オリックス、JAL、パイオニア……総選挙後に先送りされた「倒産予備軍」の命運

 日本は、自由主義経済体制であることを棚上げ、政府管理の資本主義に緊急避難している。オリックス、JAL、パイオニア、エルピーダメモリ、日産、マツダなど政府支援で生かされている企業は少なくない。
 恐慌に国家が立ち上がるのは自明だが、民間企業が政府に救いを求めるのは屈辱以外のなにものでもない。オリックスがそうである。日本政策投資銀行(政投銀)の危機対応融資を、既に数百億円規模で受け、銀行保有のCP(コマーシャルペーパー)は、日本銀行が買い取りを始め、さらに5月6日には「1000億円規模で危機対応融資を申請」と、日本経済新聞が報じた。
 オリックスはこの報道を否定、さらにもっと踏み込んで「5月8日に宮内義彦CEOが、政投銀の藤井秀人副社長(元財務事務次官)のもとを訪れ、2000億円の投融資を求めた」と報じた経済月刊誌の『FACTA』(09年5月20日発売号)を、民事提訴した。
 オリックスが神経質になるのもわかる。宮内CEOは、規制改革・民間開放推進会議議長として、小さな政府を主導、民間の立場から「規制緩和」「構造改革」の旗を振った人である。農業、医療、タクシー、理容など規制緩和された事業をすぐにビジネス化したことから「政商」とヤユされたこともある。
 宮内氏はそれが不満だった。政治の関与をできるだけ少なくして、民間活力で日本を再生することが自分の使命と考えていたからである。だが、その「規制緩和の人」が、なりふり構っていられない。有利子負債は5兆3000億円近く、しかもその過半は不動産融資で、国の支援を受けなければたちまち資金繰りに窮する。
 オリックスだけではない。JALは形だけのリストラに応じて2000億円の政投銀と民間銀の協調融資を受けようとしているし、パイオニアは再生資金として300億円を受けながら、それは退職金に消えてしまう。
 独立独歩の気概を忘れた企業が、政投銀の20兆円投融資枠、保証協会やセーフィティネットの30兆円融資枠に群がり、「盛者必衰」「優勝劣敗」の法則を免れ、その結果、国家財政はますます窮地に陥っている。
 「100年に一度の恐慌」が、政府出動の“言い訳”だが、実は総選挙までの暫定措置。そこから先、生命維持装置をつけられた企業を「生かすか殺すか」の決断に迫られる。
 潰せば規律は保たれるが、連鎖倒産の恐怖に怯えなければならず、生かせば国債の大量発行、将来の円の大暴落という形で国民は資産を失う。
 進むも地獄、引くも地獄――。そこに日本を引きずりこみながら、涼しい顔でトップに居座り、国から恥ずかしげもなく投融資を受ける経営者たち・・・。彼らへの批判が燃え上がるのは時間の問題である。【駿】

特捜部が迫る史上最大383億円「M&A脱税」の衝撃度

 売値が500億円の会社を883億円で購入、一瞬にして仲介したファンドが、383億円を抜き、一部を申告していなかったという「M&A脱税」の国税調査が大詰めを迎え、これを受けた東京地検特捜部が、近く捜査着手する見通しになった。
 案件は、旧グッドウィル・グループ(現ラディアホールディングス)折口雅博元会長が、「介護と人材派遣の雄」としてピークを迎えていた頃に行った人材派遣最大手・クリスタルグループの買収である。
 383億円の“あぶく銭”を手にしたのは、買収ファンド運営会社・コリンシアンパートナーズ元代表で公認会計士の中澤秀夫氏、空手の極真会館で代表を務める松井章圭氏、企業集団・UA(ユナイテッドエイジア)グループを率いる緋田将士氏である。
 2006年10月にM&Aが行われ、巨額資金を握った3氏の使いっぷりは、呆れるほど豪快だった。
「銀座や六本木で豪遊、タニマチとして芸能人に札ビラを切ったし、国内外の不動産に投資、有望な実業家には出資、群がる女たちを拒まなかった」(中澤氏の知人)
 カネの流れはシンプルである。
「日本一の人材派遣業」を目指していた折口氏は、売上高5000億円のクリスタルグループが、林純一オーナーの体調不良で売りに出されていることを、松井、緋田の両氏から聞くと、すぐにみずほ銀行と交渉して資金を用意、883億円を投じて67%の株式を取得した。折口氏の高値購入の背景は不明。金銭的なバックを含む“約束事”があれば、それは脱税とは別の事件になる。
 383億円の内訳は、経費を主張した中澤氏が183億円を取り、松井、緋田の両氏が各100億円。東京国税局はこのうち、ファンドを主宰する中澤氏の経費処理や資金使途に問題があるとして、昨年10月、強制調査に踏み切っている。
 383億円という金額もさることながら、資金使途のなかには投資案件が多く、それが政界や暴力団に流れた可能性があり、特捜部の捜査によっては、大きく展開しそうだ。
「中澤は、千年の杜(東邦グローバルアソシエイツ)、トランスデジタル、ビービーネットといった上場企業に出資、一時的に傘下に収めた。例えば、千年の杜のロシア事業で宣伝役を務めた久間章生元防衛相、同じく千年の杜の上場廃止をめぐって金融庁幹部を紹介した中川秀直元幹事長の元秘書に、金銭的な問題はないのか。あるいは、相場を通じて暴力団の資金源となっている企業もあり、そういったルートについても厳しく調べることになる」(検察関係者)
 前代未聞の巨額脱税事件となるのは必至。政治家や暴力団周辺者に加えて芸能人など思わぬ著名人も登場、賑やかな報道合戦が展開されそうだ。【伯】

愛知県蟹江町母子殺傷事件―初動捜査ミスで事態は混沌

 愛知県蟹江町で起きた母子殺傷事件で、県警が捜査能力の低さを露呈している。犯人と思われる重要人物の情報を出し惜しみ。逮捕後ならともかく、捜査が暗礁に乗り上げた時点での公表に、担当記者もあきれるばかりだ。
 名古屋市の西方、伊勢湾台風で大きな被害をこうむった「海抜ゼロメートル」地帯の蟹江町。静かな住宅街で1日、凄惨な事件が起きた。
 会社員山田喜保子さん(57)方で、喜保子さんと次男の雅樹さん(26)さんの遺体が見つかり、三男の勲さん(25) さんは玄関入り口付近で手を縛られ、首などを刺されていた。命に別条はなく、2日午後訪ねてきた雅樹さんが勤める洋菓子店店長が発見、事件が明るみに出た。
 この時点で、だれもが三男が犯人だと認識したはずだ。県警詰め記者は「堅実に働く雅樹さんに比べ、勲は近所での評判がすこぶる悪い。2人を殺した後、自分で傷つけて、発覚を待ったとみんな思っていました。県警の発表も、モゴモゴしていたため、逮捕は近いと確信していた」と話す。
 様相が一転したのは6日経った8日だ。県警は突如、三男が倒れていたすぐそばに別の男がうずくまっていたことを発表。駆け付けた警察官が三男を救出した後、無線連絡している間に逃走したというのだ。
 犯人を取り逃がした大失態に、県警は「初動捜査にミスはなかった」と強弁。「捜査上の秘密なので公表しなかった」と言い訳するのがやっとだ。
 その後、新たな事実が次々と判明。何者かが喜保子さんがつくった料理を食べ、犯人は三男のスニーカーをはいて逃走した。殺傷する前に食事を出していたことになり、犯人は山田さん一家ときわめて近い関係にある人物だということが分かる。
 喜保子さんの夫はいわゆるテキ屋で10年以上前に死亡。ほかに、既に結婚して家を出た長男と、三男と双子の四男がいるが、いずれも明確なアリバイがあり、捜査線上にはいないという。
 「実は県警は、三男が犯行に関わったという線を捨てていない」と県警詰め記者は言う。三男は、逃げた男は知らない男で外国人風だと話しているそうだが、家で食事をし、発覚まで10時間も滞在していた男を知らないというのはどうみても不自然。三男が捜査のカギを握っているのは変わらない状態だという。【康】

警視庁組対3課の「反社狩り」にビビる暴力団周辺者

「反社狩り」が、全国レベルで行われている。
「反社」とは「反社会的勢力」のこと。具体的には暴力団構成員とその周辺にいる企業舎弟に加え、そうした勢力と親交を持って、ビジネスを手がける「共生者」と呼ばれる周辺者も含む。
 一歩リードしている大阪では、「反社」という認定だけで企業名と、暴力団との交際を公表、企業活動を封じる。
 昨年7月28日、堺市の建設会社「阪本工営」の阪本社長は、山口組系玉池組若頭の山本義一組長と、ゴルフや盆暮れの挨拶、新築祝いとその内祝いといった親密な関係があるとして、「大阪府暴力団等排除措置要綱」に基づいて、大阪府などに通報された。
 この通報によって、公共工事の入札から締め出されるのはもちろん、民間工事でも受発注に支障をきたすし、政治献金していれば政治家は返還、つきあいに距離を置くなど、社会性を否定される。
 それだけに難しいのは認定作業である。役所や個別企業が「反社」と認定して拒絶すれば、認定された方は反発、報復することもあろう。そこで、大阪では府警捜査4課が「盾」の役割を担い、「貴社は反社。文句はウチへ」と、体を張る。そこで警視庁でも組織犯罪対策第3課が担当、認定作業に入った。
「組対3課の50名近くの捜査員が、暴力団事務所を徹底的にマーク、出入りを写真で確認、日常の交遊もチェック、周辺情報を集めるなどして、反社の特定を急いでいます」(警視庁捜査関係者)
 そうした認定作業が進めば、大阪のように公共工事からの締め出しが可能となり、企業活動が制約を受ける。重要なのは、警視庁管内に大半の上場企業が集中していること。上場企業を“侵食”している「企業舎弟」や「共生者」を排除する効果は大きい。
 東証幹部がこう期待を寄せる。
「上場審査で一番やっかいなのは、経営者や株主に暴力団周辺者がいないかどうかのチェックです。また、増資などの際、怪しい勢力が紛れ込んでくることもある。『認定』を警視庁がやってくれると、ずいぶん助かります」
 上場企業に周辺者が入り込むと、背任横領だけでなく、株価操縦、インサイダー取引、粉飾決算などを、彼らが「確信犯」として手がける例が少なくない。ここは思い切った「排除の論理」で立ち向かうしかあるまい。【彬】

倒産寸前のJALで西松社長を盾に使う岸田副社長一派の深慮遠謀

 日本航空(JAL)が、相変わらず、倒産寸前の綱渡りのような経営を続けている。
 昨年3月、金融機関など15社に優先株を発行して1350億円を調達、「年間60億円を配当します!」と、西松遥社長は見えを切ったが、09年3月期は下方修正を続けて630億円もの赤字に転落、初年度から約束を果たせず、これで金融機関からの資金調達の道は閉ざされた。
 結局、頼るところは国で、西松社長は国交省に泣きついて財務省への橋渡しを頼み、勝栄二郎官房長が事実上の「社長」といわれる日本政策投資銀行から約2000億円の融資の約束を取り付けるのに成功、民事再生法申請という最悪の事態は免れた。
 西松氏は徳な人である。再生への期待を裏切り続け、増資や調達の際の約束は何ひとつ果たさないのに、責任論が出てこない。財務畑出身でしがらみがなくJAL利権に無縁。昨年には「年収960万円でバス通勤する」という清貧ぶりが米CNNに流され、高い評価を得たこともあって、「政官」も金融機関も責任を問いにくい。
 この据わりの良さを利用、西松氏を盾に自分たちの権益を確保、待遇を守ろうとしているのが岸田清副社長をはじめとするJAL最大派閥である。パイロット出身の岸田氏は、機長組合、乗員組合などに顔が利き、経営企画、運行、経理、調達、客室など枢要部分は岸田派の役員で占めている。
 3年前の内紛で、「4人組」といわれた岸田派は当時の新町敏行社長に反旗を翻し、一時、冷や飯を食ったものの、完全に復活、役員会を牛耳る。一匹狼の西松社長のクビをすげ替えることは可能だが、国の監視が強まり、一層のリストラ要求が予想されるため、彼らの頭のなかには、国やマスコミの批判をかわしつつ、現在の高給与、高待遇、高保障をいかに維持するかしかない。
 それには受けのいい西松社長体制を継続、イザという時の詰め腹を西松氏に切らせ、その後継を岸田氏でワンポイントつないで、T、O、Kといった守旧派の“仲間”で回したいというのが彼らの本音である。
 岸田氏がワンポイントなのは、会社謄本上の住所は静岡県伊東市ながら、そこには帰宅せず、会社にも居場所を隠して都内高級マンションを転々、「火宅の人」を続けているからだという。そんな人が最大派閥を率いるJALに、自主再生など望むべくもあるまい。【伯】

SFCGにローン債権を二重売買された日本振興銀行の経営危機

 保証人を取ったうえでの強気の貸し付けと情け容赦のないシビアな回収で、「ザ・カネ貸し」の代表として君臨した大島健伸前SFCG社長は、昨年秋以降の金融断末魔に、完全に常軌を逸していた。
 「恥知らず」はカネ貸しにとっての褒め言葉だが、ここまで徹底すると怖いし、なによりSFCGの関係者が、「どんなに厳しいことを言っても筋が通っていたのに、今回は錯乱状態だった」とまでいう。
 それはそうだろう。2670億円相当の債権や株などの資産が、破綻直前の4ヶ月間に大島氏の親族会社などに無償や格安で譲渡、特別背任、民事再生詐欺など数々の罪に問われるのは確実で、「すべて立件されれば、無期懲役(15年)並の実刑判決になるのではないか」(司法関係者)と、言われている。
 最大の被害者は日本振興銀行だ。新銀行として新銀行東京とともにビジネスモデルを探しあぐねていたが、商工ローンと消費者金融への「卸し金融」の道を見つけたことで、飛躍的発展を遂げる。09年3月期見通しは、預金残高が4024億円、貸出残高3134億円で、経常収支は29億円の黒字だった。
 メガバンクが軒並み大赤字を記録するなかこの業績見通しは凄いが、SFCGからのローン債権買取残が930億円あり、そのうち同行のサンプリング調査の結果で2割、経済誌の報道では700億円近くが二重譲渡されているというのに、引当金をまったく積まずに業績予想を発表しているのが不可解だ。
 実際、二重譲渡の際の優先権は、日興シティ信託、新生信託など証券化した信託銀行にあるという。しかも、過払い利息返還請求が発生する可能性もあれば、SFCGの厳しさとしつこさ抜きには回収できないリスクも存在、「十分に担保は取っている」という銀行サイドの発表は甘いというしかない。
 既に金融庁は、庁内に「振興銀行対策班」を設置、もしもの場合に備えている。というのも、日本振興銀行の正味の自己資本は200億円しかなく、SFCG分の引当次第では、債務超過に陥る可能性がある。そうなると、「ペイオフ第一号」が現実味を帯びる。
 日本振興銀行といえば、竹中平蔵元金融相の右腕だった木村剛氏がオーナーを務める。「かんぽの宿」のオリックス問題ではないが、竹中氏の新自由主義路線への反発が強まるなか、財務省・金融庁に敵の多い木村氏の銀行が、金融庁の「指導」で危機を迎える可能性は十分にある。【駿】


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