2018年1月27日「『ヤフー』への検索結果削除命令で危惧すべきは確信犯たちの過去からの“逃避”!」<事件>

 
ヤフー本社(☚wikipedia)


インターネット検索エンジンの「ヤフー」に対し、「虚偽の情報が掲載されており、名誉毀損に当たるので削除して欲しい」と、東京都内の男性が求めた仮処分申請で、東京高裁は「ヤフー」による名誉毀損の成立を認め、削除を命じていた(2017年10月30日)ことが判明した。

ネット検索を巡る訴訟は数多いが、昨年1月、逮捕歴のある男性が検索エンジン最大手の「グーグル」に対し、削除を求めた仮処分申し立て事件において、最高裁は検索結果の削除を認めない決定を下した。

だが、裁判所の判断が二つに分かれているというわけではない。

最高裁の判断は、「忘れられる権利」を認めなかったのではなく、いろいろな要素を勘案の上、「公表されない法的利益が優越されることに限って削除を認められるものであり、犯歴記載には相当性がある」と判断し、今回の高裁判断は、「掲載内容が明らかに真実ではない」と指摘した。

つまり、名誉毀損のハードルが一挙に下がったのではない。

それでも高裁判断を機に、今後、多くなると予想されるのは、検索エンジンからの「消したい過去」「不利な情報」の削除要請だろう。

今回の男性側代理人の弁護士は、「検索結果に対する削除請求が広く認められるようになる可能性がある」と、コメントしている。

が、危惧すべきは、「誹謗中傷を目的とするネットの書き込み」と、それなりの「裏取りをしたうえで問題提起するネットメディア」が、「検索エンジンへの引っ掛かり」という一点のみで同一視され、削除要請されかねないことだ。

しかも要請者は、確信犯として危ういビジネスに関わっている業者や人物であることが多い。

要するに、痛いところを突かれ、ビジネスに支障をきたすことから強く申し入れてくるわけで、彼らの生態は、弱小とはいえ、10年近くネットメディアを運営している不肖『週刊0510』にはよく分かる。

例えば、金融絡みの犯罪者たちは、その時々の時流に沿った「商品」を編み出してくる。

少し前には上場企業の増資やM&Aに絡めて詐欺的乗っ取りを行い、株価操縦やインサイダー取引で荒稼ぎする連中が多かったが、現在は怪しげな連中が大挙して進出しているのが仮想通貨の世界である。

特に、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれる仮想通貨を新規発行することによる資金調達は、今や詐欺師の巣窟状態といっていい。

詐欺師だから情報には神経質となり、ブームの先駆け時に儲けなければならず、悪い情報に対しては、早い段階で法的手段をチラつかせ、弁護士がすぐに内容証明を送ってくるし、カネのある連中なら巨額訴訟を起こす。

スラップといわれる「恫喝訴訟」であるのは明らかだが、訴訟を恐れるマスコミは、その危険性を察知して報道を手控えるし、逆に、戦う意思があったとしても、訴訟費用と後ろ向きの訴訟対応を秤にかければ、“戦いの旗”を掲げ続けるのは難しい。

これが昨今の名誉毀損訴訟の現場であり、「カネのあるワル」ほど、弁護士の力で報道を押さえ込もうとする。

しかも、この種の企業や人物には、贈収賄・談合・粉飾決算・背任&横領・詐欺・マネーロンダリング・マルチ・偽計・株価操縦・インサイダー取引などの「過去」があることが少なくない。

まさに「三つ子の魂百まで」――この種の経済犯罪は、「性」としかいいようがないほど何度も繰り返される。

現在、東京地検特捜部が手がけるリニア中央新幹線建設に関する談合など、過去に何度も摘発され、ゼネコン幹部も首長も政治家も、限りなく逮捕されたが、飽きることなく今も続けていることが判明したが、同様に詐欺師は詐欺をやめられないし、「ジャパンライフ」のようにマルチ業者は、それを繰り返す。

高裁は、「明らかに虚偽」の記載に対して削除を命じたのであり、最高裁判断がそうであったように、「過去を公開することによる公益性」もある。

しかし、こうした訴訟に訴えるのは、弱者ではなく、時間もカネも、さらには訴えることで益の多い「過去ある者たち」が大半である。

ミソとクソは別物である!――「ワルが大手を振って歩くネット環境」の到来はあってはなるまい。【辰】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月26日配信「週刊0510のおススメ展覧会」

 


2018年1月25日配信「人生本因坊の甘辛時事問答」<連載>

 
(☚ニューヨークタイムズ)

 

――新年明けましておめでとうございます。どうか今年もご指導の程よろしくお願い申し上げます。

本因坊師「ケッ、1月もほとんど終わろうとしているのに、いつまで『めでたい、めでたい』言うとるんや、バ〜タレが!」

――(クソ〜ッ!マジで頭にくる爺さんだな!)老いては子に従え。いつまでも若くないんですから、憎まれ口も程々にしてくださいよ。

本因坊師「何を小癪な!――年寄りに憎まれ口を叩かせないようにするのが若いモンの務めやないか!」

――(煩いなあ)御意、御意!

本因坊師「さてと、昨年末以来じゃから話題も山積。余計なことを言わずにテキパキと片付けようぜ!」

――まずは、日馬富士暴行事件に端を発した「相撲協会vs貴乃花親方」のバトルも、ようやく下火になりつつあったところに、今度は“酒乱行司”男色騒動無免許運転暴行事件の隠蔽が発覚。――国技とか神事の看板を外すべきだと思いますが…。


本因坊師「今の時代、男色癖も立派な文化。ドンマイ、ドンマイ!と言いたいところだが…」

――老師はその手の趣味の持主に寛大ですが、ひょっとして…?

本因坊師「(モジモジ)…」

本因坊師「卑しくも行司の最高位にある御仁が、権力を笠に着て、ノンケに言い寄ったんだから、辞職も已む無しだな」

――ノンケ?

本因坊師「(しまった。つい専門用語を使うてしもうたわい)話題を変えようぜ」

――そういえば、小関ナントカいう水泳選手が、後輩にパンチとキックを食らわしたことで、ちょっとした騒ぎになっています。

本因坊師「小関?――知らんなあ。山中毅クラスならともかく、そんなB級選手の事件なんか。どうでもエエがな」

――山中毅って誰ですか?

本因坊師「山中選手を知らんようでは非国民だな!」

――(気分を変えて)少し真面目な話題に移ります。――東京地検特捜部が、久しぶりに手を付けたリニア建設工事談合疑惑ペジー社100億円詐欺事件は永田町まで延びるんでしょうか?

本因坊師「前者は総理大臣、後者は財務大臣の人脈につながる事件と指摘するムキもあるようだが、忖度の時代やもん、森友事件と加計学園疑惑の扱いを見たら分かるように、そんな期待は『ないものねだりの子守唄』。両方とも奥の院までは届かんわなwww」

――リニア建設疑惑では「JR東海建設」がキー・カンパニーと言われていますが…。

本因坊師「業界では『JR東海建設』みたいな存在を“お子さま連れ”と呼ぶらしいが、『大林組』がそのお子さまを無理にジョイントに入れようとしたことで、技術的な問題について何年も前から打ち合わせしていたことを特捜部は『談合』と見たんだろう」

――当初は「JR東海」が自力で建設すると言っていたのが、ある日突然、国からの財政投融資3兆円が注ぎ込まれることになったことで永田町の関与を指摘する関係者もいますが…。

本因坊師「無理、無理。特捜にそんな気概があるかい。――3兆円だって、それで済めばエエけど、この手の工事費用は途中で段々と増えるのが常識。ワシが石蓋担ぐ頃には3兆が5兆に、5兆が10兆になっとるやろ!www」

――ところで、安倍総理の在任期間が通算で2200日越え。次期総裁選に勝てば、歴代最長内閣の可能性も出てきました。

本因坊師「稀代のインチキ内閣が最長とは世も末だなもしwww。――安倍首相の最も悪質なところは、臆面もなく嘘を連発するところだ。アベノミクスは完全に失敗。実体経済は低迷しているのに、たとえばGDPにしても、計算式を変えて自分に都合のいいように捏造した数字を振りかざして『好景気だ』と言い張るんだからいい気なもんだよ!(hahaha)」

――笑い事じゃないですよ(# ゚Д゚)

本因坊師「そんな総理大臣を選ぶ国会議員を当選させたのは、ドM気質の国民の1票や。自業自得、しゃあないわなwww」

――野党も腰抜けだし、一体どうすれば安倍政権に引導を渡すことができるんですか?

本因坊師「安倍内閣を倒せるのは野党じゃないぞ。――ズバリ!自民党だ。かつての田中内閣然り、佐藤内閣然り。自民党内部から『我こそは!』と名乗りを上げる勇気と志のある賢者が出て来ない限り無理だな」

――ウへ〜ッ!今の自民党には“ゴマスリ命”の愚者は山ほど居ても、信念を持った賢者なんかいるんですかねえ。

本因坊師「さあ、どうかな?www――『総理の顔は時代の顔』――国会議員のみならず、彼らを選んだ国民までもがデタラメ三昧の時代だもんねえwww」

――やれやれ、日本の未来は、真っ黒クロスケですね!

本因坊師「そうだな。どんなに贔屓眼に見ても、1億2000万人の乗客を乗せた『日本丸』の“お鈴”が鳴るのもそう遠くないと思うがなあwww。チ〜ン、チ〜ン、チ〜ン」 (了)

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月24日配信「週刊0510のおススメ舞台」


2018年1月23日配信「消費税法違反等での告発が順当な鳩山二郎代議士秘書の『国税圧力事件』の裏事情」<事件>

 
東京国税局(☚wikipedia)


 「国税に強い」ことで定評のある『読売新聞』ならではのスクープが、1月9日に1面と社会面のトップで報じられた「鳩山議員秘書、国税呼び出し」と題する圧力事件だった。

 <外国人観光客への宝石の架空販売で約2億2000万円の不正な消費税の還付申告をした疑いで東京国税局から還付を保留されていた免税店運営会社4社を巡り、鳩山二郎衆院議員(39)の小沢洋介秘書(45)が昨年4月、国税庁幹部を議員会館に呼び出し、還付保留について説明を求めていた>

 このリードに事件の概要は書き尽くされている。

 問題は政治家が、個別事案について答えることができない国税当局に対し、圧力をかけたことであり、<国税庁幹部を呼び出して説明を求めるのは極めて異例だ>と、指摘している。

 他のマスコミも追随して報じ、小沢氏は「不正な取引ではなく、圧力をかけたつもりもないが、議員や関係者に迷惑をかけた」として、10日、秘書を辞職した。

 違和感があるのは、「不正な消費税の還付請求」が、一読して悪質であり、「政治圧力」よりむしろ、そちらを追及すべきだと思うのだが、どのマスコミもそう報じていないことだ。

 理由は、国税が不正な還付申告をしたとして、昨年9月、重加算税を含め約3億円を追徴課税(更正処分)したからだ。

 つまり、追徴によって重く税金を取るという行政処分をしたため、刑事罰までは問わなかった。

 国税がそう判断して決定した以上、不正部分の追及はしにくい、ということらしい。

 確かに、国税は税金を徴収する役所であり、そちらを優先するのも無理はないが、横行する消費税の還付金詐欺に対する態度があいまいで、それが、不正が絶えない原因でもある。

 「不正な還付が発覚した場合、国税通則法の規定で重加算税等の行政罰が課せられます。また、刑事罰による制裁規定もあり、消費税法違反の消費税受還付罪に問えるし、刑法違反の詐欺税で告発、立件されることもあります」(国税OB税理士)

 一般国民の感覚では、上述のコメント通り、今回の事件についても詐欺罪をはじめ、消費税受還付罪、重加算税などで罰せられるべきではないか、と思うのだが、国税当局は、要件がどれだけ揃っているかで判断。調査内容を公表するわけではないので、外部から悪質さを知るのは難しい。

 今回、宝石の架空販売の流れは、札幌の建設会社から都内の宝石販売会社が仕入れ、それを小沢氏が顧問を務める「国際東日ジュエリー」という会社が仕入れて、免税店運営会社4社に販売するというものだった。
 
 その宝石を、免税店が外国人観光客に販売したとして、免税店運営会社は外国人向けに販売した場合、消費税が無税となるので、国内で支払った消費税の還付を求めて税務署に申告した。

 ところが、国税はこの種の消費税還付に厳しい目を向けている。

 「外国人向けの販売なので、還付申告されても、その後の調査が難しい。だから、一度、還付留保して国内での調べられるだけの調査をするのです。今回、購入した外人観光客のなかに、ツアーの行程上、宝石が購入できなかった外国人がいたことが判明。しかも観光客は、『国際東日〜』の上海子会社が現地の旅行業者に手配を依頼していたのですから、『還付が仕組まれていた』と、みなすのも当然です」(前出のOB税理士)

 しかし、行政処分なので業者は国税不服審判所に審査請求することができる。

 今回、4社もそうしているのだが、こうした風潮を見逃していいのか。

 昨年8月には、秋葉原の免税店「宝田無線電機」が、約70億円の不正な還付申告を指摘され、重加算税を含めて約100億円を追徴課税されていたことが発覚した。

 同社の店舗には、外国人の集団が現れて、免税の手続きだけをして、金製品を手にすることなく退店していたという。

 にもかかわらず、同社の16年5月期の売上高は、前年比26倍の956億円だった。

 疑われて当然だが、これも行政処分で済ませており、同社は国税不服審判所に審査請求している。

 インバウンドブームを映して外国人観光客が急増中の昨今、それを利用した悪質な詐欺行為かどうかを見極め、それをオープンにして国民に知らせ、犯罪防止につなげるシステムを早急に確立すべきだろう。【戌】

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月20日配信<0510archives>「『スパコンの天才』が騙し取った100億円で見た“悪夢”⁉」<事件>


(PHP研究所刊)

 

 

 人工知能が人間を超える臨界点を「シンギュラリティ」と呼び、2045年に訪れるという。

 その事前の時代を描いた『プレ・シンギュラリティ』(PHP研究所)は、科学技術の発展に人類の夢を託した「明るい未来の本」である。

 なにしろ1兆の100万倍の「エクサ」という数値単位のスパコンの開発によって、革命的な変化が生まれ、衣食住がタダになる世界が実現、「不老」も「不労」も「不死」も人類は手に入れるのだという。

 普通に考えれば、「キワモノ本」であり、著者は「魔術師」「錬金術師」「詐話師」の類と誹られてもおかしくはない。

 そうならなかったのは、著者の斎藤元章・ペジーコンピューティング代表が、東大大学院で医療診断システムを学んだ医師で、米シリコンバレーで医療システム系の会社を起業して成功を収めた後に帰国。スパコンの開発に取り組んで、その世界で知らぬ者のない実績を上げた“天才”だからである。

 だが、今や名声は地に堕ち、「夢見る男」の発言は、国から助成金を引き出すための虚言だったとして、逮捕された。

 実際、国から引き出した助成金は莫大である。

 判明しているだけでも、経済産業省所管の「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)から約35億円、文部科学省所管の「科学技術振興機構」(JST)から約52億円。これに、今後、支給される予定の資金を合わせると、100億円に達する国の助成枠を与えられていた。

 まったくのウソではない。――”パソコンの天才”は、スパコンの絶対性能を競う「TOP500」においては何度もトップテン入りし、小型化省エネ化を競う「Green500」では世界一を達成している。

 「斎藤氏が夢想家であり、現実離れしていたことは事実です。でも彼はそう信じており、我々は彼の『夢』ではなく『実力』に期待した。天才は変人なんですよ。だが、夢にカネは出ないから、彼はいろいろと業績や数字をごまかしたわけですが、それを特捜部が許さなかったのです。仕方がないかも知れないけど、スパコン業界にとっては痛手です」(スパコン業界関係者)

 東京地検特捜部の捜査は、東京国税局の税務調査を起点としている。

 斎藤容疑者は、ペジー社のほかに、多数の企業、組合、社団法人などを持ち、企業だけでも10社を超えている。

 身内間で循環取引、架空取引が行われているのではないかとして税務調査が行われ、その過程で助成金詐取が発覚した。

 従って、年内に行われる「NEDO」からの助成金を不正に受け取ったという詐欺罪での起訴は「序章」にすぎない。

 「JST」から支給された52億円に同様の問題はないか。

 また、いくら斎藤容疑者が天才でも審査する「NEDO」や「JST」は科学技術のプロ集団で、二重三重のチェック機能を持っている。

 そこを突破するのに、政官界にも幅広い人脈を持つ斎藤容疑者が、何らかの工作を依頼、それを受けて動いた者はいないか。

 そして、ペジー社顧問となっていた「安倍首相と最も近いジャーナリスト」といわれる山口敬之・元TBSワシントン支局長の関与はないのか。

 山口氏の退社は16年5月なので、今回の逮捕案件となった「NEDO」の助成金詐取には絡んでいないが、「JST」の助成が決まったのは17年1月である。

 安倍首相、麻生太郎財務相などの大物政治家、官邸を中心に官僚にもパイプを有する山口氏が、顧問としてどんな働き掛けをしたのか。

 年明け以後、あらゆる角度からの捜査が行われ、スパコン事件は来年1月の通常国会で、与野党が論戦を繰り広げることが予想される。

 そこでは、「実績もないのに国から巨額資金を引っ張った詐欺師」という斎藤容疑者の一面だけが強調され、“天才”がスパコン業界に残した足跡は、残念ながら、掻き消されることになりそうである。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月19日配信<0510archives>「月刊『Hanada』で復活を果たした山口敬之氏の暴論と限界」<事件>


 
(伊藤詩織著・文藝春秋)


 

 

 颯爽とデビュー、確固とした地位を築いていた言論人の“転落”は、目にしたくないものである。


 元TBSテレビのワシントン支局長だった山口敬之氏が、退社後にフリーとなり、2016年5月、『総理』(幻冬舎)を著した時、「迫真のリアリティをもって描く政権中枢の人間ドラマ」という惹句がピッタリの内容で、安倍晋三首相をはじめとする政権中枢への食い込みに、読者は驚嘆した。

 が、そこからの“転落”は早かった。

 1年後の17年5月、「山口氏にレイプされた」と、ジャーナリストの伊藤詩織さん(28)が記者会見を開き、顔を出して告発した。

 それまで山口氏は、報道番組などに頻繁に登場、政権擁護発言をするジャーナリストとして知られていたが、一切、表には出なくなった。

 同氏がマスメディアから忌避されたのは、「レイプ疑惑の主」だったからではない。

 詩織さん(告発当初は姓を名乗らなかった)の訴えを警視庁は受理して捜査、山口氏を送検したものの、検察の結論は嫌疑不十分で不起訴処分だった。

 記者会見は、詩織さんの検察審査会への申し立てを理由とするものだったが、この時、山口氏がメディアに対して、真摯な対応をしていれば、「山口バッシング」は起きなかっただろう。

 だが、同氏は「私は被疑者でも容疑者でもない」と強調、「間違った記述があれば、法的措置も辞さない」という強気のコメントは、取材者たちを鼻白ませた。

 要は、メディアを味方に付けることができなかった。

 詩織さんの検察審査会への申し立ては、4ヶ月後の17年9月、「不起訴相当」の議決となって認められなかった。

 詩織さんは納得できず、翌月『ブラックボックス』(文藝春秋)を著して、告発を続けた。

 それを受けて、山口氏は初めて反論に出た。

 保守派の言論雑誌で「親安倍路線」の『月刊Hanada』(12月号)で、「私を訴えた伊藤詩織さんへ」を、同じ路線の『月刊Will』(12月号)で「安倍総理の“どす黒い孤独”」を、それぞれ寄稿した。

 これまではメディアの記者、報道局、編集部などとのやりとりだけだったが、自分の思いを新たに表明すると同時に、“ジャーナリスト復帰宣言”ともいうべき記事だった。

 しかし、両作とも高い評価は受けられなかった。

 

 「詩織さんへ」と題する記事は、検察の「不起訴」と検察審査会での「不起訴相当」をもって自己弁護する内容で、「合意なくホテルに連れ込み、セックスに及んだこと」への道義的倫理的な反省はまったくなく、読者に不快感を残した。


 安倍首相への応援歌となった記事は相変わらずだったが、切り込みも分析も不十分で、政界と官邸から距離を置かれた?ジャーナリストの悲哀を感じさせた。

 「やはり『臨時国会冒頭』しか、(安倍首相の)解散の選択肢はなかったのである」と、最後にまとめた記事を誰が興味をもって読むだろうか。

 11月25日発売の『月刊Hanada』(1月号)は、さらに悲哀を感じさせる内容だった。

 「伊藤詩織問題 独占スクープ第2弾」として「記者を名乗る活動家 金平茂紀(TBS報道特集キャスター)と望月衣塑子の正体」と題し、自分に向けられた批判に対して反論しているのだが、罵詈雑言の類で、およそ読者の共感は得られないし、不快感ばかりが残る記事だ。

 冒頭、「取材依頼がなく、意見も聞かないから2人は記者ではない」というのだが、金平氏も望月氏も記者会見やインタビューでの発言であり、山口氏に取材依頼をして確認すべき内容ではない。

 なにより、山口氏は公式コメンを出したり、記事を発表しているのだから、それをもとに論評ないし、記者会見やインタビューで発言するのは認められる行為である。

 挙げ句、「金平という男は、気に入らない政治家を貶めるためなら、記者としての基本動作も放棄し、同僚や部下を平気で裏切り、自分だけは生き残ろうとする唾棄すべき人物である」と、言い切っている。

 この名誉毀損以外の何物でもない文章を執筆するにあたり、山口氏は金平氏に取材依頼をしたのだろうか。

 細かく書き連ねても仕方があるまい。

 

 何ら反省することなく、向かってきた勢力はすべて敵とみなして噛み付く!――レイプ疑惑は、刑事事件としては不起訴でも、そう疑われるような行為があったことをまず反省、そのうえで被害者やそれを報じようとするメディアにどう対応するかを山口氏は、真摯に考えるべきだろう。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月18日配信<0510archives>「『Black Box』(伊藤詩織著・文藝春秋)が告発する司法の歪み」<事件>



 


 

 

 

 

 レイプ被害者として「顔出し告発」していた伊藤詩織さんが、10月18日、『ブラックボックス』(文藝春秋)を上梓した。
 
 今年5月、詩織さんは検察審査会に不起訴処分を受けて異議を申し立て、記者会見で経緯を説明した。
 
 その時も衝撃だったが、検察審査会での「不起訴相当」を受けて著した本書では、そうした会見などでは伝わらぬ思いが、時系列で詳細に語られ、一級のノンフィクションであると同時に、日本の司法システムに対する鋭い告発書にもなっている。
 
 圧巻は、「安倍晋三首相に最も近い記者」という評判の元TBS記者・山口敬之氏と、詩織さんにとって同氏に対する「顔を思い出したくもない加害者」であるという辛さを封印して、責任を追及するために行った交換メールの公開と、高輪署、警視庁捜査一課、そして検察との「山口氏の圧力」を感じながらの切迫した交渉だろう。
 
 率直に感じられるのは、詩織さんの強さである。
 
 それは5月時点の「顔出し会見」で証明されてはいたが、今回、明かされたジャーナリストを目指して欧米で学んだという経歴が、告発への動機を裏付けるとともに、そうした意志も強さも持っている人が、それでも「司法のカベ」に跳ね返されてしまった。
 
 強さは、レイプ犯を許さないという一貫した姿勢にあるが、その一方で、詩織さんの心は常に山口氏の“幻影”に怯えており、「魂の殺人」だというレイプが被害者に与える傷の深さに慄然とさせられる。
 
 それだけのプレッシャーを受けながら、これまでのレイプ被害者の大半が、「正体を晒しても何の得にもならない」と、勝訴しても自分の胸の内にしまい込むか、示談に応じて事件を封印するなか、詩織さんが実名告発し書籍まで発売したのは、個人的な恨みを晴らすのではなく、「私に起こったことが、あなたに、あるいはあなたの大切な人に降りかかってくるか、誰にも予測はできないのだ」(まえがきより)と、訴えたいからである。
 
 その告発するという行為の結果として、司法の“歪み”が露呈した。
 
「よくある話だし、事件として捜査するのは難しいですよ」
 
 担当する高輪署のA氏が、最初に投げかけたのはこの言葉であり、詩織さんは「それはあまりに残酷な言葉だった」と、嘆く。
 
 以降、「今まで努力してきた君の人生が水の泡になる」と、被害届の提出を考え直すように説得するA氏を、むしろ詩織さんが引っ張る形で捜査は進み、山口氏の帰国を待って逮捕するところまで進展した。
 ところが、15年6月8日、成田空港に山口氏逮捕に出向いたA氏から「逮捕できません」という連絡が入る。
 
 理由を問うと「ストップをかけたのは警視庁のトップです」という返事。後に、それが中村格警視庁刑事部長(当時)であることが明らかになる。
 
 以降、所轄の高輪署から警視庁捜査一課に事件は移送され、A氏も担当検事も配置替えとなり、事件は封印の方向に向かう。
 
 捜査一課の捜査が、不起訴へ持っていくためのものであるのは、「なぜ逮捕状が出たのに逮捕しなかったのか」という詩織さんの問いかけに、「逮捕状は簡単に出ます」と断言。「社会的地位のある人は、居所がはっきりしているし、家族や関係者もいて逃走の恐れがない。だから、逮捕の必要がないのです」と、いってのけた捜査一課幹部の言葉で明らかだ。
 
 官邸から中村部長へと伝えられたことで発生した“忖度”は、捜査現場を動かして起訴には不十分な捜査内容となり、不起訴処分は出た。
 
 その証拠に沿って国民からくじで選抜される検察審査会の審査員が、検察官に誘導される形で事件性を審査すれば、「不起訴相当」となるのも無理はない。
 
 司法は、そのシステムを熟知し、方向性を変えうる力のある人間が操作すれば、簡単に歪むものである。
 
 レイプが行われたとされる15年4月4日以降、2年半の歳月をかけて詩織さんが著した『ブラックボックス』で、我々が読み取るべきは、レイプ被害の傷跡の大きさとともに、それを見逃してしまった司法システムの検証であろう。【午】

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月17日配信<0510archives>「"人治国家"になった日本‼――レイプ容疑の“官邸御用ジャーナリスト”の逮捕潰しに奔走した官邸の末期症状」<事件>

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(文藝春秋社)


 

 森友学園騒動で、安倍晋三首相べったりの噴飯もののコメントを出し続けていたのが、元TBSワシントン支局長で現在はフリージャーナリストの山口敬之氏だった。

 政治部記者が肩入れする政治家の“代弁”をするのは避けられない。

 ただ、それも程度問題。まして今回は、国有地の安値払い下げをめぐる首相夫妻の口利きが取り沙汰された案件だっただけに、したり顔で擁護する山口氏への批判は強かった。

 なぜ、ジャーナリストとしての矜持を忘れたようなコメントを出し続けたのか。5月末にその理由が、明らかになった。

 レイプ被害者の詩織さん(姓は非公表)が「顔出し告発」したことで、「山口氏を守るための官邸による疑惑潰し」が露呈、山口氏と官邸は「運命共同体」になっていたのである。

 既に、詩織さんが『週刊新潮』に匿名告発していた時点で、同誌の取材によって、幾つかの疑惑潰しは明らかになっている。

 現段階で、まだ踏み込んで報道しているメディアはないが、山口氏の官邸への食い込みは“証明”されているだけに、疑惑潰しの点と点の情報が結びつけば、最終的には安倍首相に行き着くわけで、森友学園、加計学園以上の騒動に発展しかねない。

 ハッキリしているのは、詩織さんがレイプされたのが2015年4月4日で、5日後の9日から警視庁に相談して、4月30日に高輪署が告訴状を受理。捜査が始まり、ドイツからの帰国後の6月8日、逮捕される寸前に中村格・警視庁刑事部長(当時)の決済で、逮捕が見送られたことだ。

 この間、山口氏が新潮編集部に「北村さま」宛に誤送信したメールによって、山口氏が北村滋・内閣情報官に一連の経緯を相談したことが明らかになっている。

 山口氏は「民間人」と否定したものの、その後の官邸の対応も含め北村情報官であった可能性が高い。

 官邸の情報中枢である内閣情報調査室を5年も率いる北村情報官は、日本有数の危機管理の責任者である。

 そんな公的立場の人間が、一介のフリージャーナリストのレイプ疑惑に関与したのが事実なら由々しきこと。民進党を始めとする野党が、この問題を国会で取り上げるのも当然である。

 「逮捕は必要ないと判断した」と、『週刊新潮』の取材に答えた中村氏もまた、ただの警察官僚ではない。

 刑事部長に就任前は、5年も官房長官秘書官を務め、菅義偉・官房長官の“お気に入り”だった。

 安倍・菅・北村といった官邸中枢に太いパイプがある山口氏が、逮捕説に危機感を募らせ、安倍首相に相談、ないし要請をしていたらどうなるか。

 安倍→菅→中村というライン、あるいは安倍→北村→中村というラインで逮捕が見送られた可能性がある。

 点と点が線で結ばれると大変なことになるというのはそういう意味で、森友、加計両学園騒動とは違った「誤ったいびつな権力行使」である。

 ただ、「行政を歪める」ことに霞ヶ関の官僚は敏感に反応する。

 加計学園騒動における「前川喜平・文部科学省前事務次官の反乱」に見られるように、「官僚組織の口封じ」は容易ではないが、それは警察組織にしてもそうだ。

 

 山口氏は逮捕を免れただけではない。

 山口氏を取り調べていた捜査員は担当を外れ、担当部署も高輪署から本庁捜査一課に変わった挙句、書類送検で済まされ、7月22日、不起訴処分となった。

 警察組織、なかでも現場の刑事は、こんな横車、不当な圧力を嫌う。

 前川氏のような実名告発はなくとも、現場から捜査情報が漏らされる可能性がある。

 しかも、こちらには詩織さんという覚悟を決めた存在がいて、検察審査会に審査を申し立てている。

 太鼓持ちジャーナリストを側に置き、自身の代弁をさせるだけでなく、事件潰しを指示したのが安倍首相なら、内閣が持たない事態に発展する可能性も考えらよう。【酉】

 

 

 

※東京第六検察審査会は、9月21日、無情にも「不起訴相当」の議決を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年1月16日配信「週刊0510の特選レース」<週間レース社提供>

 



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