2016年9月21日配信「道遥か?――体制一新で『無駄飯喰らいの腰抜け集団』と揶揄された東京地検特捜部は甦るのか?」<司法>

 

 最高検検事総長、東京高検検事長、東京地検検事正と、「法務・検察」の中枢ラインが、9月5日の人事で一新された。

 8月5日には、「政官財」の監視役を持って任ずる特捜部長が交代しており、最近、弱体化している「捜査検察」は変化するのか――。

 検事総長に就いた西川克行氏は、「検察の使命は時代が変わっても変わらない。国民の検察への負託を深く自覚し」と、就任記者会見で述べ、東京高検検事長の田内正宏氏は、「犯罪者をのさばらせない。特捜部は本来の仕事を」と、特捜部の役割を強調した。

 東京地検検事正に就いた堺 徹氏は、特捜部経験10年の捜査畑の検事で、「公正誠実に、知力を尽くして真相解明」と語り、特捜部在籍8年の吉田安志特捜部長は、8月の就任時、「他機関との連携を重要視、誠実に真摯に事件に取り組みたい」と述べた。

 法務官僚経験が長く「赤レンガ派」と呼ばれる西川検事総長、田内東京高検検事長も、「捜査現場派」の堺東京地検検事正、吉田特捜部長も、現在、国民が検察へ向けている厳しい目は自覚していよう。

 会員制月刊誌の『選択』(9月号)は、次のように厳しく迫っている。

 『無駄飯喰らいの東京地検特捜部――巨悪は叩かない腰抜け集団』

 なにかと批判されることが多い地検特捜部だが、ここまで貶められたことはなく、同誌の記事は批判ではなく、もはや論評に値しない集団だとして、その構造を解析している。

 取り調べの模様を録音・録画する可視化のもとで"インタビュアー"に堕した特捜検事。それをチェックしてアラを探し、出来るだけ面倒な捜査をさせたくない地検、高検、最高検の幹部たち。政界=官邸の意向を気にして政官界の捜査をさせたくない法務官僚……。

 そんな骨抜き状態で政官界捜査などできるわけがない、という『選択』の主張は正しい。

 そして、検察ウォッチャーならずとも、ごく一般的な国民レベルでもわかる“腰抜け”ぶりが露呈したのが「甘利事件」だった。

 告発したのが質の悪い事件屋という難点はあったが、その分、会話データ、領収書、行動記録など詳細な証拠は残されており、「甘利明・元経済再生担当相とその事務所の職務権限を利用した収賄事件」という構図は、誰にでも読み取れた。

 単純収賄罪か、斡旋収賄罪か、斡旋利得処罰法違反か、といった法律の規定は専門家の領域だが、大物政治家とその秘書が、現金を受け取った上で「UR」(都市再生機構)の幹部職員を何度も呼びつけ、「補償の増額」を要求した。

 それに成功して政治献金を受け取っただけでなく、個人的にも利得を得て、さんざん饗応をうけたのだから、なんらかの処罰があるべきだというのが一般国民感覚だ。

 しかし特捜部は、詳細な事情には通じていなかった甘利氏はもとより、告発者と親密な関係を続け、金銭授受と接待饗応を認めていた2人の秘書まで不起訴処分にした。

 検察審査会は秘書については「不起訴不当」との議決を出したが、特捜部は改めて不起訴とし、捜査は終結した。

 検察は、斡旋利得処罰法の適用の難しさを司法記者会に伝え、それをマスコミは報じたが、法律が問題なのではない。

 最初からやる気がなかったのである。

 それは「UR」などには家宅捜索に入ったのに、甘利事務所は任意の資料提出で済ませたことで明らかだが、そこには、「司法改革」を取り入れた刑事司法改革関連法案への“配慮”があったという。

 可視化のもとでの捜査に「司法取引」が欠かせないとする検察は、法案を通すために甘利氏のような大物政治家に手を付け、官邸の反発を買いたくなかったというのだ。

 だが、法整備と犯罪摘発はまったくの別物である。

 「取り調べのための武器」を得るために“死んだふり”をするような集団が、国民の信頼を背景に「巨悪」に挑めるとは到底、思えない。

 最高検から特捜部までの体制一新を機に、現在の「ご都合主義」の脱却から始めなければ、検察捜査は変わらない。

 しかし、ありきたりの就任会見からはその自覚は感じられず、国民はまだまだ「腰抜け集団」との付き合いを余儀なくされそうである。【寅】

 

 

 

 

 

 

 

 


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