2018年2月16日配信<0510archives>「『セイクレスト事件』で逮捕された“大物粉飾アレンジャー”=松尾隆容疑者の転落の軌跡」<事件>

 

「あなたたちは、口を開けば粉飾、粉飾と騒ぐが、業績不振で金融機関などが見放した企業に“合法的な手法”で資金調達の手伝いをすることが、どうしていけないんだ!」――証券犯罪を取材テーマにしている記者に対峙した際の、“大物粉飾アレンジャー”=松尾隆容疑者のコメントは、いつも“合法の自信”に満ち溢れていた。
 
 つまりは“粉飾を正当化する達人”なのである。それだけに、気に障った取材や記事に対しては執拗に抗議、相手が音を上げるまで止めない熱心さは、数ある“兜町の怪人”のなかでも右に出る者はいないと言っても過言ではない。
 
「上手の手から水が洩れた?」――その達人が「セイクレスト」(元ジャスダック・5月2日破産申請)の水増し増資疑惑で遂に逮捕された。
 
 だが、今回の逮捕容疑は、粉飾があまりにも露骨すぎて、情けなかった。
 
 2010年3月期決算で債務超過に転落しそうだった「セイクレスト」元社長で、今回一緒に逮された青木勝稔容疑者が、松尾に相談。松尾が実質的に経営する不動産会社を引受先にして、現物出資による第三者割当増資を計画、20億円と不当に高く評価して債務超過を逃れたという疑いである。
 
 本誌は、今年4月に大阪府警と証券取引等監視委員会(SEC)が、合同で家宅捜索した時点からこの事件に注目、「逮捕寸前!『佐渡SEC』に睨まれた“元祖増資マフィア”=松尾隆の“黒い軌跡”!」(2012・6/6)と題した記事を配信した。
 
 それから逮捕までに5カ月以上が経過、証券界では「今回も松尾は逃げ切るんじゃないか?」という声も流れたが、当局のテーマが「何が何でも松尾の逮捕!!」だっただけに潰れることはなかった。
 ここまで時間を要したのは、松尾らが法廷で繰り出してくるであろう「合法の論理」を崩しておくのに時間がかかっただけである。
 
 しかし、松尾容疑者が“異能の人”であるのは認めないわけにはいかない。
 
 1969年3月、一橋大学経済学部を卒業して「日産自動車」に勤務。71年2月に退職、いったんは一橋大学商学部に学士入学するが、中退して「山種証券」に入社、84年3月に外資系の「スミスバーニー証券」に転籍。マーケットがバブル経済に沸き始めた頃、外資に移ったことが、資金調達アレンジャーとしての“凄腕”につながり、「プレデンシャル証券」を経て、94年4月、バブル崩壊に呻吟する上場企業が増えた頃に独立したことが、資金調達=粉飾アレンジャーとしての松尾の“居場所”につながった。
 
 実際、“怪しい資金調達の元祖”と言っていい。
 
 まだ海外のタックスヘイブン(租税回避地)を利用した資金調達が一般化していない頃、魑魅魍魎が跋扈、没落した製鉄会社「ヤハギ」が香港で発行するユーロ建て転換社債の発行に関与、タックスヘイブンのペーパーカンパニーを受け皿に、私募CB(転換社債)を発行させた。それが今から14年前の98年のことである。
 
 その後も松尾は、常に先端を走った。
 
 時価より安く発行価格を決める私募CBの次は、転換価格を自由に調整できるMSCB(修正条項付き転換社債)の発行を資金難の企業に伝授した。
 
 「ヤハギ」「ヒューネット」「ヤマシナ」「日本ファーネス工業」「キーイングホーム」「ゼクス」、そして今回の「セイクレスト」――松尾容疑者が関与した銘柄は数多く、いずれにも“増資マフィア”、“資本のハイエナ”と呼ばれる連中が群がったが、調達に関わったのは一緒でも、株価操縦やインサイダー取引など、違法を承知でカネ儲けに走る連中と“同列”に見られることを極端に嫌い、一線を画していた。
 
 
 「私は、企業再生のアドバイザーであり、資金調達のお手伝いをしているだけだ。批判されるいわれはない!」
 
 これが松尾の変わらぬ主張である。
 
 だが、「企業再生といいながら、再生した企業など皆無ではないか」と、反論されると、「それは経営者サイドの問題であり、経営者の質がどんどん悪くなっているから再生できないのだ」と、問題をスリ替えた。
 
 ただ、松尾が「合法」にこだわったのは確かである。
 
 05年には「ヤマシナ」で「10株を1株に併合、ただし転換価格は従来通り」とするとんでもない増資を仕掛けている。
 単純計算で「10倍の儲け」が引受先にもたらされたが、株主総会の議決など手順は踏んでおり、グレーゾーンではあっても違法ではなかった。
 
 もちろんSECも証券業界も手をこまぬいていたわけではない。
 グレーゾーンは次々につぶしていき、私募CB、MSCB、株式併合マジックなどは、使えなくなっていった。
 
 そうした逆風のなか、追い詰められた松尾容疑者が手を染めたのが、二束三文の土地を高く鑑定させるという工夫の見えない粉飾アレンジだったのである。
 
 証券トラブルによって、多くの民事訴訟を起こされ、儲かってもいないし、調達企業に感謝されたわけでもない。そのうえマスコミには叩かれ、捜査当局には狙われ続けて最後には逮捕された。

 逮捕前の松尾は、「法に触れることは何もしていないから、逮捕されることはない。仮に逮捕、起訴されても、当然無罪だ。最悪のケースでも、執行猶予ですぐ出て来る」(周辺関係者)と強がっていたと言われるが、相手は満を持して逮捕に踏み切ったSECだけに予断は許さない。
 
 一体、自己弁護の達人”である“大物粉飾アレンジャー”は、傍目には、苦労の多い、収支の合わないとしか思えない金融マンとしての人生を、どう総括しているのだろうか。【鰍】

 

 

 

      

                                                      

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年2月10日配信「脱税で収束?――『スパ・コン事件』で解明されない怪し過ぎる斎藤元章容疑者と麻生財務相との関係」<事件>

 

 

 

 「スパコン業界の小型化、省エネ化の旗手」といわれた斎藤元章被告が、詐欺に加えて脱税でも起訴され、完全に地に墜ちた。

 それにしても、なぜ実績のない「ペジーコンピューティンググループ」に、約100億円もの国のカネが流れたのか?

 

 「復活」が伝えられる東京地検特捜部だけに、「政界ルート」への切り込みを期待したが、そこに踏み込むだけの材料はなかったということで、事件は収束に向かっている。

 国会で「モリ、カケ、スパ」という符丁で呼ばれた安倍晋三政権スキャンダルは、「森友学園事件」で財務省近畿財務局が残していた内部文書など、幾つかの新事実は明らかになったものの、「加計学園疑惑」ともども政権を追い込むまでには至らなかった。

 「スパ」こと「スパコン事件」絡みも、斎藤被告の事件化した「新エネルギー開発機構」(NEDO)からだまし取った約6億5300万円に政治家の関与はうかがえず、8億円を申告せず、2億5000万円を脱税したという事件も、その用途は趣味の自動車レースに突っ込んだ負債の穴埋めが目的ということで、個人犯罪の色が濃い。

 そのなかで、事件化した「NEDO」より多い60億円の国家予算が注ぎ込まれた「産学協同実用化開発事業」については、麻生太郎財務相との不可解な関係があまりに多い。

 1月30日の衆院予算委員会で、希望の党の今井雅人代議士は、‘盂嬋椶陵識者会議に斎藤被告が7人いた委員の一人として選ばれ、スパコンの必要性を指摘したこと、△修裡稿後に募集が始まった文部科学省所管の「科学技術振興機構」(JST)の融資で、斎藤被告が関与する「エクサスケーラー」60億円の無利子融資を認められたこと、しかも融資は上限の50億円を超えるもので、上限超えは過去に例がないことで、そこに「何かあると疑われても仕方がない」と、質した。

 その「何」に相当するのが麻生財務相との関係である。

 時系列で眺めてみよう。

 斎藤被告は、元TBSワシントン支局長の山口敬之氏が16年5月、「TBS」を退社するのに伴って「ペジー社」の顧問に迎え入れ、月に百数十万円の都心ホテルの事務所費を負担するなど、厚遇した。

 『総理』という著書のある山口氏は、「首相に最も近い男」といわれているが、安倍首相より古く近いのは、麻生氏の方である。

 16年5月といえば伊勢志摩サミットのあった時であり、安倍首相は成長戦略のための財政出動を約束、6月に参院選を前にした選挙公約もそれを打ち出し、8月には「未来への投資を実現する経済対策」を閣議決定。これを受けて「JST」は、120億円の予算枠をもらい、「産学協同化開発事業」を緊急募集した。

 募集期間は10月12日から10月25日までと短く、しかも説明会は締め切りの4日前で、決定を受けた「エクサス社」との「特別な関係」を疑われた。

 この間、斎藤被告は山口氏の「麻生ルート」に乗ったかのように、麻生氏との関係を深めている。

 7月には、斎藤被告が開発に関わるスパコンの視察に、わざわざ埼玉県和光市のR研究所を訪れた。

 また17年1月には「エクサス社」は「JST」の60億円無利子融資の決定を受け、スパコンの開発に入るのだが、以降、麻生氏は何度も斎藤氏を側面支援した。

 17年5月の参院財政委員会では、「日本で今年も多分、世界一になると思いますが、ペジーコンピューターというのが出てきました」と、讃え、講演会などでも「斎藤先生を紹介してくれ、口を利いてくれ、という依頼が私の所にも来るんですよ」と、「スパコンの旗手」を持ち上げ続けた。

 さらにいえば、麻生財務相の元秘書官は、財務省に戻って文部科学省担当の主計官を務めており、「JST」予算に関与できる立場だった。

 「忖度」にとどまらない「疑惑」があるのは間違いないが、秘書官から大物政治家へと駆け上がる「気合いと力」は、まだ特捜部には戻ってきていないようである。【巳】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年2月6日配信「『コインチェック』の『580億円流出騒動』で分かった甘すぎる仮想通貨業者の“暗”と“明”」<事件>

 
和田晃一良社長
(コインチエック社HP)


 

 仮想通貨バブルを狙い撃ちにしたような被害金額約580億円の不正アクセス事件が発覚した。

 顧客は仮想通貨NEMを預けていた「コインチェック」の甘すぎる管理に呆れる一方、可能か、どうかはともかく、全額返金表明(返金額はNEMの下落で約460億円)にひとまずはホッとするとともに、履歴を解析して流出資金を監視できるというブロックチェーンの持つ機能に、改めて驚かされている。

 昨年12月から、多くのバラエティ番組で活躍中のお笑いタレント・出川哲朗を起用したテレビCMを打ちまくり、知名度を上げて顧客を獲得、仮想通貨取引所の最大手「ビットフライヤー」に並ぶ勢いだった「コインチェック」だが、その管理体制は「杜撰」の一語に尽きるものだった。

 仮想通貨を管理する場所は、「ウォレット(財布)」と呼ばれるが、ネットで売買される取引所は、常に外部からの不正アクセスにさらされるだけに、オンラインから切り離した「コールドウォレット」という場所でデータを管理するのが一般的で、なにより記者会見に登場する大塚雄介取締役が、自著のなかでこう述べている。

 

 「(預り資産の)全体を100とすると、そのうちの数%しかオンライン上に置かず、それ以外はインターネットから物理的に切り離して、オフライン環境で厳重に保護してあります」

 オンライン環境での「ホットウォレット」での管理がいかに危険かを自ら指摘、「インターネット環境から完全に切り離して、USBメモリのような物理デバイスに入れ、複数のバックアップをとって、別々の金庫に保管してあります」と、ヌケヌケといってのけていたのだから罪深い。

 さらに仮想通貨NEMは、「New Economy Movement(新しい経済運動)」の略称で、その普及活動のために「NEM財団」が設立されているが、同財団が求めていた管理体制は、「コールドウォレット」と「マルチシブ」と呼ばれる秘密鍵を複数に分割、別々に管理する手法を組み合わせている。

 当然、こちらも怠っていて、ひとつの秘密鍵だけだった。

 和田晃一良社長は、「技術的な難しさと人材不足から対応できていなかった」と述べたが、記者会見で「広告に投じるより先にやることがあったのではないか」と、突っ込まれるのも当然だ。

 この大甘管理が仮想通貨業者の抱える「暗」なら、資金の移転がブロックチェーン上の台帳に記録され、それを追うことで、不正に支出されたNEMの使用を監視でき、凍結させられるというのは「明」だろう。

 大塚取締役は、28日、被害状況や個客への補償方針を金融庁に報告した後の囲み取材で、「不正アクセスで流出したNEMの行方はわかっている。(奪われた通貨は)まだ現金化されていない」と、述べた。

 ブロックチェーン上に、資金移動の記録が改竄されない形で残され、追跡できるのは仮想通貨犯罪の防御に役立つ

 今回、ネット雑誌の要請を受けたブロックチェーンの専門家が、事件発覚から2日もしない間に、ハッキングの様子を公開した。

 それによれば、コインチェックのオンラインに侵入したハッカーは、NC4から始まる40桁のアドレスに、1月26日午前0時2分から09分の間に被害金額の大半を送金。それは続けて、10カ所のアカウントに送金されており、そのアドレスは確認済みだ。

 大塚取締役によれば、「現金化はされていない」ということなので、監視によって包囲すればハッカーは身動きできず、被害は出ないことになる。

 現在、仮想通貨は世界中で1500種類以上あるといわれている。

 

 誰もが勝手に「通貨発行人」になれるのだから、それも道理であるが、「以前、流行した未公開株詐欺みたいなもので、仮想通貨の99%は詐欺師たちのカネ集めです」(経済誌記者)との指摘もある。

 

 「今回のコインチェック事件を機に関係官庁の”介入”が強まるのは必至です。特にブロックチェーンで資金の流れが捕捉できる税務当局にしてみれば、仮想通貨が現金化される段階で網を張っていればいいのですから、恰好の”獲物”。『往きはよいよい、帰りは怖い』――”億り人”だ”自由(十億)人”だ、と浮かれていられるのも今のうちだけでしょう」(前出の記者)

 

 およそ「人さまのカネ」を扱う資格のない業者が、仮想通貨を成り立たせている「ブロックチェーンで救われ」、同時に被害を免れた”仮想通貨成金たち”が「ブロックチェーンで捕捉される」――何とも皮肉である。【丑】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月30日<0510archives>「詐欺、脱税、マネロンの巣窟――監督官庁・捜査当局の規制強化で仮想通貨バブルは崩壊寸前!」<事件>

(☚wikipedia)

 

 

 2017年は仮想通貨バブルに湧き、「億り人」と呼ばれる億万長者が続出した。

 ブームに乗り遅れまいと、仮想通貨取引所に口座を開く人が増え、「ビットフライヤー」など取引所も活況を呈しており、著名俳優を利用したテレビCMを頻繁に流している。

 そのブームは18年も続くのか。

 結論をいえば、明らかなバブル状態をこのまま放置することはない。

 「仮想通貨が法定通貨を超えて、決済や送金手段の中核となることはない。国家が通貨発行権限を保持するのは当然のこと。投機対象の仮想通貨が、実体経済を侵食すれば、当然、規制に入る」(金融庁関係者)

 しかも仮想通貨は、現在、詐欺や脱税やマネーロンダリングに使われているという現実があり、監督官庁だけでなく検察、警察、国税といった捜査当局も、やがて摘発に入らざるを得ない。

 金融当局の規制捜査当局の摘発が、同時に進行するのが今年であり、流通量の最も大きなビットコインでがわずか1年で20倍に高騰した昨年のバブルは、どこかの時点で崩壊する。

 実際、凄まじい狂騒である。

 例えば海外からの投資である。

 ビットコインで得た利益は、当然、課税されるのだが、証券などと違い、「雑所得」と認定される。

 つまり、申告が必要なわけで、総合課税されると、かなりの部分を税金で持っていかれることになる。

 また、取得価格を申告する必要があり、資金の出所を聞かれて困る人は少なくない。

 そんな投資家に、海外からの投資を持ちかける業者がいる。

 日本は仮想通貨の取引所が登録制とされており、口座開設時に本人確認を求められるのでごまかしがきかない。

 ところが海外では、規制されておらず、本人確認もなければ取引履歴を探られることもなく、1000万、2000万円と業者に預け、海外で運用している投資家は少なくない。

 持ち運びも便利だ。

 スマートフォンのなかに蓄財しているわけで、現金や証券を持ち出す時のような面倒臭さがない。

 そんな便利さはあるものの、投資家の弱みにつけこむ悪徳業者が多いのも事実で、早晩トラブルが続出すると見られている。

 しかも、そんな投資は脱税やマネーロンダリングにも直結するわけで、国税当局は国内での課税処分に力を入れる一方、仮想通貨投資を目的にした海外送金にも目を光らせ、そうした業者の把握に務めている。

 詐欺的仮想通貨商法も多くなっている。

 昨年10月、大阪の仮想通貨取引業者「リップルトレードジャパン」の代表が、顧客から現金を受け取りながら、通貨取引に必要な「IOU」と呼ばれる債権を渡さなかったとして逮捕された。

 これなど単純な詐欺だが、仮想通貨の世界では、金融商品取引違反の行為が日常化している。

 顧客の売買を自社内で、相対で行って利益を消し込んでしまう「ノミ行為」や、勝手に取引を行って顧客に不利なレートで取引が成立したと報告する「叩き」「握り」などもあり、かつての悪徳証券会社や不良商品先物業者を彷彿とさせる。

 仮想通貨技術を使ったICO(イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれる資金調達はもっと露骨で、海のものとも山のものともわからない技術に将来性があるとして通貨を発行する詐欺集団が後を絶たない。

 “子供銀行の偽紙幣”のようなものだが、仮想通貨バブルが、「早いうちに買っておいて売り抜ければ儲かる」という幻想を投資家に与えるのか、引っ掛かる人が続出している。

 そうした悪質業者の決まり文句は「投資は自己責任」だが、犯罪を前提とした投資に誘い込む行為が許されるはずもなく、今年は捜査当局もノウハウを蓄積して悪質業者を取り締まることになる。

 人類の歴史を振り返っても、16世紀オランダのチューリップバブル以降、バブルに華咲く経済はない。

 仮想通貨バブルの崩壊も、「自然の理」というべきだろう。【寅】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月27日「『ヤフー』への検索結果削除命令で危惧すべきは確信犯たちの過去からの“逃避”!」<事件>

 
ヤフー本社(☚wikipedia)


インターネット検索エンジンの「ヤフー」に対し、「虚偽の情報が掲載されており、名誉毀損に当たるので削除して欲しい」と、東京都内の男性が求めた仮処分申請で、東京高裁は「ヤフー」による名誉毀損の成立を認め、削除を命じていた(2017年10月30日)ことが判明した。

ネット検索を巡る訴訟は数多いが、昨年1月、逮捕歴のある男性が検索エンジン最大手の「グーグル」に対し、削除を求めた仮処分申し立て事件において、最高裁は検索結果の削除を認めない決定を下した。

だが、裁判所の判断が二つに分かれているというわけではない。

最高裁の判断は、「忘れられる権利」を認めなかったのではなく、いろいろな要素を勘案の上、「公表されない法的利益が優越されることに限って削除を認められるものであり、犯歴記載には相当性がある」と判断し、今回の高裁判断は、「掲載内容が明らかに真実ではない」と指摘した。

つまり、名誉毀損のハードルが一挙に下がったのではない。

それでも高裁判断を機に、今後、多くなると予想されるのは、検索エンジンからの「消したい過去」「不利な情報」の削除要請だろう。

今回の男性側代理人の弁護士は、「検索結果に対する削除請求が広く認められるようになる可能性がある」と、コメントしている。

が、危惧すべきは、「誹謗中傷を目的とするネットの書き込み」と、それなりの「裏取りをしたうえで問題提起するネットメディア」が、「検索エンジンへの引っ掛かり」という一点のみで同一視され、削除要請されかねないことだ。

しかも要請者は、確信犯として危ういビジネスに関わっている業者や人物であることが多い。

要するに、痛いところを突かれ、ビジネスに支障をきたすことから強く申し入れてくるわけで、彼らの生態は、弱小とはいえ、10年近くネットメディアを運営している不肖『週刊0510』にはよく分かる。

例えば、金融絡みの犯罪者たちは、その時々の時流に沿った「商品」を編み出してくる。

少し前には上場企業の増資やM&Aに絡めて詐欺的乗っ取りを行い、株価操縦やインサイダー取引で荒稼ぎする連中が多かったが、現在は怪しげな連中が大挙して進出しているのが仮想通貨の世界である。

特に、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれる仮想通貨を新規発行することによる資金調達は、今や詐欺師の巣窟状態といっていい。

詐欺師だから情報には神経質となり、ブームの先駆け時に儲けなければならず、悪い情報に対しては、早い段階で法的手段をチラつかせ、弁護士がすぐに内容証明を送ってくるし、カネのある連中なら巨額訴訟を起こす。

スラップといわれる「恫喝訴訟」であるのは明らかだが、訴訟を恐れるマスコミは、その危険性を察知して報道を手控えるし、逆に、戦う意思があったとしても、訴訟費用と後ろ向きの訴訟対応を秤にかければ、“戦いの旗”を掲げ続けるのは難しい。

これが昨今の名誉毀損訴訟の現場であり、「カネのあるワル」ほど、弁護士の力で報道を押さえ込もうとする。

しかも、この種の企業や人物には、贈収賄・談合・粉飾決算・背任&横領・詐欺・マネーロンダリング・マルチ・偽計・株価操縦・インサイダー取引などの「過去」があることが少なくない。

まさに「三つ子の魂百まで」――この種の経済犯罪は、「性」としかいいようがないほど何度も繰り返される。

現在、東京地検特捜部が手がけるリニア中央新幹線建設に関する談合など、過去に何度も摘発され、ゼネコン幹部も首長も政治家も、限りなく逮捕されたが、飽きることなく今も続けていることが判明したが、同様に詐欺師は詐欺をやめられないし、「ジャパンライフ」のようにマルチ業者は、それを繰り返す。

高裁は、「明らかに虚偽」の記載に対して削除を命じたのであり、最高裁判断がそうであったように、「過去を公開することによる公益性」もある。

しかし、こうした訴訟に訴えるのは、弱者ではなく、時間もカネも、さらには訴えることで益の多い「過去ある者たち」が大半である。

ミソとクソは別物である!――「ワルが大手を振って歩くネット環境」の到来はあってはなるまい。【辰】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月23日配信「消費税法違反等での告発が順当な鳩山二郎代議士秘書の『国税圧力事件』の裏事情」<事件>

 
東京国税局(☚wikipedia)


 「国税に強い」ことで定評のある『読売新聞』ならではのスクープが、1月9日に1面と社会面のトップで報じられた「鳩山議員秘書、国税呼び出し」と題する圧力事件だった。

 <外国人観光客への宝石の架空販売で約2億2000万円の不正な消費税の還付申告をした疑いで東京国税局から還付を保留されていた免税店運営会社4社を巡り、鳩山二郎衆院議員(39)の小沢洋介秘書(45)が昨年4月、国税庁幹部を議員会館に呼び出し、還付保留について説明を求めていた>

 このリードに事件の概要は書き尽くされている。

 問題は政治家が、個別事案について答えることができない国税当局に対し、圧力をかけたことであり、<国税庁幹部を呼び出して説明を求めるのは極めて異例だ>と、指摘している。

 他のマスコミも追随して報じ、小沢氏は「不正な取引ではなく、圧力をかけたつもりもないが、議員や関係者に迷惑をかけた」として、10日、秘書を辞職した。

 違和感があるのは、「不正な消費税の還付請求」が、一読して悪質であり、「政治圧力」よりむしろ、そちらを追及すべきだと思うのだが、どのマスコミもそう報じていないことだ。

 理由は、国税が不正な還付申告をしたとして、昨年9月、重加算税を含め約3億円を追徴課税(更正処分)したからだ。

 つまり、追徴によって重く税金を取るという行政処分をしたため、刑事罰までは問わなかった。

 国税がそう判断して決定した以上、不正部分の追及はしにくい、ということらしい。

 確かに、国税は税金を徴収する役所であり、そちらを優先するのも無理はないが、横行する消費税の還付金詐欺に対する態度があいまいで、それが、不正が絶えない原因でもある。

 「不正な還付が発覚した場合、国税通則法の規定で重加算税等の行政罰が課せられます。また、刑事罰による制裁規定もあり、消費税法違反の消費税受還付罪に問えるし、刑法違反の詐欺税で告発、立件されることもあります」(国税OB税理士)

 一般国民の感覚では、上述のコメント通り、今回の事件についても詐欺罪をはじめ、消費税受還付罪、重加算税などで罰せられるべきではないか、と思うのだが、国税当局は、要件がどれだけ揃っているかで判断。調査内容を公表するわけではないので、外部から悪質さを知るのは難しい。

 今回、宝石の架空販売の流れは、札幌の建設会社から都内の宝石販売会社が仕入れ、それを小沢氏が顧問を務める「国際東日ジュエリー」という会社が仕入れて、免税店運営会社4社に販売するというものだった。
 
 その宝石を、免税店が外国人観光客に販売したとして、免税店運営会社は外国人向けに販売した場合、消費税が無税となるので、国内で支払った消費税の還付を求めて税務署に申告した。

 ところが、国税はこの種の消費税還付に厳しい目を向けている。

 「外国人向けの販売なので、還付申告されても、その後の調査が難しい。だから、一度、還付留保して国内での調べられるだけの調査をするのです。今回、購入した外人観光客のなかに、ツアーの行程上、宝石が購入できなかった外国人がいたことが判明。しかも観光客は、『国際東日〜』の上海子会社が現地の旅行業者に手配を依頼していたのですから、『還付が仕組まれていた』と、みなすのも当然です」(前出のOB税理士)

 しかし、行政処分なので業者は国税不服審判所に審査請求することができる。

 今回、4社もそうしているのだが、こうした風潮を見逃していいのか。

 昨年8月には、秋葉原の免税店「宝田無線電機」が、約70億円の不正な還付申告を指摘され、重加算税を含めて約100億円を追徴課税されていたことが発覚した。

 同社の店舗には、外国人の集団が現れて、免税の手続きだけをして、金製品を手にすることなく退店していたという。

 にもかかわらず、同社の16年5月期の売上高は、前年比26倍の956億円だった。

 疑われて当然だが、これも行政処分で済ませており、同社は国税不服審判所に審査請求している。

 インバウンドブームを映して外国人観光客が急増中の昨今、それを利用した悪質な詐欺行為かどうかを見極め、それをオープンにして国民に知らせ、犯罪防止につなげるシステムを早急に確立すべきだろう。【戌】

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月20日配信<0510archives>「『スパコンの天才』が騙し取った100億円で見た“悪夢”⁉」<事件>


(PHP研究所刊)

 

 

 人工知能が人間を超える臨界点を「シンギュラリティ」と呼び、2045年に訪れるという。

 その事前の時代を描いた『プレ・シンギュラリティ』(PHP研究所)は、科学技術の発展に人類の夢を託した「明るい未来の本」である。

 なにしろ1兆の100万倍の「エクサ」という数値単位のスパコンの開発によって、革命的な変化が生まれ、衣食住がタダになる世界が実現、「不老」も「不労」も「不死」も人類は手に入れるのだという。

 普通に考えれば、「キワモノ本」であり、著者は「魔術師」「錬金術師」「詐話師」の類と誹られてもおかしくはない。

 そうならなかったのは、著者の斎藤元章・ペジーコンピューティング代表が、東大大学院で医療診断システムを学んだ医師で、米シリコンバレーで医療システム系の会社を起業して成功を収めた後に帰国。スパコンの開発に取り組んで、その世界で知らぬ者のない実績を上げた“天才”だからである。

 だが、今や名声は地に堕ち、「夢見る男」の発言は、国から助成金を引き出すための虚言だったとして、逮捕された。

 実際、国から引き出した助成金は莫大である。

 判明しているだけでも、経済産業省所管の「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)から約35億円、文部科学省所管の「科学技術振興機構」(JST)から約52億円。これに、今後、支給される予定の資金を合わせると、100億円に達する国の助成枠を与えられていた。

 まったくのウソではない。――”パソコンの天才”は、スパコンの絶対性能を競う「TOP500」においては何度もトップテン入りし、小型化省エネ化を競う「Green500」では世界一を達成している。

 「斎藤氏が夢想家であり、現実離れしていたことは事実です。でも彼はそう信じており、我々は彼の『夢』ではなく『実力』に期待した。天才は変人なんですよ。だが、夢にカネは出ないから、彼はいろいろと業績や数字をごまかしたわけですが、それを特捜部が許さなかったのです。仕方がないかも知れないけど、スパコン業界にとっては痛手です」(スパコン業界関係者)

 東京地検特捜部の捜査は、東京国税局の税務調査を起点としている。

 斎藤容疑者は、ペジー社のほかに、多数の企業、組合、社団法人などを持ち、企業だけでも10社を超えている。

 身内間で循環取引、架空取引が行われているのではないかとして税務調査が行われ、その過程で助成金詐取が発覚した。

 従って、年内に行われる「NEDO」からの助成金を不正に受け取ったという詐欺罪での起訴は「序章」にすぎない。

 「JST」から支給された52億円に同様の問題はないか。

 また、いくら斎藤容疑者が天才でも審査する「NEDO」や「JST」は科学技術のプロ集団で、二重三重のチェック機能を持っている。

 そこを突破するのに、政官界にも幅広い人脈を持つ斎藤容疑者が、何らかの工作を依頼、それを受けて動いた者はいないか。

 そして、ペジー社顧問となっていた「安倍首相と最も近いジャーナリスト」といわれる山口敬之・元TBSワシントン支局長の関与はないのか。

 山口氏の退社は16年5月なので、今回の逮捕案件となった「NEDO」の助成金詐取には絡んでいないが、「JST」の助成が決まったのは17年1月である。

 安倍首相、麻生太郎財務相などの大物政治家、官邸を中心に官僚にもパイプを有する山口氏が、顧問としてどんな働き掛けをしたのか。

 年明け以後、あらゆる角度からの捜査が行われ、スパコン事件は来年1月の通常国会で、与野党が論戦を繰り広げることが予想される。

 そこでは、「実績もないのに国から巨額資金を引っ張った詐欺師」という斎藤容疑者の一面だけが強調され、“天才”がスパコン業界に残した足跡は、残念ながら、掻き消されることになりそうである。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月19日配信<0510archives>「月刊『Hanada』で復活を果たした山口敬之氏の暴論と限界」<事件>


 
(伊藤詩織著・文藝春秋)


 

 

 颯爽とデビュー、確固とした地位を築いていた言論人の“転落”は、目にしたくないものである。


 元TBSテレビのワシントン支局長だった山口敬之氏が、退社後にフリーとなり、2016年5月、『総理』(幻冬舎)を著した時、「迫真のリアリティをもって描く政権中枢の人間ドラマ」という惹句がピッタリの内容で、安倍晋三首相をはじめとする政権中枢への食い込みに、読者は驚嘆した。

 が、そこからの“転落”は早かった。

 1年後の17年5月、「山口氏にレイプされた」と、ジャーナリストの伊藤詩織さん(28)が記者会見を開き、顔を出して告発した。

 それまで山口氏は、報道番組などに頻繁に登場、政権擁護発言をするジャーナリストとして知られていたが、一切、表には出なくなった。

 同氏がマスメディアから忌避されたのは、「レイプ疑惑の主」だったからではない。

 詩織さん(告発当初は姓を名乗らなかった)の訴えを警視庁は受理して捜査、山口氏を送検したものの、検察の結論は嫌疑不十分で不起訴処分だった。

 記者会見は、詩織さんの検察審査会への申し立てを理由とするものだったが、この時、山口氏がメディアに対して、真摯な対応をしていれば、「山口バッシング」は起きなかっただろう。

 だが、同氏は「私は被疑者でも容疑者でもない」と強調、「間違った記述があれば、法的措置も辞さない」という強気のコメントは、取材者たちを鼻白ませた。

 要は、メディアを味方に付けることができなかった。

 詩織さんの検察審査会への申し立ては、4ヶ月後の17年9月、「不起訴相当」の議決となって認められなかった。

 詩織さんは納得できず、翌月『ブラックボックス』(文藝春秋)を著して、告発を続けた。

 それを受けて、山口氏は初めて反論に出た。

 保守派の言論雑誌で「親安倍路線」の『月刊Hanada』(12月号)で、「私を訴えた伊藤詩織さんへ」を、同じ路線の『月刊Will』(12月号)で「安倍総理の“どす黒い孤独”」を、それぞれ寄稿した。

 これまではメディアの記者、報道局、編集部などとのやりとりだけだったが、自分の思いを新たに表明すると同時に、“ジャーナリスト復帰宣言”ともいうべき記事だった。

 しかし、両作とも高い評価は受けられなかった。

 

 「詩織さんへ」と題する記事は、検察の「不起訴」と検察審査会での「不起訴相当」をもって自己弁護する内容で、「合意なくホテルに連れ込み、セックスに及んだこと」への道義的倫理的な反省はまったくなく、読者に不快感を残した。


 安倍首相への応援歌となった記事は相変わらずだったが、切り込みも分析も不十分で、政界と官邸から距離を置かれた?ジャーナリストの悲哀を感じさせた。

 「やはり『臨時国会冒頭』しか、(安倍首相の)解散の選択肢はなかったのである」と、最後にまとめた記事を誰が興味をもって読むだろうか。

 11月25日発売の『月刊Hanada』(1月号)は、さらに悲哀を感じさせる内容だった。

 「伊藤詩織問題 独占スクープ第2弾」として「記者を名乗る活動家 金平茂紀(TBS報道特集キャスター)と望月衣塑子の正体」と題し、自分に向けられた批判に対して反論しているのだが、罵詈雑言の類で、およそ読者の共感は得られないし、不快感ばかりが残る記事だ。

 冒頭、「取材依頼がなく、意見も聞かないから2人は記者ではない」というのだが、金平氏も望月氏も記者会見やインタビューでの発言であり、山口氏に取材依頼をして確認すべき内容ではない。

 なにより、山口氏は公式コメンを出したり、記事を発表しているのだから、それをもとに論評ないし、記者会見やインタビューで発言するのは認められる行為である。

 挙げ句、「金平という男は、気に入らない政治家を貶めるためなら、記者としての基本動作も放棄し、同僚や部下を平気で裏切り、自分だけは生き残ろうとする唾棄すべき人物である」と、言い切っている。

 この名誉毀損以外の何物でもない文章を執筆するにあたり、山口氏は金平氏に取材依頼をしたのだろうか。

 細かく書き連ねても仕方があるまい。

 

 何ら反省することなく、向かってきた勢力はすべて敵とみなして噛み付く!――レイプ疑惑は、刑事事件としては不起訴でも、そう疑われるような行為があったことをまず反省、そのうえで被害者やそれを報じようとするメディアにどう対応するかを山口氏は、真摯に考えるべきだろう。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月18日配信<0510archives>「『Black Box』(伊藤詩織著・文藝春秋)が告発する司法の歪み」<事件>



 


 

 

 

 

 レイプ被害者として「顔出し告発」していた伊藤詩織さんが、10月18日、『ブラックボックス』(文藝春秋)を上梓した。
 
 今年5月、詩織さんは検察審査会に不起訴処分を受けて異議を申し立て、記者会見で経緯を説明した。
 
 その時も衝撃だったが、検察審査会での「不起訴相当」を受けて著した本書では、そうした会見などでは伝わらぬ思いが、時系列で詳細に語られ、一級のノンフィクションであると同時に、日本の司法システムに対する鋭い告発書にもなっている。
 
 圧巻は、「安倍晋三首相に最も近い記者」という評判の元TBS記者・山口敬之氏と、詩織さんにとって同氏に対する「顔を思い出したくもない加害者」であるという辛さを封印して、責任を追及するために行った交換メールの公開と、高輪署、警視庁捜査一課、そして検察との「山口氏の圧力」を感じながらの切迫した交渉だろう。
 
 率直に感じられるのは、詩織さんの強さである。
 
 それは5月時点の「顔出し会見」で証明されてはいたが、今回、明かされたジャーナリストを目指して欧米で学んだという経歴が、告発への動機を裏付けるとともに、そうした意志も強さも持っている人が、それでも「司法のカベ」に跳ね返されてしまった。
 
 強さは、レイプ犯を許さないという一貫した姿勢にあるが、その一方で、詩織さんの心は常に山口氏の“幻影”に怯えており、「魂の殺人」だというレイプが被害者に与える傷の深さに慄然とさせられる。
 
 それだけのプレッシャーを受けながら、これまでのレイプ被害者の大半が、「正体を晒しても何の得にもならない」と、勝訴しても自分の胸の内にしまい込むか、示談に応じて事件を封印するなか、詩織さんが実名告発し書籍まで発売したのは、個人的な恨みを晴らすのではなく、「私に起こったことが、あなたに、あるいはあなたの大切な人に降りかかってくるか、誰にも予測はできないのだ」(まえがきより)と、訴えたいからである。
 
 その告発するという行為の結果として、司法の“歪み”が露呈した。
 
「よくある話だし、事件として捜査するのは難しいですよ」
 
 担当する高輪署のA氏が、最初に投げかけたのはこの言葉であり、詩織さんは「それはあまりに残酷な言葉だった」と、嘆く。
 
 以降、「今まで努力してきた君の人生が水の泡になる」と、被害届の提出を考え直すように説得するA氏を、むしろ詩織さんが引っ張る形で捜査は進み、山口氏の帰国を待って逮捕するところまで進展した。
 ところが、15年6月8日、成田空港に山口氏逮捕に出向いたA氏から「逮捕できません」という連絡が入る。
 
 理由を問うと「ストップをかけたのは警視庁のトップです」という返事。後に、それが中村格警視庁刑事部長(当時)であることが明らかになる。
 
 以降、所轄の高輪署から警視庁捜査一課に事件は移送され、A氏も担当検事も配置替えとなり、事件は封印の方向に向かう。
 
 捜査一課の捜査が、不起訴へ持っていくためのものであるのは、「なぜ逮捕状が出たのに逮捕しなかったのか」という詩織さんの問いかけに、「逮捕状は簡単に出ます」と断言。「社会的地位のある人は、居所がはっきりしているし、家族や関係者もいて逃走の恐れがない。だから、逮捕の必要がないのです」と、いってのけた捜査一課幹部の言葉で明らかだ。
 
 官邸から中村部長へと伝えられたことで発生した“忖度”は、捜査現場を動かして起訴には不十分な捜査内容となり、不起訴処分は出た。
 
 その証拠に沿って国民からくじで選抜される検察審査会の審査員が、検察官に誘導される形で事件性を審査すれば、「不起訴相当」となるのも無理はない。
 
 司法は、そのシステムを熟知し、方向性を変えうる力のある人間が操作すれば、簡単に歪むものである。
 
 レイプが行われたとされる15年4月4日以降、2年半の歳月をかけて詩織さんが著した『ブラックボックス』で、我々が読み取るべきは、レイプ被害の傷跡の大きさとともに、それを見逃してしまった司法システムの検証であろう。【午】

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月17日配信<0510archives>「"人治国家"になった日本‼――レイプ容疑の“官邸御用ジャーナリスト”の逮捕潰しに奔走した官邸の末期症状」<事件>

blackbox_171019_top.jpg 
(文藝春秋社)


 

 森友学園騒動で、安倍晋三首相べったりの噴飯もののコメントを出し続けていたのが、元TBSワシントン支局長で現在はフリージャーナリストの山口敬之氏だった。

 政治部記者が肩入れする政治家の“代弁”をするのは避けられない。

 ただ、それも程度問題。まして今回は、国有地の安値払い下げをめぐる首相夫妻の口利きが取り沙汰された案件だっただけに、したり顔で擁護する山口氏への批判は強かった。

 なぜ、ジャーナリストとしての矜持を忘れたようなコメントを出し続けたのか。5月末にその理由が、明らかになった。

 レイプ被害者の詩織さん(姓は非公表)が「顔出し告発」したことで、「山口氏を守るための官邸による疑惑潰し」が露呈、山口氏と官邸は「運命共同体」になっていたのである。

 既に、詩織さんが『週刊新潮』に匿名告発していた時点で、同誌の取材によって、幾つかの疑惑潰しは明らかになっている。

 現段階で、まだ踏み込んで報道しているメディアはないが、山口氏の官邸への食い込みは“証明”されているだけに、疑惑潰しの点と点の情報が結びつけば、最終的には安倍首相に行き着くわけで、森友学園、加計学園以上の騒動に発展しかねない。

 ハッキリしているのは、詩織さんがレイプされたのが2015年4月4日で、5日後の9日から警視庁に相談して、4月30日に高輪署が告訴状を受理。捜査が始まり、ドイツからの帰国後の6月8日、逮捕される寸前に中村格・警視庁刑事部長(当時)の決済で、逮捕が見送られたことだ。

 この間、山口氏が新潮編集部に「北村さま」宛に誤送信したメールによって、山口氏が北村滋・内閣情報官に一連の経緯を相談したことが明らかになっている。

 山口氏は「民間人」と否定したものの、その後の官邸の対応も含め北村情報官であった可能性が高い。

 官邸の情報中枢である内閣情報調査室を5年も率いる北村情報官は、日本有数の危機管理の責任者である。

 そんな公的立場の人間が、一介のフリージャーナリストのレイプ疑惑に関与したのが事実なら由々しきこと。民進党を始めとする野党が、この問題を国会で取り上げるのも当然である。

 「逮捕は必要ないと判断した」と、『週刊新潮』の取材に答えた中村氏もまた、ただの警察官僚ではない。

 刑事部長に就任前は、5年も官房長官秘書官を務め、菅義偉・官房長官の“お気に入り”だった。

 安倍・菅・北村といった官邸中枢に太いパイプがある山口氏が、逮捕説に危機感を募らせ、安倍首相に相談、ないし要請をしていたらどうなるか。

 安倍→菅→中村というライン、あるいは安倍→北村→中村というラインで逮捕が見送られた可能性がある。

 点と点が線で結ばれると大変なことになるというのはそういう意味で、森友、加計両学園騒動とは違った「誤ったいびつな権力行使」である。

 ただ、「行政を歪める」ことに霞ヶ関の官僚は敏感に反応する。

 加計学園騒動における「前川喜平・文部科学省前事務次官の反乱」に見られるように、「官僚組織の口封じ」は容易ではないが、それは警察組織にしてもそうだ。

 

 山口氏は逮捕を免れただけではない。

 山口氏を取り調べていた捜査員は担当を外れ、担当部署も高輪署から本庁捜査一課に変わった挙句、書類送検で済まされ、7月22日、不起訴処分となった。

 警察組織、なかでも現場の刑事は、こんな横車、不当な圧力を嫌う。

 前川氏のような実名告発はなくとも、現場から捜査情報が漏らされる可能性がある。

 しかも、こちらには詩織さんという覚悟を決めた存在がいて、検察審査会に審査を申し立てている。

 太鼓持ちジャーナリストを側に置き、自身の代弁をさせるだけでなく、事件潰しを指示したのが安倍首相なら、内閣が持たない事態に発展する可能性も考えらよう。【酉】

 

 

 

※東京第六検察審査会は、9月21日、無情にも「不起訴相当」の議決を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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