2019年12月14日配信「立石勲・立石建設代表が驚異の“粘り腰”で馬毛島を高値売却に成功した背景」<事件>

 
(☚wikipedia)


「ついに」というべきだろう。――政府は、11月29日、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転先となっていた馬毛島の購入について、地権者と合意した。
 
「基地絡み」の話だけに、交渉がもつれるのは予想できたが、取得以来、延々20余年。防衛省と執念の交渉を繰り返し、国ばかりか債権者の鼻面を引き回しながら、交渉してきた地権者の粘りは、驚嘆に値する。
 
 種子島の西方12キロの南シナ海に浮かぶ無人島の馬毛島を所有するのは「タストン・エアポート」。――政府=防衛省との尋常でない交渉を続けてきたのは、同社が所属する立石建設グループを率いる立石勲氏である。
 
 鹿児島県出身で水産高校を卒業後、船乗りを経て建設設計分野に進み、砂利採取、再生砕石、産業廃棄物処理と幅広く事業展開する立石建設グループを一代で築き上げた。
 
 事業は多方面に及ぶが、現在、86歳の立石氏が、人生を賭けた事業といっていいのが、95年に購入した馬毛島に、民間初の国際貨物空港を建設することだった。
 
 馬毛島は、数奇な運命を辿った島である。
 
 石油備蓄基地、一大レジャーランド、防衛庁(当時)レーダー基地など幾つもの構想が生まれ、いずれも実らず、その島を船乗り時代に横目で眺めていた立石氏が、4億円で取得した。
 
 以降、憑かれたように飛行場建設を進め、南北4200メートル、東西2400メートルの“粗滑走路”を敷設した。
 
 それに目をつけたのが防衛省である。
 
 11年、訓練基地に関して日米が合意に達し、大きな騒音を伴うFCLPを無人島で米軍基地に近い馬毛島で行なう計画が浮上する。
 
 ネックは価格だった。
 
 防衛省は、17年3月、「日本はもっと防衛負担を!」と、主張するトランプ大統領の誕生を機に、立石氏との交渉を急ぎ、45億円という鑑定価格を出して交渉に入った。
 
 だが、「これまでに150億円は投じた」と、主張する立石氏は、国の足元を見透かしたように、自ら依頼した鑑定士事務所の結果をもとに、約400億円を主張して譲らなかった。
 
「国の予算」なので、倍の開きでも難しいのに10倍近い価格差で暗礁に乗り上げたが、立石氏は一歩も退かない。
 
 だが、一方で立石氏にも差し迫った事情があった。
 
 将来の見通しもない空港建設に、資金を突っ込んだおかげでグループの経営は“火の車”となった。
 
 そのため、都内や川崎市などに持つグループの資産には限度枠いっぱいの抵当権が設定され、残る馬毛島を切り売りするように、金融業者に担保提供せざるを得なくなった。
 
 丁寧で腰は低いが、のらりくらりが立石氏の真骨頂。、あの手この手で借金を重ね、総額は約250億円に達したという。
 

 「売却に成功したら10億円」といった根拠のない“空証文”を出し、厳しく取り立てた都下の金融業者が恐喝で逮捕されたこともある(不起訴処分)。
 
 その苦境を利用して、防衛省が債権者をけしかけて、昨年夏には第三者破産に持ち込んだこともあったが、辛うじて金融業者N社の支援を受けて乗り切った。
 
 が、売却しなければ、借金が返せない状況に変わりなく、N社主導の防衛省との交渉が、今年に入って再開され、2月に一旦は160億円で合意。だが、「それでは借金は返せても立石建設は立ち行かない」と、骨肉の争いの末、5月の段階で白紙に戻った。
 
 その後、方々に声をかけて急場を凌ぐ綱渡りのような金策が続いたものの、10月に入ると1回目の不渡りを出して万事、窮した。
 
 再び、N社の支援を受けざるを得なくなり、「ごね得」を封じ、売却価格は160億円でプラスαを求める交渉に入った。
 
 結局、「プラスαの中身は公開されていないが、工事に関することだ」(周辺関係者)という付帯条件がついたことで、ようやく11月末の防衛省との合意となった。
 
「工事に入れば、それなりの仕事が出てくる。それを『立石建設』が受注するということ。それなら160億円では足りない分をカバーできるし、債権者も納得する」(防衛省関係者)
 
 これでも立石氏は不満だというが、その「執念と強欲」が、鑑定価格の「3倍プラスα」という条件を国から引き出したのだから、老いの一徹が奏功したと言うしかない。【午】


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