万人の領主と3億人の農奴の国になる」と喝破したように、GAFAの経営幹部と従業員だけが富む国となり、やがて世界がそれに倣うことになる。

 検索エンジン、通販サイト、交流サイトなどネット上のサービス基盤を持つプラットフォーマーが、資本主義社会の勝者となり、その分野で独占的な地位を築くと、資金力で成長企業の芽を摘むべくM&Aを仕掛けて増殖していく。

 「ネットとリアルの融合体」である「アマゾン」は、消費者に直接、届けるラスト・ワンマイルを持っていることを武器に、本から始まり、衣服、日用雑貨品、食料品まで、望む時間にユーザーに、直接、届けることによって、既存の本屋、スーパー、電器屋、洋品店、おもちゃ屋などを駆逐していった。

 そして、それは単なる商品配送に留まらない。

 顧客のデータはビックデータとして「アマゾン」内に蓄積され、それが製品企画力や商品開発力に生かされ、望む商品の提供につながる。また、大量のデータを加工処理する技術力と保有する巨大サーバーを利用して、AWS(アマゾン・ウエブ・サービス)と呼ばれるクラウドサービスを提供している。

 4社だけで時価総額は約300兆円。日本のGDPの5分の3に達するが、そのプラットフォーマーの巨大化が、人々の幸福につながらず、むしろ生活を困窮させているなら、不公正を是正、膨張に制限を加えるのは国家の役割だろう。

 既にEU(欧州連合)は、今年5月からGDPR(一般データ保護規制)の運用を開始した。

 氏名、年齢、性別、住所はもちろん、顧客サービスデータ、位置データ、生体認容データなどは、すべて個人データと見なされ、その処理や移転に本人の同意が必要となり、人種、宗教、遺伝データなどには厳しく制限が加えられた。つまり、GAFAなどが個人から取り上げたデータをもう一度、個人に取り戻そうとするルールである。

 「世界中の情報を整理して世界中の人々を手伝う」というグーグルの理念は、確かに活かされ、我々は格段に便利なツールを手に入れた。が、一方で節税を図って本社を移し、競争相手は資金で踏み潰し、訴訟とロビー活動で独禁法を逃れてきた強欲な存在が「グーグル」である。

 他の3社も同じで、納税の面でも雇用の面でも国家に貢献することはなく、約22万人を雇用する「ゼネラルモーターズ」の株式時価総額は約500億ドルだが、「フェイスブック」は約3700億ドルと7倍以上を誇りながら従業員数は10分の1以下の2万人に満たない。

 GAFAなどの進出を国家権力で阻止した中国は、「アリババ」、「テンセント」など独自のプラットフォーマーを育てて存在感を示した。

 対米追従の日本は、GAFAの締め出しは出来なくとも独禁法という正当な法的範囲内で独占や寡占を阻止、国内企業の保護育成は可能である。

 個人情報で肥え太るGAFAに対し、個人情報を取り戻すやり方で対抗することも考えられる。

 今や世界を凌駕した金融資本主義は、データ資本主義に取って代わられようとしている。

 ビッグデータを握り、解析の上、最適な商品を流すことのできるプラットフォーマーが世界の覇者となりつつある現在、彼らにどう対抗するか。――個別対応で間に合うはずはなく、政官民を挙げた対策が求められている。【亥】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年2月23日配信<0510archives>「サイバーセキュリティー最前線――東京五輪を前に盛り上がるダークネット対策!」!<IT>

 
(☚NHK『ニュースチエック』)

 

 

 麻薬、銃、偽札、偽造パスポート、児童ポルノ、殺人請負……。

 人間社会で考えられるあらゆる犯罪の坩堝と化しているサイバー空間が、検索エンジンの届かない世界に存在する。

 我々が、グーグルヤフーを使って検索する開かれた世界を「表」とするなら、特定のソフトや専用のパスワードを入手しなければ接触できない「闇」の世界なので、「ダークネット」と呼ばれる。

 この「犯罪者の集う会員制サイト」の存在を一般人に知らせるきっかけとなったのが、今年1月の「コインチェック事件」だった。

 仮想通貨のNEMが流出。――「どこまでも追跡できるのがブロックチェーンの良さ。犯人は換金できず困っているハズ」と、仮想通貨・ブロックチェーンの関係者は胸を張ったが、いつの間にかダークネットに流れて、犯人が「匿名性を利用した安値交換を」を持ちかけると、応じる利用者が殺到、580億円は文字通り「闇」に消えた。

 ダークネットは、違法薬物や武器の売買、犯罪収益のロンダリングの場になっているだけでなく、個人や企業、行政機関の情報が流出して売買され、それをもとにサイバー攻撃が仕掛けられることもある。

 サイバーセキュリティーの重要さが、2年後に控えた東京五輪を前に、改めて確認されているなか、日本ではまだまだ遅れているダークネット対策が求められている。

 この分野で先端を行くイスラエルが、8月末、神奈川県川崎市で、「イスラエル国際防衛と安全保障博覧会」を開いた。

 各種防衛関係の機器や技術が出展されていたが、意識されていたのは20年東京五輪を念頭に置いたテロ対策だった。

 なかでも注目を集めたのが、ダークネットから仕掛けられることが多いハッカーのサイバー攻撃に対し、ダークネットに入り込んで情報を引っ張り、顧客に危機対応を迫るというシステムだった。

 「ダークネットから攻撃を仕掛けられて対処するのでは遅い。そこで、ダークネットに入り込み、犯罪に関わるキーワードを分析、狙いがどこにあるかを事前に察知、その対応を顧客である企業や行政機関に迫るのです」(サイバー犯罪専門家)

 各国の警察当局は、広範囲なネット犯罪に対応、機能を強化して摘発に力を入れている。

 その分、犯罪者がダークネットに情報や取引の場を移すことが多くなったが、ダークネットそのものは遮断できない。

 そして、「売買」「交換」「ロンダリング」と、犯罪者同士が利用する空間というだけでなく、ダークネットに漏洩した情報を利用、「裏」から「表」に仕掛けられた攻撃を防御するには、ダークネットに入り込み、その監視を通じてセキュリティーを万全にするしかない。

 日本とイスラエルは、17年5月、「産業分野のサイバーセキュリティー強化へ向けた協力」の覚書を結んでいる。

 イスラエルは、建国以来、アラブ諸国との紛争を繰り返し、今もパレスチナ紛争を抱え、サイバーセキュリティーの分野では最先端にある。

 軍の技術は民間に転用され、情報セキュリティー会社の「ケラ社」には、諜報機関モサドの出身者が数多くいて、ダークネット対策に当たっている。

 「ケラ社」は、前述の「ダークネット空間をその場に入り込んで24時間監視する」という独自開発システムを持ち、我が国では「テリロジー」「NTTセキュリテイ・ジャパン」と提携している。

 身元確認されないダークネットからの攻撃に終わりはなく、その攻防は永遠であり、それはサイバー対策にも終わりがなく、企業も政府も不断の備えを迫られることを意味している。【午】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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