2017年10月7日配信「豊洲市場と東京五輪を中断、国政に歩を進める『小池流改革大作戦』の功罪」<政治>

 
小池百合子東京都知事
(☚wikipedia)


 「情報公開を徹底し、しがらみ政治から脱却する」――設立された希望の党の代表に就任した小池百合子東京都知事は、開口一番、こう強調した。

 側近の若狭勝衆院議員も「25年の検事生活で痛感したのは、しがらみなき政治の必要性」と、訴えている。

 希望の党のキーワードは、「しがらみ」であり、それが日本の改革を妨げている以上、そこからの脱却を標榜するのは当然である。

 同時に、切るに切れないのがしがらみであり、その因習ともいえる連続性や、関係を保持することによる居心地の良さを放棄するのは大変だ。

 “ジャンヌ・ダルク百合子”は、そこに果敢に挑戦した。

 豊洲と五輪の中断は、しがらみだらけの密室政治で行われてきたことをオープンにするための作業であり、一旦、リセットした。

 その決断と、長きにわたり“都議会のドン”として君臨した内田茂前都議に代表される都議会自民党を敵に仕立て上げる戦略のうまさで、自らの手兵となる都民ファーストの会を都議選で大勝させた。

 だが、しがらみは断たれていない。

 自民党と公明党という保守勢力が、東京都の官僚やゼネコンなどの業界と、戦後、一貫して築き上げてきた政・官・業の癒着のシステムが、知事ひとりの力で簡単に変えられるわけはない。

 小池代表が5年、10年と知事を続け、都の官僚を完全に従わせ、都が主導する競争を前提とした入札などのシステムを、業界側が無理なく受け入れて初めて「しがらみなき政治」は完成するのだが、それまでは、副作用の方が大きい。

 小池代表が都知事になって取り組んだのは、「豊洲市場と東京五輪の見直し」である。

 その結果、豊洲では「盛り土問題」、五輪施設では「無駄な歳出」が判明して、移転と工事は中断。「決定の不透明さ」は明らかにされたが、かえって費用は膨らみ、スケジュールは遅延している。

 それを如実に表すのが、豊洲土壌汚染対策の追加工事である。

 豊洲が入札不調となって焦った東京都は、業界に参考意見を聞く形で、14年2月に再入札。青果棟を「鹿島JV」が約259億円で、水産仲卸売場棟を「清水・大林JV」が約436億円で、水産卸売場棟を「大成JV」が約339億円で夫々、落札した。

 スーパーゼネコン4社による「予定調和の世界」である。

 この3棟に「盛り土」がなされておらず、散々、批判を浴びた東京都は、地下空間の床にもコンクリートを敷くことになり、9月19日、「地下ピット床面追加対策工事」の入札を行った。

 だが、いずれも1社しか応札せず、不調となった。

 「小池改革」によって入札制度は変わり、6月から競争相手のない1社入札は認められなくなったからである。

 再公告に向けた発注条件などの見直しはこれからだが、来年6月までに完成させるというスケジュールは遅延する可能性が濃厚である。

 不調原因についてゼネコン幹部はこう説明する。

 「追加工事は、全てを知り臨機応変に対応するためにも最初に施工した業者が請け負うのが当たり前です。だから他の業者は手を上げないのです。見積もりなどするだけムダ。それをダメと言っていたのでは、話は前に進みません」

 これが公共工事の"現実"である。

 このシステムを維持するために、スーパーゼネコン4社は7人から9人の都の官僚を天下りで受け入れ、自民党都議を「票とカネ」で支え、都の官僚は仕事で業者と政治家に配慮、政治家は口利きで業者を、予算と人事で官僚を遇してきた。

 しがらみはこの"システム"のなかで生まれ、過去に都政を支配したこともある旧民主党も壊せなかったのである。

 容易には壊せない"壁"にぶつかって結局、小池氏は退歩した。

 五輪は会場などの施設見直しをぶち上げながら、ほとんど当初の計画のままに終わり、築地移転では「豊洲を活かし、築地を守る」という玉虫色のキャッチフレーズにより、コストは逆に大幅に増加した。

 しがらみは「日本型システム」の根幹を成している。

 脱却は、言うのはやさしいが実行に移すとなると困難なうえにコスト高となることは否めない。

 それを承知で「都民」は都民ファーストの会を選択したわけだが、都政をステップボードに、希望の党を率いて国政に軸足を移す小池代表を「国民」は、どう評価するのか。

 

 「選別させてもらう」――折しも、言わずもがなのひと言で"合体"するはずの民進党が"分裂"、同党のリベラル派とされる枝野幸男代表代行らを中心に立憲民主党が発足した。

 

 寄り合い所帯の民進党だけに、ある意味、当然の結果とはいえ、「小池代表の強引な手法が強調されたことで、これまで無敵だった"百合子パワー"に翳りが生じた」(全国紙政治部記者)のは明らかで、さらに都民ファーストの会の立ち上げ人である音喜多駿、上田令子都議が離党を表明、希望の党の足許に"亀裂"が生じ始めた。

 

 騎虎の勢いで東京都議会を制圧、余生を駆って国政に挑戦!――10月10日告示、22日投開票!――都議選のような"風"が吹くのか、それとも…?――衆院選で問われるのは「小池流ポピュリズム」の是非である。【戌】

 

 

 

 

 

 

 


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