2020年5月21日配信「大山鳴動の末の先送り!――検察の“ロッキード世代”が検察庁法改正を許さなかった理由」<事件>


(wikipedia)


 「検察の正義」というものを、ツイッターで検察庁法改正反対に声を上げた国民、国会審議に抵抗する野党、表現に差はあるものの、概ね反対だったマスメディアが、すべて信じているわけではない。
 
 むしろ逆で、検察と近い関係を持った、つまりはターゲットとして狙われたことのある「政・官・財」のそれなりの地位のある人間はもとより、それを報ずる記者、報道によって事件の全体像を掴むことが出来る国民は、「正義」を振りかざす強大な権力集団の持つ怖さに気付いている。
 
 だが、今回の場合、夫々が横一線で連帯した。
 
 それは、森友、加計、桜を見る会で繰り返された「クロをシロ」と言いくるめる安倍政権、人事で官僚を忖度させる安倍官邸にうんざりしているからだ。
 
 なかでも、彼らが問題視したのは、「内閣や法相が必要と判断したら検察幹部の定年を3年延長できる」という特例規定である。
 
 65歳定年延長に反対する者はほとんどいないが、この規定には「検察を牛耳りたい官邸の思惑」が滲み出る。
 
 ただ、政権サイドが、これほど多くの反対に見舞われるとは思わなかったとすれば、その「傲慢さ」は安倍政権の末期の表れであろう。
 
 なぜ、特例規定が許されないか。
 
 それは連名で抗議した松尾邦弘元検事総長など検察OBが、自らを「ロッキード世代」と名乗り、田名角栄元首相を逮捕したロッキード事件の体験をもとに、政治に距離を置く「検察のあるべき姿」を訴えているところに表れている。
 
 45年前のロッキード事件を覚えている世代も少なくなった。
 
 田中角栄元首相の金脈が、76年2月、米議会証言を糸口に、検察は、「元首相逮捕」という金字塔を打ち立てたが、以降、「闇将軍」となった元首相の力を恐れ、約10年、政界に手を出せない忍従の時期が続いた。
 
 元首相は、刑事被告人となり、「数は力」の論理で派閥膨張主義に走り、事件当時に75人だった田中派は、79年の40日抗争で63人となったものの、80年に100人の大台を超え、87年、最大規模に達した時は142人を数えた。
 
 その力で元首相は、党も内閣も枢要ポストを握り、法相には「隠れ」も含めた田中派を配し、検察に睨みを効かせた。
 
 その結果、検察が政治家に手を伸ばすのは86年の与野党代議士を起訴した「撚糸工連事件」まで待たねばならなかった。
 
 その後、元首相が前年、脳卒中に倒れ、ようやく「政治の枷」から解き放たれた。
 
 そこから検察の快進撃は続き、「リクルート事件」で「政・官・財」の構造を再び暴くが、リクルートで失脚した竹下登元首相の盟友の金丸信元副総理の処遇を巡って、検察は激しい非難にさらされる。
 
 「東京佐川急便事件」において5億円の裏金が発覚したのに、「上申書と20万円の罰金」だけで済ませようとしたからで、「政界実力者だから見過ごすのか」といった批判が嵐のように起き、検察庁前の石の看板にペンキがぶち撒かれた。
 
 危機感をもった検察は、金丸元副総裁の周辺を徹底的に洗い、約70億円もの隠し資産に辿り着き、93年3月、元副総裁を逮捕し、巨額脱税事件を仕上げた。
 
 田中、竹下、金丸……いずれも日本の高度経済成長を支えた旧田中派の政治家たちを検察は、ロッキード事件以降、旧田中派の摘発を通じて、「政官財の癒着」を暴いていった。
 
 その「衣鉢を継ぐ者」が、小沢一郎元民主党幹事長だった。
 
 27歳で田中派入りして政界修行を積み、後継の「竹下派7奉行」のひとりとして頭角を現わし、金丸元副総裁に可愛がられたが、金丸逮捕で竹下派は瓦解、小沢氏は羽田孜氏とともに新党を結成、持論の「二大政党制」へ向けて動き、後の民主党結成に繋げる。
 
 民主党は、07年の統一地方選、参院選にも勝利、「次の総選挙で衆院でも逆転、民主党政権は確実」と言われていた。
 
 その時、「西松建設」からの不正献金を嗅ぎつけた東京地検特捜部が、09年3月、小沢氏の政治団体「陸山会」の政治資金規正法違反で摘発、秘書を逮捕した。
 
 小沢氏が、旧田中派流の集金システムを持っていたのは確かだが、逮捕に至ったのは、検事総長の国会同意人事、検事正の公選制など「政治主導」を進めていた小沢氏とその周辺が、「検察に対しても政治主導」を構想していたことが背景にあった。
 
 所詮は小沢も田中、竹下、金丸と同根じゃないか!――そんな思いの検察が、「法務・検察の秩序」を守ろうと手掛けたのが「陸山会事件」の本質である。
 
 ただ、秘書逮捕は10年1月も続いたが、「小沢逮捕」には行き着かなかった。
 
 そういう意味では未達だが、検事総長人事をイジらせなかったという意味で検察の得点となり、痛み分けとなった。
 
 だが、検察は、同時期、大阪地検特捜部で行っていた「厚労省女性局長事件」で、証拠改竄という取り返しのつかない失敗を犯した。
 
 特捜部長以下が逮捕起訴され、政界はもちろん国民的批判を浴びた。
 
 この時、「検察の在り方検討会議」が設置され、類い稀なる調整能力を評価されて事務局長となったのが黒川弘務氏(現東京高検検事長)だった。
 
 その手腕を買われて官房長となり、以降、事務次官として都合7年半、「政界との窓口」を務めた。
 
 黒川氏の役割は、政権の意向を汲みつつ、検察の思惑も通すこと。共謀罪のような安倍政権の「肝煎り法案」を通すのに貢献する一方、刑事訴訟法改正による司法取引の導入など、検察の捜査現場に“武器”を与えた。
 
 そういう意味で安倍氏は、検察が最も弱った時代に政権を握り、黒川氏という「官邸代理人」を得て、検察庁法を改正、他の霞が関と同様、支配下に置こうとした。
 
 だが、政治と検察の関係は、「ロッキード事件」以降、40数年にわたり、対立と緊張のなかにあり、その経緯を知る検察OBは、「人事を握られ、政権に組み込まれることなどあってはならない」と、憤る。
 
 が、かつて1年で政権を放り出し、今、「一強」を謳歌する安倍首相には、その「歴史と緊張感」がわからない。
 
 そこが、OBを含む検察総体の怒りにつながり、それをメディアが報道、国民は森友事件以降の政権の相次ぐ傲慢に重ねて怒りのツイートをしたことで一大騒動に発展。――法案の先送りも当然の帰結である。【🐭】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


コメント
コメントする








   

profile

calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
<< October 2020 >>

selected entries

categories

archives

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

還暦川柳
還暦川柳 (JUGEMレビュー »)
公益社団法人 全国老人福祉施設協議会

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

テレビはなぜおかしくなったのか
テレビはなぜおかしくなったのか (JUGEMレビュー »)
金平 茂紀,永田 浩三,水島 宏明,五十嵐 仁

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM