2019年12月19日配信「苫小牧にIRを誘致せず――鈴木北海道知事の決断に橋本五輪相、森章・森トラスト会長などが予定を狂わされて大落胆」<事件>

 
鈴木直道北海道知事(Wikipedia)


 「苫小牧へのIRの誘致を見送ります」――アベノミクスの経済浮揚策で首相官邸が期待、地元政財界も景気対策や雇用確保のために誘致一色かと思われたカジノを含む統合型リゾート(IR)に、初めて「ノー」が突き付けられた。
 
 鈴木直道・北海道知事は、11月29日、道議会で誘致を見送る表明をした。
 
 理由は「自然環境への影響」で、候補地の苫小牧市植苗地区が、希少動植物が生息する自然豊かな地で、「21年7月という誘致申請期限までに、環境への適切な配慮を行うことは不可能」と、見送りの理由を説明した。
 
 既に、苫小牧市は誘致を推進する決議案を可決、道内4経済団体も誘致表明を求める緊急共同宣言を道に提出していた。
 
 集客は年間840万人を見込み、雇用は1万人と試算され、最大で年約1600億円の売り上げが期待できるとあって、みんなが前のめりとなっている印象だった。
 
 だが、住民の意向を尊重したものではない。
 
 道が行ったアンケート調査では三分の二がIRへの誘致に「不安」と回答。「治安の悪化」と「ギャンブル依存症問題」が主たる理由で、自然保護団体からは「環境保護の方が大切」という声が上がっていた。
 
 IRに関し、政財界や行政と住民との間に落差が大きいのは「誘致表明」をしたばかりの横浜も同じだが、説得して推進するのが行政の前提と思われたIRに、鈴木知事が下した「誘致せず」の決断は、IRに多様性をもたらした。
 
 とはいえ、関東(東京か横浜)にひとつ、関西(大阪市)にひとつ、地方にひとつの計三つのIRが既定方針となっているなか、北海道・苫小牧は最有力候補と目されていただけに、推進派の落胆は大きい。
 
 政界では橋本聖子五輪相である。
 
 東京五輪開幕の年に生まれて「聖子」。冬のスケート、夏の自転車と計7回の五輪に出場、銅メダルを獲得。引退後、政界に打って出て、現在、参院5期目。今年9月の内閣改造で、五輪相という念願の閣僚ポストを手に入れた。
 
 出身は、苫小牧に隣接する安平町で、最大級のスポンサーは競走馬の世界で知られた社台グループである。
 
 吉田照哉、勝己、晴哉の「吉田三兄弟」が運営する社台グループはIR誘致にも熱心で、勝己氏が苫小牧統合型リゾート推進協議会の副会長。しかも勝己氏が社長を務める「ノーザンレーシング」は、約100ヘクタールの所有地を、IR用として市に無償提供することになっていた。
 
 橋本五輪相と勝己氏の思惑は一致。『週刊新潮』は、10月31日号から3週連続で、次のような疑惑を報じた。
 
 「マラソン・競歩を札幌で行う代わりに鈴木道知事にカジノ誘致を了承させる」――結果的に“誤報”だったが、政治家も経済界も行政も、それだけ期待を込めていたのは事実。そして、日本最大級の都市とリゾートの開発事業者である「森トラスト」も、大きく計画を狂わされた。
 
 今年83歳となった森トラスト会長の森章氏は、3年前、娘の伊達美和子氏に社長を譲ってからは、人生最後の夢を苫小牧に託すとして、一大リゾート計画を推進してきた。
 
 会社にリスクを取らせるわけにはいかないと、「MAプラットフォーム」という個人会社で約1000ヘクタールもの土地を取得した。
 
 その後、「森トラスト」は、ここにIRの進捗と合わせ、高層ホテル、広々としたコンドミニアム、温泉を含むスポーツ・レクリエーション施設などを建設、2500億円を投じることになっていた。
 
「誘致見送り」の報を受けても、森章氏は「予定通りに開発を行う」と、強気の姿勢を崩さなかったが、単独での2500億円プロジェクトは難しく、修正を余儀なくされよう。
 
「MAプラットフォーム」が、予定地を開発権利付きで購入した時の価格は約55億円。だが、原価は12億6000万円に過ぎず、「2割の利益を乗せたとしても40億円も高い買い物をさせられた」ということで、森氏は当時の社長を相手に損害賠償請求訴訟を行っている。
 
 この売買には、仲介業者として森氏と親しい謎の中国人女性が絡んでおり、複雑な様相を呈している。
 
 国税当局も取引を怪しみ、未だに調査を続けており、IRが予定通り進展すれば、そうした“躓き”は解消されただろうが、構想に終わったことで痛みは引きずる。
 
 IRの見送りは、こうした数々の「痛みと落胆」を、準備を進めていた政・官・財界の人間に与えることになりそうだ。【巳】

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月18日配信「週刊0510のおススメBOOKS」

 

 


2019年12月17日配信「執念と強欲に塗れた馬毛島を防衛省が“破格”の160億円+αで購入!」<政治>

 

 「ついに」というべきだろう。――政府は、11月29日、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転先となっていた馬毛島の購入について、地権者と合意した。
 
 「基地絡み」の話だけに、交渉がもつれるのは予想できたが、取得以来、延々20余年。防衛省と執念の交渉を繰り返し、国ばかりか債権者の鼻面を引き回しながら、交渉してきた地権者の粘りは、驚嘆に値する。
 
 種子島の西方12キロの南シナ海に浮かぶ無人島の馬毛島を所有するのは「タストン・エアポート」。――政府=防衛省との尋常でない交渉を続けてきたのは、同社が所属する立石建設グループを率いる立石勲氏である。
 
 鹿児島県出身で水産高校を卒業後、船乗りを経て建設設計分野に進み、砂利採取、再生砕石、産業廃棄物処理と幅広く事業展開する立石建設グループを一代で築き上げた。
 
 事業は多方面に及ぶが、現在、86歳の立石氏が、人生を賭けた事業といっていいのが、95年に購入した馬毛島に、民間初の国際貨物空港を建設することだった。
 
 馬毛島は、数奇な運命を辿った島である。
 
 石油備蓄基地、一大レジャーランド、防衛庁(当時)レーダー基地など幾つもの構想が生まれ、いずれも実らず、その島を船乗り時代に横目で眺めていた立石氏が、4億円で取得した。
 
 以降、憑かれたように飛行場建設を進め、南北4200メートル、東西2400メートルの“粗滑走路”を敷設した。
 
 それに目をつけたのが防衛省である。
 
 11年、訓練基地に関して日米が合意に達し、大きな騒音を伴うFCLPを無人島で米軍基地に近い馬毛島で行なう計画が浮上する。
 
 ネックは価格だった。
 
 防衛省は、17年3月、「日本はもっと防衛負担を!」と、主張するトランプ大統領の誕生を機に、立石氏との交渉を急ぎ、45億円という鑑定価格を出して交渉に入った。
 
 だが、「これまでに150億円は投じた」と、主張する立石氏は、国の足元を見透かしたように、自ら依頼した鑑定士事務所の結果をもとに、約400億円を主張して譲らなかった。
 
「国の予算」なので、倍の開きでも難しいのに10倍近い価格差で暗礁に乗り上げたが、立石氏は一歩も退かない。
 
 だが、一方で立石氏にも差し迫った事情があった。
 
 将来の見通しもない空港建設に、資金を突っ込んだおかげでグループの経営は“火の車”となった。
 
 そのため、都内や川崎市などに持つグループの資産には限度枠いっぱいの抵当権が設定され、残る馬毛島を切り売りするように、金融業者に担保提供せざるを得なくなった。
 
 丁寧で腰は低いが、図太いのが立石氏の真骨頂。のらりくらり、あの手この手で借金を重ね、総額は約250億円に達したという。
 
 「売却に成功したら10億円」といったアテのない“空証文”を連発、厳しく取り立てた金融業者が恐喝で逮捕されたこともある(不起訴処分)。
 
 その苦境を利用して、防衛省が債権者をけしかけて、昨年夏には第三者破産に持ち込んだこともあったが、辛くも新たな金融業者S社の支援を受けて乗り切った。
 
 が、売却しなければ、借金が返せない状況に変わりなく、S社主導の防衛省との交渉が、今年に入って再開され、2月に一旦は160億円で合意。だが、「それでは借金は返せても立石建設は立ち行かない」と、5月の段階で白紙に戻った。
 
 その後、方々に声をかけて急場を凌ぐ綱渡りのような金策が続いたものの、10月に入ると不渡りを出して万事、窮した。
 
 再び、S社の支援を受けざるを得なくなり、「ごね得」を封じ、売却価格は160億円でプラスαを求める交渉に入った。
 
 結局、「プラスαの中身は公開されていないが、工事に関することだ」(周辺関係者)という付帯条件がついたことで、ようやく11月末の防衛省との合意となった。
 
「工事に入れば、それなりの仕事が出てくる。それを『立石建設』が受注するということ。それなら160億円では足りない分をカバーできるし、債権者も納得する」(防衛省関係者)
 
 これでも立石氏は不満だというが、その「執念と強欲」が、鑑定価格の「3倍プラスα」という条件を国から引き出したのだから、老いの一徹が奏功したと言うしかない。【午】

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月14日配信「立石勲・立石建設代表が驚異の“粘り腰”で馬毛島を高値売却に成功した背景」<事件>

 
(☚wikipedia)


「ついに」というべきだろう。――政府は、11月29日、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転先となっていた馬毛島の購入について、地権者と合意した。
 
「基地絡み」の話だけに、交渉がもつれるのは予想できたが、取得以来、延々20余年。防衛省と執念の交渉を繰り返し、国ばかりか債権者の鼻面を引き回しながら、交渉してきた地権者の粘りは、驚嘆に値する。
 
 種子島の西方12キロの南シナ海に浮かぶ無人島の馬毛島を所有するのは「タストン・エアポート」。――政府=防衛省との尋常でない交渉を続けてきたのは、同社が所属する立石建設グループを率いる立石勲氏である。
 
 鹿児島県出身で水産高校を卒業後、船乗りを経て建設設計分野に進み、砂利採取、再生砕石、産業廃棄物処理と幅広く事業展開する立石建設グループを一代で築き上げた。
 
 事業は多方面に及ぶが、現在、86歳の立石氏が、人生を賭けた事業といっていいのが、95年に購入した馬毛島に、民間初の国際貨物空港を建設することだった。
 
 馬毛島は、数奇な運命を辿った島である。
 
 石油備蓄基地、一大レジャーランド、防衛庁(当時)レーダー基地など幾つもの構想が生まれ、いずれも実らず、その島を船乗り時代に横目で眺めていた立石氏が、4億円で取得した。
 
 以降、憑かれたように飛行場建設を進め、南北4200メートル、東西2400メートルの“粗滑走路”を敷設した。
 
 それに目をつけたのが防衛省である。
 
 11年、訓練基地に関して日米が合意に達し、大きな騒音を伴うFCLPを無人島で米軍基地に近い馬毛島で行なう計画が浮上する。
 
 ネックは価格だった。
 
 防衛省は、17年3月、「日本はもっと防衛負担を!」と、主張するトランプ大統領の誕生を機に、立石氏との交渉を急ぎ、45億円という鑑定価格を出して交渉に入った。
 
 だが、「これまでに150億円は投じた」と、主張する立石氏は、国の足元を見透かしたように、自ら依頼した鑑定士事務所の結果をもとに、約400億円を主張して譲らなかった。
 
「国の予算」なので、倍の開きでも難しいのに10倍近い価格差で暗礁に乗り上げたが、立石氏は一歩も退かない。
 
 だが、一方で立石氏にも差し迫った事情があった。
 
 将来の見通しもない空港建設に、資金を突っ込んだおかげでグループの経営は“火の車”となった。
 
 そのため、都内や川崎市などに持つグループの資産には限度枠いっぱいの抵当権が設定され、残る馬毛島を切り売りするように、金融業者に担保提供せざるを得なくなった。
 
 丁寧で腰は低いが、のらりくらりが立石氏の真骨頂。、あの手この手で借金を重ね、総額は約250億円に達したという。
 

 「売却に成功したら10億円」といった根拠のない“空証文”を出し、厳しく取り立てた都下の金融業者が恐喝で逮捕されたこともある(不起訴処分)。
 
 その苦境を利用して、防衛省が債権者をけしかけて、昨年夏には第三者破産に持ち込んだこともあったが、辛うじて金融業者N社の支援を受けて乗り切った。
 
 が、売却しなければ、借金が返せない状況に変わりなく、N社主導の防衛省との交渉が、今年に入って再開され、2月に一旦は160億円で合意。だが、「それでは借金は返せても立石建設は立ち行かない」と、骨肉の争いの末、5月の段階で白紙に戻った。
 
 その後、方々に声をかけて急場を凌ぐ綱渡りのような金策が続いたものの、10月に入ると1回目の不渡りを出して万事、窮した。
 
 再び、N社の支援を受けざるを得なくなり、「ごね得」を封じ、売却価格は160億円でプラスαを求める交渉に入った。
 
 結局、「プラスαの中身は公開されていないが、工事に関することだ」(周辺関係者)という付帯条件がついたことで、ようやく11月末の防衛省との合意となった。
 
「工事に入れば、それなりの仕事が出てくる。それを『立石建設』が受注するということ。それなら160億円では足りない分をカバーできるし、債権者も納得する」(防衛省関係者)
 
 これでも立石氏は不満だというが、その「執念と強欲」が、鑑定価格の「3倍プラスα」という条件を国から引き出したのだから、老いの一徹が奏功したと言うしかない。【午】


2019年12月10日<0510archives>配信「鼎の軽重を問われる関西検察――市民団体が『特別背任と収賄と脱税』で、12月13日に告発する関西電力不正還流事件の行方」

 
関西電力本社(wikipedia)

 

 福井県の反原発市民団体などで構成される「関電の原発マネー不正還流を告発する会」が、11月14日、永田町の憲政記念会館で東京集会を開き、代理人の河合弘之弁護士が、会社法上の特別背任と収賄、及び脱税での刑事告発を視野に作業を進めていることを明らかにした。
 
 告発は12月13日を予定だが、告発先については、当初、予定されていた大阪地検にするか、東京地検にするかを、まだ決めかねているという。
 
「真剣に取り組んでくれるところを選びたい」(河合氏)というのが、その理由だ。 

 関電役員ら20名が、「原発フィクサー」の森山栄治元高浜町助役から約3億2000万円の原発還流資金を受け取っていたというとんでもない事件。その原資は、関電が森山氏の顧問先である「吉田開発」(高浜町)に発注した直接間接の原発資金だった。
 
 金額に違いはあるとはいえ、八木誠前会長、岩根茂樹社長ら経営陣みんなが受け取っていたという意味で、「関電総体の事件」であり、社内調査委員会が事件を1年間、封印していたことを考えれば、強制捜査権を持つ検察への告発は当然のことだ。
 
 発覚を受けて、関電は10月9日、新たに第三者委員会を立ち上げているが、「調査費用は関電が出しており、会社のコントロール下に置かれている」(河合弁護士)という意味では、役員らに同情的で厳しい追及をしなかった社内調査委員会と同じ土俵にある。
 
 検察捜査に期待がかかるのは、還流資金の出し手である「吉田開発」に話を聞くことができるし、関電や「吉田開発」、森山氏の自宅や関係先に捜査を入れて帳簿類などを押収できるうえ、発覚のきっかけとなった税務調査の資料を税務当局に提出させることもできるからだ。
 
 森山氏が今年3月、死去しているのは痛手だが、そうした証拠と証言の積み重ねで起訴に持ち込むのは可能だろう。
 
 会社法上の特別背任は、任務に背いて会社に損害を与えたことを立証しなければならないが、余剰利益があったからこそ「吉田開発」には森山氏に回すカネがあったわけであり、それは適正発注ではなく、役員らは任務に背いて、そのカネが自分たちに還流していることを認識しながら利益を得る立場にあった。
 
 同じく収賄は、不正の請託を受けて「吉田開発」に便宜を諮ったことを立証しなければならないが、「吉田開発」が関電から直接、発注を受けたのは22件で、うち随意契約が10件である。
 こうした発注の際、森山氏に対して事前に工事物量や概算額の情報提供が為され、吉田開発側が同席していた例もあり、不正の請託を行なう局面はあった。
 
 脱税については、金額概算で2人が1億円を超えている。
 後で返すつもりだったということで、実際、修正申告して税金を納めているが、1億円を超える無申告はあまりに悪質で納税しても脱税は成立する。
 
 関電エリアの住民の事件への反発は強く、金品の還流が明らかになっている以上、12月13日に告発があれば、大阪地検特捜部は、受理して捜査するのは当然の流れのはずだが、濃密な人間関係が交錯する関西検察の反応は鈍い
 
「カネの出し手が死んでいる以上、立証は極めて困難」(検察関係者)というのがその理由だが、その裏には、「関西検察のドン」である土肥孝治元検事総長が今年6月まで関電社外監査役で、後を継いだのが佐々木茂夫元大阪高検検事長。さらに社内調査委員会の委員長が元大阪地検検事正の小林敬弁護士だった、という事情もある。
 
 つまり、「関電の守り役」である先輩たちの“顔”を、関西検察の後輩たちは潰せないし、連綿と受け継がれてきた秩序を乱せば、退官後の天下りにも差し支える。
 
 それを読み、河合氏ら弁護団は東京地検への告発も視野に入れている。
 
 厚労省女性局長逮捕に絡む証拠改ざん事件を起こし、検察の威信を地に落としたのは大阪地検だった。
 
 森友学園事件では、籠池泰典理事長夫妻を国策で逮捕・起訴しながら、証拠隠滅など数々の違法行為を犯した財務官僚に踏み込むことはなかった。
 

 そして今回は、先輩らに配慮してまともに捜査しない?――まさに関西検察の鼎の軽重が問われている。【巳】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月7日「週刊0510のイチオシ歌謡曲」

 


2019年12月6日配信「週刊0510のおススメBOOKS」

 

 


2019年12月5日配信<0510archives>「市場と国家がソフトバンクを直撃、岐路に立つ孫流ビジネスモデル」<経済>

 
稀代のギャンブラー?(←wikipedia)

  
「ソフトバンクグループ」は、今や将来を見据えて、あらゆる分野の成長が期待できる企業に投資する「ファンド」である。
 
 通信(携帯電話)とネット(ヤフー)という中核分野はあるが、それは投資の成功例であり、今後、フィンテック、医療、輸送・物流、不動産といった分野の投資先が、莫大な投資リターンをもたらし、グループの中核に成長するかも知れない。
 
 要は、「ソフトバンク」に本業はない。
 
 そう舵を切ったのは、17年にサウジアラビアのムハンマド皇太子なども関与する10兆円ファンドの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)を立ち上げてからだ。
 
 「ソフトバンク」は、19年3月期に2兆3539億円という巨額営業利益を叩き出しているが、その大半はSVFが計上する非上場株式の評価益だった。
 
 もともと「ソフトバンク」は、“稀代の目利き”というべき孫正義社長の度胸満点の投資で成功を収めてきた。
 
「ヤフー」「アリババ」への投資の成功がなければ、今の通信インフラを中核とした企業グループはない。
 
 そういう意味でSVFは、ITとビッグデータとAI(人工知能)の融合で、産業と企業の垣根が低くなった時代に、次世代の成長分野を孫氏が発掘、それを従来にない形の企業に仕上げる「ハコ」だった。
 
 今年9月中旬、米カリフォルニアで開かれたSVFが出資する企業の最高経営責任者を集めたイベントには、80社以上が集まり、「ソフトバンク」の将来性を印象付けた。
 
 だが、投資には「失敗」もあり、成功したビジネスモデルには「国家の牽制」も始まりつつあり、「ソフトバンク」は10月、早くもそのカベに直面した。
 
 投資の失費とは、米シェアハウスの「ウィーワーク」に1兆円の追加支援を発表したことであり、国家の牽制とは、国税当局がソフトバンクグループ内での利益の相殺で、同社が法人税をまったく払わない節税方法に目をつけ、その封じ込めを決断したことである。
 
 「ウィーワーク」は、世界29ヵ国に528拠点を置くサブリース業者で、自らは資産を持たず、長期契約でオフィスを借り上げ、短期契約で転貸する。
 
 同社を創業したアダム・ニューマン氏のカリスマ性に加え、一等地の共同オフィスでベンチャー企業同士が競合することで生まれる新規の産業、技術、サービスなどへの期待もあって、企業価値は一時、約5兆円に膨らんだ。
 
 だが、アダム氏の利益相反行為が次々に発覚、同時に恒常的な赤字体質への反発も強まって、新規株式公開に失敗、企業価値は1兆円を割り込んだ。
 
 この「ウィーワーク」に最も期待を寄せていたのが孫氏で、SVFから既に約1兆円を投資していたが、経営危機に際し、SVFからではなく「ソフトバンク」からの1兆円投資を決めた。
 
 これは明らかな“ナンピン買い”で、市場は失敗と見なしており、株価も社債も暴落している。
 
 加えて、国税当局は、「ソフトバンク」が行なった「節税工作」を認めない方針を打ち出した。
 
 「ソフトバンク」は、18年3月期に3兆3000億円で買収した英「アーム・ホールディングス」の株式の一部をSVFに現物出資で移管。この際、アーム社買収の際の取得価格に対し、移管の際の譲渡価格が大幅に下落したとして1兆4000億円の損失を計上。「ソフトバンク」は1兆円の純利益を上げながら、1円の法人税も納めなかった。
 
 合法ではあるが、赤字法人を買ってきて黒字を相殺する事件屋、B勘屋の手法や発想と違いはない。
 
 この節税は、税の公正性と「ソフトバンク」のような日本を象徴する企業の公共性を考えれば許されることではない。
 
 80数社を抱えるSVFをうまく使えば、納税せずに利益だけを蓄積することが可能になる。
 
 国税庁は財務省に根回し、政府に働きかけて「同一グループ内での利益の相殺」を認めないという税制改正を2020年度の大綱に盛り込むことになった。
 
 市場と国家が、孫流ビジネスモデルに「ノー!」を突きつけた。
 
 孫氏の発想は、企業経営者の所得番付の1番から4番までをソフトバンク役員が占めているのを見てわかるように、稼ぐものはより稼ぐという徹底した市場主義であり、その延長線上に「税金を支払わないのが株主への務め」という価値観がある。
 
 だが、極端な2極化を招くその“在り方”は、世界各国で見直しを迫られており、今回、孫氏は「ビジネスモデルの変更」を求められているという意味で、大きな岐路に立っている。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2019年12月4日配信「週刊0510のおススメBOOKS」

 

 

 

 


2019年12月3日配信「『桜を見る会』で疑惑噴出の安倍首相を刑事告発する意味と特捜捜査の行方」<事件>

 
疑惑の桜を見る会(wikipedia)

 

 「秩序を守る役割の検察が、秩序を揺るがす捜査なんてできる訳がない!不起訴に決まっているから捜査に意味はない!」――安倍晋三首相が主催する「桜を見る会」に公職選挙法と政治資金規正法違反の疑いがあるとして、11月20日、「税金私物化を許さない市民の会」が、安倍晋三首相を被告発人として刑事告発した際、司法関係者を含む大半のプロの反応は、斯くも冷ややかなものだった。
 
 この告発は、地元後援会約850人を「桜を見る会」に招き、飲食供応したことそのものを公職選挙法違反、その前日、前夜祭を開いてひとり5000円を徴収しながら政治資金収支報告書に記載しなかったことを政治資金規正法違反とした。
 
 今後、同種の告発が別の観点、他の罪状などで出されることが予測され、告発を受けた東京地検特捜部は、いずれ受理して捜査しなければならないが、歴代の首相が慣例的に行なってきた「桜を見る会」の利用を、安倍首相に限って問題視、起訴して公判に持ち込む可能性は低い。
 
 まして安倍政権と検察は、証拠改竄事件を起こして「特捜改革」に踏み切らざるを得なかった検察を、司法取引の導入などで安倍政権が支えてきたという事情がある。
 
 その貸し借りに加え、内閣人事局の発足以来、検察に対しても官邸が強くなったという変化が加わり、さらに秩序を揺るがさないという検察本来の役割を考えれば、「不起訴に決まっている」という見方もわかる。
 
 だが一方で、捜査の進展は侮れない。
 
 思わぬ事実が表面化、安倍首相がこれまで繰り返してきた弁明との辻褄が合わなくなり、辞任を余儀なくされる局面があるかも知れない。
 
 あるいは、疑惑発覚を逆手に取り、「国民の信を問う」と、解散・総選挙に打って出る可能性もあり、不起訴かも知れないが、「意味はない」ことはない。
 
 例えば、誰もが不審に思う「ホテルニューオータニ」との関係である。
 
 前夜祭の約850人の出席者に対し、入金を確認しないまま5000円の領収書を出し、安倍氏によれば「請求書も明細書もない」というのだが、そんな杜撰なことを「ホテルニューオータニ」のような一流ホテルがするだろうか。
 
 今は、安倍事務所とホテル側との間で口裏合わせが行なわれ、領収書、見積書、請求書に関し、両者に齟齬はないが、捜査が始まれば、そうはいってられない。
 
 1万1000円がパーティーの最低基準価格の「ホテルニューオータニ」で、5000円は明らかなダンピング価格。パーティーを主催した安倍晋三後援会が、その補填をしていれば、有権者への寄付行為を禁じた公職選挙法に抵触する。
 
 ホテル側も無傷ではいられない。
 
 前夜祭の不記載が政治資金規正法違反として捜査に入れば、本来、後援会名義の領収書を出すべきなのに、ホテルの領収書にしたのは政治資金規正法逃れを幇助したことになる。
 
 また、5000円の不足分をホテル側がサービスとして提供していれば、政治資金規正法に違反の企業献金となる。
 
 ホテル側は、「顧客情報の秘匿」ということで見積書や請求書の有無を明らかにしていないが、検察捜査となれば表面化するし、内部告発の形でコピーがメディアに流出することも考えられる。
 
 そうなった時、安倍氏はどう言い繕うのか。
 
 森友学園・加計学園事件でも政権や官邸、あるいは昭恵夫人が追い込まれる局面はあったものの、基本的に「官僚の忖度」であり、安倍氏の責任にはならなかった。
 
 だが、今回は被告発人が安倍氏であり、前言との違いは、「首相のウソ」として糾弾されよう。
 
 それは、違法かどうかを問う検察捜査とは別問題。そういう意味で憲政史上最長の通算在職日数となった安倍政権は、捜査着手によって記録が止まりかねない大きなリスクを背負うことになった。【戌】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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