2018年7月14日配信<0510archives>「『Black Box』(伊藤詩織著・文藝春秋)が告発する司法の歪み」<事件>



 


 

 

 

 

 レイプ被害者として「顔出し告発」していた伊藤詩織さんが、10月18日、『ブラックボックス』(文藝春秋)を上梓した。
 
 今年5月、詩織さんは検察審査会に不起訴処分を受けて異議を申し立て、記者会見で経緯を説明した。
 
 その時も衝撃だったが、検察審査会での「不起訴相当」を受けて著した本書では、そうした会見などでは伝わらぬ思いが、時系列で詳細に語られ、一級のノンフィクションであると同時に、日本の司法システムに対する鋭い告発書にもなっている。
 
 圧巻は、「安倍晋三首相に最も近い記者」という評判の元TBS記者・山口敬之氏と、詩織さんにとって同氏に対する「顔を思い出したくもない加害者」であるという辛さを封印して、責任を追及するために行った交換メールの公開と、高輪署、警視庁捜査一課、そして検察との「山口氏の圧力」を感じながらの切迫した交渉だろう。
 
 率直に感じられるのは、詩織さんの強さである。
 
 それは5月時点の「顔出し会見」で証明されてはいたが、今回、明かされたジャーナリストを目指して欧米で学んだという経歴が、告発への動機を裏付けるとともに、そうした意志も強さも持っている人が、それでも「司法のカベ」に跳ね返されてしまった。
 
 強さは、レイプ犯を許さないという一貫した姿勢にあるが、その一方で、詩織さんの心は常に山口氏の“幻影”に怯えており、「魂の殺人」だというレイプが被害者に与える傷の深さに慄然とさせられる。
 
 それだけのプレッシャーを受けながら、これまでのレイプ被害者の大半が、「正体を晒しても何の得にもならない」と、勝訴しても自分の胸の内にしまい込むか、示談に応じて事件を封印するなか、詩織さんが実名告発し書籍まで発売したのは、個人的な恨みを晴らすのではなく、「私に起こったことが、あなたに、あるいはあなたの大切な人に降りかかってくるか、誰にも予測はできないのだ」(まえがきより)と、訴えたいからである。
 
 その告発するという行為の結果として、司法の“歪み”が露呈した。

 

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                                                                      BBC公式HP
 

 

「よくある話だし、事件として捜査するのは難しいですよ」
 
 担当する高輪署のA氏が、最初に投げかけたのはこの言葉であり、詩織さんは「それはあまりに残酷な言葉だった」と、嘆く。
 
 以降、「今まで努力してきた君の人生が水の泡になる」と、被害届の提出を考え直すように説得するA氏を、むしろ詩織さんが引っ張る形で捜査は進み、山口氏の帰国を待って逮捕するところまで進展した。
 ところが、15年6月8日、成田空港に山口氏逮捕に出向いたA氏から「逮捕できません」という連絡が入る。
 
 理由を問うと「ストップをかけたのは警視庁のトップです」という返事。後に、それが中村格警視庁刑事部長(当時)であることが明らかになる。
 
 以降、所轄の高輪署から警視庁捜査一課に事件は移送され、A氏も担当検事も配置替えとなり、事件は封印の方向に向かう。
 
 捜査一課の捜査が、不起訴へ持っていくためのものであるのは、「なぜ逮捕状が出たのに逮捕しなかったのか」という詩織さんの問いかけに、「逮捕状は簡単に出ます」と断言。「社会的地位のある人は、居所がはっきりしているし、家族や関係者もいて逃走の恐れがない。だから、逮捕の必要がないのです」と、いってのけた捜査一課幹部の言葉で明らかだ。
 
 官邸から中村部長へと伝えられたことで発生した“忖度”は、捜査現場を動かして起訴には不十分な捜査内容となり、不起訴処分は出た。
 
 その証拠に沿って国民からくじで選抜される検察審査会の審査員が、検察官に誘導される形で事件性を審査すれば、「不起訴相当」となるのも無理はない。
 
 司法は、そのシステムを熟知し、方向性を変えうる力のある人間が操作すれば、簡単に歪むものである。
 
 レイプが行われたとされる15年4月4日以降、2年半の歳月をかけて詩織さんが著した『ブラックボックス』で、我々が読み取るべきは、レイプ被害の傷跡の大きさとともに、それを見逃してしまった司法システムの検証であろう。【午】

 

 

 

 

 

 

 

 


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