2019年11月12日配信「京都市と契約して所属芸人にステマツィートをさせた吉本興業の『税金喰いビジネス』」<事件>

 

 

 「京都最高――みんなで京都を盛り上げましょう!! 京都を愛する人なら誰でも京都市を応援できるんです! 詳しくはここから!」
 
 こんなツイートをしたのは、「吉本興業」のお笑い芸人で兄弟コンビの「ミキ」である。
 
 イケメンの弟・亜生に不細工ないじられキャラの兄・昴生――。若い女性を中心に人気急上昇のミキだが、兄弟で4回のツイートをしただけで100万円の報酬が支払われたというので論義を呼んだ。
 
 ひとつは、いかに多くのフォロワーが存在していたとしても、4回で100万円はあまりに法外。しかも吉本は、京都市と18年9月3日〜18年10月14日までの期間、京都国際映画祭や京都市の重要施策のために420万円で委託契約を結んでおり、ツイートはその一環。つまり税金である。一体、ツイート4回にどれだけの効果があったのか。
 
 もうひとつは、広告であることを明示しないステルスマーケティングではないかというもの。情報発信力のある芸能人などを利用したステマは、それを受け取った人を惑わせ、広告と知らずに誘引させるとして、禁じられている。
 
 京都市は「♯京都市盛り上げ隊」といったハッシュタグがついていることを理由に、「ステマではない」と主張したが疑わしさは否めない。
 
 また京都市は、ミキだけでなく俳優などにも進出している木村祐一のツイートにも50万円を支払っていた。
 
 昨年3月の京都市が定めた「伝統産業の日」をPRするために、木村は和服姿で登場して「着物で乾杯@北野天満宮」と投稿。この業務委託契約は216万円。これもステマ批判があったのに加え、「50万円の税金を支払うだけの価値があったとは思えない」という市民の声が上がった。
 
 行政べったりは、最近の「吉本戦略」である。
 
 今夏の「吉本興業」は、カラテカ入江の仲介による「闇営業」が発覚、ワイドショーを独占する騒動となったことがある。
 
 その際、本誌は<所属芸人の闇営業より深刻な「吉本興業」と「クールジャパン機構」との怪しい関係>(9月6日配信)と題し、吉本が官民ファンドの「クールジャパン機構」から122億円もの大金をせしめていることをお伝えした。
 
 海外へ向けての日本文化の発信というコンセプトはいいのだが、運営があまりにズサンで、18年3月期に当期損失37億円、累積赤字97億円を計上、経営刷新を余儀なくされた。
 
 ここに最も食い込んでいるのが吉本で、アジア向けコンテンツ制作に10億円、大阪城のコンテンツ発信事業に12億円、沖縄を拠点に教育コンテンツを発信する事業に最大100億円の委託を「クールジャパン機構」から受けている。
 
 同機構の惨状を思えば、食い込んでいるというより食い散らかしているという表現の方が当たっている。
 
 役所狙いはそれだけではない。
 
 47都道府県に吉本芸人を送り込み、「あなたの町に“住みます”プロジェクト」を実行しているのはよく知られている。
 
「定住させることによる心のインフラ作り」がキャッチフレーズで、これまでに百数十名が定住したが、ここでの地域活性事業が、吉本のビジネスにつながる。
 
 また、官公庁とタイアップした取り組みは、法務省の「社会を明るくする運動」への協力、「もっと欲しい法務省」の動画制作、国土交通省の「建設業における女性活躍応援キャンペーン」への協力、消費者庁の「消費者月間PR動画」の制作、観光庁の「スポーツ観光モニターツアー」への参加など数多い。
 
 吉本は、09年、株式の公開買付で非上場化を実現、暴力団との関係遮断を宣言した。
 
 その実証として売れっ子芸人・島田紳助のクビを切ったのだが、以降、大崎洋会長は、政治に傾斜。橋下徹、松井一郎といった政治家への個人的パイプを太くするとともに、政府の各種委員会委員を務め、吉本のイメージアップを図るとともに、政府や自治体への食い込みに躍起となった。
 
 京都市とは、京都国際映画祭の運営委託を受けて関係を深め、冒頭のようなツイートで100万円、50万円といった法外な報酬の確保に繋げている。
 
 暴力団の次は政界、政府、自治体という変わり身の早さはさすがだが、京都市の芸人を通じた仕掛けが、来年2月の京都市長選で4選を狙う門川大作市長の「多選批判を封じて圧勝しようとする門川市長の宣伝に繋がっている」という指摘もある。
 
 また、闇営業騒動やチュートリアル・徳井義実の脱税事件に見られるように、芸人は破天荒が“性”で、簡単に秩序の側、正論の側に回れないという“宿命”もある。
 
 それを踏まえたうえでの行政への擦り寄りと税金喰い!――“お笑い王国”の安易な行政との一体化を、泉下の先達たちはどう思っているであろうか。【寅】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年11月9日配信<0510archives>「稀代の仕事師・許永中氏の自叙伝出版に合わせたように晩節を汚す元住友銀行・國重惇史氏の“悲劇”!!」<事件>


 「日本一の仕事師」という異名を取ったこともある許永中の自叙伝『海峡に立つ 泥と血の我が半生』(小学館)が、8月28日に上梓され、好調な売れ行きを見せている。
 
 コーポレートガバナンス(企業統治)とコンプラインス(法令遵守)を重視する世相は、企業社会からグレーゾーンの反社会的勢力を排除したが、建前ばかりの清廉な経営からは人間臭いドラマは生まれず、許が体現した貧困と差別から己の才覚と腕力でのし上がっていく過程は、読者を魅了する。
 
 「イトマン」という老舗商社の内紛にかこつけて、伊藤寿永光というもう1人の事件屋を表に立て、暴力団社会との接点が色濃い自分は裏に回り、「イトマン」から「伊藤プロジェクト」に3000億円を流し込み、そのメインバンクの旧住友銀行にまで駆け上がろうとする姿には、戦慄すべき凄みがある。
 
 イトマン社長と担当専務、西武百貨店幹部と絵画担当課長、「住銀の帝王」と呼ばれた磯田一郎会長とその娘、画廊フィクサー・福本邦雄と竹下登の女婿…。
 
 いずれも許と伊藤が“手玉”に取った。
 
 ふたりとも、頭の回転の早さと弁舌の巧みさは抜群で、相手の望むものを与えて取り込む籠絡のテクニックを持ち、誰もが、気が付くと2人の術中に嵌まっていた。
 
「型に嵌まる」と抜け出すのは容易ではないし、当事者にとっては地獄である。
 
 だが、経済ドラマの読み手、観客としてはこれほど面白い世界はない。
 
 バブル期の物語が、暴力団を含むグレーゾーン領域を活写するものとして人気が高いのは、「白」と「黒」にハッキリ分けた平成の中期以降、人間ドラマが面白みのない法律と弁護士に奪われるようになったからだ。
 
 許の自叙伝は、仕事師にならざるを得なかった男の一代記だが、その発売直後の8月30日、イトマン事件で許に対峙した男のフェイスブック(FB)が、驚愕の内容で関係者の注目を集めた。
 
「僕は完治しない難病に罹患しています。今は車椅子ですが、寝たきりになる前に過去を懺悔して、いつか天国に昇りたいです」
 
 こんな書き出しで始まる文書を書いたのは、現在、都下の老人施設で療養生活を送る國重惇史である。
 
 昭和20年生まれで学年は許のひとつ上。だが、経歴は真逆で東大経済学部を卒業して住友銀行に入行、旧大蔵省を担当するMOF担として名を売り、取締役東京支配人を経て子会社副社長。その後、三木谷浩史に乞われて「樂天」に転じ、「樂天証券」、「樂天銀行」など金融部門を統括した。
 
 住銀エリートが、「イトマン」の異常事態に気付いたのは、約1兆3000億円の資産のうち約6000億円が固定化、金利負担が重くのしかかっていたからで、90年3月、「バブルを謳歌している日常の裏で、恐ろしい出来事が起きている」という直感のもと、「イトマン」に関し、詳細なメモを取り始める。
 
 そこから始まった戦いは、大蔵省銀行局長への内部告発となり、その文書がメディアに流出したことでイトマン事件が周知のものとなる。
 
 國重は、日経新聞記者などの協力を得て、住銀に防御体制を敷くとともに、事件化への道筋をつけた。
 
 その過程を綴った膨大なメモをもとに、16年10月に著わしたのが『住友銀行秘史』(講談社)である。
 
 同書は13万部を超えるベストセラーとなったが、「秘史」は住銀関係者にとっては、文字通り“秘す”べきものであり、國重は住銀のみならず金融界での立ち位置を失った。
 
 ただ、それは樂天を退職後、東証2部に上場する「リミックスポイント」の社長に就任した頃から始まっていた。
 
 樂天退任は数々の女性スキャンダルが発覚した結果だったし、「リミックスポイント」は金融界では評判の良くない松浦大助グループと目されていた。
 
 パーキンソン病に似た難病に罹患、リミックス社を退任してからは、松浦グループに面倒を見てもらう状況だったが、病気の進行は体の自由を完全に奪い、一方で過去の女性との金銭トラブルは解決せず、それがリミックス株で行なった不正行為の数々をFBで暴露するという開き直りにつながった。
 
 俺の口を塞ぎたければ、俺の面倒を見ろー−。國重の気持ちを代弁すれば、こんなところだろうか。
 
 許の健在を示す自叙伝の出版と國重の零落を物語るFBでの告発。――イトマン事件から27年が経過、同時代を生きた2人は、さながらドラマのような好対照を見せている。(文中敬称略)【寅】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年10月31日配信<0510archives>「月刊『Hanada』で復活を果たした山口敬之氏の暴論と限界」<事件>


 
(伊藤詩織著・文藝春秋)


 

 

 颯爽とデビュー、確固とした地位を築いていた言論人の“転落”は、目にしたくないものである。


 元TBSテレビのワシントン支局長だった山口敬之氏が、退社後にフリーとなり、2016年5月、『総理』(幻冬舎)を著した時、「迫真のリアリティをもって描く政権中枢の人間ドラマ」という惹句がピッタリの内容で、安倍晋三首相をはじめとする政権中枢への食い込みに、読者は驚嘆した。

 が、そこからの“転落”は早かった。

 1年後の17年5月、「山口氏にレイプされた」と、ジャーナリストの伊藤詩織さん(28)が記者会見を開き、顔を出して告発した。

 それまで山口氏は、報道番組などに頻繁に登場、政権擁護発言をするジャーナリストとして知られていたが、一切、表には出なくなった。

 同氏がマスメディアから忌避されたのは、「レイプ疑惑の主」だったからではない。

 詩織さん(告発当初は姓を名乗らなかった)の訴えを警視庁は受理して捜査、山口氏を送検したものの、検察の結論は嫌疑不十分で不起訴処分だった。

 記者会見は、詩織さんの検察審査会への申し立てを理由とするものだったが、この時、山口氏がメディアに対して、真摯な対応をしていれば、「山口バッシング」は起きなかっただろう。

 だが、同氏は「私は被疑者でも容疑者でもない」と強調、「間違った記述があれば、法的措置も辞さない」という強気のコメントは、取材者たちを鼻白ませた。

 要は、メディアを味方に付けることができなかった。

 詩織さんの検察審査会への申し立ては、4ヶ月後の17年9月、「不起訴相当」の議決となって認められなかった。

 詩織さんは納得できず、翌月『ブラックボックス』(文藝春秋)を著して、告発を続けた。

 それを受けて、山口氏は初めて反論に出た。

 保守派の言論雑誌で「親安倍路線」の『月刊Hanada』(12月号)で、「私を訴えた伊藤詩織さんへ」を、同じ路線の『月刊Will』(12月号)で「安倍総理の“どす黒い孤独”」を、それぞれ寄稿した。

 これまではメディアの記者、報道局、編集部などとのやりとりだけだったが、自分の思いを新たに表明すると同時に、“ジャーナリスト復帰宣言”ともいうべき記事だった。

 しかし、両作とも高い評価は受けられなかった。

 

 「詩織さんへ」と題する記事は、検察の「不起訴」と検察審査会での「不起訴相当」をもって自己弁護する内容で、「合意なくホテルに連れ込み、セックスに及んだこと」への道義的倫理的な反省はまったくなく、読者に不快感を残した。


 安倍首相への応援歌となった記事は相変わらずだったが、切り込みも分析も不十分で、政界と官邸から距離を置かれた?ジャーナリストの悲哀を感じさせた。

 「やはり『臨時国会冒頭』しか、(安倍首相の)解散の選択肢はなかったのである」と、最後にまとめた記事を誰が興味をもって読むだろうか。

 11月25日発売の『月刊Hanada』(1月号)は、さらに悲哀を感じさせる内容だった。

 「伊藤詩織問題 独占スクープ第2弾」として「記者を名乗る活動家 金平茂紀(TBS報道特集キャスター)と望月衣塑子の正体」と題し、自分に向けられた批判に対して反論しているのだが、罵詈雑言の類で、およそ読者の共感は得られないし、不快感ばかりが残る記事だ。

 冒頭、「取材依頼がなく、意見も聞かないから2人は記者ではない」というのだが、金平氏も望月氏も記者会見やインタビューでの発言であり、山口氏に取材依頼をして確認すべき内容ではない。

 なにより、山口氏は公式コメンを出したり、記事を発表しているのだから、それをもとに論評ないし、記者会見やインタビューで発言するのは認められる行為である。

 挙げ句、「金平という男は、気に入らない政治家を貶めるためなら、記者としての基本動作も放棄し、同僚や部下を平気で裏切り、自分だけは生き残ろうとする唾棄すべき人物である」と、言い切っている。

 この名誉毀損以外の何物でもない文章を執筆するにあたり、山口氏は金平氏に取材依頼をしたのだろうか。

 細かく書き連ねても仕方があるまい。

 

 何ら反省することなく、向かってきた勢力はすべて敵とみなして噛み付く!――レイプ疑惑は、刑事事件としては不起訴でも、そう疑われるような行為があったことをまず反省、そのうえで被害者やそれを報じようとするメディアにどう対応するかを山口氏は、真摯に考えるべきだろう。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年10月29日配信「関西電力事件で役立たずが明らかになった検察OBを日本の企業社会はいつまで重用するのか?」<事件>

 

 

 

 政府は、10月18日、会社法の改正を閣議決定、今国会で法案を成立させる方針。目的は上場企業のガバナンス(統治)を強化することで、そのうちのひとつが社外取締役設置の義務化である。
 
 既に、東京証券取引所がコーポレート・ガバナンスコードの設置により、経営から独立した2名以上の社外取締役の設置を求めており、現在約98%が社外取締役を置いているが、法制化でより強化される。
 
 この社外取締役と同時に、「就任前5年間、会社と関係のなかったもの」という規定のある社外監査役も、会社から独立した存在として、厳格な監査が期待されている。
 
 ガバナンスとコンプライアンス(法令遵守)の強化は、今や企業社会では当然と受け止められており、社外取締役、社外監査役の重要性は増しているのだが、一方で適任者は少なく、経営陣の友人知人、シンパの評論家やジャーナリスト、監督官庁OBなどを雇うと、中立性が疑われる。
 
 そこで重宝されるのが検察官OB(ヤメ検)である。
 
 法律の専門家としての見識に加え、企業社会の監視役として粉飾決算、金融・証券犯罪、脱税などに目を光らせてきた実績がある。
 
 つまり“座り”が良く、反論しにくい。
 
 それが「形だけのもの」であったのを示したのが、関西電力事件だった。
 
 森山栄治元高浜町助役から3億2000万円の工作資金を20人の経営幹部が受け取っていたことを突き止めていた社内調査委員会の小林敬委員長は、「個人の問題ではなく、会社の体質」として不問に付した。
 
 関電コンプライアンス委員会の委員でもある小林氏は、元大阪地検検事正で関電との関係は社外監査役を務めた土肥孝治元検事総長との関係によるものである。
 
 土肥氏らの監査役会は、小林委員長の「報告書」で原発マネーの還流を知りながら、「報告書は妥当」として、取締役会への報告も公表もしなかった。
 
 土肥氏は、今年6月、社外監査役を退任するが、後を受け継いだのは佐々木茂夫元大阪高検検事長。――つまり関西検察OBたちは、経営体制のチェック役ではなく守護神なのである。
 
 関電は、10月9日、その甘い社内調査報告書を見直すために、第三者委員会を立ち上げたが、委員長に就いたのは但木敬一元検事総長である。
 
 土肥氏の後輩ながら東京検察OB。ラインが違うとはいえ「先輩の失敗」に踏み込むような精神は持ち合わせておらず、但木氏もまた「検察一体の原則」のなかで生きてきた。
 
 結局、第三者委員会も人選と費用は関電が拠出するのだから中立性は形だけ。関電にとっては、12月中をメドとした報告書が公表される頃には、人々の記憶が薄れ、“穏当な糾弾”となっていることを期待している。
 
 つまり、ヤメ検は使い勝手がいいのである。
 
 社外取締役、社外監査役、コンプライアンス委員会委員など、企業社会に「法的・倫理的な監視」が求められるようになり、その格好の人材供給先がヤメ検となった。
 
 それも、ひとり当たりの就任会社数が多く、とてもまともに経営チェックなどできない。
 
 社外取締役や社外監査役に就いている検察OBリスト(17年3月末)によれば、2〜5社の就任は当たり前。あまりに数が多いので高検検事長以上に限っても、次のようなOBたちが顔を並べている。
 
樋渡利秋元検事総長(ホンダ、トーヨーカネツ、野村證券、鹿児島銀行)、◇大林宏元検事総長(三菱電機、大和証券、日本たばこ産業、新日鐵住金)、◇但木敬一元検事総長(日本生命保険、大和証券グループ本社、ミロク情報サービス、イオン)、◇頃安健司元検事長(東海旅客鉄道、古河電気工業)、◇勝丸充啓元検事長(大陽日酸、シマノ)◇河村博元検事長(石井鉄工所、旭硝子)……。
 
 いうまでもないことだが、これでもほんの一部である。
 
 これに元検事正や各地検の部長、副部長などの幹部で退職したヤメ検を加えればその人数は星の数。いかに彼らが上場企業を“浸食”しているかがわかる。
 
 建前では、彼らの雇用はガバナンス強化のため。それを政府も東証などは、制度化で後押しする。
 
 だが、現実には「関電社内調査報告書」のような代物を作成する際の“権威付け”であり、それを外部に批判させない“監視役”であり、捜査・調査機関が乗り出した際の“ガード役”である。
 
 ガバナンスとコンプライアンス強化のためのシステムが、ヤメ検によって“骨抜き”にされているという現状と、それによって生ずる矛楯をどう解消するか。――論義すべき段階に入っているのではあるまいか。【辰】

 

 

 

 

 

 

 

 


 


2019年10月18日配信「高山清司若頭出所!――弘道会と山健組の“最終戦争”で衰退の道を辿る?山口組!」<事件>  


山口組代紋(Wikipedia)

 

 暴力団組織には「鉄の掟」がある。
 
 親子・兄弟の盃は血縁より重く、襲撃を受けたら返し(復讐)をしなければならず、代紋に傷をつけるような行動は許されず、絶縁処分にしたものが稼業を続けることは許されない――。
 
 が、現実はそうはいかず、「6代目」と「神戸」と「任侠」の3つに分れた山口組の状況が示すように、己の利益を優先、親を裏切る「逆盃」を平気で行ない、絶縁処分を受けたところで平気で稼業を続けている。
 
 そうした無原則で筋を通さない生き方を、もっとも嫌っているのが、6代目山口組の盪垣胸兵稙だという。
 
 盪骸稙は、京都の建設会社オーナーを恐喝したとして、10年11月に逮捕・起訴され、懲役6年の実刑判決を受け、府中刑務所に収監されていたが、満期を迎え、10月18日に出所する。
 
 その直前、抗争事件が相次ぎ、神戸市内の山健組事務所前で、弘道会幹部が発砲し、組員2名を射殺したのは、「返しをしないでどうする!」という盪骸稙の叱責を恐れたからだという。
 
 それほどの統率力を持つ盪骸稙とは何者か。
 
 盪骸稙は、司忍6代目が最初の長期刑に服することになった東陽町事件(山口組と争っていた大日本平和会幹部を刺殺)の際、山口組系弘田組幹部の司6代目とともに襲撃に関与、懲役4年の実刑判決を受けた。
 
 懲役13年の司6代目が出所、弘田組若頭となると若頭補佐として支え、弘田武志組長の引退に伴って、84年、司6代目が弘道会を起こすと、付き従って弘道会の名古屋制覇の立役者となった。
 
「親分のためなら我が身を犠牲にする典型的な昔タイプのヤクザ。家も車も全て親分に最高のものを用意、博打で大負けしたら、そのツケは自分が払う。組織運営能力にも優れており、情報を徹底的に収集、分析して厳重に管理、それをもとに組の内部では、統制を厳しくして上納金を吸い上げ、対外的には戦闘能力を高めるという『弘道会方式』は、盪海確立した」(警察幹部)
 
 盪骸稙の逮捕がなければ、山口組が3分裂することなかったという。
 
 それは、分裂を阻止するだけの情報収集能力と組織運営力があったためだが、一方でその強圧名な「弘道会方式」が、それまで山口組を支えた山健組の反発を買っており、「カシラが居っても、いつかは山健(組)の井上(邦雄・現神戸山口組組長)とケンカ別れになるのは、避けられんかった」(山口組元直参)という。
 
 結局、暴力団を支えるのは、カネと権力(暴力)である。
 
 力のある所にカネは集まり、だから暴力団は山口組に集約されていった。
 
 それが代紋の力であり、だから暴力団は「代紋と盃」を大事にした。
 
 その暴力団を支えた原則が、度重なる暴対法の改正と暴排条例の施行で崩壊。「代紋」がカネを稼ぐのにジャマになり、暴力団が「食えない職業」になった。
 
 高齢化が進み、襲撃する方も、される方も50代、60代が中心。山健組襲撃の丸山俊夫容疑者が、出所後の将来などない68歳であるところに象徴されている。
 
 かつての「(襲撃犯となり)お務めを果たしたら約束される幹部の座」といったものはなく、先行き短い高齢者の“片道キップ”なのである。
 
 だが、5代目時代の山健組も6代目時代の弘道会も、組の代紋を使って大きくなった。
 
 今、構成員が激減、3派合わせて1万人を切るような惨状のなか、「山口組最後の争い」が神戸山口組(山健組)と6代目山口組(弘道会)の間で展開されようとしている。
 
 率いるのは、ともに古き良き時代の暴力団を知り、その恩恵も受け、それなりの財も残した井上邦雄組長と盪垣胸兵稙。――その最終戦争が、盪骸稙の出所を機に始まるのも、当然の「時代の流れ」なのかも知れない。【未】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年10月12日配信<0510archives>「JCサービス、ベアハグ、大樹総研をターゲットにした特捜トライアングル捜査の行方」<事件>


中久保正己JCサービス社長


 東京地検特捜部が、再生可能エネルギー事業を展開する「JCサービス」に対する捜査を本格化させている。

 

 細野豪志代議士に5000万円を貸し付けるなど、「特捜案件」となるに相応しい企業であることは知られていたが、他に特捜部が“お客さん”にしたいコンサルタントの「大樹総研」、リラクゼーション業界と政界を結びつけた「ベアハグ」との親しい関係が浮上、「政界ルート」を視野に入れたものになっている。
 
 「JCサービス」を率いる中久保正己社長は、謎が多く、「暴力団関係者とも昵懇で、平気で嘘をつき、目的のためには手段を選ばない人物」(同社関係者)のようだ。
 
 兵庫県庁職員だった時、阪神淡路大震災に遭遇。「多様なエネルギーインフラの必要性を感じ、03年、JCサービスを設立した」と、インタビューなどで述べているのだが、95年の大震災後、JCサービスを設立するまでに、「クオリティライフ」、「ジャパンコストプランニング」といった会社を設立、いずれも倒産させている。
 
 その信用性のなさを補うように、人脈作りに励み、結果、行き着いたのが「人脈商売」で永田町と霞が関に隠然たる勢力を振るう「大樹総研」だった。
 
 同時に、中久保氏が金融面で頼ったのが、ソーシャルレンディング事業を展開する「maneoマーケット」で、ここのプラットフォームを利用する形で、傘下の「グリーンインフラレンディング」(GIL)が約200億円を集めている。
 
 金融庁は、昨年7月、maneo社に業務改善命令を出している。
 
 原因は、GILがネット上で公開した募集内容とは違う事業に資金を流用していたからだが、GIL立ち上げの時から自転車操業に陥るのは自明だったという。
 
「中久保氏が右のポケットから左のポケットに移し替えるだけだから、目的外使用は折り込み済み。年々、太陽光などの買取価格が下がっていくなか、自転車操業になるのも当然だった」(電力業界関係者)
 
 しかし、その過程で事業を縮小、投資家保護を図るといったタイプではなく、太陽光からバイオマス、日本だけでなくタイへと事業を拡張、そのために政治力を頼った。
 
「大樹総研」の矢島義也会長は、16年5月に開いた盛大な結婚式に、菅義偉官房長官をはじめ与野党多数の政治家、中央官庁主要官僚を招いたという「与野党に人脈を持つ政界プロモーター的人物」(捜査関係者)。「JCサービス」は、その「大樹総研」に業務委託料などの名目で約5億円を支払っている。
 
 また、バイオマス発電でタイに関与することになった中久保氏は、超党派議員団の一員だった細野代議士とともに、17年末、タイを訪れている。
 
 中久保氏の政界パイプとなった矢島氏を紹介したのが、「ベアハグ」の稲川貴久前代表だが、一体どんな人物なのか。
 
「PL学園、亜細亜大学の剣道部出身で、整体師からスタートして、リラクゼーションのベアハグを立ち上げた人物。やり手で、顧客に茂木敏充(現経産相)さんがいたことから政界にも人脈ができ、その縁で大樹の矢島氏と知り合った。リラクゼーション業界が総務省に産業認定される際には、稲川氏の政界パイプが役に立ったとされた」(社会部記者)
 
 稲川氏は、17年11月、法人税4300万円を脱税したとして在宅起訴。捜査した特捜部は、稲川氏の「政界ルート」にも注目していたとされる。
 
 また、稲川氏は16年4月、中久保氏とともに「環境プロパティ」という太陽光の会社を立ち上げており、長野県上田市で太陽光発電事業に乗り出している。
 
 こうして眺めると、「JCサービス」を起点とする捜査は、「大樹総研」や「ベアハグ」にも及んで、それは「政界ルート」を視野にいれたものになるが、その前にやるべきことは投資家保護。「JCサービス」の資金流出に一刻も早く歯止めをかける必要があろう。
 
 maneoの業務改善命令以降、1年以上、資金調達ルートを失った「JCサービス」は、売電権や取得した不動産を売るなどして資金を回収しているが、それは窓口のmaneo社に返却されることはない。

 従って、投資家に返却されることはなく、「目外流用」の得意な中久保氏が、引き続き自由に使っている。
 
 投資家にとっては「詐欺」されたに等しく、被害金額を少なくするためにも、早急に捜査着手すべきだろう。【巳】

 

 

 

 

 

 


2019年9月5日配信「所属芸人の闇営業より深刻な『吉本興業』と『クールジャパン機構』との怪しい関係」<事件>

 
大山鳴動して〜(☚wikipedia)

 

 反社会的勢力相手の闇営業で謹慎していた吉本芸人が、喪が明けた?とばかりに続々と復帰、テレビは相変わらず吉本芸人がいなければ番組が成り立たないことを受けて「吉本王国」が再起動。あの騒動は結局、何の教訓も残さず、改革されることもなかった。
 
「芸人と暴力団」という“くくり”で言えば、吉本興業は10年、株式の公開買い付け(TOB)による非上場化を実現、暴力団とのしがらみが多い創業家との関係を断ち、多少の癒着は封印できる体制を築いていた。
 
 従って、カラテカ入江の「闇営業」が表面化したぐらいでは揺るがなかった。
 
 むしろ本格追求されて困るのは、大崎洋会長と政治家との強い絆と、それをテコに国のカネが「吉本興業」に流れ込む仕組みだった。
 
 大崎会長は、反社との関係を切った代わりに政官との癒着を強めた。
 
 その代表が「クールジャパン機構」から122億円ものカネが流れ込んでいることである。
 
「お笑い」と「芸人」という強烈なコンテンツを武器に、大崎会長は、行政に食い込んでいく。
 
 維新の橋下徹、松井一郎といった政治家との個人的パイプをもとに、大阪、京都など関西の地方行政へのつながりを深め、東京においても官邸の知的財産戦略本部や内閣府主催の各種委員会の委員を務めた。
 
 それが、「クールジャパン機構」という官民ファンドからの投資につながった。
 
 経産省が主導する安倍政権は、「リスクある投資を国が補完、成長産業に結びつける」として多くの官民ファンドを設置したが、いずれもうまくいってない。
 
「当然です。民間なら投資は自己責任で、それを運用するファンドには厳しい目が注がれるが、しょせんはお役所仕事で誰にも責任は負わされない。民間より低いとはいえ保証された報酬はある。クールジャパンは海外への日本文化の発信を主目的に13年に設立されましたが、投資効果が見込まれず、失敗続きでした」(外資系ファンド幹部)
 
 18年3月期決算では、財務内容が悪化して、当期損失は39億円、累積赤字が97億円に膨らんで、抜本的な改革を余儀なくされ、同年6月、役員は一新され、「ソニー・ミュージックエンターテインメント」出身の北川直樹氏が社長に、外資系ファンド出身の加藤有治氏が専務に就任。新たな投資ルールを定め、収益性を重視したという。
 
 だが、「クールジャパン機構」に最も食い込んでいる企業が「吉本興業」で、新体制になってからも巨額資金を引っ張っている状況を考えれば、両者の関係に怪しさを感じないではいられない。
 
 なぜ、そこまで吉本は食い込み、機構はそれを許しているのか。
 
 機構設立直後の14年、アジア向けのコンテンツ制作事業に10億円、18年には、大阪城公園でのコンテンツ発信事業に12億円が投入された。
 
 それを含む「クールジャパン機構」の出資形態に問題が多いとして前述のように経営陣は一新されたが、吉本は“別枠”だったようで、今年4月、吉本が「NTT」と組んで、沖縄を拠点に教育コンテンツを国内外に発信する事業に、最大100億円が投じられることになった。
 
 事業の概要は以下の通りである。
 
 教育コンテンツ・アプリの制作発信、日本初の良質な教育等コンテンツを展開するプラットフォームの構築、バーチャルなコンテンツ・アプリをリアルに体感できるアトラクション施設を沖縄に設置――。
 
 この説明文を読んで理解できるのは、沖縄のアトラクションに100億円を投じるということだけだろう。
 
 それを官民ファンドが国のカネで行なう理由がよくわからない。
 
 機構の総投資額が861億円だけに、122億円の吉本興業がいかに厚遇かがわかる。
 
 経営陣を入れ替えてもそうなのだから、何か特別な力が働いていると見るのが自然。そこにこそ最大の「吉本興業の闇」が内在しており、それに比べると「闇営業」など、“食えない芸人のアルバイト”に過ぎないのである。【戌】


2019年8月6日配信<0510archives>「悪夢再び!?――五輪選手村『HARUMI FLAG』大量売却で始まる不動産大暴落の恐れ!」<事件>

五輪選手村用地


 東京五輪選手村の跡地再開発の名称が、「HARUMI FLAG」に決まり、来年5月から売り出される。

 選手ら1万8000人が宿泊する施設は、そのまま高層50階2棟を始めとするマンション群に生まれ変わる。

 5632戸の新しい街が晴海に誕生するわけだが、そのうち分譲4145戸分の安値売却が、高騰を続けてきたマンション市況を冷やすきっかけになるといわれている。

 「都内では新築マンションの坪単価が350万円を超え、一般のサラリーマンには手が出せない水準になってきています。そうした市況の情勢と、新築ではあっても二次使用という現実などもあって、HARUMI FLAGの坪単価は250万円程度に設定されるようです。この3割引が、マンション相場の下落を誘因、不動産相場全体の暴落を引き起こすことになりそうです」(大手不動産幹部)

 アベノミクスが、景気を下支えし、雇用を改善、株価を右肩上がりにした効果は否定できない。

 ただ、そのカネ余りが様々な歪みを生じさせたのも事実で、そのうちのひとつが、少子化のなか将来の住宅過多を折り込まないマンション建設ブームだった。

 首都圏のマンション価格は、02年の約4000万円を底値に上げ始め、15年には5500万円を超え、18年に入ると、少し条件の良いマンションなら7000万円を超えた。

 五輪需要などで土地代も建設資材も高騰したのが原因で、その悪材料をアベノミクスが薄め、購入意欲を継続させた。

 だが、今後、人口が減少、空き家が増えて中古賃貸マンションの価格相場が崩れるのが明白なのに、一般勤労世帯がローンが組めないようなマンションブームがいつまでも続くわけはない。

 「東京五輪終了後の20年がバブル崩壊の年になる」というのが、マンション業界の常識。「消費税が10%になる前に」と、19年10月の消費税アップを折り込んだ駆け込み需要を煽った反動も予想できる。

 それより前に、HALUMI FLAGの4000戸大量安値供給が、バブル崩壊の引き金を引くと見られている。

 湾岸一等地のファミリータイプ20坪が、約5000万円で売却されれば、相場を下方に大きく牽引することになるのは間違いない。

 しかも、下落はマンションだけでなく、不動産市場全体に及ぶ。

 他の分野でもアベノミクスの反作用が出始めており、それを覆す投資要因がない。

 「スルガ銀行」のシェアハウス騒動に代表されるアパート融資や、ソーシャルレンディング業界最大手の「maneoマーケット」の急成長などは、同じ「カネ余り」がもたらしたものである。

 しかし、明らかな逆回転が始まっている。

 シェアハウス騒動は、スルガ銀行固有のものではなく、地銀や信金が、サブリース業者と手を組んで投資家の需要を開拓、資金を捌きたいという思惑から始まっており、金融業界全体が抱える問題である。

 金融庁が態度を一転させ、投資家が目を覚ました以上、金融機関は融資を絞らざるを得ず、「レオパレス21」、「大東建託」などのサブリース業界は確実に冬の時代を迎える。

 業績不振の不動産業者の“駆け込み寺”となっているソーシャルレンディングも同様。「Maneoマーケット」への業務改善命令に見られるように、債務者保護を名目に劣悪な物件であることを隠し、高利をエサに資金を集めていたのがソーシャルレンディング業界であるのがバレた以上、新たな資金を得るのは難しい。

 結局、マンション、シェアハウス、アパートなどの建設ラッシュは、アベノミクスの生んだ“徒花”であり、バブルのなかに咲いた以上、いつかは終焉を迎える。

 新築マンションでその引き金になるのが五輪選手村だが、目端の利く投資家や業者は、既に不動産の売却に入っており、中国人が買い漁った利殖や民泊目当てのタワーマンションでは投げ売りが始まっている。

 実需に基づかないマネーゲームは終了。――待ち受けるのは、マンション、サブリース業者などの連続倒産という見たくない再びの悪夢である。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年8月3日配信「吉本興業騒動で留意すべきは『反社の定義』と彼らから『芸人を守る方法』」<事件>

<堂々の吉本興業グループ>

 

吉本興業株式会社
株式会社きょうのよしもと
株式会社よしもとデベロップメンツ
株式会社よしもとラフ&ピース
株式会社よしもとアドミニストレーション
株式会社よしもとエンタテインメント沖縄
株式会社よしもとセールスプロモーション
株式会社よしもとブロードエンタテインメント
株式会社よしもとチケット
株式会社よしもとインベストメント
株式会社よしもとエリアアクション
株式会社よしもとロボット研究所
株式会社よしもとプロダクツ
株式会社よしもとスタッフ・マネジメント
株式会社よしもとミュージック
株式会社よしもとファイナンス
株式会社よしもとミュージックパブリッシング
株式会社CANVAS
株式会社よしもとミュージックコリア
株式会社Showtitle
株式会社よしもとスポーツ
株式会社KATSU−do
株式会社よしもとゲームズ
株式会社カワイイアン・ティービー
株式会社よしもとアーツ
株式会社VERSUS
株式会社よしもとアクターズ
株式会社ラフアウト
株式会社たまか
 

 
 宮迫博之、田村亮ら「吉本興業」の芸人らの「闇営業」に端を発した騒動は、同社の契約書なしの雇用関係、異常な搾取構造、危ないとなれば芸人を切り捨てる冷酷な体質がクローズアップされ、岡本昭彦社長の情けない記者会見、加藤浩次、松本人志、明石家さんまなど“大物”の参戦もあって、「吉本興業騒動」という形で進展、「反社会的勢力との関係はどうあるべきか」という、本来、論義すべき問題が忘れられている。
 
 きっかけは、4年半前、振り込め詐欺グループの忘年会に、宮迫らが会社を通さない闇営業として出席、ギャラをもらいながら「受け取っていない」と証言、それがウソであることが発覚したことだった。
 
 ここで「闇営業」と「ウソ」は、吉本対芸人の話であり、一般社会の与り知らぬことである。
 
 論義すべきは、「反社会的勢力と知らずに彼らから金銭を受け取ったこと」が、芸人をクビにできるほどの罪かどうか、という点である。
 
 マスコミの多くは、いとも簡単に「反社」と呼ぶが、その定義は難しい。
 
 狭義の反社とは、11年に完全施行された暴力団排除条例で認定された暴力団構成員、準構成員、及びその密接交際者であり、この数は少ない。
 
 銀行口座も開けず、家も借りられないのだから当然で、この部分の反社は激減、警察当局が完全把握する暴力団構成員は、今や1万5000人(18年末)に過ぎない。
 
 その穴を埋めるように増えているのが半グレで、問題となった振り込め詐欺グループもそうだが、風俗・飲食店経営、暴力団金融、債権回収、芸能プロダクション経営、地上げ、金融詐欺など、かつて暴力団や企業舎弟と呼ばれる周辺者が牛耳っていた分野は、半グレなどグレーゾーンの領域に生息する連中が主体となった。
 
 もちろんこちらも、広義の意味では反社だが、こちらの反社は、誰も認定しておらず、どう対処していいかわからないのが実情だ。
 
 実は、吉本興業は暴力団対策法以降、「反社に狙われる企業」という立ち位置を自覚、09年9月、TOBを発表し、証券市場から撤退している。
 
 07年にお家騒動が勃発、会社側と創業家のそれぞれに反社がつき、山口組と近い怪芸人の中田カウスが暗躍の果て、金属バットで襲撃を受けるなど混乱の極みにあった。
 
 100年の歴史の中で70年近くを暴力団と背中合わせで歩んできただけに、いつ暴力団との関係が噴出するか分からず、上場していたのでは会社自体が危うくなる⁉――これが上場廃止の理由であり、その決意表明が11年8月の島田紳助引退だった。
 
 吉本は、少しでも暴力団構成員と付き合いがあれば、紳助のようなトップ芸人でも切ることを、社内、所属芸人はもちろん暴力団側にも知らしめた。
 
 ほかにも、「吉本興業」が暴力団との関係遮断を求め、コンプライアンス委員会の設置、内部通報制度、Q&Aの冊子配布、半年に一度の研修などで所属芸人に周知徹底させようとしてきたことは事実である。
 
 今回も、改めて反社との関係を持たないようにする誓約書を全芸人との間で交わすのだという。
 
 しかし、それが大して役に立たないのは、吉本の古手芸人や経営陣はわかっている。
 
 5代目との関係を吹聴していた前述の中田カウスが未だに居座っているのもそうだし、60代以上の古手が、今回、決して口を開かないのは、過去に深い関係を結んだ暴力団幹部がいるなど、ズブズブの関係にあるからだ。
 
 そして、吉本は反社の中核が半グレに移った今、かつてのヤクザがそうだったように、彼らが習性として芸人を呼んで誕生会、祝賀会、パーティーなどを盛り上げようとすることが分かっている
 
 芸能プロの運営が、今回のフライデー報道のように、杓子定規な倫理観、反社報道によって揺らぐ以上、厳しい内規を定め、内に飼っている古手も、闇営業をせざるをえない若手も、事が発覚すれば切るしかない。
 
 それが反社から組織を守る方法で、今回、吉本はそう対応したが、想像以上のバッシングを浴びた。
 
 反社とは? そして彼らとの関係はどこまで許されるのか?ーー吉本が、まず確立すべきはこれである。

 
 そして、これは吉本だけの問題にとどまらない。
 
 明文化された規定、統一された見解が、芸能界と取り締まる警察当局、報道するマスメディアになければならず、そうでなくてはこの種の問題は、いつ誰の身に起きてもおかしくない。【午】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年7月30日配信<0510archives>「巨大IT規制に踏み切る日米欧を尻目に中国が勢力圏を拡大中」<事件>

 

 

 巨大IT企業が、日米欧から集中砲火を浴びて揺らいでいる。
 
 6月に入ると、米司法当局が日本の独占禁止法にあたる反トラスト法に基づいて、グーグルを捜査する方針だというメディア報道を受けて、グーグルだけでなく、アップル、フェイスブック、アマゾンのGAFA4社の株が急落した。
 
 米を覆う巨大IT規制のうねりは、もはや止まらない。
 
 かつて米国は、グーグルなどを国家戦略企業と位置づけて保護育成した。
 
 彼らは、自らのプラットフォームを通じて、検索、メール、物品販売など数々のサービスを提供しているが、そこから発生する名誉毀損などのトラブルは、「包括免責条項」で除外、プラットフォーマーの責任にしなかった。
 
 GAFAが、世界の時価総額上位を独占しているのは、IT化、グルーバル化を先導しただけでなく、米国の国家戦略企業として位置づけられていたからだ。
 
 だが、18年5月に施行された欧州のGDPR(一般データ保護規制)によって、流れは完全に変わった。
 
 GDPRは、EUで行われる個人情報保護の枠組みだが、単に保護するだけではない。
 
 GAFAのような巨大IT企業が握るビッグデータに蓄積された情報は、一私企業のものではなく「公共財」だという発想の転換であり、GAFAは人と組織と民主主義に対峙する存在だから、独占禁止法や税金でその活動を制限しなければならない、という認識の共通化である。
 
 日本でも公正取引とプライバシー保護と課税の観点から規制強化することが決まっており、今夏までに具体策をまとめる。
 
 米国も同様の規制と法整備を始めており、日米欧の足並み揃った以上、巨大IT企業のこれ以上の肥大化は望めない。
 
 翻って中国はどうか。
 
 もともと、通信、金融、情報などのインフラが整備されておらず、その“未開”がIT化を推進、携帯電話の普及、スマホ決済サービス、ネット通販などがあっという間に普及、IT先進国となった。
 
 また、一党独裁による国家資本主義の強みで、規制はどのようにもかけられる。
 
 ネットは当局によって厳しく監視され、その国家管理を嫌って、グーグルを始めとして先進IT企業は撤退し、中国ではテンセント、バイドゥ、アリババなど独自のIT企業が急成長、GAFAと肩を並べている。
 
 今後、中国の巨大ITはGAFAを追いつき追い越し、現在は中国語圏の覇者でしかないが、一帯一路構想に組み込んだ国を中心に、顔認証とビッグデータと人工知能(AI)を組み合わせて、共通の国家管理体制を共有するのではないかといわれている。
 
 巨大IT企業が持つ膨大な情報は、ビッグデータのなかに“格納”されているが、その自由な持ち出しを日米欧が規制したのに対し、プライバシー無視の中国では、なんにでも使える。
 
 住所氏名年齢、思想信条に行動履歴、趣味嗜好に友人関係といった基礎情報をもとに、信用度は数値化され、結婚、就職、融資基準に利用され、顔認証でごまかしは効かず、罪を犯せばすぐに捕捉される。
 
 今や中国はそんな管理社会になっており、その管理システムの一部は、イラク、タイ、ミャンマー、ベトナムなどに輸出されている。
 
 後戻りができないと思われたグローバル化のなか、トランプ政権が中国の通信機器最大手のファーウェイとの取引を禁じたのは、ファーウェイが国家機密に接触するかどうかもさることながら、プライバシー無視の中国の国家戦略に、はっきりと「ノー」を突き付けたものだった。
 
 では、日本はどうするのか。――決済サービスにアリババのアリペイを使えば、やがて顔認証システムに組み込まれて中国のビッグデータに日本人のデータが納められる。
 
 それを可とせず、米の「ファーウェイ切り」に追従するのか、それとも独自に判断するのか。――日本政府の「令和の決断」が迫られている。【戌】

 

 

 

 

 

 



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