2010年4月5日配信「“主犯”を逃して“ダミー”を起訴した『トランスデジタル事件』は警視庁の大失態!?」<事件>
経営破たんしたシステム開発会社のトランスデジタル経営陣が、民事再生手続き前に特定業者に担保提供したという民事再生法違反や、増資をめぐって虚偽の事実を公表したという金融商品取引法違反で警視庁が摘発した事件は、関与した「増資マフィア」の罪を完全に問えなかったという意味で、評価が難しい。
ただ、民事再生法違反を手がけた組織犯罪対策総務課が、後藤幸英社長、鈴木康平元副社長ら経営陣のほかに、実質的に経営権を握っていた黒木正博被告、野呂周介被告、その手足となっていた峯岸一被告らの罪を問うたことは、それなりの意義があるのに対し、その後で金商法違反で摘発した捜査二課が、実質的経営者の黒木被告、鬼頭和孝被告らが処分保留となり、実行行為者の鈴木元副社長と峯岸被告の2名だけが起訴されたのは、事件の本質を伝えない後味の悪いものとなった。
業績不振の上場企業を利用しようとする金融ブローカーらが、資金調達を条件に会社を乗っ取り、経営陣を送り込んで増資を仕掛け、株価操縦、インサイダー取引などあらゆる手を使って儲けようとするのが、「増資マフィア事件」、「資本のハイエナ事件」とでも命名すべきこの種の事件の特徴である。
固定された100名足らずのメンバーが、投資家を誘い、カネ主を見つけ、舞台(企業)を替えつつマネーゲームを繰り返す。…その実態を把握した証券取引等監視委員会は、東京地検特捜部、大阪地検特捜部、警視庁、大阪府警といった捜査当局の手を借りながら摘発を繰り返し、“マフィア”や“ハイエナ”を徹底的に追い込んだ。
とはいえ難しいのは、調達に直接関与せず、カネ主として登場、金融ブローカーらを操る金融業者の摘発だった。
暴力団と近くてブローカーやダミー経営陣を威嚇することもできる彼らは、これまで摘発を免れることが多く、その最右翼が野呂周介、永本壹桂の2人だった。
警視庁がトランスデジタルに目をつけたのは、カネ主として登場する二人が、倒産のドサクサに資金を引き出したことを証明、逮捕できるという目算があったからだ。
組対総務課は、乗っ取りから増資までのスキームを組み立てた黒木被告と、カネを提供、自分への返済をまず優先させた野呂被告が起訴されたことで面目を保った。
しかし、組対総務課より早く捜査に着手しながら、摘発が後になった挙句、“代表取締役経理課長”と捜査員がバカにした“ダミー”の鈴木被告と、“パシリ”の峯岸被告だけが起訴された捜査二課には、それでは「捜査した意味がない」というしかない。
秘書しか逮捕できない東京地検特捜部とダミーしか起訴されない警視庁捜査二課!…日本が誇る捜査陣の弱体化は、目を覆うばかりである。【悌】
- 2010.04.05 Monday
- 事件
- 05:10
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- by polestar0510