2018年7月14日配信<0510archives>「『Black Box』(伊藤詩織著・文藝春秋)が告発する司法の歪み」<事件>



 


 

 

 

 

 レイプ被害者として「顔出し告発」していた伊藤詩織さんが、10月18日、『ブラックボックス』(文藝春秋)を上梓した。
 
 今年5月、詩織さんは検察審査会に不起訴処分を受けて異議を申し立て、記者会見で経緯を説明した。
 
 その時も衝撃だったが、検察審査会での「不起訴相当」を受けて著した本書では、そうした会見などでは伝わらぬ思いが、時系列で詳細に語られ、一級のノンフィクションであると同時に、日本の司法システムに対する鋭い告発書にもなっている。
 
 圧巻は、「安倍晋三首相に最も近い記者」という評判の元TBS記者・山口敬之氏と、詩織さんにとって同氏に対する「顔を思い出したくもない加害者」であるという辛さを封印して、責任を追及するために行った交換メールの公開と、高輪署、警視庁捜査一課、そして検察との「山口氏の圧力」を感じながらの切迫した交渉だろう。
 
 率直に感じられるのは、詩織さんの強さである。
 
 それは5月時点の「顔出し会見」で証明されてはいたが、今回、明かされたジャーナリストを目指して欧米で学んだという経歴が、告発への動機を裏付けるとともに、そうした意志も強さも持っている人が、それでも「司法のカベ」に跳ね返されてしまった。
 
 強さは、レイプ犯を許さないという一貫した姿勢にあるが、その一方で、詩織さんの心は常に山口氏の“幻影”に怯えており、「魂の殺人」だというレイプが被害者に与える傷の深さに慄然とさせられる。
 
 それだけのプレッシャーを受けながら、これまでのレイプ被害者の大半が、「正体を晒しても何の得にもならない」と、勝訴しても自分の胸の内にしまい込むか、示談に応じて事件を封印するなか、詩織さんが実名告発し書籍まで発売したのは、個人的な恨みを晴らすのではなく、「私に起こったことが、あなたに、あるいはあなたの大切な人に降りかかってくるか、誰にも予測はできないのだ」(まえがきより)と、訴えたいからである。
 
 その告発するという行為の結果として、司法の“歪み”が露呈した。

 

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「よくある話だし、事件として捜査するのは難しいですよ」
 
 担当する高輪署のA氏が、最初に投げかけたのはこの言葉であり、詩織さんは「それはあまりに残酷な言葉だった」と、嘆く。
 
 以降、「今まで努力してきた君の人生が水の泡になる」と、被害届の提出を考え直すように説得するA氏を、むしろ詩織さんが引っ張る形で捜査は進み、山口氏の帰国を待って逮捕するところまで進展した。
 ところが、15年6月8日、成田空港に山口氏逮捕に出向いたA氏から「逮捕できません」という連絡が入る。
 
 理由を問うと「ストップをかけたのは警視庁のトップです」という返事。後に、それが中村格警視庁刑事部長(当時)であることが明らかになる。
 
 以降、所轄の高輪署から警視庁捜査一課に事件は移送され、A氏も担当検事も配置替えとなり、事件は封印の方向に向かう。
 
 捜査一課の捜査が、不起訴へ持っていくためのものであるのは、「なぜ逮捕状が出たのに逮捕しなかったのか」という詩織さんの問いかけに、「逮捕状は簡単に出ます」と断言。「社会的地位のある人は、居所がはっきりしているし、家族や関係者もいて逃走の恐れがない。だから、逮捕の必要がないのです」と、いってのけた捜査一課幹部の言葉で明らかだ。
 
 官邸から中村部長へと伝えられたことで発生した“忖度”は、捜査現場を動かして起訴には不十分な捜査内容となり、不起訴処分は出た。
 
 その証拠に沿って国民からくじで選抜される検察審査会の審査員が、検察官に誘導される形で事件性を審査すれば、「不起訴相当」となるのも無理はない。
 
 司法は、そのシステムを熟知し、方向性を変えうる力のある人間が操作すれば、簡単に歪むものである。
 
 レイプが行われたとされる15年4月4日以降、2年半の歳月をかけて詩織さんが著した『ブラックボックス』で、我々が読み取るべきは、レイプ被害の傷跡の大きさとともに、それを見逃してしまった司法システムの検証であろう。【午】

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年7月10日配信「“地獄の釜の蓋“が開いた!――細野豪志元環境相氏に5000万円!で大炎上するソーシャルエンディング業界」<事件>

 

 

 

 

   ネット上に開示された情報をもとに、個人が企業に事業資金を貸し付け、配当を得るサービスをソーシャルレンディングと呼ぶ。

 不特定多数の個人から広く資金を調達するのは、不動産や再生可能エネルギーなどを融資対象とする会社が多いが、金融機関の融資基準に達していない業者が多いため、その分、利回りは高く10%内外を約束する。

 それが魅力で、ここ数年で急増、2017年の市場規模は、前年比2・5倍の1316億円だった。

 だが、ハイリターンにハイリスクはつきもの。ソーシャルレンディングの場合は、集める業者と使う業者が、ほぼ同じ。要するに、右のポケットから左のポケットへ移し換えるだけである。

 誰もチェックしないのだから開示情報はウソが多く、そこを金融庁に突かれて、「みんなのクレジット」は事実上、破綻し、「ラッキーバンク」は行政処分を受けた。

 「次はどこか?」に注目が集まるなか、今年1月から証券取引等監視委員会の調査を受けながら、処分が出ないうちに『朝日新聞』が、「細野豪志元環境相に5000万円」(6月27日付)と報じたのが、「グリーンインフラレンディング」(GIL)の資金を使っていた「JCサービスグループ」だ。

 政治資金は明白なのだが、細野氏は「個人で借り入れ、利子も含めて全額、返済した」と、逃げている。

 同じ論法で逃げた猪瀬直樹前東京都知事は、結局、公職選挙法違反を認めて辞職した。

 この問題は、さまざまな要因を秘めている。

 まず政界への波及。JCサービスが親しくしていたのは細野氏だけではない。細野氏への直接の貸付窓口である「JC証券」には、和田隆志、田村謙治、松田学といった3人の元代議士が、役員に名を連ねていた。

「旧民主党のタニマチ」として知られる「大樹総研グループ」「JCサービス」中久保正己社長との人間関係によるものだ。

 「JCサービス」は、ソーシャルレンディングのプラットフォームである「maneoマーケット」を使って「GIL」が資金を集め、それを「JCサービス」が太陽光発電やバイオマス発電など再生可能エネルギー事業に回す、というビジネスモデル。「大樹総研グループ」には、かつて鈴木康友浜松市長が在職していたこともあり、浜松市は「JCサービス」の拠点でもある。

 細野氏はもちろん、上述のような現元政治家、あるいは現役の経産省、環境省に絡む政治家や官僚が、許認可や補助金などで便宜を図っていた可能性もあり、事件化の芽はいくらでもある。

 また、ソーシャルレンディング全体への波及も避けられない。

 

 「みんなのクレジット」が45億円(17年2月末までの累計応募額、以下同)、「ラッキーバンク」が155億円と、それなりに影響力は大きかったが、147億円の「GIL」に軒先を貸していた「maneoマーケット」1103億円と群を抜いている。

 「GIL」は行政処分によって破たんする可能性があり、そうなると投資家は、「maneoマーケット」に攻撃の矛先を向けるのは必至。ソーシャルレンディング業界全体が、見直しを迫られる。

 さらに、「JCサービス」には“余罪”がある。

 福島の太陽光発電の設備IDをめぐって、前所有者と中久保社長が、仲介業者を間に挟んでトラブルになっている。

 その問題解決のために、中久保氏が反社会的勢力に“説得”を依頼したという情報もあり、警視庁組織犯罪対策4課が内偵中だという。

 同種の反社との関係は、「LCレンディング」など他のソーシャルレンディング業者でも指摘されている。

 ネット上の事業計画だけで資金が集まる環境と、それを実現するために早く事業展開しなければならない時間的制約が、地上げの論理と同じで反社を引き寄せる。

 証券監視委と金融庁は、「GIL」にメスを入れることが、ソーシャルレンディング業界全体をつぶしかねないことを自覚、慎重に調査を進めていた。

 「JCサービス」の福島問題を含め幾つかの案件を抱える警視庁も同様である。

 また、「朝日新聞」、「NHK」といった先行するマスコミも、「報道がソーシャルレンディングに引導を渡すことになる」と、手控えてきた。

 そういう意味で、『細野氏に5000万円』という報道は、“地獄の釜の蓋”を開けたに等しい。

 検察や警察による事件解明はこれから進み、業者への行政処分を経てソーシャルレンディング業界全体が大炎上。「ワルは誰か」の見極めが、これから必要になる。【子】

 

 

 

 

 

 

 


2018年6月26日配信「かぼちゃの馬車事件の“黒サギ”=スルガ銀行の株主総会は大荒れ必至!」<事件>

 
スルガ黒サギ銀行(wikipedia)


 詐欺師の“上前”をハネる詐欺師のことを「黒サギ」といい、尊敬はされないが腕と頭脳は一流の証である。

 だが、「黒サギ」であることがバレた時は、詐欺師に自らの罪も抱かせているのだから強く指弾されることは当然だろう。

 今、そんな疑惑を抱かれているのが、静岡県を拠点とする「スルガ銀行」(沼津市)だ。

 かぼちゃの馬車事件に関与、当初、「運営会社の「スマートデイズ」が、通帳などを改竄して物件を売りつけていたとは知らなかった」と、言い逃れをしていたものの、次第に改竄はスルガ銀行行員との“合作”であることが明らかになった。

 かぼちゃの馬車事件とは、女性専用シュアハウスの「かぼちゃの馬車」を運営する「スマートデイズ」が行なっていた悪徳商法である。

 「利回り8%で30年家賃保証」などと広告を打ってオーナーを集めながら、不動産売買の中抜きや建設業者からのキックバックで高額物件を買わせ、その結果、高額家賃で空き部屋が続出、自転車操業に陥って破綻に向かって突き進んだ。

 操業5年で売上高300億円という「スマートデイズ」の基盤を築いたのは、ビデオ安売り王として名を馳せた佐藤太治氏で、一気に業容を拡大してチェーン展開、最後は自転車操業に陥るのがいつものパターンなので、佐藤氏が「スルガ銀行」を巻き込んだように見えた。

 だが、その後、「ゴールデンゲイン」、「サクト・インベストメント・パートナーズ」、「ガヤルド」など同業のシェアハウス業者も、同じようなビジネスモデルを構築、破綻に至っていた。

 これらの企業に融資したのも「スルガ銀行」で、窓口となっている支店はバラバラ。例えば、「スマートデイズ」は横浜東口支店だが、「ゴールデンゲイン」は渋谷支店、「ガヤルド」は川崎支店である。

 これは何を意味しているのか。

 「銀行ぐるみで審査書類の改ざんなどを認めていたということに他なりません。既に、銀行は5月15日の記者会見で、『多数の行員が、不正を認識していた』といい、その詳細の解明は第三者委員会に委ねた、と逃げていますが、それ以降も、続々と、行員が改竄を指示する証拠が見つかっています」(被害オーナー)

 証拠は、音声データやLINEなどの会話記録などに残されているが、事例は多く、しかも指示内容は様々で「一部の行員がやったこと」で済まされるレベルではない。

 さらに、「スルガ銀行」にとって致命的なのは、2000億円の融資残があるシェアハウス事業だけではないことである。

 融資総額3兆2000億円のうち、約1兆円がシュアハウスを含む一般のマンション、アパートローン向けパーソナルローンで、同じ状況を抱えている。

 他の地銀幹部が明かす。

 「地銀の平均貸出金利は1%台がやっと。ところが『スルガ銀行』は3%台の半ばをキープしていた。その理由が高金利のパーソナルローンで、しかも7%台のフリーローンを抱き合わせで借りさせるなど、収益確保になりふり構わなかった」

 審査書類を改竄して「貸せない層を貸せる層」に変えただけでなく、シェアハウス業者が行なう「頭金ゼロ」や自転車操業に陥るのが必至の「高利回り表示」を黙認していた。

 そこには、6期連続で増収増益を達成していた経営陣から現場への、強いプレッシャーがあったという。

 つまり、かぼちゃの馬車事件は氷山の一角。――個人向け融資に大きくカジを切り、高利回りのためなら手段を選ばず、怪しい業者も厭わないというスルガ商法が根底にあり、実態はスルガ銀行事件だった。

 今や“悪夢案内人”と化した「スルガ銀行」の株主総会は6月28日。――被害者オーナーたちが大挙して押しかけ、「詐欺商法に騙された」と、声を上げるのは必至!?今年最大の注目される総会となりそうだ。【寅】


2018年6月12日配信「『殺人タックル事件の深層』第3弾!――日大・田中理事長が繰り返してきた調査委員会利用のご都合主義」<事件>

             

                                                              

 

 「貝」になって殺人タックル事件から逃れている日本大学の田中英寿理事長だが、これまで修羅場を何度も経験してきただけに、思惑通りに「沈黙は金」の教訓は生き、和歌山ドンファン事件、米朝会談などに報道の中心は移っている。

 加えて、田中理事長には自分から説明することなく、外部の調査委員会に疑惑の解明を任せ、それで乗り切ってきたという過去がある。

 今回、日大は日弁連が定める「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に則り、勝丸充啓弁護士(元広島高検検事長)を委員長とする第三者委員会を立ち上げ、7月末までに結論を出すという。

 日大に利害関係のない弁護士を集めたとはいえ、発注者である日大にどれだけ厳しい報告ができるかは疑わしく、しかも調査の基本は「悪質タックル事件の真相」を探ることであり、それを生じさせた「ガバナンス体制の検証」は二の次である。

 内田正人監督・常務理事(辞任)の責任は追及されても、田中理事長の責任に行き着かないのは、本人は百も承知。だから「7月末に結果が出たら理事長が会見を開く」と、大塚吉兵衛学長に言わせている。

 こうした対応は今回だけでない。

 田中理事長は、過去2回、調査委委員会利用で逃げ切ってきた。

 最初は、本誌が「深層第2弾」の「日大問題の原点を指摘した驚愕の田中常務理事(当時)の黒い報告書」(6月5日配信)でお伝えした瀬在幸安元総長時代に「報告書」で暴かれた数々の疑惑である。

 この時は、必死の巻き返し工作で田中派の総長誕生に成功。疑惑の指摘にとどめて難を逃れた。

 しかし、同じ利権構造を続けていたことから、8年後の2013年、『読売新聞』が、「日大理事長に500万円超 都内業者から」(2月1日付)と、報じた。

 続けて読売は「資金提供問題 日大 05年に内部調査 報告書で疑惑に言及」と題して、「不透明な業者との疑惑」が、過去にもあったと指摘した。

 それまで「だんまり」を続けていた日大は、「一部報道機関の報道について、外部委員で構成する特別調査委員会を設置、調査を委嘱した」と発表。その結果を13年6月19日、大学のホームページで公開した。

 「委員会はこのほど、複数の記事に記載されている金銭受領の事実はいずれも認められないとの結論をまとめ、調査報告書として本学に提出した」

 複数の記事とは、最初の読売記事と疑惑の「報告書」のことを書いた続報である。

 最初の報道は「記事は証拠も示しておらず、重大な事実誤認と不正確な推論」と決めつけ、「報告書」については、「裏付け調査もせず、重大な事実誤認があり、根拠のない推論を述べているにすぎず」と、散々な書きようである。

 であれば、「読売新聞社」を訴えればいいと思うのに、訴訟にすることはせず、逆に16年のシーズンから日大は読売ジャイアンツの公式スポンサーとなるなど、読売グループとの親しさを増している。

 このスポンサー契約は、日大の申し入れで5月28日に解除されたが、調査結果が出ていない時点で、なぜ解除を急いだのかがよく分からない。

 調査委員会利用はもうひとつある。

 山口組・司忍六代目組長と田中理事長とのツーショット写真が出回り、それを海外紙が報じたのを受けて、15年4月、衆議院文部科学委員会で、「日本オリンピック委員会(JOC)副会長でもある田中理事長と日本最大の暴力団組長とが親密な関係ならゆゆしきこと」という質問が飛び出し、下村博文文科相が調査を約束した。

 具体的には、文科省がJOCに調査を命じ、それを受けてJOCが第三者委員会を立ち上げて調査、6月末までに文科相に報告した。

 ただ、この時の調査結果は、文科省もJOCも「プライバシーに関わることなので」と、明らかにしていない。

 特別調査委員会であれ、第三者委員会であれ、「この程度のもの」という“象徴”だろう。

 権力を握る者に都合のいい結論が出され、都合良く公表され、都合が悪ければ公表しない。

 さらに田中理事長は、今回の第三者委員会の調査に要する「2カ月」の猶予時間を得た。

 これでは日大疑惑の解明は、とても望め…ないだろう。【卯】

 

 

 

 


2018年6月9日配信<0510archives>「東京地検と警視庁が捜査着手した神戸製鋼事件の“元凶”は“シマブン”が著書『失権』で明かした腐敗の連鎖!」<事件>

鉄鋼業界再編のきっかけ?


 

 「神戸製鋼所」のデータ改竄問題は、東京地検特捜部と警視庁が合同捜査する一大経済事件となった。

 同社のアルミや鋼製部材は、航空機や自動車などに幅広く使われており、ユーザーは国内外に及び、現在、米司法当局も調査を進めている。

「データ改竄」は、他社でも発覚しているが、「神戸製鋼所」ほど長期間に及ぶ悪質なものはなく、高品質を誇ってきた日本の製造業の浮沈に関わる問題だとして、同社をやり玉に挙げざるを得なかった。

 これは検察・警察が一体となった「国策捜査」であり、場合によっては、今年6月に施行される「司法取引」の第一号となることが想定される。

 「特捜部としては、第一号案件はカッチリとした誰にもわかりやすい案件で手がけ、国民への周知徹底を図りたい。データ改竄は、誰がどう指示したかの供述を取るのが難しいが、司法取引は『上司の指示』を部下に供述させる有力な材料になり、罪は不正競争防止法違反なので、それほど重くなく、供述する側の精神的負担も軽い」(司法記者)

 国内外のユーザーと関係当局を納得させる捜査で、司法取引という新たな武器を試したいという検察の思惑の裏にあるのは、コンプライアンスの欠如した「神戸製鋼所」の企業体質への怒りだろう。

 奇しくも、昨年末、「神戸製鋼所の闇を背負ってきた男」といわれる「シマブンコーポレーション」島田文六前社長が、『失権』(幻冬舎)を上梓した。

 同氏は、関西の花街や高級クラブでの派手な遊興で知られ、中村美律子が大ヒットさせた『島田のブンブン』のモデルである。

 島田氏は、1965年の「神戸製鋼所」と「尼崎製鉄」の合併に伴う内紛を、神戸製鋼所側に付くことで勝利に貢献した。

 当初、「尼崎製鉄」サイドに付いていたのは、大物右翼の故児玉誉士夫氏であった。

 「神戸製鋼所」は、児玉氏の名代である総会屋・木島力也を寝返らせることで、「尼崎製鉄」を制したのだが、その軍資金(裏金)の調達係だったのが島田氏である。

 『失権』のなかで島田氏は、「B勘」による裏金作りをこう明かしている。

 <「B勘」と言われる裏金づくりは、製鉄所内から払い下げる発生品数量の調整で行われる。伝票上で発生数量が100なら、実際は110。その余分な10が、製鉄所の外で換金され裏金となる>

 島田氏は、この裏金づくりをその後も続け、歴代社長に貢献する。

 島田氏とともに、このシステムを築き上げた総務部長の鈴木博章氏が、論功行賞で11代社長に就任したのを機に、総会屋窓口の総務部長、総務担当役員経験者が出世する会社となり、亀高泰吉氏、熊本昌弘氏、水越浩士氏と続き、99年、神戸製鋼利益供与事件の発覚で、この系譜は断ち切られ、事件当時会長だった亀高氏も退任した。

 著書のなかで島田氏は、亀高氏のことを「朋友」と呼んで、その関係を懐かしむが、検察にとって亀高氏は、総会屋との関係のみならず、他国の政治にもクビを突っ込む危ない経営者だった。

 98年のベネズェラ大統領選で反米のウゴ・チャベス氏が当選するが、「神戸製鋼所」は対立候補に1億6000万円を献金。その後の株主代表訴訟で<右金員は、加古川製鉄所において生じたスクラップの売却代金を簿外処理することにより捻出>と書かれていた。

 こうして「神戸製鋼所」を40年近くも支え続けた島田氏だが、利益供与事件を機に、徐々に距離を置かれるようになり、08年のリーマンショックで受けた損失責任を問われ、やがて「シマブンコーポレーション」から追い出される。

 同時に、神戸製鋼経営陣の“総務部体質”に批判が寄せられ、技術畑からの社長が続くが、不祥事を隠す隠蔽体質が改められることはなく、06年、神戸、加古川両製鉄所で発覚した煤煙データ偽造事件、08年、子会社で発覚した検査データ偽造事件へと続く。

 検察の目には、「神戸製鋼所」は、コンプライアンスを無視、悔い改めることのない企業であり、その全てが明るみに出たことで今回の改竄が各部署で続けられ、それが数十年に及んだ、という日本の製造業を貶める事件と映った。

 東京地検特捜部は、警視庁と共同で、場合によっては司法取引も採用しながら徹底解明する方針である。【巳】

 

 

 

 

 

 

 


2018年6月5日配信「『殺人タックル事件の深層』第2弾!――日大問題の原点を指摘した驚愕の田中常務理事(当時)の黒い報告書」<事件>

 
震度8?(☚wikipedia)

 

 正直、食傷気味だが、「日大フェニックス・殺人タックル騒動」が収まらない。
 
 内田正人監督、井上奨コーチの対応の拙さが一番の原因で、「私が指示しました。申し訳ありませんでした。選手に罪はありません」と認めれば、ここまで炎上しなかったはずである。
 
 小誌は、5月24日配信で、「認めないのは、田中英寿理事長の”右腕”である内田監督が認めてしまうと、田中批判に繋がるからだ」と、その深層をお伝えした。

http://polestar.0510.main.jp/?eid=876782
 
 その第2弾として、田中支配の実態に迫りたい。
 
 田中氏は、学生時代、アマ横綱など数々のタイトルを総なめ。各界に入れば「最低でも大関は間違いない」と言われた強豪選手だった。

 

 しかし、卒業後は大学職員として残り、相撲部監督を務めた著名人だが、学究はもちろん経営にも縁がなく、アカデミックな人脈があるわけでもない。

 
 そんな田中氏が、昨年9月、4選を果たし、12年に及ぶ支配体制を確立できたのはなぜなのか。
 
 しかも田中氏には、業者との不透明な関係や暴力団関係者との交際を指摘され、弁護士で構成された特別調査委員会の調査を受け、数々の疑惑を指摘された過去がある。
 
 「責任を取らされて然るべき調査結果だったが、さらに調べると、そのカネが理事長、総長といった田中の『上』に献上されていた疑いもあり、調査は途中で中断された。それが逆に田中の力を強め、田中体制の確立に繋がった」(日大元理事)
 
 「黒」ではなく「灰色」に留め置いたことで、田中氏に権力を与える結果となった報告書とはどのようなものか。
 
 特別調査委員会の「中間報告書」は、05年8月15日、森田賢治理事長宛に提出された。
 
 「中間」ではあるが「最終」がない。
 
 報告書の提出直後、当時の理事長、総長が交代し、新執行部に引き継がれなかったためだ。
 
 しかし、「はじめに」に書かれた「今回の調査は、貴学校法人の常務理事田中英寿氏(以下田中常務理事という)の工事関係業者との金銭的結びつき及び暴力団関係者との交際関係の有無を主たる対象とするものである」という目的は、完全に果たしている。
 
 例えば、個別に最も関係が深いとされるX社(本文実名)については、00年から調査の05年までの間に17件と、実力以上の受注件数を誇り、これは「田中常務理事と同社の密接な関係を裏付けるもの」としたうえで、「同社は、田中常務理事の工事業者に対する謝礼要求に関与している疑いがある」とまで、書かれている。
 
 「工事業者に対する金員要求」の項では、「具体的な形で情報がもたらされるに至った」ということで、04年から始まった日大芸術学部江古田キャンパス工事のうちの電気工事について触れている。
 
 この情報提供に沿った調査は、一部本部教職員や弁護士の非協力によって不完全としつつも、受注企業の幹部役員が、A社を通じて指名・発注の謝礼を支払うのは当然と考え、「2回にわたりA社を訪れて、合計3000万円を本件工事の指名・発注に対する謝礼として(A社社長に)支払った事実が認められる」という。
 
 そのうえで報告書は、厳しくこう断じている。
 
 「かくして、田中常務理事が、芸術学部江古田キャンパス工事に際し、指名・発注に対する謝礼として金3000万円を受け取ったという極めて濃厚な疑いが残るというべきである」
 
 さらに、「暴力団関係者との交際関係」についても、イトマン事件の主役である許永中氏との関係を中心に、深い交際があったことを認めている。
 
 これについては、既に、さまざまな媒体で報じられた「組長との写真」などで関係は明らかなのに、田中氏の「写真は合成されたもの」という弁明はいかにも苦しい。
 
 本来なら、この「中間報告」の時点で、田中氏に身を退かせるべきだった。
 
 だが、田中氏は総長選挙における資金的貢献を材料に上層部を揺さぶり、居座ることができた。

 

 しかも、それが逆に「田中には触われない」という“暗黙”の了解事項になったという。
 
 アンタッチャブルになった田中氏は、08年、念願の理事長に就任。その直後から「中間報告」で指摘されたような“怪しいカネの流れ”を除外しようと、受け皿となる会社を考案、(株)日本大学事業部を設立する。
 
 同社は体育会の牙城となり、フェニックスOBの井ノ口忠男氏が実務を担い、それを先輩の内田常務理事が取締役として管掌、もちろん支配権を握るのは田中氏だ。
 
 職員は相撲部とフェニックスOBが中心で、井上コーチも最初、新卒第1期として同社に採用され、その後、日大職員に転じ、日大フェニックスのコーチとなった。
 
 田中理事長、内田監督、井上コーチが恐れたのは、田中氏が築き上げた「日大利権支配」が、殺人タックル事件を機に表面化することではなかったか。
 
 こう考えれば、あの異様な開き直りも得心がいくのであり、その源流は13年前の報告書に露呈していたのである。【卯】

 

 

 

 

 

 

 

 


2018年5月29日配信<0510archives>「"忖度病"に罹患!?――法務・検察が佐川宣寿前国税庁長官の文書改竄・背任容疑の立件を見送り?」<事件>

 

「秋霜烈日 バッ...」の画像検索結果

 愁霜劣日?(☚wikipedia)

 

 

 「安倍一強」のなか、人事権を握られて官邸の顔色を窺いながら仕事をしていた「霞が関」の官僚が、「安倍離れ」を始めている。

 財務省も文部科学省も防衛省も、政権に忖度した結果、メディアの攻撃を受け、責任を取らされているのだから、距離を置き、文書も資料もメールも、差し障りがなければ公開しようと思うのは当然だろう。

 そうした状況のなか、どっちつかずなのが法務省・検察庁である。

 現在、「森友学園事件」に絡み、佐川宣寿前国税庁長官ら財務官僚の公文書改竄、背任事件などを捜査、既に大阪地検特捜部は佐川氏を事情聴取しているが、ゴールデンウイーク後に出される予定の結論は、「立件見送り」の可能性が高いという。

 当初は、やる気を見せながら、どうしてそうなってしまったのか。

 法務・検察は、法務省という立場では行政権を持ち、検察庁という立場で司法権を持つ二刀流官庁である。。

 そういう意味では、政治と行政に足場を置いた「監視役」を期待される官庁だが、2010年に証拠改竄事件を起こして以降、牙を抜かれてすっかり大人しくなった。

 本来、財務省の決裁文書が改竄された森友学園事件では、国民の負託に応えるべく、誰が、なぜ、「公文書書き換え」という民主主義の根幹を揺るがすような罪を犯したかを徹底解明すべきなのだが、『毎日新聞』が、4月13日、「佐川氏、立件見送りへ」と報じて以降、大阪地検、大阪高検から聞こえてくるのは、「虚偽公文書作成罪は、権限を持つ者が文書の趣旨を大幅に変えることが成立要件になるので立件は難しい」という悲観論ばかりである。

 証拠改竄事件は、大阪地検特捜部の主任検事だった前田恒彦氏が、郵便不正事件で起こしたものだったが、その前田氏が自身のブログでこう述べている。

 <虚偽公文書作成罪には当らないとしても、今回の決裁文書は森友詐欺や財務省背任事件の「証拠」のひとつなので、少なくともその改ざんや改ざん後の文書をシレッと大阪地検に提出した行為は、証拠隠滅罪に当ると思うのですが…>

 

 森友学園事件そのものは、官邸を忖度した法務・検察の「国策捜査」として始まった。
 
 蜜月の時代もあった安倍首相に梯子を外されて窮鼠となった籠池泰典前理事長が、「安倍昭恵夫人から100万円の寄付をいただきました」と、内幕を暴露したことから「籠池を許すな」という声が湧き上がり、「証人喚問に呼んで偽証罪でパクらせる」という官邸の意向を汲んだ捜査が始まり、補助金適正化法違反や詐欺で籠池夫妻を逮捕した。

 16年7月、官邸の覚えがめでたい黒川弘務・法務省官房長を法務・検察の意向を聞かずに法務事務次官に就けて以降、官邸は検察捜査を意のままに操れるようになった。

 「裏献金した」という業者の証言を無視、甘利明事件を不起訴処分にしたのはその典型である。

 これも忖度した結果に他ならないが、そうした官邸ベッタリの姿勢に批判的な幹部が現われるようになり、その結果、東京地検特捜部は「安倍首相や麻生財相のお友達が登場する」という「リニア中央新幹線事件」「スパコン事件」に捜査着手、大阪地検は、国有地を8億円も値引きして売却した「森友学園事件」で、財務官僚らの背任容疑での告発を受理。「早めに結論を出せ」という検察首脳の意向を無視するように特捜部が捜査を継続していた。
 
 そういう意味では、他省庁と同じ、官邸ベッタリを見直すのでは?と期待された。

 証拠改竄事件以降、8年もの空白期が続き、「事件への欲が出てきた」(検察OB)という側面もあっただろう。

 それで「立件せず」はない。

 『毎日新聞』の報道も、大阪検察幹部の声も、悲観的なものばかりだが、世論の反応を伺いながら立件してきたのが特捜部であり、それができるのは捜査権に加え、起訴独占権も持っているからであり、どの罪で立件するかは検察の裁量の範囲である。

 国会で偽証を続けて議事を混乱させ、公文書を改竄までして昭恵夫人を守り、証拠隠滅も背任も厭わなかった佐川氏らが起訴されなくてもいいのだろうか。

 有罪率99・9%の無謬神話を守るために起訴のハードルを上げているが、裁判員制度を始めとする司法制度改革が、公判で白黒をハッキリさせるためのものであったにもかかわらず、メディアと国会でこれだけ多くの疑惑が出ている財務官僚の「犯罪」を不起訴で終結させたのでは何をか況や。国民が納得しないのは明らかである

 先週末には「国策拘留?10ヶ月」籠池泰典前森友学園理事長が保釈、「再びの活躍」を宣言した。

 

 そうした折も折、もし『毎日新聞』の報道通りに立件が見送られれば、再び「特捜部不要論」が喧しくなるのは必至であろう。【戌】

 

 

 

 

 


2018年5月24日配信「内田監督の辞任でも何も変らない⁉――遂に被害届が提出された日大フェニックス・殺人タックル事件の深層!」<事件>

 
 関西学院大学のクォーターバック(QB)に見舞った背後からの卑怯な「殺人タックル」が、テレビやSNSの画像に繰り返し流される中、「すべて私の責任です」――こう謝罪しながら、日本大学アメリカンフットボール部の内田正人監督が、5月19日、監督退任を表明した。

 しかし、「フェニックス(不死鳥)」の愛称で呼ばれるアメフト部の実権を手放すつもりはないのか、何に対して責任を負うかという肝心の部分は語らなかった。

 だから、負傷選手と保護者に対して行なった謝罪後の囲み取材で、「タックル指示」の具体的な部分については言葉を濁しつつ、「常務理事を辞めないのはなぜか?」という質問には、「それは違う問題だ」と、否定した。

 これでは何も変らない。

 「内田氏の力の源泉は、田中英寿理事長の側近の常務理事であることです。昨年9月に4選、絶対の権力者となった田中理事長を、保健体育審議会事務局長、人事部長として支えています。だから、常務理事というポストは降りないし、アメフト部という自分の足場から離れるつもりはないでしょう」(日大関係者)

 内田氏が仕える田中氏は、65年、日大経済学部に入学して相撲部に入部。卒業して日大職員兼相撲部コーチに就任、80年に相撲の現役を引退するまで、3度のアマ横綱を始め、34のタイトルを獲得する名力士だった。

 職員専従後も監督として力士を育成する一方、経営にも参画、理事、常務理事を経て08年、理事長に就任した。

 一方の内田氏も、その履歴を踏襲。73年、日大入学後はアメフトに打ち込み、篠竹幹夫監督の指導を受けて活躍。卒業後は日大職員として保健体育畑を歩む一方、篠竹監督のもとでコーチを務め、03年、監督に就任する。

 その体育会気質と事務能力の高さが田中氏に気に入られ、経営にも参画。理事を経て、昨年9月、常務理事に就いた。

 田中氏には、これまでマスメディアや国会で取り上げられたダーティーな側面が少なくない。

 業者からのバックリベートを『読売新聞』にスッパ抜かれ、『週刊文春』は広域暴力団「住吉会」の福田清瞭会長との親密な関係を記事化、また海外メディアが報じた広域暴力団「山口組6代目」とのツーショット写真が国会で問題になり、当時の文科相が調査を約束した。

 いずれも決定的な証拠がなく、追及を免れているが、内外に敵が多いのは確かで、田中理事長が欲しかった“ガード役”が、忠誠心が厚い内田氏であり、その内田氏の後輩でアメフト部OBの井ノ口忠男氏である。

 事業家である井ノ口氏は、実姉で広告代理店を営む橋本聡子氏が、阿佐ヶ谷でちゃんこ屋「田中」を経営する田中夫人に気に入られ、その縁で日大の広告を受注するようになると、自身も日大が手がけていた事業活動に関与することになった。

 それは、日大が外部委託していた保険や人材派遣、学生生活支援などを日大が手がけようとするもので、09年、事業会社開設準備室としてスタート、翌年、「蠧大事業部」が設立された。

 事業手腕に長けた井ノ口氏は、自動販売機設置事業のアドバイザーとして関与するようになり、やがて田中氏の信任が厚いことから「理事長付相談役 事業企画部長」として実権を握るようになる。

 橋本、井ノ口姉弟は、田中理事長夫妻を公私にわたって支える存在となり、井ノ口氏はついに日大経営にも参画、内田氏が常務理事に昇格した昨年9月、晴れて理事に抜擢された。

 つまり4期12年体制を固めた田中理事長にとって、アメフト部OBの内田、井ノ口の両氏は欠かせない存在であり、内田氏が、アメフト部の監督を退くのは避けられないとしても、“右腕”のままでいてくれなくては、例えれば飛車角落ちで将棋を指すようなもの。――そんな“日大・奥の院”の事情が、事件発覚以降も煮え切れない内田氏の態度に繋がっていたのではあるまいか。【午】

 

 

 

 

 

 

 


2018年5月22日配信「『かぼちゃの馬車事件』で表面化した『スルガ銀行』の阿漕すぎる融資を見逃し、絶賛していた森信親金融庁長官の目は節穴⁉」<事件>

 
落城寸前?(wikipedia)

 

 シェアハウス「かぼちゃの馬車」向け融資を行なっていた「スルガ銀行」(静岡県沼津市)が、預金通帳などの改竄を黙認、あるいは知りつつ改竄へと誘導していた問題は、同行に事件が波及するのは確実な情勢で、創業130年を誇る「地銀の雄」の経営を根底から揺るがすことになりそうだ。

 既にオーナー被害弁護団によって刑事告発されており、捜査の進展によっては経営破綻や他の地銀(S銀行、Y銀行)による経営統合も考えられが、今、指摘しておくべきは、「スルガ銀行事件」はすべての地方銀行に共通する問題であり、それを招聘した森信親金融庁長官ら金融庁の責任も免れないということだ。

 「かぼちゃの馬車」を運営する「スマートデイズ」が苦境に立ち、サブリース契約を結んでいたオーナーに家賃保証が行えなくなって社会問題化するまで、森長官は「スルガ銀行」を賞賛していた。

 それは、森氏が金融庁長官になった15年7月以降、最も大きな政策課題としてきたのが「地銀の再生と生き残り」であり、他行が手がけていない分野に進出、高い収益率を誇る「スルガ銀行」は、賞賛に値する地銀だったからである。

 実際、地銀の経営は惨憺たる有様である。

 長官就任直後に発表した地銀の収益見通しに関する試算では、18年3月期までに、全地銀105行のうち半数以上が大幅減益に陥り、そのうち22行は赤字転落の危険性があるというものだった。

 森長官が促したのは、「持続成長できるビジネスモデルの確立」だったが、そう簡単に見つかるものではなく、結果、地銀で進んでいるのは経営統合による再編である。

 地銀を覆っているのは、縮小・均衡であり、将来の展望のない暗さである。

 それは地方都市のシャッター通りに共通するものがあり、構造不況業種からの脱却は不可能!ではないかと思わせた。

 そこに新風を巻き込んでいたのが「スルガ銀行」だった。

 「パーソナルローン」と呼ばれる投資用不動産融資を積極的に拡大、残高を増やし、13年3月末の約4000億円が17年末には9000億円に達し、1兆円越えは目前だった。

 その中核となっていたのが、シェアハウス向け融資である。

 とりあえず「スマートデイズ」から事件化するが、「利回り8%を保証、土地と建物をセットでオーナー希望のサラリーマン層に売り込めば、『スルガ銀行』がローンを付けるという外れのないスキーム」なので、「スマートデイズ」同様、破綻を前提に売りまくっていた業者は少なくない。

 従って、今回の詐欺事件は「スルガ銀行事件」として進展する。

 岡野家が支配するという経営形態を持つだけに、トップダウンで方針は決まり、収益率向上が目標になると、違法を承知か、違法寸前の融資に突っ走った。

 他の地銀が、1%台の貸出金利回りに苦しんでいる時、「スルガ銀行」が3%台後半を維持できたのは、パーソナルローンに加え、セットで借りさせる7%のフリーローンという高収益商品の賜物だった。

 無論、それだけの無茶を行員に迫るだけに、アメも用意している。

 平均年収で「三菱UFJ銀行」や「みずほ銀行」を上回り、「三井住友銀行」に次ぐ金融界癸を達成。地銀中位行としてはありえない高賃金だが、右肩上がりの業務純益がそれを可能にした。

 支店間競争は激しく、「スマートデイズ」の窓口の横浜東口支店だけでなく、全国の支店で改竄の黙認、誘導が行なわれていたのは、業者数が多岐にわたり、シェアハウスだけでなく通常のマンションローン、アパートローンにまで及んでいたからだ。

 数年前に問題化したデート商法でマンションを売りつける悪徳業者などに融資していたのも「スルガ銀行」だった。

 「スマートデイズ」が行なっていたのは、破綻を承知で売りつける詐欺商法だったが、そこに欠かせないのが「スルガ銀行」の与信で、「二人三脚の詐欺スキーム」というしかない。

 森長官と金融庁幹部の目は節穴だったと言っても過言ではない。

 だから、バブル期から繰り返されたワンルームマンション投資などインチキな個人向け不動産投資商法に気付かなかったばかりか、ことの地銀幹部を集めた集会などで「スルガ銀行に学べ」と、推奨してきたのだから罪深い。

 ”デタラメ両替商&”ノー天気勘定奉行”――今回の信じ難い事件は、ビジネスを知らず、リスクを取ったことのない官僚のセンスが、所詮は「この程度」だということの証明である。【戌】

 

 

 

 

 


2018年5月15日配信「香港に3,000億円の隠し口座⁉――PL教団4代目を名乗っていた伊予の名刹・安常寺住職に懲役6年の実刑判決!」<事件>

 
大平和祈念塔(Wikipedia)


 大阪地裁は、5月7日、禅宗「黄檗宗」の末寺「安城寺」(愛媛県松山市)で住職を務める片井徳久被告(57)に、懲役6年(求刑7年6月)の実刑判決を言い渡した。

 片井被告は、担保となっていた寺の土地建物を虚偽登記、1億5000万円を融資していた大阪市の不動産会社に損害を与えた他、石川県の建設会社社長から3億円をだまし取ったとして詐欺罪にも問われていた。

 「生臭坊主の犯した罪」というしかないが、興味深いのは、片井被告が大阪・富田林市に本部を置くPL(パーフェクトリバティ)教団の4代目を襲名するとして、教祖の家柄である「御木」を名乗り、御木徳久名でテレビ出演、『善を思わず悪を思わず』といった書籍のある有名人であったことだ。

 こちらは、まったくのウソというわけではない。

 PL教団を興したのは初代・御木徳一2代目・徳近の時に勢力を飛躍的に伸ばし、信者数300万人(公称)を抱える一大宗教教団となった。

 なかでも傘下のPL学園高校は、桑田真澄や清原などを輩出した高校野球の名門として知らない人はない。

 ただ、徳近は子供に恵まれず、妻の実家から養子をもらって3代目・貴日止とし、他に白日という女性を養女とした。

 片井被告は、この白日と養子縁組し、「4代目教祖となる」と、公言していた。

 安城寺は末寺とはいえ、江戸時代、8代将軍・徳川吉宗の頃に建立された名刹で、徳近が修行していたこともあってPL教団とはなじみが深い。

 また、共犯として逮捕されたのが、片井被告の側近で檀家総代を名乗る宇都宮貞史被告(43)。同被告もまた松山市内で家業の仕出し料理屋を手掛ける他、副業で歌手やタレントをこなし、自分の番組まで持つ「地方の名士」だった。

 捜査当局は、PL教団を背景に自分たちの虚名を利用、各方面からカネを引っ張った詐欺師たちの事件として立件、事件を受けた大阪地裁はそう断罪した。

 当初は、片井、宇都宮両被告はコンビだったが、今は袂を分かち、互いに「利用された」と、責任をなすりつけあっている。

 そして、この事件には、もうひとつ解明されていない“エピソード”がある。

 「最初に事件を手掛けていたのは愛媛県警でした。しかし、なぜか途中から大阪地検特捜部の扱いになり、徹底した捜査が行われました。特捜部はPL教団の裏ガネを疑い、そこに地元選出?の大物政治家の陰を感じたようなのです」(在阪の司法記者)

 それを示す証拠が、宇都宮の関係者が代表を務める香港の金融会社の残高証明書で、そこには、2012年1月4日の日付で「217・8億香港ドル」と記されていた。

 当時のレートで約3000億円である。

 この途方もない「隠し預金口座」は、次のように伝えられていた。

 「PL教団隆盛の2代目・徳近時代、米国進出を目論でそれなりに資金を米国に送っていたが、それだけの力がなくなり、一時的に資金を香港に集約。その役割を担ったのが徳久―宇都宮コンビで、その巨額資金の移動に、徳久は米国や日銀・大蔵に影響力を持つ政治家の力を使った」(PL教団関係者)

 特捜部はこの口座についても調べ、被告2人だけでなく、口座に関わったとされる金融関係者、口座確認のために香港に出向いたこともあるメガバンク元松山支店長なども聴取した。

 しかし、捜査はそこで終了、口座は凍結されたままだという。

 PL教団は、3代目・貴日止が病弱で教団をうまくまとめられず、それもあって教勢に衰えが目立つ。

 名門PL学園高校野球部の廃部はその象徴だろう。

 そうしたなか、4代目を名乗る住職に実刑判決が下されたが、謎の香港口座という「闇」は残されたままである。【午】

 

 

 

 

 



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