2019年12月18日配信<0510archives>「保育所事業補助金詐欺の川崎大資(塩田大介)容疑者をスポンサーにしていた秋元司国交副大臣に捜査は及ぶのか?」<事件>


 渦中の秋元司国交副大臣
(☚wikipedia)

 

 「川崎大資」というより、改姓改名前の「塩田大介」の方がしっくりするし、また「塩田らしい」といって差し支えないのが、企業主導型保育事業に絡み、横浜幸銀信用組合から約1億1000万円を騙し取った疑いで逮捕された川崎大資容疑者である。
 
 摘発したのは、塩田姓時代の昔、脱税容疑で摘発したことがある東京地検特捜部だ。
 
 申請書類を偽造、金融機関を騙したという、よくある詐欺事件。しかも金額は1億円強と少なく、足場も福岡という良くない場所の事件を、なぜ特捜部が手掛けたのか――。
 
 そう司法記者に聞かれた検察幹部は「彼(川崎)は、お客さんだから」と、答えた。
 
 脱税だけでなく、当時、経営していた「ABCホーム」の上場を狙った工作などで、塩田は検察の要注意人物だった。
 
 脱税の次の摘発は、居城といっていい「西麻布迎賓館」を競売されそうになり、“登記の魔術師”の小野塚清氏と組んだ競売妨害事件だった。
 
 これは警視庁組織犯罪対策4課の扱いとなったが、政治家、暴力団、反社会的勢力から芸能界まで、カネにあかせて人脈を広げる川崎容疑者は、「何かしでかす人物」であり、実際、今回は制度の隙間を巧みについて助成金を詐取した。
 
 つまり、書類偽造の詐欺事件は入り口で、今後、安倍政権の目玉政策のひとつで、3年間に3800億円以上も投じた企業主導型保育事業の助成金詐取に延びる。
 
 さらに、「ABCホーム」が隆盛の頃、西麻布迎賓館には政治家も含む華麗なる人脈が遊びに来ていて、川崎容疑者は至れり尽くせりの接待をした。
 
 脱税摘発の2年前、都内のホテルで開いた結婚式には、上場企業経営者はもちろん、野村克也監督夫妻、酒井法子夫妻、中村玉緒、竹内力ら多くの著名人が出席。媒酌人は中川秀直元官房長官で、他にも政界から官僚を含む5人の国会議員が出席した。
 
 要は、川崎容疑者は「撒く人」であり、その性癖は、簡単には変わらない。
 
 それが分かっているから特捜部は、制度利用の際、政治家の口利きはなかったか、あるいは窓口の「児童育成協会」への工作を行なわなかったか、といった観点からの捜査を続ける。
 
 最初に浮かび上がった政治家が、秋元司内閣府副大臣である。
 
 今年5月23日の衆議院厚生労働委員会で、立憲民主党の石橋通宏参院議員が、秋元副大臣にこう質した。
 
 「川崎容疑者は、拠点を福岡市に移し、そこで『WINカンパニー』という会社でキッズランドという保育所を運営するほかコンサルタント業務を展開している。


 同社のコンサルを受けた業者は、『秋元副大臣を川崎容疑者に紹介してもらい、各種の陳情を行なう一方、(川崎容疑者の)要請に従ってパーティー券を購入した』と、地元のネットメディアに証言している。
 川崎大資という人物とどういう関係なのか――」
 
 こう質問した石橋議員に対して、秋元副大臣は「口利き依頼」については否定、問い合わせについては「パンフレットなどで説明した」と、述べ、川崎容疑者とは「20年前に知り合い、パーティーなどの席で5〜6年前に会った」と、記憶を辿った。
 
 献金については、「WINカンパニー」と献金を要請された企業とのメールのやり取りが公開されており、政治資金収支報告書にも記載されてことで、川崎容疑者を仲介者とする「陳情と献金」の関係は明らかだ。
 
 だが、逆にそこがネックとなる。
 
 危うい関係が多かった小林興起元代議士のもとで秘書として働き、秋元副大臣は「危険なカネの処理」には長けているという。
 
 陳情をパーティー券購入という表で処理した時、それを贈収賄の構図で問うのは難しい。
 
 「特捜部が政界ルートを狙うには、明確な口利きの事実を立証しなければならず、犯歴があり、名前まで変えている塩田のために、機を見るに敏な秋元が、そこまでやってやるとは考えにくい」
 
 双方を知る政界関係者は、捜査の先行きについて悲観的な見方をするが、それとも巷間噂されるように久しぶりにバッヂに手が届くのか?――今後の捜査の進展から目が離せない。【午】

 

 ※12月東京地検特捜部が秋元司代議士の元秘書宅を家宅捜索。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月19日配信「苫小牧にIRを誘致せず――鈴木北海道知事の決断に橋本五輪相、森章・森トラスト会長などが予定を狂わされて大落胆」<事件>

 
鈴木直道北海道知事(Wikipedia)


 「苫小牧へのIRの誘致を見送ります」――アベノミクスの経済浮揚策で首相官邸が期待、地元政財界も景気対策や雇用確保のために誘致一色かと思われたカジノを含む統合型リゾート(IR)に、初めて「ノー」が突き付けられた。
 
 鈴木直道・北海道知事は、11月29日、道議会で誘致を見送る表明をした。
 
 理由は「自然環境への影響」で、候補地の苫小牧市植苗地区が、希少動植物が生息する自然豊かな地で、「21年7月という誘致申請期限までに、環境への適切な配慮を行うことは不可能」と、見送りの理由を説明した。
 
 既に、苫小牧市は誘致を推進する決議案を可決、道内4経済団体も誘致表明を求める緊急共同宣言を道に提出していた。
 
 集客は年間840万人を見込み、雇用は1万人と試算され、最大で年約1600億円の売り上げが期待できるとあって、みんなが前のめりとなっている印象だった。
 
 だが、住民の意向を尊重したものではない。
 
 道が行ったアンケート調査では三分の二がIRへの誘致に「不安」と回答。「治安の悪化」と「ギャンブル依存症問題」が主たる理由で、自然保護団体からは「環境保護の方が大切」という声が上がっていた。
 
 IRに関し、政財界や行政と住民との間に落差が大きいのは「誘致表明」をしたばかりの横浜も同じだが、説得して推進するのが行政の前提と思われたIRに、鈴木知事が下した「誘致せず」の決断は、IRに多様性をもたらした。
 
 とはいえ、関東(東京か横浜)にひとつ、関西(大阪市)にひとつ、地方にひとつの計三つのIRが既定方針となっているなか、北海道・苫小牧は最有力候補と目されていただけに、推進派の落胆は大きい。
 
 政界では橋本聖子五輪相である。
 
 東京五輪開幕の年に生まれて「聖子」。冬のスケート、夏の自転車と計7回の五輪に出場、銅メダルを獲得。引退後、政界に打って出て、現在、参院5期目。今年9月の内閣改造で、五輪相という念願の閣僚ポストを手に入れた。
 
 出身は、苫小牧に隣接する安平町で、最大級のスポンサーは競走馬の世界で知られた社台グループである。
 
 吉田照哉、勝己、晴哉の「吉田三兄弟」が運営する社台グループはIR誘致にも熱心で、勝己氏が苫小牧統合型リゾート推進協議会の副会長。しかも勝己氏が社長を務める「ノーザンレーシング」は、約100ヘクタールの所有地を、IR用として市に無償提供することになっていた。
 
 橋本五輪相と勝己氏の思惑は一致。『週刊新潮』は、10月31日号から3週連続で、次のような疑惑を報じた。
 
 「マラソン・競歩を札幌で行う代わりに鈴木道知事にカジノ誘致を了承させる」――結果的に“誤報”だったが、政治家も経済界も行政も、それだけ期待を込めていたのは事実。そして、日本最大級の都市とリゾートの開発事業者である「森トラスト」も、大きく計画を狂わされた。
 
 今年83歳となった森トラスト会長の森章氏は、3年前、娘の伊達美和子氏に社長を譲ってからは、人生最後の夢を苫小牧に託すとして、一大リゾート計画を推進してきた。
 
 会社にリスクを取らせるわけにはいかないと、「MAプラットフォーム」という個人会社で約1000ヘクタールもの土地を取得した。
 
 その後、「森トラスト」は、ここにIRの進捗と合わせ、高層ホテル、広々としたコンドミニアム、温泉を含むスポーツ・レクリエーション施設などを建設、2500億円を投じることになっていた。
 
「誘致見送り」の報を受けても、森章氏は「予定通りに開発を行う」と、強気の姿勢を崩さなかったが、単独での2500億円プロジェクトは難しく、修正を余儀なくされよう。
 
「MAプラットフォーム」が、予定地を開発権利付きで購入した時の価格は約55億円。だが、原価は12億6000万円に過ぎず、「2割の利益を乗せたとしても40億円も高い買い物をさせられた」ということで、森氏は当時の社長を相手に損害賠償請求訴訟を行っている。
 
 この売買には、仲介業者として森氏と親しい謎の中国人女性が絡んでおり、複雑な様相を呈している。
 
 国税当局も取引を怪しみ、未だに調査を続けており、IRが予定通り進展すれば、そうした“躓き”は解消されただろうが、構想に終わったことで痛みは引きずる。
 
 IRの見送りは、こうした数々の「痛みと落胆」を、準備を進めていた政・官・財界の人間に与えることになりそうだ。【巳】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月17日配信「執念と強欲に塗れた馬毛島を防衛省が“破格”の160億円+αで購入!」<政治>

 

 「ついに」というべきだろう。――政府は、11月29日、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転先となっていた馬毛島の購入について、地権者と合意した。
 
 「基地絡み」の話だけに、交渉がもつれるのは予想できたが、取得以来、延々20余年。防衛省と執念の交渉を繰り返し、国ばかりか債権者の鼻面を引き回しながら、交渉してきた地権者の粘りは、驚嘆に値する。
 
 種子島の西方12キロの南シナ海に浮かぶ無人島の馬毛島を所有するのは「タストン・エアポート」。――政府=防衛省との尋常でない交渉を続けてきたのは、同社が所属する立石建設グループを率いる立石勲氏である。
 
 鹿児島県出身で水産高校を卒業後、船乗りを経て建設設計分野に進み、砂利採取、再生砕石、産業廃棄物処理と幅広く事業展開する立石建設グループを一代で築き上げた。
 
 事業は多方面に及ぶが、現在、86歳の立石氏が、人生を賭けた事業といっていいのが、95年に購入した馬毛島に、民間初の国際貨物空港を建設することだった。
 
 馬毛島は、数奇な運命を辿った島である。
 
 石油備蓄基地、一大レジャーランド、防衛庁(当時)レーダー基地など幾つもの構想が生まれ、いずれも実らず、その島を船乗り時代に横目で眺めていた立石氏が、4億円で取得した。
 
 以降、憑かれたように飛行場建設を進め、南北4200メートル、東西2400メートルの“粗滑走路”を敷設した。
 
 それに目をつけたのが防衛省である。
 
 11年、訓練基地に関して日米が合意に達し、大きな騒音を伴うFCLPを無人島で米軍基地に近い馬毛島で行なう計画が浮上する。
 
 ネックは価格だった。
 
 防衛省は、17年3月、「日本はもっと防衛負担を!」と、主張するトランプ大統領の誕生を機に、立石氏との交渉を急ぎ、45億円という鑑定価格を出して交渉に入った。
 
 だが、「これまでに150億円は投じた」と、主張する立石氏は、国の足元を見透かしたように、自ら依頼した鑑定士事務所の結果をもとに、約400億円を主張して譲らなかった。
 
「国の予算」なので、倍の開きでも難しいのに10倍近い価格差で暗礁に乗り上げたが、立石氏は一歩も退かない。
 
 だが、一方で立石氏にも差し迫った事情があった。
 
 将来の見通しもない空港建設に、資金を突っ込んだおかげでグループの経営は“火の車”となった。
 
 そのため、都内や川崎市などに持つグループの資産には限度枠いっぱいの抵当権が設定され、残る馬毛島を切り売りするように、金融業者に担保提供せざるを得なくなった。
 
 丁寧で腰は低いが、図太いのが立石氏の真骨頂。のらりくらり、あの手この手で借金を重ね、総額は約250億円に達したという。
 
 「売却に成功したら10億円」といったアテのない“空証文”を連発、厳しく取り立てた金融業者が恐喝で逮捕されたこともある(不起訴処分)。
 
 その苦境を利用して、防衛省が債権者をけしかけて、昨年夏には第三者破産に持ち込んだこともあったが、辛くも新たな金融業者S社の支援を受けて乗り切った。
 
 が、売却しなければ、借金が返せない状況に変わりなく、S社主導の防衛省との交渉が、今年に入って再開され、2月に一旦は160億円で合意。だが、「それでは借金は返せても立石建設は立ち行かない」と、5月の段階で白紙に戻った。
 
 その後、方々に声をかけて急場を凌ぐ綱渡りのような金策が続いたものの、10月に入ると不渡りを出して万事、窮した。
 
 再び、S社の支援を受けざるを得なくなり、「ごね得」を封じ、売却価格は160億円でプラスαを求める交渉に入った。
 
 結局、「プラスαの中身は公開されていないが、工事に関することだ」(周辺関係者)という付帯条件がついたことで、ようやく11月末の防衛省との合意となった。
 
「工事に入れば、それなりの仕事が出てくる。それを『立石建設』が受注するということ。それなら160億円では足りない分をカバーできるし、債権者も納得する」(防衛省関係者)
 
 これでも立石氏は不満だというが、その「執念と強欲」が、鑑定価格の「3倍プラスα」という条件を国から引き出したのだから、老いの一徹が奏功したと言うしかない。【午】

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月14日配信「立石勲・立石建設代表が驚異の“粘り腰”で馬毛島を高値売却に成功した背景」<事件>

 
(☚wikipedia)


「ついに」というべきだろう。――政府は、11月29日、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転先となっていた馬毛島の購入について、地権者と合意した。
 
「基地絡み」の話だけに、交渉がもつれるのは予想できたが、取得以来、延々20余年。防衛省と執念の交渉を繰り返し、国ばかりか債権者の鼻面を引き回しながら、交渉してきた地権者の粘りは、驚嘆に値する。
 
 種子島の西方12キロの南シナ海に浮かぶ無人島の馬毛島を所有するのは「タストン・エアポート」。――政府=防衛省との尋常でない交渉を続けてきたのは、同社が所属する立石建設グループを率いる立石勲氏である。
 
 鹿児島県出身で水産高校を卒業後、船乗りを経て建設設計分野に進み、砂利採取、再生砕石、産業廃棄物処理と幅広く事業展開する立石建設グループを一代で築き上げた。
 
 事業は多方面に及ぶが、現在、86歳の立石氏が、人生を賭けた事業といっていいのが、95年に購入した馬毛島に、民間初の国際貨物空港を建設することだった。
 
 馬毛島は、数奇な運命を辿った島である。
 
 石油備蓄基地、一大レジャーランド、防衛庁(当時)レーダー基地など幾つもの構想が生まれ、いずれも実らず、その島を船乗り時代に横目で眺めていた立石氏が、4億円で取得した。
 
 以降、憑かれたように飛行場建設を進め、南北4200メートル、東西2400メートルの“粗滑走路”を敷設した。
 
 それに目をつけたのが防衛省である。
 
 11年、訓練基地に関して日米が合意に達し、大きな騒音を伴うFCLPを無人島で米軍基地に近い馬毛島で行なう計画が浮上する。
 
 ネックは価格だった。
 
 防衛省は、17年3月、「日本はもっと防衛負担を!」と、主張するトランプ大統領の誕生を機に、立石氏との交渉を急ぎ、45億円という鑑定価格を出して交渉に入った。
 
 だが、「これまでに150億円は投じた」と、主張する立石氏は、国の足元を見透かしたように、自ら依頼した鑑定士事務所の結果をもとに、約400億円を主張して譲らなかった。
 
「国の予算」なので、倍の開きでも難しいのに10倍近い価格差で暗礁に乗り上げたが、立石氏は一歩も退かない。
 
 だが、一方で立石氏にも差し迫った事情があった。
 
 将来の見通しもない空港建設に、資金を突っ込んだおかげでグループの経営は“火の車”となった。
 
 そのため、都内や川崎市などに持つグループの資産には限度枠いっぱいの抵当権が設定され、残る馬毛島を切り売りするように、金融業者に担保提供せざるを得なくなった。
 
 丁寧で腰は低いが、のらりくらりが立石氏の真骨頂。、あの手この手で借金を重ね、総額は約250億円に達したという。
 

 「売却に成功したら10億円」といった根拠のない“空証文”を出し、厳しく取り立てた都下の金融業者が恐喝で逮捕されたこともある(不起訴処分)。
 
 その苦境を利用して、防衛省が債権者をけしかけて、昨年夏には第三者破産に持ち込んだこともあったが、辛うじて金融業者N社の支援を受けて乗り切った。
 
 が、売却しなければ、借金が返せない状況に変わりなく、N社主導の防衛省との交渉が、今年に入って再開され、2月に一旦は160億円で合意。だが、「それでは借金は返せても立石建設は立ち行かない」と、骨肉の争いの末、5月の段階で白紙に戻った。
 
 その後、方々に声をかけて急場を凌ぐ綱渡りのような金策が続いたものの、10月に入ると1回目の不渡りを出して万事、窮した。
 
 再び、N社の支援を受けざるを得なくなり、「ごね得」を封じ、売却価格は160億円でプラスαを求める交渉に入った。
 
 結局、「プラスαの中身は公開されていないが、工事に関することだ」(周辺関係者)という付帯条件がついたことで、ようやく11月末の防衛省との合意となった。
 
「工事に入れば、それなりの仕事が出てくる。それを『立石建設』が受注するということ。それなら160億円では足りない分をカバーできるし、債権者も納得する」(防衛省関係者)
 
 これでも立石氏は不満だというが、その「執念と強欲」が、鑑定価格の「3倍プラスα」という条件を国から引き出したのだから、老いの一徹が奏功したと言うしかない。【午】


2019年12月10日<0510archives>配信「鼎の軽重を問われる関西検察――市民団体が『特別背任と収賄と脱税』で、12月13日に告発する関西電力不正還流事件の行方」

 
関西電力本社(wikipedia)

 

 福井県の反原発市民団体などで構成される「関電の原発マネー不正還流を告発する会」が、11月14日、永田町の憲政記念会館で東京集会を開き、代理人の河合弘之弁護士が、会社法上の特別背任と収賄、及び脱税での刑事告発を視野に作業を進めていることを明らかにした。
 
 告発は12月13日を予定だが、告発先については、当初、予定されていた大阪地検にするか、東京地検にするかを、まだ決めかねているという。
 
「真剣に取り組んでくれるところを選びたい」(河合氏)というのが、その理由だ。 

 関電役員ら20名が、「原発フィクサー」の森山栄治元高浜町助役から約3億2000万円の原発還流資金を受け取っていたというとんでもない事件。その原資は、関電が森山氏の顧問先である「吉田開発」(高浜町)に発注した直接間接の原発資金だった。
 
 金額に違いはあるとはいえ、八木誠前会長、岩根茂樹社長ら経営陣みんなが受け取っていたという意味で、「関電総体の事件」であり、社内調査委員会が事件を1年間、封印していたことを考えれば、強制捜査権を持つ検察への告発は当然のことだ。
 
 発覚を受けて、関電は10月9日、新たに第三者委員会を立ち上げているが、「調査費用は関電が出しており、会社のコントロール下に置かれている」(河合弁護士)という意味では、役員らに同情的で厳しい追及をしなかった社内調査委員会と同じ土俵にある。
 
 検察捜査に期待がかかるのは、還流資金の出し手である「吉田開発」に話を聞くことができるし、関電や「吉田開発」、森山氏の自宅や関係先に捜査を入れて帳簿類などを押収できるうえ、発覚のきっかけとなった税務調査の資料を税務当局に提出させることもできるからだ。
 
 森山氏が今年3月、死去しているのは痛手だが、そうした証拠と証言の積み重ねで起訴に持ち込むのは可能だろう。
 
 会社法上の特別背任は、任務に背いて会社に損害を与えたことを立証しなければならないが、余剰利益があったからこそ「吉田開発」には森山氏に回すカネがあったわけであり、それは適正発注ではなく、役員らは任務に背いて、そのカネが自分たちに還流していることを認識しながら利益を得る立場にあった。
 
 同じく収賄は、不正の請託を受けて「吉田開発」に便宜を諮ったことを立証しなければならないが、「吉田開発」が関電から直接、発注を受けたのは22件で、うち随意契約が10件である。
 こうした発注の際、森山氏に対して事前に工事物量や概算額の情報提供が為され、吉田開発側が同席していた例もあり、不正の請託を行なう局面はあった。
 
 脱税については、金額概算で2人が1億円を超えている。
 後で返すつもりだったということで、実際、修正申告して税金を納めているが、1億円を超える無申告はあまりに悪質で納税しても脱税は成立する。
 
 関電エリアの住民の事件への反発は強く、金品の還流が明らかになっている以上、12月13日に告発があれば、大阪地検特捜部は、受理して捜査するのは当然の流れのはずだが、濃密な人間関係が交錯する関西検察の反応は鈍い
 
「カネの出し手が死んでいる以上、立証は極めて困難」(検察関係者)というのがその理由だが、その裏には、「関西検察のドン」である土肥孝治元検事総長が今年6月まで関電社外監査役で、後を継いだのが佐々木茂夫元大阪高検検事長。さらに社内調査委員会の委員長が元大阪地検検事正の小林敬弁護士だった、という事情もある。
 
 つまり、「関電の守り役」である先輩たちの“顔”を、関西検察の後輩たちは潰せないし、連綿と受け継がれてきた秩序を乱せば、退官後の天下りにも差し支える。
 
 それを読み、河合氏ら弁護団は東京地検への告発も視野に入れている。
 
 厚労省女性局長逮捕に絡む証拠改ざん事件を起こし、検察の威信を地に落としたのは大阪地検だった。
 
 森友学園事件では、籠池泰典理事長夫妻を国策で逮捕・起訴しながら、証拠隠滅など数々の違法行為を犯した財務官僚に踏み込むことはなかった。
 

 そして今回は、先輩らに配慮してまともに捜査しない?――まさに関西検察の鼎の軽重が問われている。【巳】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月3日配信「『桜を見る会』で疑惑噴出の安倍首相を刑事告発する意味と特捜捜査の行方」<事件>

 
疑惑の桜を見る会(wikipedia)

 

 「秩序を守る役割の検察が、秩序を揺るがす捜査なんてできる訳がない!不起訴に決まっているから捜査に意味はない!」――安倍晋三首相が主催する「桜を見る会」に公職選挙法と政治資金規正法違反の疑いがあるとして、11月20日、「税金私物化を許さない市民の会」が、安倍晋三首相を被告発人として刑事告発した際、司法関係者を含む大半のプロの反応は、斯くも冷ややかなものだった。
 
 この告発は、地元後援会約850人を「桜を見る会」に招き、飲食供応したことそのものを公職選挙法違反、その前日、前夜祭を開いてひとり5000円を徴収しながら政治資金収支報告書に記載しなかったことを政治資金規正法違反とした。
 
 今後、同種の告発が別の観点、他の罪状などで出されることが予測され、告発を受けた東京地検特捜部は、いずれ受理して捜査しなければならないが、歴代の首相が慣例的に行なってきた「桜を見る会」の利用を、安倍首相に限って問題視、起訴して公判に持ち込む可能性は低い。
 
 まして安倍政権と検察は、証拠改竄事件を起こして「特捜改革」に踏み切らざるを得なかった検察を、司法取引の導入などで安倍政権が支えてきたという事情がある。
 
 その貸し借りに加え、内閣人事局の発足以来、検察に対しても官邸が強くなったという変化が加わり、さらに秩序を揺るがさないという検察本来の役割を考えれば、「不起訴に決まっている」という見方もわかる。
 
 だが一方で、捜査の進展は侮れない。
 
 思わぬ事実が表面化、安倍首相がこれまで繰り返してきた弁明との辻褄が合わなくなり、辞任を余儀なくされる局面があるかも知れない。
 
 あるいは、疑惑発覚を逆手に取り、「国民の信を問う」と、解散・総選挙に打って出る可能性もあり、不起訴かも知れないが、「意味はない」ことはない。
 
 例えば、誰もが不審に思う「ホテルニューオータニ」との関係である。
 
 前夜祭の約850人の出席者に対し、入金を確認しないまま5000円の領収書を出し、安倍氏によれば「請求書も明細書もない」というのだが、そんな杜撰なことを「ホテルニューオータニ」のような一流ホテルがするだろうか。
 
 今は、安倍事務所とホテル側との間で口裏合わせが行なわれ、領収書、見積書、請求書に関し、両者に齟齬はないが、捜査が始まれば、そうはいってられない。
 
 1万1000円がパーティーの最低基準価格の「ホテルニューオータニ」で、5000円は明らかなダンピング価格。パーティーを主催した安倍晋三後援会が、その補填をしていれば、有権者への寄付行為を禁じた公職選挙法に抵触する。
 
 ホテル側も無傷ではいられない。
 
 前夜祭の不記載が政治資金規正法違反として捜査に入れば、本来、後援会名義の領収書を出すべきなのに、ホテルの領収書にしたのは政治資金規正法逃れを幇助したことになる。
 
 また、5000円の不足分をホテル側がサービスとして提供していれば、政治資金規正法に違反の企業献金となる。
 
 ホテル側は、「顧客情報の秘匿」ということで見積書や請求書の有無を明らかにしていないが、検察捜査となれば表面化するし、内部告発の形でコピーがメディアに流出することも考えられる。
 
 そうなった時、安倍氏はどう言い繕うのか。
 
 森友学園・加計学園事件でも政権や官邸、あるいは昭恵夫人が追い込まれる局面はあったものの、基本的に「官僚の忖度」であり、安倍氏の責任にはならなかった。
 
 だが、今回は被告発人が安倍氏であり、前言との違いは、「首相のウソ」として糾弾されよう。
 
 それは、違法かどうかを問う検察捜査とは別問題。そういう意味で憲政史上最長の通算在職日数となった安倍政権は、捜査着手によって記録が止まりかねない大きなリスクを背負うことになった。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年11月12日配信「京都市と契約して所属芸人にステマツィートをさせた吉本興業の『税金喰いビジネス』」<事件>

 

 

 「京都最高――みんなで京都を盛り上げましょう!! 京都を愛する人なら誰でも京都市を応援できるんです! 詳しくはここから!」
 
 こんなツイートをしたのは、「吉本興業」のお笑い芸人で兄弟コンビの「ミキ」である。
 
 イケメンの弟・亜生に不細工ないじられキャラの兄・昴生――。若い女性を中心に人気急上昇のミキだが、兄弟で4回のツイートをしただけで100万円の報酬が支払われたというので論義を呼んだ。
 
 ひとつは、いかに多くのフォロワーが存在していたとしても、4回で100万円はあまりに法外。しかも吉本は、京都市と18年9月3日〜18年10月14日までの期間、京都国際映画祭や京都市の重要施策のために420万円で委託契約を結んでおり、ツイートはその一環。つまり税金である。一体、ツイート4回にどれだけの効果があったのか。
 
 もうひとつは、広告であることを明示しないステルスマーケティングではないかというもの。情報発信力のある芸能人などを利用したステマは、それを受け取った人を惑わせ、広告と知らずに誘引させるとして、禁じられている。
 
 京都市は「♯京都市盛り上げ隊」といったハッシュタグがついていることを理由に、「ステマではない」と主張したが疑わしさは否めない。
 
 また京都市は、ミキだけでなく俳優などにも進出している木村祐一のツイートにも50万円を支払っていた。
 
 昨年3月の京都市が定めた「伝統産業の日」をPRするために、木村は和服姿で登場して「着物で乾杯@北野天満宮」と投稿。この業務委託契約は216万円。これもステマ批判があったのに加え、「50万円の税金を支払うだけの価値があったとは思えない」という市民の声が上がった。
 
 行政べったりは、最近の「吉本戦略」である。
 
 今夏の「吉本興業」は、カラテカ入江の仲介による「闇営業」が発覚、ワイドショーを独占する騒動となったことがある。
 
 その際、本誌は<所属芸人の闇営業より深刻な「吉本興業」と「クールジャパン機構」との怪しい関係>(9月6日配信)と題し、吉本が官民ファンドの「クールジャパン機構」から122億円もの大金をせしめていることをお伝えした。
 
 海外へ向けての日本文化の発信というコンセプトはいいのだが、運営があまりにズサンで、18年3月期に当期損失37億円、累積赤字97億円を計上、経営刷新を余儀なくされた。
 
 ここに最も食い込んでいるのが吉本で、アジア向けコンテンツ制作に10億円、大阪城のコンテンツ発信事業に12億円、沖縄を拠点に教育コンテンツを発信する事業に最大100億円の委託を「クールジャパン機構」から受けている。
 
 同機構の惨状を思えば、食い込んでいるというより食い散らかしているという表現の方が当たっている。
 
 役所狙いはそれだけではない。
 
 47都道府県に吉本芸人を送り込み、「あなたの町に“住みます”プロジェクト」を実行しているのはよく知られている。
 
「定住させることによる心のインフラ作り」がキャッチフレーズで、これまでに百数十名が定住したが、ここでの地域活性事業が、吉本のビジネスにつながる。
 
 また、官公庁とタイアップした取り組みは、法務省の「社会を明るくする運動」への協力、「もっと欲しい法務省」の動画制作、国土交通省の「建設業における女性活躍応援キャンペーン」への協力、消費者庁の「消費者月間PR動画」の制作、観光庁の「スポーツ観光モニターツアー」への参加など数多い。
 
 吉本は、09年、株式の公開買付で非上場化を実現、暴力団との関係遮断を宣言した。
 
 その実証として売れっ子芸人・島田紳助のクビを切ったのだが、以降、大崎洋会長は、政治に傾斜。橋下徹、松井一郎といった政治家への個人的パイプを太くするとともに、政府の各種委員会委員を務め、吉本のイメージアップを図るとともに、政府や自治体への食い込みに躍起となった。
 
 京都市とは、京都国際映画祭の運営委託を受けて関係を深め、冒頭のようなツイートで100万円、50万円といった法外な報酬の確保に繋げている。
 
 暴力団の次は政界、政府、自治体という変わり身の早さはさすがだが、京都市の芸人を通じた仕掛けが、来年2月の京都市長選で4選を狙う門川大作市長の「多選批判を封じて圧勝しようとする門川市長の宣伝に繋がっている」という指摘もある。
 
 また、闇営業騒動やチュートリアル・徳井義実の脱税事件に見られるように、芸人は破天荒が“性”で、簡単に秩序の側、正論の側に回れないという“宿命”もある。
 
 それを踏まえたうえでの行政への擦り寄りと税金喰い!――“お笑い王国”の安易な行政との一体化を、泉下の先達たちはどう思っているであろうか。【寅】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年11月9日配信<0510archives>「稀代の仕事師・許永中氏の自叙伝出版に合わせたように晩節を汚す元住友銀行・國重惇史氏の“悲劇”!!」<事件>


 「日本一の仕事師」という異名を取ったこともある許永中の自叙伝『海峡に立つ 泥と血の我が半生』(小学館)が、8月28日に上梓され、好調な売れ行きを見せている。
 
 コーポレートガバナンス(企業統治)とコンプラインス(法令遵守)を重視する世相は、企業社会からグレーゾーンの反社会的勢力を排除したが、建前ばかりの清廉な経営からは人間臭いドラマは生まれず、許が体現した貧困と差別から己の才覚と腕力でのし上がっていく過程は、読者を魅了する。
 
 「イトマン」という老舗商社の内紛にかこつけて、伊藤寿永光というもう1人の事件屋を表に立て、暴力団社会との接点が色濃い自分は裏に回り、「イトマン」から「伊藤プロジェクト」に3000億円を流し込み、そのメインバンクの旧住友銀行にまで駆け上がろうとする姿には、戦慄すべき凄みがある。
 
 イトマン社長と担当専務、西武百貨店幹部と絵画担当課長、「住銀の帝王」と呼ばれた磯田一郎会長とその娘、画廊フィクサー・福本邦雄と竹下登の女婿…。
 
 いずれも許と伊藤が“手玉”に取った。
 
 ふたりとも、頭の回転の早さと弁舌の巧みさは抜群で、相手の望むものを与えて取り込む籠絡のテクニックを持ち、誰もが、気が付くと2人の術中に嵌まっていた。
 
「型に嵌まる」と抜け出すのは容易ではないし、当事者にとっては地獄である。
 
 だが、経済ドラマの読み手、観客としてはこれほど面白い世界はない。
 
 バブル期の物語が、暴力団を含むグレーゾーン領域を活写するものとして人気が高いのは、「白」と「黒」にハッキリ分けた平成の中期以降、人間ドラマが面白みのない法律と弁護士に奪われるようになったからだ。
 
 許の自叙伝は、仕事師にならざるを得なかった男の一代記だが、その発売直後の8月30日、イトマン事件で許に対峙した男のフェイスブック(FB)が、驚愕の内容で関係者の注目を集めた。
 
「僕は完治しない難病に罹患しています。今は車椅子ですが、寝たきりになる前に過去を懺悔して、いつか天国に昇りたいです」
 
 こんな書き出しで始まる文書を書いたのは、現在、都下の老人施設で療養生活を送る國重惇史である。
 
 昭和20年生まれで学年は許のひとつ上。だが、経歴は真逆で東大経済学部を卒業して住友銀行に入行、旧大蔵省を担当するMOF担として名を売り、取締役東京支配人を経て子会社副社長。その後、三木谷浩史に乞われて「樂天」に転じ、「樂天証券」、「樂天銀行」など金融部門を統括した。
 
 住銀エリートが、「イトマン」の異常事態に気付いたのは、約1兆3000億円の資産のうち約6000億円が固定化、金利負担が重くのしかかっていたからで、90年3月、「バブルを謳歌している日常の裏で、恐ろしい出来事が起きている」という直感のもと、「イトマン」に関し、詳細なメモを取り始める。
 
 そこから始まった戦いは、大蔵省銀行局長への内部告発となり、その文書がメディアに流出したことでイトマン事件が周知のものとなる。
 
 國重は、日経新聞記者などの協力を得て、住銀に防御体制を敷くとともに、事件化への道筋をつけた。
 
 その過程を綴った膨大なメモをもとに、16年10月に著わしたのが『住友銀行秘史』(講談社)である。
 
 同書は13万部を超えるベストセラーとなったが、「秘史」は住銀関係者にとっては、文字通り“秘す”べきものであり、國重は住銀のみならず金融界での立ち位置を失った。
 
 ただ、それは樂天を退職後、東証2部に上場する「リミックスポイント」の社長に就任した頃から始まっていた。
 
 樂天退任は数々の女性スキャンダルが発覚した結果だったし、「リミックスポイント」は金融界では評判の良くない松浦大助グループと目されていた。
 
 パーキンソン病に似た難病に罹患、リミックス社を退任してからは、松浦グループに面倒を見てもらう状況だったが、病気の進行は体の自由を完全に奪い、一方で過去の女性との金銭トラブルは解決せず、それがリミックス株で行なった不正行為の数々をFBで暴露するという開き直りにつながった。
 
 俺の口を塞ぎたければ、俺の面倒を見ろー−。國重の気持ちを代弁すれば、こんなところだろうか。
 
 許の健在を示す自叙伝の出版と國重の零落を物語るFBでの告発。――イトマン事件から27年が経過、同時代を生きた2人は、さながらドラマのような好対照を見せている。(文中敬称略)【寅】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年10月31日配信<0510archives>「月刊『Hanada』で復活を果たした山口敬之氏の暴論と限界」<事件>


 
(伊藤詩織著・文藝春秋)


 

 

 颯爽とデビュー、確固とした地位を築いていた言論人の“転落”は、目にしたくないものである。


 元TBSテレビのワシントン支局長だった山口敬之氏が、退社後にフリーとなり、2016年5月、『総理』(幻冬舎)を著した時、「迫真のリアリティをもって描く政権中枢の人間ドラマ」という惹句がピッタリの内容で、安倍晋三首相をはじめとする政権中枢への食い込みに、読者は驚嘆した。

 が、そこからの“転落”は早かった。

 1年後の17年5月、「山口氏にレイプされた」と、ジャーナリストの伊藤詩織さん(28)が記者会見を開き、顔を出して告発した。

 それまで山口氏は、報道番組などに頻繁に登場、政権擁護発言をするジャーナリストとして知られていたが、一切、表には出なくなった。

 同氏がマスメディアから忌避されたのは、「レイプ疑惑の主」だったからではない。

 詩織さん(告発当初は姓を名乗らなかった)の訴えを警視庁は受理して捜査、山口氏を送検したものの、検察の結論は嫌疑不十分で不起訴処分だった。

 記者会見は、詩織さんの検察審査会への申し立てを理由とするものだったが、この時、山口氏がメディアに対して、真摯な対応をしていれば、「山口バッシング」は起きなかっただろう。

 だが、同氏は「私は被疑者でも容疑者でもない」と強調、「間違った記述があれば、法的措置も辞さない」という強気のコメントは、取材者たちを鼻白ませた。

 要は、メディアを味方に付けることができなかった。

 詩織さんの検察審査会への申し立ては、4ヶ月後の17年9月、「不起訴相当」の議決となって認められなかった。

 詩織さんは納得できず、翌月『ブラックボックス』(文藝春秋)を著して、告発を続けた。

 それを受けて、山口氏は初めて反論に出た。

 保守派の言論雑誌で「親安倍路線」の『月刊Hanada』(12月号)で、「私を訴えた伊藤詩織さんへ」を、同じ路線の『月刊Will』(12月号)で「安倍総理の“どす黒い孤独”」を、それぞれ寄稿した。

 これまではメディアの記者、報道局、編集部などとのやりとりだけだったが、自分の思いを新たに表明すると同時に、“ジャーナリスト復帰宣言”ともいうべき記事だった。

 しかし、両作とも高い評価は受けられなかった。

 

 「詩織さんへ」と題する記事は、検察の「不起訴」と検察審査会での「不起訴相当」をもって自己弁護する内容で、「合意なくホテルに連れ込み、セックスに及んだこと」への道義的倫理的な反省はまったくなく、読者に不快感を残した。


 安倍首相への応援歌となった記事は相変わらずだったが、切り込みも分析も不十分で、政界と官邸から距離を置かれた?ジャーナリストの悲哀を感じさせた。

 「やはり『臨時国会冒頭』しか、(安倍首相の)解散の選択肢はなかったのである」と、最後にまとめた記事を誰が興味をもって読むだろうか。

 11月25日発売の『月刊Hanada』(1月号)は、さらに悲哀を感じさせる内容だった。

 「伊藤詩織問題 独占スクープ第2弾」として「記者を名乗る活動家 金平茂紀(TBS報道特集キャスター)と望月衣塑子の正体」と題し、自分に向けられた批判に対して反論しているのだが、罵詈雑言の類で、およそ読者の共感は得られないし、不快感ばかりが残る記事だ。

 冒頭、「取材依頼がなく、意見も聞かないから2人は記者ではない」というのだが、金平氏も望月氏も記者会見やインタビューでの発言であり、山口氏に取材依頼をして確認すべき内容ではない。

 なにより、山口氏は公式コメンを出したり、記事を発表しているのだから、それをもとに論評ないし、記者会見やインタビューで発言するのは認められる行為である。

 挙げ句、「金平という男は、気に入らない政治家を貶めるためなら、記者としての基本動作も放棄し、同僚や部下を平気で裏切り、自分だけは生き残ろうとする唾棄すべき人物である」と、言い切っている。

 この名誉毀損以外の何物でもない文章を執筆するにあたり、山口氏は金平氏に取材依頼をしたのだろうか。

 細かく書き連ねても仕方があるまい。

 

 何ら反省することなく、向かってきた勢力はすべて敵とみなして噛み付く!――レイプ疑惑は、刑事事件としては不起訴でも、そう疑われるような行為があったことをまず反省、そのうえで被害者やそれを報じようとするメディアにどう対応するかを山口氏は、真摯に考えるべきだろう。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年10月29日配信「関西電力事件で役立たずが明らかになった検察OBを日本の企業社会はいつまで重用するのか?」<事件>

 

 

 

 政府は、10月18日、会社法の改正を閣議決定、今国会で法案を成立させる方針。目的は上場企業のガバナンス(統治)を強化することで、そのうちのひとつが社外取締役設置の義務化である。
 
 既に、東京証券取引所がコーポレート・ガバナンスコードの設置により、経営から独立した2名以上の社外取締役の設置を求めており、現在約98%が社外取締役を置いているが、法制化でより強化される。
 
 この社外取締役と同時に、「就任前5年間、会社と関係のなかったもの」という規定のある社外監査役も、会社から独立した存在として、厳格な監査が期待されている。
 
 ガバナンスとコンプライアンス(法令遵守)の強化は、今や企業社会では当然と受け止められており、社外取締役、社外監査役の重要性は増しているのだが、一方で適任者は少なく、経営陣の友人知人、シンパの評論家やジャーナリスト、監督官庁OBなどを雇うと、中立性が疑われる。
 
 そこで重宝されるのが検察官OB(ヤメ検)である。
 
 法律の専門家としての見識に加え、企業社会の監視役として粉飾決算、金融・証券犯罪、脱税などに目を光らせてきた実績がある。
 
 つまり“座り”が良く、反論しにくい。
 
 それが「形だけのもの」であったのを示したのが、関西電力事件だった。
 
 森山栄治元高浜町助役から3億2000万円の工作資金を20人の経営幹部が受け取っていたことを突き止めていた社内調査委員会の小林敬委員長は、「個人の問題ではなく、会社の体質」として不問に付した。
 
 関電コンプライアンス委員会の委員でもある小林氏は、元大阪地検検事正で関電との関係は社外監査役を務めた土肥孝治元検事総長との関係によるものである。
 
 土肥氏らの監査役会は、小林委員長の「報告書」で原発マネーの還流を知りながら、「報告書は妥当」として、取締役会への報告も公表もしなかった。
 
 土肥氏は、今年6月、社外監査役を退任するが、後を受け継いだのは佐々木茂夫元大阪高検検事長。――つまり関西検察OBたちは、経営体制のチェック役ではなく守護神なのである。
 
 関電は、10月9日、その甘い社内調査報告書を見直すために、第三者委員会を立ち上げたが、委員長に就いたのは但木敬一元検事総長である。
 
 土肥氏の後輩ながら東京検察OB。ラインが違うとはいえ「先輩の失敗」に踏み込むような精神は持ち合わせておらず、但木氏もまた「検察一体の原則」のなかで生きてきた。
 
 結局、第三者委員会も人選と費用は関電が拠出するのだから中立性は形だけ。関電にとっては、12月中をメドとした報告書が公表される頃には、人々の記憶が薄れ、“穏当な糾弾”となっていることを期待している。
 
 つまり、ヤメ検は使い勝手がいいのである。
 
 社外取締役、社外監査役、コンプライアンス委員会委員など、企業社会に「法的・倫理的な監視」が求められるようになり、その格好の人材供給先がヤメ検となった。
 
 それも、ひとり当たりの就任会社数が多く、とてもまともに経営チェックなどできない。
 
 社外取締役や社外監査役に就いている検察OBリスト(17年3月末)によれば、2〜5社の就任は当たり前。あまりに数が多いので高検検事長以上に限っても、次のようなOBたちが顔を並べている。
 
樋渡利秋元検事総長(ホンダ、トーヨーカネツ、野村證券、鹿児島銀行)、◇大林宏元検事総長(三菱電機、大和証券、日本たばこ産業、新日鐵住金)、◇但木敬一元検事総長(日本生命保険、大和証券グループ本社、ミロク情報サービス、イオン)、◇頃安健司元検事長(東海旅客鉄道、古河電気工業)、◇勝丸充啓元検事長(大陽日酸、シマノ)◇河村博元検事長(石井鉄工所、旭硝子)……。
 
 いうまでもないことだが、これでもほんの一部である。
 
 これに元検事正や各地検の部長、副部長などの幹部で退職したヤメ検を加えればその人数は星の数。いかに彼らが上場企業を“浸食”しているかがわかる。
 
 建前では、彼らの雇用はガバナンス強化のため。それを政府も東証などは、制度化で後押しする。
 
 だが、現実には「関電社内調査報告書」のような代物を作成する際の“権威付け”であり、それを外部に批判させない“監視役”であり、捜査・調査機関が乗り出した際の“ガード役”である。
 
 ガバナンスとコンプライアンス強化のためのシステムが、ヤメ検によって“骨抜き”にされているという現状と、それによって生ずる矛楯をどう解消するか。――論義すべき段階に入っているのではあるまいか。【辰】

 

 

 

 

 

 

 

 


 



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