2019年2月13日配信「ゴーンを保釈させるか否かーー検察と外圧の狭間で右顧左眄する裁判所」<事件>

 
ヒラメ砦(Wikipedia)


 保釈を認めたり、認めなかったり、カルロス・ゴーン被告の処遇を巡って、裁判所が右顧左眄を重ねている。

 保釈を認めなかったのは、検察と一体となって「秩序を守る」という原則から外れ、裁判所が自立しているようにも見えるが、一方で今年に入って、長期勾留に応じているのは、元の原則に戻ったようにも思える。

 裁判所の“揺らぎ”を検証してみよう。

 昨年12月20日、東京地裁が東京地検の勾留期間延長を却下した時、大慌てした特捜部は、前倒しでゴーン被告を特別背任容疑で再逮捕した。

 これは「異例の事態」――「特捜案件」で、東京地裁が勾留延長を却下するなど過去に例がない。

 そこで、「人質司法」と呼ばれているような容疑者・被告が否認する案件については、「何ヵ月でも拘置所を出さない」という“イジメ”のような刑事手続きを止め、法律に沿った裁判所に変化する兆しではないかと、受け止められた。

 ゴーン被告が世界的に著名な経営者で、ブラジル、レバノン、フランスに国籍を持つエスタブリッシュメントにしてコスモポリタンだけに、「弁護士を立ち会わせずに取り調べ、長期勾留して自白を迫る刑事手続きは人権を無視している」と、海外メディアは批判。裁判所は、その“外圧”に屈したようにも思われた。

 検察幹部も、「海外から批判されて裁判所は日和った」と、批判した。

 しかし、本来は保釈は被告人の権利。刑事訴訟法第89条で、保釈の請求があれば、証拠の隠滅、逃亡の恐れがない場合、原則として保釈を認めなければならない。

 ところが、特捜案件の場合、「お上」に逆らって否認している限り、保釈を認めず、何百日も留め置き、事実上の懲罰を加えるのが“原則”だった。

 もっともらしい理由だが、「証拠隠滅」と「逃亡」は、あくまで検察と裁判所の言い逃れに過ぎない。

 全国的に顔と名前が知られ、国会論戦やマスコミ報道で、どこにも逃れられるハズがなく、隠滅する証拠もないのに、「森友学園事件」で被告となった籠池夫妻を1年近くも勾留していたのは、その典型だろう。

 裁判所が特捜案件の被告を否認のまま閉じ込めておくのは100%に近く、被告の有罪率は99・9%に達する。

 特捜案件は、「検察と裁判所が一体となって裁く国家に対する犯罪」であり、無罪であってはならなかった。

 この“予定調和の世界”は、裁判所が検察に従属することによって成り立っている。

 裁判官は、外に対してほとんど情報発信することがない、いわば「ひきこもり族」である。

 ツイッターでつぶやいていたことを理由に懲戒処分を受けた岡口基一裁判官は、その理由をこう語っている。

 「秘密のベールに包まれていれば、権威は高まります。実際、20代で裁判官になっても一人前になるには時間がかかりますから、彼らの実力を知られたら困るわけです」

 また、『絶望の裁判所』(講談社現代新書)の著者の瀬木比呂志元裁判官は、裁判所の実態をこう切り捨てている。

 「日本の司法というあなたの前のステージは、ピラミッド型ヒエラルキーのキャリアシステムと、その奴隷であり、それに毒された裁判官たちによって、すっかり汚されてしまっている」

 そうした「物言う裁判官」の発言から浮かび上がってくるのは、なるべく自分で判断せず、過去の慣例に従っていれば、裁判所の権威は保たれ、最高裁の覚えもめでたいという究極の「事なかれ主義」である。

 だから、勾留する、しないの判断は検察に任せ、「人質司法」を容認した。

 が、その予定調和の世界が、ゴーンという「黒船」の登場で変わった。

 もともと、8年の有価証券報告書の虚偽記載を、5年と3年の2回に分けて最長で40日勾留。その間に特別背任など次の事件を固めるという検察の捜査手法が間違っていた。

 それを容認すれば、海外のメディアから批判され、それを日本のメディアが報じて権威が侵されるのが裁判所には耐えられなかった?ことが、昨年12月20日の勾留期間延長棄却の理由である。

 ただ、それで完全に検察から自立したわけではない。

 今年に入って、特別背任罪で起訴した後も、起訴後勾留を続け、弁護人の2度の保釈請求を却下している。

 「口裏合わせによる証拠隠滅」を疑い、保釈しないということだが、本当は、勾留理由の開示請求や、獄中で『日本経済新聞』のインタビューに応じ、日本の司法批判を続けるゴーン被告が許せない。

 それでは保つべき裁判所の権威が汚される。――それが、保釈を認めない理由だという。

 そもそも裁判所に守るべき権威はあるのか!――揺れ動く裁判所の判断は、逆に、その姑息な思いを内外に抱かせる結果となっている。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 


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