三井住友銀詐欺事件の第二幕は行員逮捕と暴力団ルートの解明

三井住友銀行高円寺支店
 「山口組大物幹部とその組の若頭の名前を出して、『お世話になっています』というんです。変わった奴だと思いました」
 三井住友銀行から1億円をだまし取った疑いで逮捕されたコシ・トラスト社長中林明久容疑者(40)とつきあいがあった不動産会社の代表は、暴力団との交際をひけらかす中林容疑者に、不審の念を抱いたという。
 都内の私大を卒業後、野村證券に3年勤めて不動産業界に移り、2000年7月にコシ・トラストを設立した中林容疑者は、最初からヤクザに食い込まれていた。
 警視庁捜査関係者が言う。
「設立時に組んだのが住吉会系の企業舎弟。資本金を出してもらったので、随分、儲けさせた。だが、その人間は自殺。次に入り込んだのは、神奈川県に拠点を置く山口組系暴力団で、元組員が05年7月から1年半、役員に就任していた。そのほか複数の暴力団関係者とつきあっており、相当、食われた」
 暴力団は中林容疑者を食ったが、中林容疑者は三井住友銀行を食った。なにしろ612億円の融資を引き出し、164億円を焦げ付かせている。常人にできる“技”ではない。売上高などの財務データも法人税確定申告書も土地鑑定書もすべて偽造。審査をすり抜けることができたのは、歴代担当行員を取り込んでいたからである。行員らは女や酒食の接待を受け、ホテルやゴルフの請求書をつけ回ししていた。
「本人は風俗が大好き。中国人のホテトル嬢を囲っていたが、ソープランドも好きで、3行員のうち、大学が中林と同じで、もっとも仲が良かった初代担当のHは、ソープ接待を受けていた。他の2人も『毒食らわば皿まで』といったタイプ。接待につけ回し、リベートまで受けとっていた」(コシ社元幹部)
 三井住友銀が、コシ・トラストの紹介案件に、湯水のようにカネを注ぎ込んでいた02年から07年は、不動産がミニバブルの状態となっていた時期である。
 タガの外れた行員が、業者に取り込まれて過剰融資、そこに暴力団が絡むという構図は、イトマン事件、富士・東海銀事件、尾上縫事件、東京佐川急便事件といったバブル犯罪と変わるところがない。焦げ付き164億円は凄いが、バブル期に比べるとひと桁少なく、それがミニバブルの所以だろう。
 行員は事件への関与を否定、銀行は組織ぐるみという報道を恐れ、暴力団へ流れたカネの行方は曖昧模糊としている。
 このあたりもバブル犯罪と同じだが、警視庁捜査二課組織犯罪対策四課は徹底解明の方針を固めており、逮捕した中林容疑者らを徹底的に締め上げ、第二幕で行員と暴力団関係者らに捜査を延ばし、612億円を食った連中を逃さない方針だ。【伯】

“政争の具”と化した小沢氏秘書の政治資金規正法違反事件

 小沢一郎民主党前代表秘書の政治資金規正法違反事件は、小沢氏の辞任を受けた民主党の支持率アップで落ち着いたかのように見えるが、解散総選挙を前に“政争の具”と化してしまったようだ。
 小沢氏の公設第一秘書で資金管理団体「陸山会」の会計責任者、大久保隆規被告は21日に初めて保釈を請求、近く釈放される見通し。ここで注目されるのが初公判の日程だ。選挙直前に期日が入れば、国民はあらためて事件を思い起こすことになり、選挙に影響を与えるのは必至だからだ。
 「弁護側はもちろん、検察当局も公判への影響を避けたいのは同じ。できれば選挙後に期日を入れたいのは間違いない」(法曹関係者)。ただ、これだけは裁判所の判断だけに、いまだ不透明な状況だ。
 大久保被告の起訴後、永田町では「初公判は6月中旬に決まった」などとする「情報」がまことしやかにささやかれ、最近に至っては「検察側の冒頭陳述で驚くべき事実が明らかになる」などとの話も漏れ聞こえてくる。意図的に流された情報とみるのは勘繰りすぎだろうか。
 むしろ、東京地検特捜部は小沢氏側の「悪質性」を立証するのに必死なのが現状だ。西松建設がつくったダミーの政治団体は、小沢氏以外にも森喜朗元首相や尾身幸次元財務相の資金管理団体などにも献金していた。「大久保被告の起訴後にも、たびたび大手ゼネコンの元幹部らから事情聴取し、大型公共工事での談合の存在や小沢氏側の関与について追及しています。ほかの政治家との違いを浮き立たせるためと思われます」(ゼネコン関係者)
 だが、相手は談合を仕切っていた海千山千の「業務屋」たち。思うような供述が取れていないようだ。冒頭陳述で「驚くべき事実」が明かされる可能性は低いと言える。
 一方、西松側から二階俊博経産相側への献金について、大阪の市民団体は政治資金規正法違反容疑で会計責任者らを東京地検に告発。この団体は「共産党系」とされ、森元首相や尾身元財務相側の追加告発も検討しているという。
 まさに「パンドラの箱」が開いた様相だが、特捜部にとってはこちらの処分も悩ましい課題になるだろう。【鯛】

オリックス、JAL、パイオニア……総選挙後に先送りされた「倒産予備軍」の命運

 日本は、自由主義経済体制であることを棚上げ、政府管理の資本主義に緊急避難している。オリックス、JAL、パイオニア、エルピーダメモリ、日産、マツダなど政府支援で生かされている企業は少なくない。
 恐慌に国家が立ち上がるのは自明だが、民間企業が政府に救いを求めるのは屈辱以外のなにものでもない。オリックスがそうである。日本政策投資銀行(政投銀)の危機対応融資を、既に数百億円規模で受け、銀行保有のCP(コマーシャルペーパー)は、日本銀行が買い取りを始め、さらに5月6日には「1000億円規模で危機対応融資を申請」と、日本経済新聞が報じた。
 オリックスはこの報道を否定、さらにもっと踏み込んで「5月8日に宮内義彦CEOが、政投銀の藤井秀人副社長(元財務事務次官)のもとを訪れ、2000億円の投融資を求めた」と報じた経済月刊誌の『FACTA』(09年5月20日発売号)を、民事提訴した。
 オリックスが神経質になるのもわかる。宮内CEOは、規制改革・民間開放推進会議議長として、小さな政府を主導、民間の立場から「規制緩和」「構造改革」の旗を振った人である。農業、医療、タクシー、理容など規制緩和された事業をすぐにビジネス化したことから「政商」とヤユされたこともある。
 宮内氏はそれが不満だった。政治の関与をできるだけ少なくして、民間活力で日本を再生することが自分の使命と考えていたからである。だが、その「規制緩和の人」が、なりふり構っていられない。有利子負債は5兆3000億円近く、しかもその過半は不動産融資で、国の支援を受けなければたちまち資金繰りに窮する。
 オリックスだけではない。JALは形だけのリストラに応じて2000億円の政投銀と民間銀の協調融資を受けようとしているし、パイオニアは再生資金として300億円を受けながら、それは退職金に消えてしまう。
 独立独歩の気概を忘れた企業が、政投銀の20兆円投融資枠、保証協会やセーフィティネットの30兆円融資枠に群がり、「盛者必衰」「優勝劣敗」の法則を免れ、その結果、国家財政はますます窮地に陥っている。
 「100年に一度の恐慌」が、政府出動の“言い訳”だが、実は総選挙までの暫定措置。そこから先、生命維持装置をつけられた企業を「生かすか殺すか」の決断に迫られる。
 潰せば規律は保たれるが、連鎖倒産の恐怖に怯えなければならず、生かせば国債の大量発行、将来の円の大暴落という形で国民は資産を失う。
 進むも地獄、引くも地獄――。そこに日本を引きずりこみながら、涼しい顔でトップに居座り、国から恥ずかしげもなく投融資を受ける経営者たち・・・。彼らへの批判が燃え上がるのは時間の問題である。【駿】

特捜部が迫る史上最大383億円「M&A脱税」の衝撃度

 売値が500億円の会社を883億円で購入、一瞬にして仲介したファンドが、383億円を抜き、一部を申告していなかったという「M&A脱税」の国税調査が大詰めを迎え、これを受けた東京地検特捜部が、近く捜査着手する見通しになった。
 案件は、旧グッドウィル・グループ(現ラディアホールディングス)折口雅博元会長が、「介護と人材派遣の雄」としてピークを迎えていた頃に行った人材派遣最大手・クリスタルグループの買収である。
 383億円の“あぶく銭”を手にしたのは、買収ファンド運営会社・コリンシアンパートナーズ元代表で公認会計士の中澤秀夫氏、空手の極真会館で代表を務める松井章圭氏、企業集団・UA(ユナイテッドエイジア)グループを率いる緋田将士氏である。
 2006年10月にM&Aが行われ、巨額資金を握った3氏の使いっぷりは、呆れるほど豪快だった。
「銀座や六本木で豪遊、タニマチとして芸能人に札ビラを切ったし、国内外の不動産に投資、有望な実業家には出資、群がる女たちを拒まなかった」(中澤氏の知人)
 カネの流れはシンプルである。
「日本一の人材派遣業」を目指していた折口氏は、売上高5000億円のクリスタルグループが、林純一オーナーの体調不良で売りに出されていることを、松井、緋田の両氏から聞くと、すぐにみずほ銀行と交渉して資金を用意、883億円を投じて67%の株式を取得した。折口氏の高値購入の背景は不明。金銭的なバックを含む“約束事”があれば、それは脱税とは別の事件になる。
 383億円の内訳は、経費を主張した中澤氏が183億円を取り、松井、緋田の両氏が各100億円。東京国税局はこのうち、ファンドを主宰する中澤氏の経費処理や資金使途に問題があるとして、昨年10月、強制調査に踏み切っている。
 383億円という金額もさることながら、資金使途のなかには投資案件が多く、それが政界や暴力団に流れた可能性があり、特捜部の捜査によっては、大きく展開しそうだ。
「中澤は、千年の杜(東邦グローバルアソシエイツ)、トランスデジタル、ビービーネットといった上場企業に出資、一時的に傘下に収めた。例えば、千年の杜のロシア事業で宣伝役を務めた久間章生元防衛相、同じく千年の杜の上場廃止をめぐって金融庁幹部を紹介した中川秀直元幹事長の元秘書に、金銭的な問題はないのか。あるいは、相場を通じて暴力団の資金源となっている企業もあり、そういったルートについても厳しく調べることになる」(検察関係者)
 前代未聞の巨額脱税事件となるのは必至。政治家や暴力団周辺者に加えて芸能人など思わぬ著名人も登場、賑やかな報道合戦が展開されそうだ。【伯】

倒産寸前のJALで西松社長を盾に使う岸田副社長一派の深慮遠謀

 日本航空(JAL)が、相変わらず、倒産寸前の綱渡りのような経営を続けている。
 昨年3月、金融機関など15社に優先株を発行して1350億円を調達、「年間60億円を配当します!」と、西松遥社長は見えを切ったが、09年3月期は下方修正を続けて630億円もの赤字に転落、初年度から約束を果たせず、これで金融機関からの資金調達の道は閉ざされた。
 結局、頼るところは国で、西松社長は国交省に泣きついて財務省への橋渡しを頼み、勝栄二郎官房長が事実上の「社長」といわれる日本政策投資銀行から約2000億円の融資の約束を取り付けるのに成功、民事再生法申請という最悪の事態は免れた。
 西松氏は徳な人である。再生への期待を裏切り続け、増資や調達の際の約束は何ひとつ果たさないのに、責任論が出てこない。財務畑出身でしがらみがなくJAL利権に無縁。昨年には「年収960万円でバス通勤する」という清貧ぶりが米CNNに流され、高い評価を得たこともあって、「政官」も金融機関も責任を問いにくい。
 この据わりの良さを利用、西松氏を盾に自分たちの権益を確保、待遇を守ろうとしているのが岸田清副社長をはじめとするJAL最大派閥である。パイロット出身の岸田氏は、機長組合、乗員組合などに顔が利き、経営企画、運行、経理、調達、客室など枢要部分は岸田派の役員で占めている。
 3年前の内紛で、「4人組」といわれた岸田派は当時の新町敏行社長に反旗を翻し、一時、冷や飯を食ったものの、完全に復活、役員会を牛耳る。一匹狼の西松社長のクビをすげ替えることは可能だが、国の監視が強まり、一層のリストラ要求が予想されるため、彼らの頭のなかには、国やマスコミの批判をかわしつつ、現在の高給与、高待遇、高保障をいかに維持するかしかない。
 それには受けのいい西松社長体制を継続、イザという時の詰め腹を西松氏に切らせ、その後継を岸田氏でワンポイントつないで、T、O、Kといった守旧派の“仲間”で回したいというのが彼らの本音である。
 岸田氏がワンポイントなのは、会社謄本上の住所は静岡県伊東市ながら、そこには帰宅せず、会社にも居場所を隠して都内高級マンションを転々、「火宅の人」を続けているからだという。そんな人が最大派閥を率いるJALに、自主再生など望むべくもあるまい。【伯】

SFCGにローン債権を二重売買された日本振興銀行の経営危機

 保証人を取ったうえでの強気の貸し付けと情け容赦のないシビアな回収で、「ザ・カネ貸し」の代表として君臨した大島健伸前SFCG社長は、昨年秋以降の金融断末魔に、完全に常軌を逸していた。
 「恥知らず」はカネ貸しにとっての褒め言葉だが、ここまで徹底すると怖いし、なによりSFCGの関係者が、「どんなに厳しいことを言っても筋が通っていたのに、今回は錯乱状態だった」とまでいう。
 それはそうだろう。2670億円相当の債権や株などの資産が、破綻直前の4ヶ月間に大島氏の親族会社などに無償や格安で譲渡、特別背任、民事再生詐欺など数々の罪に問われるのは確実で、「すべて立件されれば、無期懲役(15年)並の実刑判決になるのではないか」(司法関係者)と、言われている。
 最大の被害者は日本振興銀行だ。新銀行として新銀行東京とともにビジネスモデルを探しあぐねていたが、商工ローンと消費者金融への「卸し金融」の道を見つけたことで、飛躍的発展を遂げる。09年3月期見通しは、預金残高が4024億円、貸出残高3134億円で、経常収支は29億円の黒字だった。
 メガバンクが軒並み大赤字を記録するなかこの業績見通しは凄いが、SFCGからのローン債権買取残が930億円あり、そのうち同行のサンプリング調査の結果で2割、経済誌の報道では700億円近くが二重譲渡されているというのに、引当金をまったく積まずに業績予想を発表しているのが不可解だ。
 実際、二重譲渡の際の優先権は、日興シティ信託、新生信託など証券化した信託銀行にあるという。しかも、過払い利息返還請求が発生する可能性もあれば、SFCGの厳しさとしつこさ抜きには回収できないリスクも存在、「十分に担保は取っている」という銀行サイドの発表は甘いというしかない。
 既に金融庁は、庁内に「振興銀行対策班」を設置、もしもの場合に備えている。というのも、日本振興銀行の正味の自己資本は200億円しかなく、SFCG分の引当次第では、債務超過に陥る可能性がある。そうなると、「ペイオフ第一号」が現実味を帯びる。
 日本振興銀行といえば、竹中平蔵元金融相の右腕だった木村剛氏がオーナーを務める。「かんぽの宿」のオリックス問題ではないが、竹中氏の新自由主義路線への反発が強まるなか、財務省・金融庁に敵の多い木村氏の銀行が、金融庁の「指導」で危機を迎える可能性は十分にある。【駿】


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