2017年11月18日配信「電通ワークスLED詐欺事件は二審も無罪で警視庁と東京地検の大失態!」<事件>

 

 去る9日、東京高裁で行われた「電通ワークスLED詐欺事件」の控訴審判決で大熊一之裁判長は、検察側の控訴を棄却。被告5人は、東京地裁の判決通り「被告人全員が無罪」となった。

 この事件は、詐欺罪に問われたLED製造・販売会社「WWE」(ワールド・ワイド・エンジニアリング)長谷川篤志代表やオーナーの津田悦資氏らが、電通100%子会社の「電通ワークス」に架空取引を持ちかけ、約56億円をだまし取ったというもの。

 架空取引が行われたのは2010年頃で、警視庁組織犯罪対策4課が捜査に乗り出し、13年末、長谷川、津田の両氏らを逮捕。東京地検が詐欺罪で起訴したが、そもそも詐欺罪という事件の構図が歪んでいた。

 WWE経営陣らが捜査段階で認めていたのは「電通ワークス」が承知の「循環取引」であり、それで起訴していれば一審も二審も無罪となるような失態は犯さなかった。

 「電通ワークス」が「WWE」に発注した最後の大型案件は、10年9月22日、ドラッグストアチェーン店向けなどのLED77万本、約114億円分だった。

 1枚の発注書で、なぜこれだけ巨額の発注がなされたか。

 循環取引で発生した各種の歪みを一気に調整するためのもので、ひとえに「電通ワークス」側の事情だった。

 だが、警視庁は循環取引を認めなかった。

 なぜならば、それを認めると「電通ワークス」も絡む事件となり、100%子会社の粉飾は上場会社である「電通」にも波及、社会的影響が大きいと“配慮”したからであろう。

 「電通ワークス」の担当者はOグループ長である。

 素直にO氏が絡む循環取引事件にすればいいものを、「電通」と「電通ワークス」は「純然たる被害者」を貫き通した。

 勘ぐれば、巨大企業「電通」に天下りも含めて持ちつ持たれつの関係にある警察が、配慮した結果だった。

 そして検察もまたその構図を認めた。

 そこにも警察と同様の配慮があったのではないか。

 が、裁判所は辛辣だった。

 普段、99%以上の有罪判決を出し、検察と一心同体にある裁判所が、電通と警察・検察の“握り”を排除した。

 一審の江見健一郎裁判長は、「架空取引とは知らなかった」と主張するO氏の証言に対し、強い口調でこう否定した。

 「自己の責任回避という強い動機があり信用できない。架空取引と知っていた」

 この姿勢は東京高裁の大熊一之裁判長も同じだった。

 いや、訴訟指揮を見れば、それ以上に検察の主張を認めなかった。

 昨年3月の一審判決の後、東京地検の控訴趣意書が提出されたのは、昨年10月のことである。

 それに対して、弁護側が反論もしくは意見書を提出したのが今年2月に入ってからだ。

 その後、控訴趣意書の補足などが出された後、7月20日、第一回目の公判が行われた。

 検察側からは、新たな証拠や証人申請などが出されたものの、大熊裁判長は「すべて却下」し15分で終了。――これで勝負はあった。

 2回目の期日が11月9日で判決を言い渡したが、予想通りに一審を支持して控訴を却下した。

 大熊裁判長は、判決文のなかで「(電通ワークス側に)循環取引によって、売り上げを仮装する動機があったことは否定できない」とし、「詐欺罪は成立しない」と結論づけた。

 言うまでもないことだが、循環取引は犯罪である。

 米のエネルギー商社「エンロン」は、循環取引で400億ドルもの負債を隠し、米経済を震撼させた。

 日本では東証一部上場の老舗企業「加ト吉」が、循環取引で決算を粉飾。挙句、「JT」(日本たばこ産業)に吸収合併されて長い歴史の幕を閉じた。

 循環取引という“立派”な犯罪を、警視庁と「電通」が握り、それを検察が認めて事件を歪めた。

 しかし、裁判所は地裁段階でそれを認めず、高裁では審理に値しないと退けた。

 ここは、「判・検・警」の“連係プレー”による有罪判決が当たり前の風潮にストップをかけた裁判所の「良識」を認めるべきであろう。【辰】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2017年11月15日配信<0510archives>「共謀罪適用第1号は暴力団⁉――ヤクザ利用を察知した『6代目山口組』が傘下組員に配布した『共謀罪対策マニュアル』の切実な中身」<事件>

金田勝年前法相(官邸HP)


 

 スッタモンダの挙句、強引に成立した共謀罪が7月11日に施行された。

 「国会ではテロ等準備罪と説明され、『テロ集団や暴力団が取り締まりの対象であり、一般人に適用されることはない』と、答弁されてきただけに、法律の“実績作り”のために、ヤクザが集中的に対象とされる可能性が高い」

 先般、山口組が傘下組員に対して配布した「共謀罪を考える」と題した共謀罪対策マニュアルは、冒頭の「はじめに」で、こう記されている。

 実に簡潔にして「国家の思惑」をよく捉えている”対策文書”である。

 国会で民進党などの野党が攻撃したのは「一般人に及ぶ危険性」で、政府の見解は揺れ動いた。

 が、結局のところ「組織的犯罪組織の周辺者」も共謀罪の対象になるのだから、捜査機関のさじ加減ひとつで「一般人」””も共謀罪の対象となるのは明らかだ。

 ただ、反対が多く、今も国民の多くが「心の内を裁く法律」と恐れているので、最初の段階で危うい境界線に踏み込むことはない。

 特に第一弾は、誰もが納得する集団。つまり「暴力団」になるのは濃厚で、マニュアルは、それを踏まえて作成されている。

 その危機感は至当で、認識も間違ってないのだが、「では、どうすべきか」という傘下組員の“悩み”に答えるものではない。

 「要は、電話は盗聴を前提としろ、ラインやメールで大事なことは話すな、なるべく外で集まるな、ということだが、それは共謀罪が施行されなくてもやっていたことや。共謀罪でどこがどう変わるかは分かるけど、じゃあ、何に気をつければいいのかがわからない」(六代目山口組三次団体幹部)

 確かに、共謀共同正犯の拡大解釈、使用者責任の判例増加によって、最終的な罪はピラミッド型組織の頂点にいる組長のものとなった。

 組長を守るために、これまでも山口組はさまざまな形で勉強会を重ね、暴対法改正や暴力団排除条例に備えており、共謀罪が施行されたからといって、新たな“備え”が必要になるわけではない。

 マニュアルで指摘される「運用例」には、以下のようなものがある。

 ・対立組織幹部の殺害を計画、拳銃購入資金の用意など事前準備の段階で殺人の共謀が成り立つ。故に殺人計画がでっちあげられ、ATMで金を下ろしたことが準備行為となる。

 ・二代目大石組の井上茂樹組長が逮捕され、不起訴となった殺人予備事件でも、共謀罪が適用されれば、マンションを借りたことが準備行為とされ有罪とされる可能性が大きい。

 ・薬物事犯などでは、実際に薬物を購入、販売していなくとも「計画段階」で処罰の対象となり、計画したとされる人物と会っていた、カネのやり取りがあったなどで、広範な組員、場合によっては親分クラスも共謀罪となる。

 またマニュアルは、共謀罪の「自首減免制度」にふれ、既に法制化された司法取引と同じように、<チクられた側に反論する場がなく、チクった側の言いなりで冤罪が生み出されることになる>と、警告。対象犯罪が拡大されたばかりの盗聴法(通信傍受法)の対象犯罪に共謀罪が取り入れられるだろう、と予測している。

 そのうえで、「まとめ」として、既にヤクザに対しては共謀罪と同様の扱いが行われているが、今後はハードルがさらに低くなるとして、「個人的な犯罪であっても、当たり前のように組織的とされ、広範な組員に共謀罪が適用されるようになるだろう」として、注意を喚起している。

 確かに、度重なる暴対法改正とトドメを刺すような暴排条例で、暴力団構成員は「存在自体が悪」となり、どんな行為も拡大解釈で罪とされ、今更、共謀罪で何か新たな準備をする必要もない。

 そういう意味で、マニュアルに殊更、驚くような指摘はないのだが、国家はここまで追い詰めた暴力団を「法律の実績作りのため」に使い、狙われる側もそれを承知しているあたりに、「暴力団の制度的利用」も“最終章”を迎えたのではないか。【申】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2017年11月11日配信「ロシアゲートでSNS規制論の最中に巨額利益を上げたFBなどが果たすべき責任」<事件>

(☚wikipedia)


 ロシア政府が、交流サイトのSNSを使って不正な世論操作を行い、2016年の大統領選で「トランプ当選」に有利なように働きかけたという、いわゆる「ロシア疑惑」は、10月30日にトランプ陣営の元選挙対策本部長が起訴され、11月1日には、米議会の公聴会にフェイスブック(FB)、グーグル、ツイッターの幹部が呼ばれて追及を受けるなど、米国を揺るがす問題に発展している。

 他国が、特定の意図を持って情報を操作、自国に有利な候補を当選させようと働きかけたのが事実なら、論外な内政干渉であり、民主主義への冒涜である。

 その舞台となったSNSの主要3社幹部が、事態をどう把握し、どう改善しようとしているかを問いただされるのも当然だろう。

 皮肉にも、公聴会の最中の1日、FBは2017年7〜9月期決算を発表。それは広告収入の伸びで増収増益を実現、売上高が103億ドル(約1兆1600億円)、純利益が47億ドル(約5300億円)だった。

 売上高の約半分が純利益という驚異的な収益構造は、FBがサイトへの参加者に対して行うサービスへの見返りとして、ログイン時に必要な住所、年齢、性別などの個人情報に加えて、友人知人、趣味嗜好などの獲得したデータを使い、効果的な広告を打てるからである。

 収入の大半が広告で賄われる広告業者のFBは、テレビ、新聞、雑誌などの旧来型メディアが、「マス」(不特定多数)に向けて拡散するだけで効果が測れないのに対し、ビッグデータに格納されたプライバシー情報を広告主の求めに応じて取り出し、最適な形で望ましいと思われる購買層に発信する。

 このマイクロターゲティング効果は抜群で、しかも広告を閲覧したかどうか、成約に至ったかどうかも計測できるとあって、既存メディアの広告を“食い”、しかも他のネット広告業者を上回る業績を上げてきた。

 FBに対抗できるのは、動画サイトのユーチューブを傘下に持ち、検索エンジンを使って優位な広告を打てるグーグルだけで、両社の市場占有率は6割を越える。

 広告を打つに際して広告主は、顧客管理システムなどのデータも効果的な広告効果のために提供する。

 それがビッグデータとなって蓄積され、ますます両社は巨大化する。

 しかも投資は、人材とネットワークに関するものだけで、装置産業のような設備投資を必要としない。

 さらにFB、グーグル、ツイッターのような交流サイトは、情報を流すだけの「プラットフォーム」という位置づけで、そうした企業群を育成しようとした米政府によって、「包括免責」を与えられている。

 90年代末に制定された通信品位法などによって、例えばユーチューブ上を悪意があり、根拠のない名誉毀損映像が流されれば、既存メディアではメディアの側が厳しい罰則を受けるのに対し、SNSでは罪を問われるのはユーチューバーであり、プラットフォームは免責される。

 ビッグデータは、世界の個人と企業と政府が、コンピュータとつながることによってもたらされる「公共財」である。

 ならば特定の事業者が、自社の利益のためにだけ使うのは許されない。

 まして、個人のプライバシーを使って、他国の有権者の投票活動を誘引しようとする勢力に対し、それもまたビジネスと割り切ってプラットフォームを提供するのは、国家国民への冒涜であり犯罪行為である。

 公聴会で3社の幹部は、「不正広告のチェックは事実不可能」と、開き直ったが、不可能ではなく「包括免責」をタテにフェイクニュースも悪意のある情報も、公序良俗に反する広告も放置してきた。

 その怠慢のうえに利益はかさ上げされ、その巨大な利益でM&Aを繰り返し、新たなプラットフォーマーを取り込んで増殖してきた。

 利益を上げることが悪いわけではない。

 その収益構造に問題があり、それが「免責」を原因とするものなら、どれだけコストがかかろうと、プラットフォーマーに応分の負担を求めるのは当然のことだろう。

 「包括免責」「ネット性善説」に立って、原則的には自由が認められてきた米国で、初めてネット規制の論議が本格化している。

 日本でも状況は同じである。

 9人が殺害された「座間殺人事件」もネット上の自殺の書き込みを利用したものであり、「ネットはそういうものだ」と看過できない事件である。


 「だからと言って、責任の一端をネットのせいにするのはお門違いだ!」「あくまでユーザーの問題だ!」――異論、反論はあろうが、ネットを流れる「情報と広告の制御」について、本格的に論議すべき時期であろう。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2017年11月8日配信<0510archives>「震災を“食い物”にした老詐欺師・三木誠が遂に逮捕!」<事件>


"詐欺のレジェンド"に懲役3年の実刑判決!


 

 「根っからの詐欺師」とは、こういう人のことをいうのだろう。

 三木(旧姓・篠原)誠、御年84歳――。

 「娑婆と刑務所を出たり入ったり」と、表現される犯罪者は少なくないが、三木の場合は圧倒的に刑務所にいる期間の方が長い。

 1985年10月、青森県むつ市で5億円強奪事件が発生し話題になったが、当時、篠原姓だった三木は、主犯格として裁かれ、懲役11年の刑を受けて服役した。

 出所後、すぐに小切手偽造、手形詐欺事件などを引き起こして逮捕・起訴され、2000年に懲役11年の実刑判決を受けて、岐阜刑務所で服役した。

 出所したのは12年12月である。

 そこから手を染めたのが震災復興絡みの“仕掛け”である。「ボランティア活動をやっている(やりたい)」といって資産家に近付き、資金提供を受ける。あるいは、補助金付きの事業を手がける。

 それから4年余りが経過。各地で“悪評”を撒き散らしていたが、今年2月21日、宮城県警石巻署に逮捕された。

 逮捕容疑は詐欺未遂。三木は、配下の唐島基成(52)、徳田貴光(43)とともに、宮城県東松島市の68歳の男性に対し、「外国のカネを使って復興支援をしたいが、口座から資金を引き下ろすのに諸経費が必要。ついては資金支援して欲しい」と、100万円を振込送金させようとした。

 未遂だし金額も小さいが、詐欺の常習犯であり、公判になれば厳しい結果となることが予想される。

 また、多くの余罪があり、今後、他の事件に発展することも考えられる。

 長身で背筋が伸び、80代には見えないといわれる三木だが、実刑判決を受ければ、これからの懲役は辛いものになるだろう。

 娑婆より長い服役生活を思えば、「凄腕」といっていいのかどうか疑問だが、懲役という結果はともかく「騙しのテクニック」は超一流である。

 岐阜刑務所の受刑者であった時から目を付けていたのが、宗教法人「幸福の科学」大川隆法総裁の前妻・大川きょう子女史である。

 出所後、すぐに、震災後、「みちのく衛生の会」というNPO法人を立ち上げ、ボランティア活動をしていた大川女史に電話をかけ、「自分も手伝いたい」と持ちかけ、翌年1月には面談、1億数千万円を引き出している。

 どうして簡単に騙すことができたのか。

 次のように申し向け、巧みに相手の“欲”を刺激するからだ。

 「香港のナンバーアカウント口座に150億円以上のカネがある。ただ、(懲役で)長期間不在だったので口座を凍結していたこともあって、簡単にカネを下ろせない。当面の活動資金として、カネを貸してもらえないだろうか。凍結解除になれば、どんなお礼でもするから…」

 

 とにかく、カネは借りた方が強い。

 一度、貸すと、関係を切られ取り戻せなくなるのが怖くて、ズルズルと借金の求めに応じてしまうのである。

 三木に対する大川女史の債権は7億5000万円にも達したが、三木は、弁護士を通じた大川の返還要求に対し、「返すつもりはあるがカネがない」と回答するのみ。要するに踏み倒しである。

 大川女史だけではない。

 出所後、上野・御徒町界隈を根城にしていた三木は、小料理屋の女将、スナック経営のママなどからもカネを借り、ボランティア活動に引き込んだ。

 篠原から三木姓となったのは、13年6月、当時、スナックのママだった女性との婚姻によるものである。

 三木と大川女史の決裂は、いつまで経っても口座が開かず、返済されない借金問題が大きかったが、そのほか収益活動はしないハズなのに、三木が夫人を代表にコールセンター事業を始めたことも原因だった。

 コールセンター事業とは、「震災に伴う国の雇用創出事業を利用した詐欺まがいの会社」と、後に叩かれた「DIOジャパン」(代表は日清紡時代に元社会人卓球チャンピオンになった本門のり子)と組んで設立した「おいらせコールセンター」である。

 この会社を巡っては、14年11月、町と交わした補助金に関する契約関係書類が、山梨県でパチンコ屋を経営する会社に流れていたことが判明、町で大騒ぎとなった。

 書類は、山梨の会社を信用させるために担保替わりに預けたもので、後にこの会社は三木らを刑事告訴、一時は山梨県警が捜査に当たっていた。

 そして、「おいらせコールセンター」の事務局長を名乗っていたのが、今回、一緒に逮捕された徳田だった。

 詐欺師人生一直線!――事件化こそしなかったが、秋田県の有名観音像を巡る詐欺未遂事件など、小誌が知るだけでも余罪は数件ある。

 

 遵法精神の欠片もない三木が、再びの懲役生活を迎えるのは間違いなかろう。(敬称略)【卯】

 

    ※仙台高裁が1審判決(懲役3年の実刑)を支持して控訴棄却!

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2017年11月3日配信「検察捜査の<在り方>を変えた大坪弘道・元大阪地検特捜部長の弁護士申請で改めて浮上する特捜部事件の功罪」<事件>

 

 

 特捜部の検事が証拠を改竄したという衝撃の「大阪地検特捜部事件」は、その後の「特捜改革」へとつながり、無理な捜査は禁じられ、取り調べは録音録画の公開で行われることが原則となり、特捜部は弱体化した。

 以降、検察は政官界の監視機構という役割を放棄、官邸との密な連携のうえで、国家秩序に反する組織や人物にターゲットを絞った組織となった。

 つまりは権力の補完機構へのシフトであり、それが大阪地検事件の残した傷跡だが、事件の主役のひとりである大坪弘道元特捜部長が、執行猶予期間を終えた10月、大阪弁護士会に弁護士申請を行った。

 審査を経て日弁連に通知、問題ないとなれば登録のうえ、弁護士としてスタートする。

 一体、検察変節の節目となった「大阪地検特捜部事件」とは何だったのか。

 2010年10月1日、最高検察庁は大坪弘道元特捜部長を犯人隠避容疑で逮捕した。

 厚生労働省の村木厚子元局長の捜査段階で、前田恒彦主任検事が証拠のフロッピーディスクのデータを書き換えていたことが、同年9月21日、『朝日新聞』のスクープによって発覚。その日のうちに最高検は前田元検事を逮捕。そのわずか10日後、直属上司の佐賀元明元副部長とともに大坪元特捜部長を逮捕した。

 検察の「狙い」は明白である。

 大阪地検特捜部ぐるみの犯罪として処理することである。

 功を焦った主任検事が禁断の証拠改竄に踏み出し、それを知っていた特捜部長が監督責任を問われるのを恐れて黙認した――それが検察という組織であり、その「保身の論理」は、逮捕まで27年間、検事として過ごした大坪氏にはよくわかっていた。

 大坪氏は、後に『勾留百二十日 特捜部長はなぜ逮捕されたか』(文藝春秋)を著すのだが、逮捕の段階でその理由を明確に認識していた。

 <一連の事件の責任をすべて私と佐賀君に押しつけ、検察リークによってわれわれ二人を悪の権化に仕立て上げた。そして首をはねることによって、組織全体及び検察上層部に検察批判の波が押し寄せるのを防ぐことができた>

 確かに、検察の巧みな情報統制とリークによって、事件は大阪地検の“特殊性”に落とし込まれた。

 大坪、佐賀、前田の縦ラインによる個別の大失態案件とされ、大坪氏は無罪を主張したが、13年、懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決が確定した。

 もちろん大阪地検、あるいは大坪氏の個別事情であるワケがない。

 立件の落とし所を決め、それに合わせて関係者の供述調書を取り、事件を仕上げるのが検察捜査の常道だった。

 大坪氏もそう学んだ。

 著書のなかには、特捜検事に推薦してくれた恩人として吉永祐介元検事総長の名が出てくる。

 数々の事件を仕上げ、「捜査の神様」とまで言われた吉永元総長の手法は、精緻なシナリオ通りの供述調書を部下に取らせ、微塵の揺ぎもない起訴状にすることだった。

 そのために「割り屋」と呼ばれる検事がいて、妻子の逮捕や友人知人への捜査の波及などをチラつかせ、相手の弱みに付け込んで恫喝、あるいは泣き落しに出るなどして揺さぶり、自白に追い込んだ。

 『勾留百二十日』の面白さは、互いに手の内を知り尽くした者同士が攻防を繰り広げることで、「罪を作る側」の論理が浮き彫りとなり、それは大坪氏に反省ももたらせた。

 検事志望者は、おおむね特捜検事に憧れ、「国のために巨悪に立ち向かいたい」という野望を持って任官する。

 大坪氏もそうだったが、最後に直面したのは組織安泰のために、「大坪逮捕」を前提に、それに合わせた捜査シナリオで立件に導くという追い込まれた検察の姿だった。

 大坪切りで検察は一時的に救われたが、国民の信頼を失い、マスコミと政界も検察不信を顕にし、「特捜改革」に踏み出さざるを得なくなった。

 従って、大坪氏の「罪」が“制度疲労”した特捜捜査で冤罪事件を生んだものだとしたら、「功」はその手法を広く国民に認識させたうえで、「尻尾切り」で保身を図った検察の体たらくを暴露したことだった。

 定年のない弁護士にとって64歳はまだまだ若い。

 裏も表も知る大坪氏が、どんな事件を引き受け、どう検察に対峙するのか。――楽しみではある。【午】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2017年11月1日配信<0510archives>「銀行業界が頭を悩ます銀行カードローン破産急増の自業自得」<事件>


(☚NHK「クローズアップ現代」)

 

 

 マイナス金利下で間接金融の役割を果たせず、存在意義を問われている銀行業界で、唯一、元気一杯なのが、各行揃って「お手軽、便利」と、ネットやテレビでCMを垂れ流している無担保個人貸付の銀行カードローンだ。

 だが、過剰競争、過剰CMは、当然のことながら弊害を生み、目下、問題になっているのが、銀行カードローン破産の急増である。

 昨年から徐々に顕在化して、日本弁護士連合会が規制を求めるようになり、最近、NHKの『クローズアップ現代』(4月12日放送)で取り上げられたのを始め、マスコミ各社が報道するようになった。

 そんな“盛り上がり”を証明するように、日本銀行が5月18日に公表した2016年度末のカードローン残高は、前年度比9.4%増の5兆6024億円だった。

 原因はハッキリしている。

 2006年1月、懲罰的な最高裁判決によって、過去に遡った過払い金の返還が認められるようになり、二重のグレーゾーン金利を禁じた改正貸金業法が施行された。

 これにより、金利は20%以下となり、完全施行の10年以降は、総量規制が徹底され、年収の3分の1超の貸し付けは禁止された。

 消費者金融業界にとっては大打撃である。

 過払い金返還によって収益を吐き出し、総量規制と金利収入の低下によって事業規模の縮小を余儀なくされ、「武富士」は倒産、「アコム」は三菱UFJグループの、「プロミス」は三井住友グループの、それぞれ傘下に入って生き延びる道を選んだ。

 06年度末に約1万1800社だった事業者数は約2000社に激減。ひとつの金融業態が失われた。

 民法の請求時効は10年である。

 改正から10年が経過、時効は最後の支払いを起点とするので、過払い金返還請求はまだ継続中のものもあるが、今後、数年で終焉する。

 これまでに消費者金融・クレジット業界が応じた過払い金返還額は約6兆円。そのうち報酬や手数料で、請求に関わった弁護士などが受け取ったのは約2割の約1兆4000億円である。

 そうした弁護士事務所などの過払い金返還を勧めるCMが多かったのをみてもわかるように、「過払い金バブル」だった。

 結局、改正貸金業法がもたらしたのは、消費者金融をつぶして、銀行と弁護士、司法書士を潤わせただけだった。

 もちろん、それで改正の目的である「多重債務者問題の解消」がなされるなら、何の問題もなかった。

 「ギャンブルに狂ってサラ金に手を出したあげくの一家離散」といった類型的な消費者金融過が、当時、しきりに喧伝され、「貸さない親切」といった言葉で改正貸金業法が喧伝された。

 だが、10年を経て明確になったのは、潤ったのは銀行と弁護士、司法書士だけで、多重債務者問題は解消せず、銀行カードローン破産という形で、新たな問題が顕在化した。

 それには、行政の明らかな失態もあった。

 銀行カードローンは、消費者金融専業のような無理な貸し付けをしないし、突然、蛇口を閉めると、金融収縮が発生するという金融庁の方針のもと、銀行カードローンは年収の3分の1の総量規制の枠外とされた。

 従って、収入以上の借り入れをする顧客が急増。銀行は、そうした客を“カモ”として、「おまとめローン」なる商品を生成、「銀行カードに総量規制はありません」と、露骨な勧誘を行った。

 低金利下でそうした争いが激化するのは当然だが、13年のマイナス金利になってからはより勧誘は激しくなり、銀行界にとって無担保個人の銀行カードローンは、「もっとも稼げるビジネスモデル」となった。

 だが、そうした顧客のなかに、過払い金の返還で一時的な小康を得ていた層が少なくない。

 銀行カードローン破産の急増は、過払い金返還を使い果たし、銀行カードローンの融資を複数、受けて、借金の総額を年収の2〜3倍にまで膨らませて自己破産に至った人たちの急増でもある。

 「ご利用は計画的に」は、無担保ローンのCMで最後に使われる決め台詞だが、いつの世も「欲しいと思えば今、欲しい」という計画的になれない一群の人たちは存在するのであって、銀行業界の規制だけでなく、カウンセリングも含めた抜本的な改正が必要であろう。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2017年10月19日配信「強制捜査からキッチリ365日!――『ストリーム』関係者を逮捕した警視庁の狙いと意欲」<事件>

ストリーム社本社が入る住友芝公園ビル

 

 ネット通販会社でマザーズに上場する「ストリーム」の株価操縦事件を捜査していた警視庁捜査2課は、10月12日、高橋利典(69)、笹尾明孝(64)、本多俊郎(51)の3容疑者を、続けて15日には入院中だった松浦正親容疑者(45)を、そして17日には、シンガポールから帰国した佐土康高(58)を五月雨的に逮捕したが、他にも、事件に関与した会社関係者や外部協力者は多く、事件は大きく展開しそうだ。

 逮捕された容疑者らは、いずれも14年2月から共謀して、株価を上回る価格で連続して注文を出す「買い上がり」という手法を中心にストリーム株を仕手株化、不正に吊り上げたとされる。

 株価操縦を禁じた金融証券取引法違反で、捜査2課が証券取引等監視委員会などと一緒に家宅捜査に入ったのは昨年10月13日だった。

 仕手戦の中心人物の死去などもあり、「事件は潰れた」という観測も一時、流れたが、捜査2課はキッチリ1年で結果を出したことになる。

 選挙違反などを担当する捜査2課が、総選挙の最中に株価操縦事件を手がけたのは、関係者の海外逃亡、入院などが続き、捜査2課と証券監視委が「早く着手したい」という意欲を持ったこと、一発百戒にもってこいの事件構図に前向きとなった検察の姿勢など、幾つもの条件が重なったためだ。

 ただ、起訴したとしても、「公判を維持するのは難しそうだ」との声も少なくない。

 「株価操縦の中心的役割を担ったのは、昨年12月にガンで亡くなった大阪のUだ。彼が今回、逮捕された松浦正親が持つストリームの内部情報などをもとに作戦を立て、仕手仲間とともに買い上がった。その本尊が亡くなったのでは、『指示はUから出た。それに従って買っただけで、株価操縦に関与しているという認識も意識もなかった』と、他の人間に主張されると立件は厳しい」(証券関係者)

 しかし、捜査2課は、逮捕されたメンバーの証言と、各自の口座を特定したうえでの売買履歴の検証で、意思統一を図った「買い上がり」を確認した。

 それは捜査2課の粘りだが、この範囲にとどまったのでは、何のための捜査かわからない。

 というのも着手の時点で証券監視委と警視庁は、オーナーで中国籍を持つ劉海涛前会長(逮捕者が出た12日の時点で退任)及び、松浦正親容疑者が属している六本木のクラブ経営や金融業などで急成長する「松浦大助グループ」の事件への関与を解明することが狙いだった。

 だが劉前会長は、強制捜査後、ほどなくして中国へ戻り、当局の度重なる帰国要請にも応じていない。

 その間、自らは会長に下がって明電舎OBのベテラン経営者を社長に招請。会社経営には遠隔操作で参加してきた。

 従って、劉前会長の供述は取れず、劉前会長のものと思われる借名口座を使った売買記録はあるものの、その口座が本当に劉前会長のものかどうかはわからないし、一連の逮捕メンバーの「買い上がり」と連動しているかどうかの確認も取れない。

 同時に、松浦正親容疑者とU氏や仕手グループとの関係は証明できるものの、劉前会長と松浦正親容疑者との関係は、劉前会長の証言なしには解明できない。

 松浦正親容疑者と「松浦大助グループ」との関係も同様である。

 金融業を営む松浦大助氏は株に手を出しておらず、今回、逮捕状を請求されたメンバーのなかには入っていない。

 また、グループには佐土容疑者と(逮捕状は出ているものの)未だ所在不明の四方某氏(㊟18日に逮捕)がいるのだが、両氏とも仕手戦への参加は否定、「劉氏に金銭を貸し付けただけ」と、主張しているという。

 

 劉前会長は、80年代後半から日本に留学した「新華商」と呼ばれる在日中国人グループの成功者のひとりで、日本中華総商会で役員を務める。

 また、「松浦大助グループ」は、飲食、金融を中心に急速に力を付け、「安愚楽牧場」の債務整理に乗り出すなど、見逃せない集団になりつつある。

 それだけに「何が何でも!」と意欲を燃やす警視庁は証券監視委とともに、まず特定できた実行行為者から逮捕。指示者や会社幹部に駆け上がる手法を取った。

 その執念が実るかどうか?――その帰趨は、逮捕者の供述次第だが、U氏の死は、残る逮捕予定者も含めて容疑者を分断する“厚い壁”だけに、全体像を解明するには相当な困難を要しそうである。【丑】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2017年10月14日配信「証券監視委がようやく再建にメドがついた東芝の粉飾決算調査に執念を燃やす理由」<事件>

 
東芝本社(☚wikipedia)

 

 

 「東芝」は、懸案の「東芝メモリ」の売却にメドをつけ、10月24日、臨時株主総会を開いて株主の承認を求める。

 売却に反対の「米ウエスタンデジタル」(WD)が、訴訟を起こして揺さぶるなどリスクは残しているものの、ともあれ再建へ向けて一歩、踏み出す。

 既に、「東芝」は民間企業の範疇から外れ、国の思惑に左右される存在となっている。

 従業員総数約15万人、売上高約5兆円は、潰すに潰せない規模であり、しかも海外に流出させたくない技術があり、経済産業者の意向を汲んだ再生策となり、いつものように「産業革新機構」が手足となった。

 「東芝メモリ」の売却が遅れたのは、国と支援銀行と「東芝」本体とが、さまざまな思惑のなかで駆け引きを続けたためだが、そうした動きを度外視して、「東芝」の粉飾体質に苦々しい思いを抱き続けてきたのが証券取引等監視委員会だった。

 そもそも「東芝」の危機は、2015年4月3日付プレスリリースの『特別調査委員会の設置に関するお知らせ』と、題する報告から始まっている。

 インフラ事業の会計処理に問題があり、再調査する旨が述べられていたが、これが「蟻の一穴」となり、「東芝」の粉飾体質が次々に暴かれ、やがてパソコン事業で行ってきた粉飾操作が表面化した。

 海外の委託先に部品を販売、完成品を購入する取引を「バイセル」と呼ぶが、これを悪用、歴代経営陣はパソコン事業の水増しすることでみせかけの利益を捻出、業績を調整(粉飾)してきた。

 証券監視委の佐渡賢一前委員長は、「経営陣が自ら関与していたという意味で悪質」として、金融商品取引法違反での立件を視野に、検察との協議を続けてきた。

 だが、冬眠中の?検察の腰は重かった。

 検察は、昨年7月までに「東芝不正会計における歴代社長の立件は困難」という見通しを証券監視委に伝えた。

 だが、「日本のモノづくりを支えてきた世界に冠たるリーディングカンパニーが、経営不振の中小企業並みの意識と手法で決算を粉飾するのは許せない」という思いの佐渡氏は納得しなかった。

 佐渡氏は昨年12月に勇退、新委員長には同じ元検事の長谷川充弘氏が就いたが、思いは引き継がれて「東芝」への調査は継続。新たに問題視されているのが、17年3月期決算の米・原発処理事業をめぐる不正経理である。

 この時、「東芝」は約6500億円の損失を計上したが、証券監視委はこのうち数千億円については、16年3月期に損失を計上すべきだったという見方をしている。

 損失は認識した時期に計上するのがルールだが、東芝経営陣は米・原発事業子会社の「ウェスチングハウス」(WH)が、15年12月、原発工事会社の「ストーン・アンド・ウェブスター」(S&W)を買収した直後から16年3月までの間に、相当程度の損失が発生することに気付いていたという。

 この件は、「東芝」の監査を担当したPwCあらた監査法人が、「巨額損失が、突然発覚するのはおかしい」として、16年3月期に計上すべきだったと指摘。同法人が監査意見を出さないので、「東芝」は6月の有価証券法報告書の提出期限を8月に延期。PwCあらた監査法人は、最終的に、「計上しないのは誤りだった」と指摘したうえで「限定的適正意見」を出し、これを受けて「東芝」は、なんとか有価証券報告書の提出に漕ぎ着けた。

 証券監視委も、PwCあらた監査法人同様の見方をしており、「16年3月期決算は虚偽記載であり、その結果、利益が過大に計上された」として調査を実施する方針だ。

 また、この件に関して同委員会の一部委員が、「重要な虚偽記載がある」と指摘した文書を作成、事務局幹部に配布するなど、異例の力の入れ具合だ。

 「東芝」は国策で救済される。

 だが、「それで連綿と続いてきた経営陣の粉飾体質まで許されるものではない。もし、このまま『東芝』を見逃したのでは、証券監視委の存在意義に関わる」というのが、証券監視委関係者の偽らざる思いであろう。【寅】

 

 

 

 

 

 

 

 


2017年10月3日配信「詐欺が跋扈する一方、地面師犯罪は防げる!――近時、巷で話題の『仮想通貨・ブロックチェーン』の光と影」<事件>

 (☚Bloomberg)


 

 

 ビットコインなどの仮想通貨が異様な盛り上がりを見せるなか、各地でシンポジウム、セミナー、研修会などが相次いでいる。

 理由は、今年に入ってからの仮想通貨の高騰である。

 年初からは5倍に達し、2年半前のコイン消滅の「マウントゴックス事件」で急落した時に保有していた人は、30倍、50倍になって「ビットコイン長者」が誕生。彼らが「資産が数千万円になった、数億円になった」と、メディアで語ることもあって、一攫千金狙いの投資家が駆けつけるようになった。


 今や、完全にバブル状態である。

 中国が仮想通貨の取引所を閉鎖、米「JPモルガン・チェース」のダイモンCEO(最高経営責任者)が、「ビットコインは詐欺だ!」と断言しても、一時的に急落はするが、すぐに元に戻る。

 

 儲かるから投資するだけでなく、「将来は決済、送金手段の中核になる」と、信じている人が少なくないということであろう。


 しかし、その一方で詐欺話が、枚挙にいとまないほど溢れている。

 企業が、独自通貨である「トークン」を発行、新事業に必要な資金を集めることをICO(イニシャル・コイン・オファリング)というが、怪しい企業が少なくない。

IT系、フィンテック系のスタートアップ企業が多く、一般の投資家に事業内容は理解しにくい。

 「ホワイトペーパー」と呼ばれる責任を問われることのない事業案内が発行されるだけなのだが、それでも瞬時に数十億円の調達に成功する企業が少なくない。

 当たり外れは時の運という「千三つ」のような投資感覚だが、「トークン」が価値を生むかどうかわからないという意味では、まるで“子供銀行”だが、それでも投資家は期待を抱き、そのブームに便乗、カネ集めだけが目的の詐欺的ICOが少なくない。

 そうした根拠なき熱狂を利用、最初から騙しを目的にした連中も少なくない。

 振り込め詐欺、マルチ商法、投資セミナー商法などの確信犯たちで、ビットコインの急騰を“エサ”に投資に誘い込み、渡されるのは価値のない仮想通貨だが、何も渡さずカネだけふんだくる悪徳商法も横行している。

 一方で、仮想通貨を成立させるブロックチェーンは、「社会を変革させる力」を内包している。

 分散型台帳技術であり、大量のコンピュータネットワークにより、正しく書き込まれて行き、変更できず、消せず、改竄できない。

 仮想通貨は、管理者のいない電子的記号で、円やドルといった法定通貨のように国家の保証がない。

 それでも流通し、決済に使われるのは、ブロックチェーンという技術が、正しく台帳に取引履歴を書き込んでいくという信頼感があるからだ。

 従って、仮想通貨ブームを支えるのはブロックチェーンだが、この技術の汎用性は高く、何にでも応用可能で、「インターネット以来の技術革新」と、いわれている。

 仮想通貨は応用技術のほんの一例にすぎず、土地登記・電子カルテ・出生・婚姻などの届出、小売や中古車・中古住宅などのサプライチェーンの確立、電子クープン、ポイントサービスなどのインフラ化など、さまざまなアプリケーションにブロックチェーンが有効である。

 身近な例で言えば、最近、世間を賑わすことの多い「地面師対策」には有効だ。

 今後、間違いなく進むのは電子化であり、やがて運転免許証、パスポート、健康保険証などの役所仕事は、電子化されて効率化される。

 また、土地取引遺言書といった過去に履歴があり、書き換えられていくものもそうで、ブロックチェーンを使った電子化は避けられない。

 それらの情報は、パソコンやスマホに入力され、取引の際には、ブロックチェーンによって正しく書き込まれた本人確認のための証明書と、土地の履歴が出力され、それが必須条件となる。

 紙に印刷された運転免許証や権利書だから偽造が可能だが、電子化はそれを阻む。

 もちろん、中央集権型のホストコンピュータであれば、データそのものを、例えば免許証の顔写真を入れ替えることは可能だが、複数のコンピュータで分散管理するブロックチェーンなら、一台を改竄しても、過去との照合で他のコンピュータが偽造を弾き、正しくチェーンはつながっていく。

 改革には常に「光と影」がある。

 「両刃の剣」――今回は「仮想通貨の影」と「ブロックチェーンの光」を紹介したが、その逆のパターンもある。

 確実なのは、その双方を乗り越えつつ、電子化とキャッシュレス化が進み、新たな犯罪を引き起こしながらも、作業の効率化と低廉化が進行。早晩、「当たり前のシステム」として活用されることになろう。【卯】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2017年9月26日配信「『築地を守るなら訴訟も辞さず!』――小池百合子都知事に怒り心頭!? 高橋弘・万葉倶楽部会長とは何者か?」<事件>

(☚wikipedia)

 

 

 

 都議会を制し順風満帆に見える小池百合子都知事にとって、“最大の瑕疵”というべきは豊洲市場に対するあいまいな態度だろう。

 築地は守る、豊洲は生かす――。

 ポピュリズムの極致のような無責任さであり、築地の売却益を豊洲の建設費に充てる計画だったのだから、東京都予算への影響は必至。玉虫色の決着で責任を回避、決断しない小池氏の欠点が如実に表れた。

 ただ、そこは追い風が吹いている強味か、表立った反論は少ないのだが、そこに堂々の責任追及を始めたのが、豊洲市場に飲食・物販・温浴ホテル施設の『千客万来』を設置する「万葉倶楽部」(神奈川県小田原市)である。

 「小池百合子都知事の方針は、チャンチャラおかしい。うちが納得できる説明が欲しい」

 同社を率いる高橋弘会長は、『週刊ダイヤモンド』(8月9日号)で、こう怒りを露にし、その理由として、東京都の方針が定まらず、着工できない間に、「工事の延期などで、当初見積もった総投資額180億円から、すでに20億から30億円上振れしている」と語った。

 それに、「築地を守る」ことになったら、わずか2キロしか離れていない場所に、同じ色合いを持つ『食のテーマパーク』が2つできるわけで、いかに「万葉倶楽部」が「温浴・ホテル」など別の売り物を持っていたとしても、採算的に厳しくなる。

 また、同じ色合いのテーマパークという意味では、お台場に『大江戸温泉物語』があり、これも『千客万来』にはネックで、最初の施設予定業者だった『すしざんまい』「喜代村」は、その存続を知って撤退した。

 高橋会長にしてみれば、温浴施設のリスクを承知で出店したのに、「工期は遅れる、築地は守る、じゃたまらない」というところだろう。

 加えて、ただ怒るだけでなく、高橋会長の息子の高橋真己専務は、「事業から撤退後、損害賠償請求訴訟をすることもありうる」と、『読売新聞』(8月31日付)紙上で語っている。

 確かに正論ではあるが、高橋会長が置かれた立ち場を考えると、「優柔不断な小池都政の被害者」とばかりは言っていられない。

 「万葉倶楽部」を起こした高橋氏は、家業の酒屋を母体に、写真DPE事業の「日本ジャンボー」を設して全国展開、株式公開にまで漕ぎ着けた。

 が、写真現像業は、デジタルカメラの普及でいずれ行き詰まる、と先見の明を発揮。温浴業の「万葉倶楽部」に転身し、今は横浜・みなとみらいや神奈川・湯河原など9ヶ所で温浴施設を運営する。

 82歳を迎えた今もヤル気満々で、「いい事業、もうかる仕事」を持ち込まれると、自ら話を聞き、前向きに取り組む。

 その高橋氏が、温浴事業の次の柱にしようと考えたのが都市開発で、『千客万来』に名乗りを上げ、16年3月に事業者に決定しただけでなく、小田原駅東口の広域交流施設ゾーンの事業者に応募、16年12月に優先交渉権を得て、17年3月には小田原市と「基本協定」を結んでいる。

 「酒販店に始まり、写真DPE、日帰り温泉、ホテルと事業を展開してきた私が、新たに取り組んでいるのが都市開発事業です」

 地元の『神奈川新聞』で、高橋氏は『わが人生』と題する64回の連載を行ったが、その63回目でこう述べて、夢を語った。

 「生涯現役」ということである。

 82歳を迎えての事業欲は見事だが、「万葉倶楽部」がカネと時間がかかる都市開発に2つ同時に取り組めるのか、という懸念はある。

 売上高は近年、100億円強で停滞、経常利益は5億5000万円(16年9月期)と、それほど利益率は高くなく、しかも負債は180億円前後で、担保余力はない。

 都市開発への進出は、『日帰り温泉・万葉の湯』だけではジリ貧で、大きなプロジェクトに手をあげて借り入れを起こす自転車操業に陥っている、という指摘も聞かれる。

 それだと、工事の遅延や計画変更に翻弄されると、たちまち資金繰りがタイトになるわけで、それが高橋会長らの強い不満や告訴の意向表明につながっている可能性もある。

 小池都知事の煮え切らないご都合主義は問題だが、さりとて高橋社長の弁にしても、「正論」とばかりとは言えない気がしないでもない。【巳】

 

 

 

 

 

 

 

 



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